蓮丈那智フィールドファイルIV 『邪馬台』北森鴻

2019.09.11 Wednesday

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    民俗学ミステリ・蓮丈那智フィールドファイル初にして最後の長編『邪馬台』読了。異端の民俗学者・蓮丈那智が邪馬台国の謎に挑むと同時に、謎の文書「阿久仁村遺聞」にまつわる滅びた村の秘密に迫ります。

    あとがきには作者・北森鴻氏の急死により途絶えた物語を、氏のパートナーだった作家の浅野里紗子氏があとを引き継ぎ完成させたとありました。

    未完の、それも結末が残されていない作品を引き継ぐのは並大抵の覚悟ではなかったでしょう。
    しかしこうして物語を世に出してくれた作者と関係者の方々には感謝しかありません。

    今回、私が興味深かったのは「阿久仁村遺聞」よりも那智先生による邪馬台国の推理です。確かに、このように考えれば邪馬台国の位置についても説明がついてしまうのです。



    邪馬台国とは何か


    邪馬台国に関しては古くは江戸時代からその「場所はどこか」について論じられてきましたが、那智先生は「そんなものは考古学者にでもまかせておけ」と言い放ち、独自のアプローチを試みます。

    それは「邪馬台国はどこか」ではなく「邪馬台国とは何か」、そんな国家であったかというものです。那智先生の推理によると、古代の国家は当時最強のテクノロジーである「鉄」の製造が密接に関わっているのだとか。

    「鉄」は武器として持てば強大な軍事力となり、農具に使えば農業技術が向上することで食べること以外の余力、「酒」を作り出すこともできる。

    邪馬台国とは、「鉄」と「酒」がキーワードとなるのではないか。
    そこに、助手の三國くんが提唱する「滅びの民俗学」説を加えると…。もちろん、実証されない推理ではあるのですが、歴史外の視点から邪馬台国を捉えるとこんな風にも考えられのか、と改めて那智先生の思考力に驚かされました。

    奇しくも有名な『銃・病原菌・鉄』でも、古代、鉄がもたらす生産性の向上と、その余力で国家が形成されると書かれていました。

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    蓮丈那智フィールドファイルIII 『写楽・考』 北森鴻

    2019.08.17 Saturday

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      美貌の民俗学者・蓮丈那智が殺人と歴史の謎を解く、蓮丈那智フィールドファイル『写楽・考』

      前作『触身仏』から新たに研究室の助手となった佐江由美子が加わったり、これまで名前が伏せられていた教務の元民俗学者の名前が判明するなど新たな変化があったものの、助手兼ワトソン役の内藤くんは相変わらず蓮杖先生に振り回されています。

      優秀な佐江さんが加わったことで戦々恐々としたり、ちょっと狂言回し的な役割が強くなってきたのはちょっとかわいそうな気も…



      写楽・考─蓮丈那智フィールドファイルII あらすじ



      憑代忌


      「憑代」とは神をその中に宿す器物のこと。お祭りのお神輿なども「憑代」の一種ですね。
      那智先生に依頼され、内藤と佐江だけである旧家にある憑代の人形の調査に向かうものの、そこで殺人事件に巻き込まれてしまう。
      また、大学内では単位を落とさぬおまじないとして、学生の間に内藤の写真を撮ってそれを破損する行為が流行っていて…。

      那智先生の写真は手に入らないし、怖い。なので代替品として内藤くんの写真が使われたらしいのだけど、それが「憑代の変遷」という事件のヒントにつながっていきます。

      湖底忌


      湖の底に沈む鳥居とそれにまつわる事件。そもそも鳥居とは何なのか、一節には神が変化した鳥のとまる場所とも言われますが、ここでは、鳥居そのものが信仰の対象であり、現実と非現実を分けるモノという説を唱えています。

      神社も鳥居も私達の身近にあるけれど、説明をしろと言われたらよくわからないものですね。

      棄神祭


      那智先生が学生の頃、フィールドワークで訪れた旧家で起こった殺人事件。過去に決着をつけるべく那智先生が再度謎を解くという展開。その家には神像を壊すという一風変わった行事があり、それを撮影したビデオに謎をとく鍵があるらしい。

      「破壊される神」とは何を表しているのか。日本神話で殺されることで食物を生み出した大気都比売神を例に取り、崇めるべき神が破壊される謎に迫ります。

      写楽・考


      民俗学的モチーフではなく、地方の資産家の失踪事件と、資産家の持つ美術品についての謎を、蓮丈那智研究室と元民俗学者の教務職員・高杉が追っていきます。

      タイトルに写楽がついているのに、実は写楽は最後まででてきません。最後でようやく謎が解けるのですが、これだけ少し毛色の違う感じがしました。



      JUGEMテーマ:最近読んだ本

      民俗学とミステリはよく似ている『触身仏』北森 鴻

      2019.07.26 Friday

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        美貌でクールな民俗学者が解き明かすのは、昔も今も変わらない人間の「業」かもしれない。蓮丈那智フィールドファイルも2冊め。このシリーズの面白いところは現実の事件と、民間伝承の中に埋もれた事件、その両方の謎が明らかになるところです。

        民俗学は正規の歴史書に書かれないような地方で「その時そこで何があったか、なぜこうして残ったか」を検証し、推理していく学問です。

        昔の農村では生存それ自体が難しいため、生き延びるために村人たちは間引きや姥捨て、人柱など、現代の感覚では考えられないような壮絶な虐殺が行われていました。

        それを残したい思いと、知られたくない思いが相反し、時に人や現象を変化し逆転させ、元とは異なる伝承として伝わる。それを解き明かしていく作業が民俗学はミステリのようでもあるわけです。




        触身仏─蓮丈那智フィールドファイルII あらすじ



        「秘供養」


        人里離れた場所に作られた五百羅漢の謎。「なぜ、この場所に、こうした形で残るのか」には理由があり、これが解かれたときの恐ろしさといったら…!

        「大黒闇」


        大学に潜む恐怖を描いた話。大学内のカルト宗教、催眠術のように相手を操る教主のおそろしさといったら、助手の三國くんまで危うく入りそうになるほど。でもそれを制した蓮杖先生の「無用!」の一言かっこよかったですねえ。

        「死満瓊」


        学者同士のディスカッションの場で殺人事件が発生。死体の隣には蓮杖先生が意識不明で発見されてしまう。「三種の神器」のひとつ、勾玉についての考察が語られます。

        鏡は鬼道(占い)、剣は軍事力、勾玉は日本神話にでてくる海の満ち引きを支配する玉から、治水事業であると考える説が興味深いです。ヤマタノオロチ退治も、水に住むオロチを川の氾濫に見立てた治水事業という説もあるのだとか。神話に秘められた歴史的な解釈、面白いですね。

        「触身仏」


        即身仏とは食を少しずつ絶ちながら絶命するまで念仏を唱え、その亡骸を仏として祀る修行。その即身仏にまつわる物語。本来里の近くに祀るべき仏が集落と異なる場所に安置された意味とは…。実際にフィールドワークでその場所や地形を見ることで、全く違った側面がみえてきます。

        「御蔭講」


        わらしべ長者の物語と「講」と呼ばれる昔の相互扶助システム(沖縄にはまだ残っている)との関連性。わらしべ長者のように、より多くを得るために狂ってしまった男の話とリンクしています。



        蓮丈那智フィールドファイルシリーズ


        「凶笑面」

        『占星術殺人事件』島田 荘司

        2019.03.23 Saturday

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          日本ミステリ界の名作『占星術殺人事件』読了。トリックの斬新さに度肝を抜かれました。この小説にはミステリの定番「読者への挑戦状」が途中で挟まれているのですが、材料が提示されているとはいえ、まったくわかりませんでした。

          これが約40年前に書かれた物語だとは感じられません。改訂版ということもありますが、時代を感じさせない、すごいミステリでした。猟奇的殺人ではありますが、極端なグロ表現ではないので純粋にミステリが楽しめます。

          物語は、昭和11年に起こった猟奇殺人「占星術殺人事件」を40年後の昭和50年代に、占星術師の御手洗潔とワトソン役の石岡和己が依頼され、この事件の真相を探るというもの。

          雪に残った謎の足跡、密室殺人、6人の乙女たちのバラバラ死体、占星術になぞらえた殺人計画など、ゾクゾクする謎が一体どのように説かれるのか、犯人は誰なのか…「読者への挑戦状」によると物語の中であらかじめ提示された
          人物の中にいるらしいのですが、謎を解いている時にはほとんどが死んじゃっているし、正直お手上げでした。



          しかし、殺人のトリック、それもバラバラ死体のからくりがわかった時の驚きといったら…!不可能と思われる事柄も、ほんの少し、ピンをはずすだけでこんなにも簡単に形が整うとは…。このどんでん返しは「十角館の殺人」の犯人を知った時以来の衝撃でした。


          昭和という時代


          謎解きのワクワクと、トリックの衝撃が素晴らしかったのですが、読んでいて切なかったのは犯人の心情です。
          ミステリで犯人に同情することは多々あるのですが、この「やりきれない感じ」は昭和ならではじゃないかなと思うんです。

          犯人が身の上について少しだけ書かれた文の中にも、その裏にある悲痛な経験がすけて見えます。

          平成の世の中ならばまだ、悲惨な環境から逃げ出すこともできたでしょうが、家の因習や家族制度の力が強かった昭和では、そこから逃げ出すのが今よりもずっと難しいかった。だからあんな事件がおこってしまったのかもしれません…。

          『葉桜の季節に君を想うということ』歌野 晶午

          2019.02.14 Thursday

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            『葉桜の季節に君を想うということ』そんなロマンチックなタイトルから、儚げな純愛小説を想像したのですが、ところがどっこい、冒頭、エロいシーンからはじまります。殺人、詐欺といった生臭い事件と、主人公とヒロインの純愛。それが最後にはあんな風になるとは。気持ちよく騙された作品でした。


            『葉桜の季節に君を想うということ』


            主人公・成瀬将虎は、高校の後輩・キヨシから、キヨシの想い人・久世愛子の身内の死の真相と、高齢者を対象にした詐欺グループ「蓬莱倶楽部」の調査を依頼される。そんな時、成瀬は偶然駅で自殺を図ろうとした麻宮さくらと運命的な出会いをする。

            二人の恋の行方、「蓬莱倶楽部」の詐欺によって人生を狂わせる老人たち、そこに成瀬の過去が絡み合い、事件は意外な方向へと進んでいく…



            あ〜!、やられた〜!


            最終章を読み終えて、思わずあ〜、やられた〜!って思いましたね。
            『葉桜の季節に君を想うということ』は「どんでん返し」がすばらしいミステリとして紹介されていたので、警戒しつつ読んでいたのですが、まさかこうくるとは。

            言われてみれば小説の構成や、登場人物たちの言動などに「ひっかかり」は感じていたのですが、最後の最後で実にスムーズにひっくり返されるというか、いかに自分の感覚が思い込みでできているかを実感しました。

            そして、読者がミスリードされるように作られた作者の綿密な構成がすごい。確かに読み返してみると核心を避ける表現であったり(多少強引なのもあるけど)、主軸の話の途中で、全く無関係(にみえる)話が入ってくることで混乱を誘ったり、小道具なども選びぬかれていているんです。(ジャイアンツとか)

            推理というよりはラテラルシンキングに近い部分もあり、自分たちの感覚が固定概念に凝り固まっているのかを思い知らされました。

            ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門

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            結末がどんでん返しの小説


            イニシエーション・ラブ
            80年代、とあるカップルを巡る恋愛小説…かと思いきや、最後の2行でひっくり返される。殺人はないけれど、別の怖さのある作品です。

            イニシエーション・ラブ (文春文庫)

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            十角館の殺人
            言わずとしれた新本格推理の名作。犯人がわかったときの衝撃は今でも忘れられません。

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            JUGEMテーマ:最近読んだ本

            明治の推理作家 VS 天才棋士『涙香迷宮』

            2018.09.28 Friday

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              以前『幽霊塔』を読んだのは『涙香迷宮』を読む前に黒岩涙香の作品を知っておきたかったから。
              『幽霊塔』で明治の翻訳表現に苦しみながらもページをめくる手が止まらなかった涙香のすごさがわかりました。

              『幽霊塔』感想→

              そんな涙香をモチーフにしたミステリ『涙香迷宮』は、天才棋士が、明治時代のミステリ作家・黒岩涙香が残したいろは歌にまつわる謎を解いていくというもの。暗号、殺人、いわくありげな洋館、そして嵐の山荘…。ミステリ要素が満載の作品でした。

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              『涙香迷宮』あらすじ


              若き天才棋士・牧野智久は知り合いの刑事から事件の意見を求められる。その人物は碁を打っている最中に後ろから刺され、絶命していた。智久は碁石の数が通常より多いという事実に引っかかりを感じた。

              一方、智久の彼女・類子はミステリサークルのイベントで黒岩涙香の研究家である麻生に声をかけられる。麻生は涙香の企画展を計画しており、涙香が残したとされる洋館の発掘調査を行うという。

              そこへ智久も招待され、ほかにも歌人、ゲーム作家、編集者などさまざまなミステリマニアが集まり、洋館の地下に残る涙香の暗号を解き明かそうとするのだが…。

              日本ミステリの始祖、黒岩涙香


              いろは唄はひらがなを一文字ずつ使った和歌で、「いろはにほへと」が有名ですが、その他にも様々ないろは唄がつくられいて、黒岩涙香はいろは唄の達人でもありました。

              その他にも涙香は「連珠」と呼ばれる五目並べやビリヤードなど、遊芸百般と言われるほど様々なことに才能を発揮していたそうです。

              星座盤を模した天井、十二支を配した部屋にそれぞれ置かれたいろは唄。ミステリ要素がふんだんに含まれていたのは楽しかったです。涙香は自分の新聞社で実際に宝探し懸賞企画をおこなったので、自分のハマった趣味である「いろは唄」や「連珠」で「宝探し」の謎解きをさせるのは実際にあってもおかしくないモチーフですね。

              黒岩涙香のこと




              ただ、これだけワクワクするモチーフがありながら、宝と内容だとか、殺人事件の結末だとかはいまひとつ盛り上がりに欠けた感じも。十二支いろは唄の部屋は、詳細に描かれていたので、部屋そのものにもなにかあるんじゃないかと期待してしまったんです。

              綾辻行人さんの館シリーズを読んでいると特に「部屋の配置図=謎がある」と思っちゃうんですよ…

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              いろは唄の解説も、明治期のかな文字表現がむずかしいので、自分で考えられず探偵役が解き明かすのをただただ感心するばかりなので、あまり物語の中に入り込むという感じはなかったかな。

              とはいえ、明治の偉大な推理作家と若き天才棋士の頭脳戦は面白かったです。本当の犯人というか仕掛け人は黒岩涙香なのかもしれません。

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              乱歩や宮崎駿があこがれた小説『幽霊塔』黒岩 涙香

              2018.09.16 Sunday

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                乱歩や宮崎駿があこがれた黒岩涙香の翻訳小説『幽霊塔』を読了。宝が隠された塔を巡る冒険活劇ミステリ。「幽霊塔」は少年時代の江戸川乱歩や宮崎駿も憧れた小説で、後に江戸川乱歩によりリライトされ、宮崎駿の「カリオストロの城」にも影響を与えてます。

                いわくつきの時計塔、宝の謎、暗号、首無し死体、からくり屋敷など、ミステリの要素がたっぷり詰まっています。

                ・パブリックドメイン(0円)デジタル書籍版「幽霊塔」。明治時代の描写そのままなので読みづらいところも。

                幽霊塔




                『幽霊塔』あらすじ


                丸部道九郎はおじが買い取った「幽霊塔」と呼ばれる時計塔を視察に行くと、そこには日影色(灰色)の着物を着た美しい女性・松谷秀子がいた。秀子は幽霊塔の内部に詳しく、道九郎にいろいろなアドバイスを行い去っていった。

                やがて幽霊塔に住まいを移した道九郎たちであったが、それは様々な謎と恐ろしい出来事の始まりであった。
                果たして「怪美人」秀子の正体は、また幽霊塔にまつわる宝の謎は…。

                美人の謎、宝の謎、怪しげな洋館、暗号、いわくありげな人物など、ミステリの要素がふんだんに詰め込まれた作品です。

                江戸川乱歩のリライト版の「幽霊塔」。物語自体を楽しむならがよいかもしれません。(舞台は日本になっている)宮崎駿の豪華イラスト解説入りです。

                幽霊塔

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                明治の探偵小説


                現代の我々から見るとトリックは稚拙だし、ご都合主義的な展開があるものの、謎が謎を呼ぶ展開にページをめくる手がとまりませんでした。

                原作となった英語の小説から、暗号部分を漢詩風にアレンジしたり、随所に黒岩涙香の言葉のセンスが光ります。

                ひとつの章ごとに山場があり、次への展開が気になるようなつくりになっていたり、私が斬新だな、と思ったのは各章のタイトルが文章中に出てくるセリフや言葉になっていて、今読むと一周回ってとても新鮮でした。

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                嗚呼、面倒な明治の描写…


                物語は面白いのですが、なにせ明治32年の小説なので、台詞回しや表現が現代とまったく違って読みづらいことといったら…!
                しますのサ」「シテ見ると」など、芝居がかった台詞回しや現代では使われない表現など、いちいち頭で現代の表現に変換しながらでないと先に進めず大変でした。

                話の展開が面白いので早く読みたいのに、描写がそれを許さない…。

                あと、「舞台がイギリスなのに登場人物が日本名」なのには参りました。
                涙香の時代は名前や周囲の描写を日本風にアレンジしないと読者が想像できなかったのでしょうが、現代では逆にそ場面や人物が想像しづらく、読みながら「どっちやねん!」とツッコミをいれながら読んでいましたよ…。

                「盆栽室」…温室?イギリスには盆栽ないやん…
                「衣嚢」…ポケットのことらしい。わからん…
                「夫で」…それで。読めん!
                「了う」…しまう。終了→終わり→終う→しまう…

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                『幽霊塔』と『カリオストロの城』


                『幽霊塔』を読んでいて「あれ?この設定カリオストロの城みたいだな…」と思っていたら、調べてみると宮崎駿は幽霊塔からインスピレーションを受けて『カリオストロの城』を作ったのだそう。

                宝が隠された時計塔、詩文のような暗号、機械のような時計塔内部、骸骨に部屋の中に落とし穴など、カリオストロの城でみられた設定が随所に出てきます。

                少年時代のの宮崎駿が、いかにこの小説に魅入られていたかがわかります。

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                『BORDER 警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係』古川 春秋 金城 一紀

                2018.06.27 Wednesday

                0
                  金城一紀脚本、小栗旬主演でドラマ化された『BORDER』。犯人の銃弾が脳内に残ってしまったことで死者と話せるようになった刑事、石川安吾が事件を通じ生と死に対峙する重厚なサスペンス。

                  自らも格闘技を行う金城さんがこだわったアクションシーンは圧巻でした。

                  そんな『BORDER』がオリジナルストーリーでノベライズ化。登場人物のバックボーンや心情が語られ、より深くドラマの世界を楽しむことができました。

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                  『BORDER 警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係』あらすじ


                  トンネルで会社員大谷の死体が発見される。特別監察官の比嘉ミカは「犯人は身長160センチ前後、あるいはそのように偽装だれた可能性がある」と推測。時を同じくして大谷の部下の女性社員が自殺未遂。
                  事件は、恥情のもつれによる犯行とみて捜査が開始される。

                  石川は静かに死者に問いかける「あなたを殺したのは、誰ですか?」死者からの聞き取りで犯人は「鬼」のような突起を持つ男だという。ほどなく政治家の秘書が殺され、石川は殺された秘書にも話を聞くと、彼もまた「鬼」を見たという。

                  関連のないように思われた2つの事件が、大きな事件につながっていくと知った石川は…

                  オリジナルストーリー


                  ノベライズものって、ただストーリーを文章化したものが多いですが、こうしたオリジナルストーリーはうれしいです。

                  登場人物たちの設定も深く描かれていて、ドラマでは描かれなかった石川の家族のこと(兄の自殺、父との確執)や比嘉ミカが「死者の声を聞く」ことにこだわる理由などが語られます。設定では知っていたけれど、実際に言葉になると石川と比嘉の深い思いを知ることができました。

                  そして小説版では石川と比嘉は焼き肉食べに行ったり、比嘉の顔立ちに照れたりする石川の姿もみられてちょっとほっこり。ドラマではいつも殺伐としていたから。こういうちょっとしたぬくもりがあるとうれしいし、こうした暖かさが石川が「あちら側」へ行きそうになる衝動を防いでくれるかもしれない、と思ったりします。

                  欲を言えば、アクションシーンはもう少しスピード感がほしかったかな。金城さんのスピード感のある文章が懐かしい。はやく小説も書いてくれよ…。

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                  「BORDER 贖罪/衝動」、ドラマのその後、罪を背負った石川がどう生きていくかを描いた「贖罪」、比嘉ミカが石川たちと出会う前の事件を描いた「衝動」どちらも申告な内容でしたが、物語がきちんとあるべきところに収まったという感じです。

                  比嘉さんは死者と話せずともその卓越した分析能力で犯人にたどり着きます。石川と違ったアプローチですが、彼女もまた「死者の声」を聞き取ることができるのでしょうね。

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                  がんとは何なのか。『がん消滅の罠 完全寛解の謎』岩木 一麻

                  2018.06.21 Thursday

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                    このミステリーがすごい!大賞を受賞した『がん消滅の罠 完全寛解の謎』読了。がんや先進医療についても学べるので勉強になります。

                    がん消滅の罠 あらすじ


                    日本がんセンターの医師・夏目は、担当した末期がんの患者が次々と寛解(がんが消える)するという通常ではありえない現象に遭遇する。一方、がん患者が寛解によりが巨額の保険金支払いが行われたことに夏目の友人で保険会社課長の森川は、部下の水嶋とともに調査を始め、夏目のもとへ。

                    夏目は森川、友人で研究医の羽島とともに完全寛解の謎を調査するのだが…。

                    【2017年・第15回『このミステリーがすごい!大賞』大賞受賞作】 がん消滅の罠 完全寛解の謎 (『このミス』大賞シリーズ)

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                    がんを知る


                    一体「がん」とはなんなのか、将来、自分やほかの身内ががんになったらどうしたらいいのか。本を通じてそうした現代のがん治療についての知識も知ることができました。「がん」とは細胞がコピーされるときに生じる「バグ」ので、常に体内で発生するものの、通常は免疫細胞ががん細胞を攻撃することで健康でいられるけれど、がん細胞が
                    増殖することで「がん」になっていくんですね。

                    自分の細胞から発生したものだから、なかなか攻撃が難しく抗がん剤治療は重い副作用を生じることもあります。
                    また、現代のがん治療はがんを完全除去できない場合の「がんとともに生きる」という治療方針があるのだとか。

                    日本人の2人に1人ががんになる時代、がんについて知れたという意味でも興味深い本でした。

                    細胞擬人化まんが「はたらく細胞」でもがん細胞と免疫細胞との攻防が描かれます。

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                    救済と復讐


                    ただ、ストーリーとしては納得がいかない面も多々ありました。いくら遺伝子レベルの治療が進んでいるとはいえ、がん細胞を自由自在にコントロールできるとは到底思えない。それができるのは「神」だけではないのか…。

                    そう思った時、ああ、だからキリスト教なのかと。犯人はもしかしたら「神」になりたかったのかもしれない。愛するものを奪われたことで一方では貧しきものに「救済」を与える神、もう一方で戒律を守らないものに「試練」を与える神として。

                    しかし、人間は神にはなれない。この結末のあと犯人がどうなっていくのか、おそらく自滅するのではないかと私は考えます。

                    面白いけど納得がいかない(ここからネタバレ)


                    「がん寛解」というアイデアはすごく面白いけど、犯人たちの動機にいまひとつ共感できなかったなあ。家族を失ったことで「壊れて」しまったのかもしれないけれど。

                    最後の落とし方は面白かったけど、意外な顛末というわけでもない。もうひとりの犯人が、どうしてあそこまで尽くすのか、理由を説明されてもバックボーンが描かれていないので「ああそうなんだ」と、納得はするけど驚きはなかったなあ。

                    羽島と犯人の娘との関係も、あれだけの説明では納得がいかないし…。


                    「このミステリーがすごい!」で賞とったけど、動悸がまったく納得いかないのはこれもそうだな…。

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                    私は「館シリーズ」のように一見、荒唐無稽な設定でもプロットも動機も納得できて「驚かせてくれる」話のほうが好きだな…。

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                    『モップの精は旅に出る』近藤 史恵

                    2017.06.24 Saturday

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                      キュートでおしゃれな清掃員・キリコが、清掃先の問題を解決していくモップの精シリーズ「モップの精は旅に出る」今回が最終巻なのだとか。相変わらず、清掃先で起こるできごとをきれいに解いていくキリコちゃんですが、今回キリコちゃん自身にもある問題が降りかかってきます。

                      英会話教室での事件


                      英会話教室の事務員・翔子は、ある日生徒の中沢から婚姻届を送られる。一度カウンセリングをしただけで身に覚えのない翔子だったが、その後、中沢が殺されてしまう。

                      翔子は忘れ物をしたことが縁で、英会話教室の夜間清掃をしていたキリコちゃんと知り合い、婚姻届が入っていたと思われる封筒がゴミ箱に捨ててあったことを知り、真犯人が他にいるのではないかと疑います。

                      もう一編は大人のいじめがテーマ。主婦グループに大人気の外国人講師をめぐり、新規会員の女性がいじめを受けているのでは、と心配する翔子に、キリコちゃんは自分も教室に通って調べると言い出し…

                      以前、作者の近藤史恵先生が通っていたフランス語の教室の話をツイッターで書かれていたことがあったので、もしかしたらそんなとことから作品のヒントを得られたのかもしれません。(さすがに事件は起こらないでしょうが…)

                      モップの精の最後の物語


                      物語の最後「ラストケース」は、キリコちゃん自身のお話です。これまで、キリコちゃんの家族は夫の大介くん以外は出てきませんでしたが、キリコちゃんには年の離れた姉がいたこと、そのお姉さんが急な病気で亡くなってしまったことから、物語は始まります。

                      キリコちゃんと姉の菜々子さんが仲が良かったのに疎遠になってしまった理由、自分のことを優先してしまう父親など、家族の問題について語られていきます。

                      大介くんも気難しい祖母の介護や、母親の死など、キリコちゃんと結婚したことで癒やされていきましたが、キリコちゃんもまた、大介くんが「帰る場所」だったんですね。シリーズの最初は頼りなかった大介くんも、悲しみを抑えようとするキリコちゃんに「君の好きにしていい。」といえる程、たくましくなりました。

                      しかし、自分のことを棚に上げ、相手を糾弾する大介の叔母や、自業自得なのに、キリコちゃんに仕返ししようとする菜々子さんの元夫など、自分のために他人を傷つけてもいい、と思っている人が「家族」の中にいるほど、恐ろしいことはありませんね。


                      この表紙、なんだかメリー・ポピンズみたいですね。キリコちゃん自身が清掃先で問題を解決して去っていく、メリー・ポピンズみたいな感じだからかな。でも、可愛くて前向きで、最終巻にふさわしい表紙です。
                      モップの精は旅に出る
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                      モップの精シリーズ


                      「モップの精と二匹のアルマジロ」→
                      「モップの精は深夜に現れる」→
                      「モップの魔女は魔法を知ってる」→
                      「天使はモップを持って」→

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