「十角館の殺人」書店ポップ

2007.01.10 Wednesday

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    「十角館の殺人」書店ポップ

    書店の文庫コーナーをなにげなく覗いていたら、感動的なポップを発見した。

    「ミステリに必要なのは、時代遅れと言われようが何だろうが、名探偵に大邸宅、怪しげな住人達。血みどろの惨劇、不可能で不可解なトリック…絵空事で大いに結構。要はその世界の中で楽しめればいいのさ。」

    十角館の殺人から始まる館シリーズは、そんな「絵空事」が詰まった作品だ。
    しかし、「その世界」が果たしてまったくないと言い切れるだろうか?
    人のこころに「闇」の部分がある限り、どこかで偶然、中村青司の館に出会うことがあるかもしれない。
    その時、きびすを返してもと来た道を戻るべきか、それとも怪しい魅力を放つあの館に足が向かってしまうのか…

    十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)
    綾辻 行人
    講談社
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    「贈る物語 Mystery」 綾辻 行人

    2006.12.18 Monday

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      綾辻行人さんセレクトによる古今東西の名作ミステリ集。
      綾辻さんの選ぶ作品は、さすがにどれもこれも面白い!(≧▽≦)
      作品の特徴に合わせて、5つのカテゴリに別れています。

      Who?
      「誰が」、いわゆる犯人当てがメインの作品。

      How?
      「いかにして?」
      犯人がどうやって、その犯行を行ったか。
      あっと驚くトリックの作品が集められています。

      Why?
      「何故?」犯人の動機は?
      この2作品の動機はなんとも後味の悪い、ゾッとするものでした。

      What?
      「何が起こっているのか?」
      これは説明が難しい(^^;)
      ひとつの事件が起こっていると思っていたら、まったく違った展開だった…と、いうところかな?

      Callenge!
      読者への挑戦、犯人と動機を読者が推理するパターン。
      答えを読んだあとは、きっとみんな「やられた!」と思うでしょう。
      綾辻さんの紹介にもあるように「答えは鼻先に突きつけられて」
      いたんですがねぇ…

      どのカテゴリも面白いのですが、私はWhatWhyの作品がオススメです。犯人当てやトリックあばきというミステリの王道(?)以外で、おお〜!w( ̄Д ̄;)と思ったのは初めてかも

      ここに集められた作品から、また読書の幅が広がっていきそうです。綾辻さん、素敵な作品を集めてくださり、ありがとうございました。


      綾辻 行人 / 光文社
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      ミステリ現場の設計 「犯行現場の作り方」 安井 俊夫

      2006.12.13 Wednesday

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        綾辻行人の館シリーズ、を読んでから、誰か、あの館たちを形にしてくれないかと思っていました。迷路館や時計館は難しそうだけれど、「十角館の殺人」だったら実際に作れそうだよな〜と思っていたらついに夢が実現しました。
        といっても設計上でですが。

        犯行現場の作り方」の作者・安井 俊夫さんはミステリ好きの一級建築士だそうで、十角館のほかにも建築不可能と思われる名作ミステリの建築を図面に起こし、設計費まで出してくれています。

        犯行現場の作り方
        犯行現場の作り方
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        安井 俊夫
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        ちなみに、十角館の建設費用は、
        ・島購入費+インフラ費(電気・水道など)+4000万
        ほどかかるそう。ちなみに何も無い島に電気、水道を引くのはとてつもなく費用がかかるらしく、相当な財力がないと無理らしい。
        長崎の無人島「夢島」を買ったさだまさしも島の購入費よりインフラ整備の方が高かったと言っていましたしね。

        ぜひシリーズ化して、他の館シリーズや京極堂シリーズなんぞも取り上げて欲しいものです。

        ↓まさかこの建物が実際の建築図面になる日が来ようとは!
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        『暗いところで待ち合わせ』 乙一

        2006.12.09 Saturday

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          私にとって初の乙一作品。
          ミステリの様相を呈してはいるが、メインは盲目の女性ミチルと、彼女の家に忍び込んだ殺人の容疑者アキヒロとの、奇妙な同居生活がメインとなっている。

          自分が今、本当に目が見えているのだろうか?


          それほど盲目の方の生活がとても現実感があり、読んでいるこちらも、まるでやわらかな暗闇につつまれているような感覚になる。

          ちりばめられたキーワード


          2人の奇妙で暖かな同居生活の中に最後の結末につながるキーワードがちりばめられていて、それがどんどんと明らかになっていく。

          ラスト近くは、ページをめくる手が止まらなかった。

          アキヒロの孤独が悲しい


          私も人とうまくやることができず、周囲に壁をつくってしまうタイプの人間だから。
          人とのコミュニケーション能力に劣等感を持つ人間は、周囲の行動に敏感だ。職場の人間からあんな風にからかわれたら、私だって殺意を抱くかもしれない。

          ミチルとの奇妙な交流で、アキヒロの心がほぐれてゆくのが伝わって、私もうれしかった。自分という存在を理解しようとしてれる人がいれば、きっと大丈夫。

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          「霧越邸殺人事件」 綾辻行人

          2006.08.08 Tuesday

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            読んだのは真夏だというのに、この本を開くたび、たちまち凍てつく寒さと雪に閉ざされた霧越邸にわたしの意識は飛んでゆく。

            吹雪に会い偶然にも霧越邸を訪れた劇団・暗色天幕のメンバーたち。彼らの名前を暗示する屋敷の調度品。
            どうやらこの家には不思議な現象があるらしい。

            やがて北原白秋の詩に見立てた殺人事件がおこる。
            邸内に潜む謎の人物。
            やがて怒る第2、第3の殺人。
            犯人は誰なのか、そして、屋敷の不可思議な力は何を暗示しているのだろうか…?

            この小説は「家の持つ不思議な力」を受け入れることで初めて推理が成り立つというちょっと異質な推理小説。
            読み始めは「そんなことありえないよ」と思うのだが、
            雪に閉ざされた、非現実的は洋館で、偶然に訪れたメンバーの名前を暗示するものが次々に現れたとしたら…
            読んでいくうちにどんどん、館の持つ「力」に引き込まれて行く。

            私のつたない文章などでは、霧越邸の不可思議な魅力をとうてい伝える事はできない。できれは読んで、その世界観を体験して欲しい。

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            「マジックミラー」 有栖川有栖

            2006.06.13 Tuesday

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              滋賀県余呉湖のほとりの別荘で、独りの女性が殺される。
              犯人と目されるのは、夫・柚木新一と双子の弟健一だが、犯行があったと思われる時間、2人はそれぞれ福岡、岩手へと出張中だった。その後、同じ別荘で双子の1人が頭部と手首を切り取られた死体で発見される。
              果たして犯人は?アリバイは崩れるのか…?

              推理小説では使い古された感のある定番素材「双子」「鉄道トリック」を使いながらも、まったく新しい物語に仕上がっている。

              デビュー作「月光ゲーム」は、あまりに多い登場人物と共感できない動機であまりスキではなかったのだが、この「マジックミラー」は細部まで細かいトリックが生きていて面白かった。
              十数年前の作品だけれど、まったく色あせない。
              ただ、この十数年で大きな事故が起こり、日本の鉄道ダイヤがいまいち信用できなくなったため、今では鉄道トリック自体が難しいかも。

              ずばり、キーワードは「双子」
              「双子」じゃなければ成立しない話(笑)
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              有栖川さんは熱烈なネコムラーでもある。
              「ダ・ヴィンチ」2月号の猫村さん特集では、
              猫村さんを主人公にしたショートショートも書いているのだ。

              「扉は閉ざされたまま」 石持 浅海

              2006.05.10 Wednesday

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                「嵐の山荘」は物理的な状況だけではなく、人間の心理で作り出せるものだということを教えてくれた1冊。

                「扉は閉ざされたまま」あらすじ


                都心の古い洋館を利用した高級ペンション。そこに大学のサークルのメンバーが集まり、懐かしい同窓会が始まるはずだった。

                しかし、メンバーの一人が数時間たっても部屋から出てこない。何度呼んでも、扉をたたいても反応が無い。ただ、彼は部屋に戻る前に睡眠改善薬と花粉症の薬を併用していた。

                薬と疲れのせいで熟睡しているのだろうか、それとも…

                心理的な「嵐の山荘」


                「嵐の山荘」とは、よく推理小説で使われる「嵐のため、外と連絡がとれない人里離れた場所で殺人事件が起こる」状況のことを指します。

                しかし、今回の舞台は都心の一等地。警察に連絡しようと思えばいつでも電話がつながるのに、それができない。なぜなら、犯人と探偵以外の人間は、彼が死んでいるか、眠っているだけなのかわからないのだから。

                もし眠っているだけなら、大騒ぎをして扉を壊せば、高級ペンションの価値を損なう事になってしまいます。扉を開けさせたくない犯人と、扉を開けて中を確かめたい探偵役、他の誰にもその本当の意味を悟られずに、白熱した議論が続けられる。。

                扉は閉ざされたまま (ノン・ノベル)
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                動機がねえ…説得力がないというか。


                犯人が「何故、犯人は一定の時間、扉を明けさせたくなかったのか」という理由が面白かった分、やや期待はずれ。

                犯人が行動を起こさなくても犯人の不利益を回避する方法、私でさえ1個や2個考え付くんですけど。


                文庫版では、弱いといわれた動機を補完する短編「前夜」が収録されています。

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                ここからネタバレ「不順な動機を持つ」探偵


                「真実を知りたい」という大義名分のもと、自分の好奇心を満たすためには人の秘密もお構いなしに暴いていく素人探偵があまり好きではなかった。この本の探偵役も最初は自分の「気になって仕方がない性分」のために、他のメンバーの恋愛を暴いてみたりしている。

                でも途中から探偵役の「真実追求以外の不順な動機」が見えてきます。探偵は犯人を手に入れるため、あるまじき行動をおこしていきます。けれど、私は、この探偵が嫌いじゃない。

                「真実を知りたい」というだけで他の人のプライベートにずけずけ踏み込む素人探偵よりも、よほど人間的で好感が持てたから。

                でも、友達には絶対になりたくないけれど(^^;)

                こちらもまた、動機の面で読者を置き去りにした「セリヌンティウスの船」

                セリヌンティウスの舟 (光文社文庫)

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                綾辻行人サイン会

                2006.04.16 Sunday

                0
                  去る4月2日、推理作家綾辻行人先生サイン会に行ってまいりました。
                  サイン会なるものに行くのは初めてだったので、とりあえず予約をいれたカウンターに行き、整理券をもらう。
                  「整理券に自分の名前を書いてください」と言われたのでとりあえず記入。どうやらこれを先生にお見せして自分の名前を入れてもらうらしい。なるほど〜!サインだけじゃないのね。私は中ほどの番号だったので呼ばれるまでしばし店内をぶらぶらする。

                  そこで欲しかった群ようこさんのかもめ食堂を購入。
                  さらにビジネス本などを立ち読みするが、サイン会の方が気になってしまい、いかにも「サイン会会場の近くの本が読みたいのよ」といった顔をして会場へ近づく。
                  とりあえずK社スタッフに止められない程度の位置をキープし、綾辻先生のご尊顔を配する。おお〜、作者近影と同じだぁ(←当たり前だ。)

                  綾辻先生の服装はこんな感じ。
                  白のステッチが入った黒のジャケット
                  赤のシャツ(確かチェック)
                  スニーカー(私は未確認だが、前のカップル?が話していた)

                  お会いしたら何を話そうか、いろいろと台詞を考えていた。↓
                  「島田3兄弟の子供時代の頃の話を書いてください。」
                  「先生が暗黒館で資料にされた二笑亭の本、私も持っています(^^)」
                  「月館も楽しみにしています。」
                  「あいつら(ゴキブリ:綾辻先生の苦手)には台所用洗剤がいいですよ。」

                  しかし、綾辻先生本人を目の前にすると緊張で声が出ないっ!
                  おまけに1人のサイン時間が短いため、とまどっているうちに
                  瞬く間にサインはどんどん出来上がってしまい、
                  結局何も話せなかった…残念。

                  でも、「お願いします」と本を渡したとき、ちょっと微笑んでくださり、その微笑みにちょっとときめいてしまった。
                  すみません、小野先生orz…

                  それにしても、サイン会にご本人のほかの著書を近くにおいて販売するのはいいとして、小野先生の本まで並べているとは、商売上手だよね、K社さん。

                  ↓本当はサイン本をお見せ(自慢)したいところだが、
                  差しさわりがありそうなのでこちらを。
                  まだ忙しくて冒頭部分しか読んでませんが、かなり面白いです。



                  ↓黒猫館や暗黒館にも出てくる二笑亭。昭和初期の不思議な建築。


                  建築探偵シリーズ 「未明の家」 篠田真由美

                  2006.01.20 Friday

                  0
                    いよいよ、篠田真由美の建築探偵シリーズ、読み始めました。
                    最近「建築」を扱った推理小説で、綾辻行人以外の人ができるとは正直思わなかったのだが

                    篠田作品は綾辻作品とはまた少し違った角度、視点からのアプローチされている。
                    探偵役は建築史家を目指す修士生。それに抜群の記憶力を持つ少年。
                    フィールドワークを得意とする体育会系の主人公の友人。
                    学術的、歴史的な見地から「建築」とそこに潜む人間模様を明らかにしていく。

                    専門な解説が多いが、文章が読みやすいのであまり難しく感じなかった。
                    作中には元祖・建築探偵、藤森照信氏の著書も作品中に登場して、私のような「戦前の洋館」好きには応えられない。
                    これから他の巻を読むのが楽しみ。

                    未明の家 (講談社文庫―建築探偵桜井京介の事件簿)
                    篠田 真由美

                    未明の家 (講談社文庫―建築探偵桜井京介の事件簿)
                    玄い女神―建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社文庫) 翡翠の城―建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社文庫) 原罪の庭―建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社文庫) 灰色の砦―建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社文庫) 美貌の帳―建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社文庫)
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                    魔女の死んだ家
                    古い洋館に住む女主人の死をきっかけに様々な人々の思いが交錯する、幻想的な物語。もうひとつの主人公である「洋館」がこの物語の世界観を作り出している。
                    今読み返してみると、物語の終盤で謎を解く人が建築探偵だったのかも。。


                    篠田 真由美 / 講談社(2003/10/26)
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                    妖艶な香り、蜃気楼のような肌触りを感じたミステリ
                    綺麗なイマジネーション
                    とにかく綺麗な本です



                    今読んでも面白い「99%の誘拐」 岡嶋二人

                    2005.11.21 Monday

                    0
                      2005年版この文庫がすごいの第一位に選ばれただけの価値がある。とにかく面白い。
                      旅行に持っていったけれど、宿泊先で夜更かしをして一気に読み終わってしまった。(おかげで翌日飛行機に酔った。。)

                      時代背景は、コンピュータ、半導体の黎明期から、汎用機からようやくパソコンが普及し始めた昭和43年から昭和63年。物語のもうひとつの主役はコンピュータ。2つの事件のうち、メインの誘拐事件の犯人は、パソコンを駆使して前代未聞の誘拐犯罪を計画する−。

                      そうはいっても、ストーリー展開が魅力的なので、別にパソコンの知識がそれほどなくても楽しめます。

                      「99%の誘拐」あらすじ


                      【第1章】


                      まず1つめの誘拐は昭和43年。半導体工場、『イコマ電子工業』を営む生駒洋一郎の息子、慎吾が何者かに誘拐される。犯人は身代金として5千万円を要求するが、その金額は経営危機に陥った会社を立て直すべく、洋一郎がかき集めた資金と同じ額だった。

                      犯人から金塊をフェリーから落とすよう指示され、真夜中の海に金塊を落とす洋一郎と社員の間宮、鷲尾。この事件で会社再建の希望は潰えることとなったが、息子・慎吾を無事に取り戻す事ができた。

                      その後、『イコマ電子工業』は以前から合併を申し出ていたカメラメーカー『リカード』に吸収され、洋一郎もそこで半導体の開発事業部長の地位を与えられるが、昭和58年、末期ガンでこの世を去る。また、慎吾の誘拐事件の犯人も結局わからないまま、時効を迎える。

                      【第2章】


                      1つめの誘拐事件から19年後。慎吾の身代金として犯人に渡ったはずの金塊がある人物の事故死によって発見される。その人物は、『リカード』を定年退職した総務課長だった。19年前の誘拐事件に『リカード』が関与しているのではないかと噂が流れはじめる。

                      【第3章】


                      1つめの誘拐事件から20年後。2つめの誘拐事件が起こる。
                      今度は『リカード』の社長の孫・兼介が何者かに誘拐され、身代金10億円が要求される。犯人はそれをダイヤの原石で要求し、その運び手として、20年前に誘拐され、現在は『リカード』の研究員となった生駒洋一郎の息子、慎吾を指名したのだった。

                      【第4章】


                      事件後、かつて父の部下で、『リカード』重役となった間宮と慎吾はかつて慎吾の誘拐時に身代金の金塊を沈めた同じ航路のフェリーに乗っていた。2人の会話の内容は……。



                      罪の意識のない被害者



                      「ー兼介をこんな目にあわせたことだけは許せない。兼介には何の責任もないことじゃないか。」
                      「……」
                      慎吾にだって責任はなかったのだと言おうとして、間宮はその口を閉ざした。


                      文中には、慎吾の誘拐に『リカード』が直接手を下したとの記述はない。
                      しかし、孫を溺愛し、成績を公然と社員に自慢したり、自分の過去の行状を反省もせず、孫が誘拐されるとなりふりかまわないような社長のいる『リカード』は、許せない。

                      この社長は、自分が悪いことをしている意識がまるでない。自分の利益のためならなんだって正当化している。そうした罪の意識のない人は犯罪を犯罪だと思わないのだろう。社長も孫も、時間が経てば恐怖も苦しみも忘れてしまうだろう。

                      きっと、誘拐犯の方がずっと罪の意識のをもち、これから苦しんでいくのだろう。それを覆うと切ない復讐劇でした。

                      そして2つの事件の後、慎吾はどう生きていくのでしょうか。
                      私の希望としては、『リカード』を辞めて会社を立ち上げるか、その後台頭するIT関連企業に引き抜かれて技術者として最前線で働いていって欲しいと思う。

                      あるいは海外企業に行き業績不振の『リカード』を買収するかもしれない。
                      おそらく、こうしたワンマン経営の家電会社は、現代の日本では生き残れないだろうから…。