八咫烏シリーズ外伝『はるのとこやみ』(ネタバレ)

2020.05.09 Saturday

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    八咫烏シリーズ『はるのとこやみ』は1巻『烏に単は似合わない』の前日譚で、東家の姫・あせびの母親・浮雲のお話です。音楽で心を通わせるラブ・ストーリーなのですが…




    『はるのとこやみ』あらすじ


    東家は音曲を司る家柄。庶民にも広く音曲を奨励しており、双子の伶と倫も「山烏」と呼ばれる庶民の出であるものの、楽才で東家に仕えることを許されていた。

    楽才があれば中央での出仕もかない、出世も約束されているため、修練を積むふたり。しかし、楽の才能は倫の方が勝っていた。自分の才能に限界を感じ、弟に嫉妬を覚える伶。

    ある時、帝である金鳥に嫁ぐ登殿の候補者選びのため梅見の宴が開かれる。そこで二人は驚くべき演奏を聞く。それは浮雲という姫の音だった。姫の音に魅了された弟の倫は、密かに姫と合奏を行い、心を通わせていく。

    弟は姫との恋に溺れ、けっきょく楽士となれたのは伶の方だった。ある日、中央に出仕した伶のもとに、弟が自殺をしたと知らせが入る。

    真相を確かめるため、浮雲の元を訪れる伶。そこで見たのは、弟の髪と目を持つ小さい姫だった。

    浮雲が弟を愛していたと確信した伶は、彼女に対面する。しかし、浮雲の口から出たのは、思いもかけない言葉だった…


    一番怖いのは、自覚がないこと


    最後の浮雲のセリフにゾッととしました。
    浮雲もあせびも、したたかで計算高いのですが、なんというか、その時々で欲しいものがあると全力を尽くすけれど、手に入れるとすぐに飽きて、忘れてしまうんですよね。

    『烏に単は似合わない』によると、浮雲は若君の母親殺しにも絡んでいるらしいのですが、そんな浮雲を持ってしても、敵わなかった大紫の御前すごいわ…。

    大紫の御前のものがたり『なつのゆうばえ』


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    八咫烏シリーズ


    『烏に単衣は似合わない』
    『烏は主を選ばない』
    『黄金の烏』
    『空棺の烏』
    『玉依姫』
    『弥栄の烏』
    外伝『すみのさくら』
    外伝『しのぶひと』
    外伝『ふゆきにおもう』
    外伝『まつばちりて』
    外伝『あきのあやぎぬ』
    外伝『ふゆのことら』
    外伝『なつのゆうばえ』

    八咫烏シリーズ外伝「なつのゆうばえ」阿部 智里

    2019.07.19 Friday

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      八咫烏シリーズ外伝「なつのゆうばえ」読了。八咫烏の帝「金鳥」の皇后である「大紫の御前」の物語です。
      この外伝が始まってからせひとも「大紫の御前」の物語がよみたいと思っていました。

      なぜなら、八咫烏シリーズの「大紫の御前」といえば、主人公の若宮と敵対するラスボス的な女性だから。そんな敵役の彼女を、別の角度から見たらどんな物語が潜んでいるのだろうか…と思っていたんです。

      この外伝シリーズは、本編では描かれなかった登場人物のバックボーンや心情を細やかに描いてくれるため、外伝を読んでからまた本編を読むことで物語をより深く感じることができるんです。

      「なつのゆうばえ」あらすじ


      小さい頃から「南本家の姫」として、誇りと振る舞いを叩き込まれてきた夕蜩は、やがて「金鳥」となる若宮に嫁ぎ、皇后となるため運命づけられていた。しかし、夫となる若宮は愚鈍で彼女を嫌い、唯一彼女を愛してくれた両親もなくしてしまう。

      生きる意味さえ失いかけた中で、彼女が見つけたのは…


      彼女の行動原理は意外なところにあったのですね。誰も信用ができない、だれも愛せない世界で、彼女が手に入れた行動原理ははたから見ると歪んでみえるかもしれませんが、それこそがたったひとつ、彼女に残された「自由」だったのでしょう。

      そんな複雑な人間模様と対をなすように、夏の庭、ゆうばえの描写がとても美しくて、匂いまでも感じられるようでした。

      「愚鈍な皇帝に賢い皇后」という構図に、ロシアのエカテリーナ2世を思い出しました。ダンナがアホだと権力と別の愛人くらいしか頼るものないものなあ…




      『烏百花 蛍の章 八咫烏外伝』は、電子書籍版の短編と書き下ろし2編を加えた外伝集



      八咫烏シリーズ


      『烏に単衣は似合わない』
      『烏は主を選ばない』
      『黄金の烏』
      『空棺の烏』
      『玉依姫』
      『弥栄の烏』
      外伝『すみのさくら』
      外伝『しのぶひと』
      外伝『ふゆきにおもう』
      外伝『まつばちりて』
      外伝『あきのあやぎぬ』
      外伝『ふゆのことら』

      『菓子屋横丁月光荘 浮草の灯』ほしおさなえ

      2019.06.20 Thursday

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        小江戸・川越を舞台にした『菓子屋横丁月光荘』は、家の声を聴くことのできる主人公・守人と、人と家とのつながりの物語です。

        2作目の『菓子屋横丁月光荘 浮草の灯』では、孤独だった守人が家の声をきっかけにして、川越の人々と縁をふかめていき、家である(はずの)月光荘とも仲良くなっていきます。



        また、同じく川越を舞台にした『活版印刷三日月堂』に登場した「浮草」という古書店や三日月堂ゆかりの人々が登場するので、三日月堂ファンにも嬉しい展開でした。
        ・『活版印刷三日月堂 雲の日記帳

        家のつくもがみ


        今回、読んでいて驚いたのが月光荘です。月光荘は守人の恩師・木谷教授から管理人を任されている古い家…なのですが、この子(と呼びたくなるのです)は守人の前だとずいぶんと「おしゃべり」なのです。

        月光荘は最初、昔住んでいた少女が歌っていた歌を口ずさむ程度でしたが、声を聞ける守人と会話が成立するようになります。それは、まるでちいさな少女のような明るくて屈託のない感じなのです。

        「ツカレタ」「タノシイ」など、カタコトのような言葉で守人と会話する月光荘がとてもかわいらしい。月光荘の言葉によると、家には魂のようなものがあり、他の家ともある方法で交流できるようなのです。
        なんだか年を経たモノが变化した「つくもがみ」のようですね。

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        家と人とのつながり


        『菓子屋横丁月光荘』を読むまで、家はただの居住空間であり、持ち主の転居など、時期がくれば去っていくものだと思っていました。でも、この物語では家も長い年月を経ていたり、人から大切にされることで家もまた、人を大切に思ってくれているのを知って、ちょっとうれしくなりました。

        守人のように声は聞けなくても、こうして家と人とがつながっていると考えると、家がとても愛おしくなりますね。



        菓子屋横丁月光荘シリーズ


        『菓子屋横丁月光荘 歌う家』
        『菓子屋横丁月光荘 文鳥の宿』
        レビューポータル「MONO-PORTAL」

        もしも写真の中に入れたら…『銀塩写真探偵 一九八五年の光』ほしをさなえ

        2019.05.18 Saturday

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          もしも写真の中に入れたら、あなたは何を見てみたいですか?
          亡くなってしまった懐かしい人、撮影当時の風景、あるいは思い出の品…。
          銀塩写真探偵 一九八五年の光 』の世界では、特殊な状況下でだけ写真の中の風景に入ることができます。

          一見、荒唐無稽な設定と思われるかもしれませんが、詳細な現像技術や撮影の描写と、ほしおさなえ先生の情景描写がすばらしくて、読んでいるといつの間にか私たちも写真の世界へ吸い込まれてしまいます。

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          『銀塩写真探偵 一九八五年の光』あらすじ


          陽太郎は高校の写真部の掃除中にカメラマン辛島弘一の作品に出会う。モノクロの、影を写したようなその写真は、弘一によれば「光」を写した写真・フォトグラム(印画紙に直接ものを置いて感光させる技法)だという。

          弘一の作品とフィルム(銀塩)写真に惹かれた陽太郎は弘一に弟子入りする。

          ある日、陽太郎は弘一のアトリエで写真の引き伸ばし機を作動させると、そこは写真の風景の中だった。陽太郎は写真の中で弘一の姪・杏奈とともに行方不明の弘一を探すことに。

          フォトグラムの写真


          ものの形が際立つものや、ぼかしや色が加えられたアーティスティックな作品など、光と影だけでもさまざまな表現方法があって驚きました。





          銀塩写真探偵とは


          タイトルにもある「銀塩写真探偵」とはどんなものなのか。
          写真の中で再会した弘一によると「モノクロフィルム、特定の引き伸ばし機、一枚の写真でその中に入れるのは一度きり、写真の中に干渉はできない」など、さまざまな制約があるものの、撮影された日時のフィルムに映っていない場所にも行くことができるのだそう。

          弘一もこの秘密を受け継いだため、「使い方」は知っていても「どうして」そうなったかは謎のまま。でも、その日、その時にもどって確かめたいと願う人は少なからずいて、そうした人々のために写真の中に入る「探偵」をしていました。

          写真というのはある意味、タイムマシンなのかもしれない。写真を見ればその時の風景や一緒に写った人たち、さまざまな思い出が蘇りますから。シャッターを押した時は気がつかないのだけれど。

          もし、私が写真の中に入れたら、学生時代のゼミ旅行に行きたいな。写真に凝っていた友人たちが撮ったモノクロの写真もあるので。

          ほしおさなえ作品感想


          『活版印刷三日月堂 星たちの栞』
          『活版印刷三日月堂 庭のアルバム』
          『活版印刷三日月堂 海からの手紙』
          『活版印刷三日月堂 雲の日記帳』
          『菓子屋横丁月光荘 歌う家』

          JUGEMテーマ:最近読んだ本

          『菓子屋横丁月光荘 歌う家』ほしおさなえ

          2018.12.08 Saturday

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            愛読していた『活版印刷三日月堂』が終了して寂しくおもっていたら、ほしおさなえ先生の川越シリーズ新刊『菓子屋横丁月光荘』が刊行されました。

            タイトルにある「菓子屋横丁」とは、埼玉県川越市で駄菓子や土産物を売る店が軒を連ねている、人気観光スポットです。




            『菓子屋横丁月光荘』あらすじ


            大学院生の遠野守人は幼い頃から古い家の『声』を聞いたことができた。あるとき、担当の木谷教授から「川越の古い家の管理人をやらないか」と声をかけられる。

            通学時間や、今の家の立ち退き問題から守人は管理人を引き受け、川越の家に住むことになったが、その家からはかすかに誰かが歌うような声が聞こえた。

            しばらくして守人は近所の人たちから、かつて月光荘と呼ばれたその家に住んでいた人たちの話を聞いた。そこにはいくつかの家族が住んでいて、さまざまな思い出が家に染み込んでいた。

            そんな思い出に呼応するように家はまた歌い出し、守人もまたその声に呼応するように今まで抑えていた感情を吐きだすのだった…。

            家の声、家の記憶


            守人が聞く家「声」は、家自身の声もあるのですが、月光荘はそこに住んでいた人々の「思い」を記憶していて、どうやらそれを伝えたたがっているようなんです。

            なぜ、守人には家の声が聞こえるのか。

            今の守人は両親を亡くし、住んでいた家からも離され、厳格で傲慢な祖父に育てられました。そんな祖父も亡くなり、よるべのない身の上です。

            そんな彼だから、家の「声」を聞き、寄り添うことができたのかもしれません。

            特に最初の「歌う家」のお話は物語の最後に歌の謎が明かされるのですが、その描写が詩のようで美しいです。読んでいてぽおっと心が暖かくなる文章です。

            月光荘の謎がとけた後も、守人は管理人として川越の古い家にまつわる出来事に関わるようになり、別の家にはまた違った形の家の思いが残っていて、それを聞くことになります。

            これから守人はどんな家の声を聴くことになるのか、そこにはどんな物語があるのか…




            菓子屋横丁月光荘シリーズ


            『菓子屋横丁月光荘 浮草の灯』
            『菓子屋横丁月光荘 文鳥の宿』

            活版印刷三日月堂シリーズ


            『活版印刷三日月堂 星たちの栞』
            『活版印刷三日月堂 庭のアルバム』
            『活版印刷三日月堂 海からの手紙』
            『活版印刷三日月堂 雲の日記帳』
            『活版印刷三日月堂』の舞台を訪ねて

            レビューポータル「MONO-PORTAL」

            八咫烏シリーズ外伝『あきのあやぎぬ』阿部 智里

            2018.06.24 Sunday

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              八咫烏シリーズ外伝シリーズ『烏百花 蛍の章 八咫烏外伝』刊行から時を待たずにまた新しい物語が発表されました。

              『あきのあやぎぬ』あらすじ


              西家の官僚の妻・環は夫の死後、多額の借金があることを知らされ、子供とともに食うや食わずの生活に落とされる。だがあるとき、夫と面識があったという西家の次期当主・顕彦から側室にと望まれる。

              御曹司らしい、ひょろりとした顕彦の姿に不信感を覚えたものの、生活のために西本家の「紅葉の御殿」へあがった環だったが、そこには正妻の楓のほか、18人もの側室がいた…。



              源氏物語かと思いきや


              18人もの側室、それも老女から幼女まで数多くの側室をもつ顕彦は、さながら光源氏か好色一代男のような女好きかと思いきや、物語は意外な展開に。

              てっきり、若宮のお后候補として女性たちが火花をちらした『烏に単は似合わない』のように女のバトルが繰り広げられると思っていたのですが。それにしても山内の中小貴族・官僚の妻たちは家が没落すると、自活することもできず誰かにすがるしかないというのは悲しいですね。

              八咫烏シリーズ外伝、前回「蛍の章」で書き下ろした話は、内容が正直いまひとつ深みがなかったなあと思ったので、今回の短編もどうなることか…と思っていたら、『あきのあやぎぬ』は、側室たちの衣装の美しさや、山内世界の行事や風俗、人物の描写も詳細に描かれていて、もう少し読みたいと思わせてくれる内容でした。



              本編では語られることのない、こうした市井の八咫烏たちの姿をみられるのも外伝のいいところですね。しかし、若宮たちはこれから彼らの生活をどう守っていくのでしょうか。

              困難が待ち受けていそうな本編に思いを馳せつつ、外伝の八咫烏の物語も楽しんでいこうと思います。

              八咫烏シリーズ


              『烏に単衣は似合わない』
              『烏は主を選ばない』
              『黄金の烏』
              『空棺の烏』
              『玉依姫』
              『弥栄の烏』
              外伝『すみのさくら』
              外伝『しのぶひと』
              外伝『ふゆきにおもう』
              外伝『まつばちりて』
              外伝『あきのあやぎぬ』
              外伝『ふゆのことら』

              JUGEMテーマ:電子書籍

              JUGEMテーマ:最近読んだ本

              『烏百花 蛍の章 八咫烏外伝』阿部 智里

              2018.05.12 Saturday

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                八咫烏シリーズの短編集『烏百花 蛍の章 八咫烏外伝』これまで電子書籍のみの発売であった短編が、新たに書下ろし2話を含む外伝集として発表されました。



                電子書籍で発売された4話は以下の通り。

                『すみのさくら』


                浜木綿の小さい頃のお話。南家の姫として両親の愛情を一心に受け、何不自由なく育った浜木綿。ある日両親の失脚から宮烏の身分を剥奪され、寺に預けられることに。最初は境遇を受け入れられず脱走したり復讐を考える浜木綿だったが、失意の中すごすうち、ある日上皇につれられ若君が寺にやってくる。

                若宮との出会いで浜木綿のかたくなな心も次第にほどけていき…

                外伝『すみのさくら』


                『しのぶひと』


                若宮の正室・浜木綿の侍女となった真赭の薄。あるとき真赭の薄と雪哉の間に縁談がもちあがる。突然の話に驚き憤る真赭の薄だったが、その縁談を若宮夫婦に勧めたのが澄尾だと知り憤る。しかし、その縁談の裏には澄尾のある思惑があって…

                外伝『しのぶひと』

                『ふゆきにおもう』


                北領・垂氷郷の郷長の下の息子2人が行方知れずになった。母親の梓は必死で探すものの見つからない。そんな時・息子雪哉とその生母・冬木の噂を耳にした梓は、北本家の姫・冬木のことを思い出す。

                梓は昔、北家の姫・冬木の侍女だった。冬木は病弱ゆえ、意地のわるいところがあったが、梓のように気に入ったものや、小さく無垢なものにはやさしかった。そして、俯瞰的に物事を見る目と、明晰な頭脳を持っていた。

                外伝『ふゆきにおもう』

                『まつばちりて』


                八咫烏の世界「山内」でも下層の「谷合」、そこの娼家で生まれた「まつ」は女郎になる運命の少女だったが、金烏の正妃・大紫の御前に見出され「落女」となるよう教育を受ける。「落女」とは女の戸籍を捨て、男の名で務める官吏のことだった。

                やがてまつは松韻と名を変え落女として出仕する。しかし、朝廷には彼女に対抗する蔵人・忍熊がいた。対立しつつも、お互いの才覚を認め合うふたりだったが、忍熊からの驚くべき申し入れにより、松韻の運命は大きく変わっていくことに…。
                外伝『まつばちりて』

                『わらうひと』あらすじ


                「弥栄の烏」直後のお話。猿との決戦後、真赭の薄(ますほのすすき)のもとに澄尾が訪ねてくる。澄尾から正式に愛の告白を受けた真穂の薄はそれを断るものの、澄尾から返ってきたのは意外な答えで…。

                ありゃ?真赭の薄は澄尾のこと好きじゃなかったのか。正直なところ、私はこの二人の話は「しのぶひと」まででよかったと思う。二人の関係性を匂わせる程度にしておいた方が今後の展開に期待がもてたし、すべてを語ってしまっては興ざめという気も。(「まつばちりて」ではあれほど描写を削ったのに)

                ただ、言いたいことを言い合える澄尾と真赭の薄は、色恋は抜きにしてもいいコンビになってきていて読んでいて楽しい。

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                その他、『空棺の烏』に登場した雪哉の仲間・千早と結の兄妹喧嘩についても。こちらも女子が強いです。また、山内には外界から伝わった『外唄』という文化が存在することがわかります。百年前の曲ということは、もしかしたらこれなんじゃないかと。

                『ゴンドラの唄』は『命短し恋せよ乙女』と歌われる大正時代の流行歌。今でも時々引用されています。

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                『ゆきやのせみ』あらすじ


                『黄金の烏』直後のお話。忠誠を誓いはしたものの、相変わらず若宮に振り回されている雪哉。雪哉は地方への視察の際、またフラフラとお忍びで出かけ、戻らない若宮を探しにいくと、ようやくみつけた若宮(と澄尾)は何故か牢の中だった…。

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                書き下ろし2編は精彩を欠くが、ほかの4編は上質


                う〜ん、正直書下ろしの2話は、他の4話に比べてクオリティが低い気がします。特に「ゆきやのせみ」は内容が薄いんですよね。


                短編は短い文字数の中で「新しい設定」「登場人物の紹介」「物語の起承転結」を入れ込まなければならないから長編より技量が求められるとおもうのだけど、これまで本編の八咫烏シリーズの冴えが、書き下ろしではみられない。

                『わらうひと』は真赭の薄と澄尾のキャラクターに助けられた部分が大きいし『ゆきやのせみ』なんてタイトルそのまんま、とくにおもしろいことが起こるわけでもない、新しい世界観が描かれるわけでもない。

                『ゆきやのせみ』は、ほかの話とは違ってユーモラスな軽い内容。正直、話に深みが無いなあ…と思ったら、コミカライズの「烏に単は似合わない」を読んで気づいたんですが、この話って筋には関係ない「おまけまんが」的な役割なんですよね。

                おまけ漫画だったら楽しい内容だけれど、シリアスな内容の多い他の短編に混ぜるのはどうかと…。

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                八咫烏シリーズ


                『烏に単衣は似合わない』
                『烏は主を選ばない』
                『黄金の烏』
                『空棺の烏』
                『玉依姫』
                『弥栄の烏』
                外伝『あきのあやぎぬ』

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                しゃばけシリーズ『とるとだす』畠中 恵

                2018.04.30 Monday

                0
                  しゃばけシリーズ『とるとだす』読了。最近のしゃばけシリーズは、それぞれが独立したお話であると同時に、各話が呼応し合った一連の流れとなっています。

                  最初のお話で問題が発生→若だんなと妖たちが試行錯誤(その間に他の事件を解決)→最終話で解決…?

                  『とるとだす』あらすじ


                  さて、今回の話の核となるのは長崎屋の主である藤兵衛の病。若だんなたちが藤兵衛病状を回復させるため、妖怪の世界や神々の世界を訪れ奮闘します。しかし、藤兵衛の倒れた原因は病ではなく「薬」だったため、通常の方法ではなかなか回復せず…

                  とるとだす
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                  とるとだす


                  顔見知りの僧、寛朝に呼び出された若だんなと父親の藤兵衛。ほかにも薬種問屋が集められており、その渦中、突然藤兵衛が倒れてしまう。どうやら数種類の薬をすすめられて同時に飲んだらしい。息子と違って健康体の藤兵衛がなぜ薬を飲んだかというと…


                  しんのいみ


                  藤兵衛の病状は危機は脱したもののまだ難しい状態。若だんなは父親の病を好転させることのできる妖怪「枕返し」を探して江戸に出現した蜃気楼のなかへ。ところがその蜃気楼は、入ったものの記憶をうばっていくところだった。

                  若だんなは蜃気楼の中で知り合った坂左(さかざ)とともに蜃気楼の主である喜見を探しに行くのだが…

                  古来、蜃気楼は大きな貝がつくる幻だと信じられてきました。幻の土地だからこそ、人は何かを忘れたくてひきつけられるのかもしれません。


                  ばけねこつき


                  藤兵衛の容態はまだ安定せず、若だんなは兄やたちの静止も振り切り薬種問屋の店先にでて商売に励んでいた。あるときそんな若だんなに押しかけ結婚話が。神田の裕福な小東屋では娘が「ばけねこつき」と噂され縁談が流れたため、遠くの通町の長崎屋へ縁を求めに来た。小東屋は娘と結婚すれば万病に効く薬の作り方を持参金としてもたせるという。

                  実はそこには、ある陰謀があり…

                  ここで一番怖いのは妖怪よりも人。善意にせよ悪意にせよ、人の強い気持ちにはさすがの妖怪も神々ですら圧倒されます。なかでもすごかったのが長屋のおかみさんたち。なんと貧乏神の金次にまでお嫁さんを世話する始末。

                  当時仲人をすると謝礼がもらえるし、付き合いもふえる、井戸端会議のネタにもなるので、おかみさんたちはこぞって独身者に結婚を世話していたそうで…。現代も少しはそうしたおせっかいがあったほうがいいのかな、と思いますが、あまり強引なのも現代では通用しないでしょうね。


                  長崎屋の主が死んだ


                  このタイトルには驚きました。本当に藤兵衛は死んでしまうのか。あるとき長崎屋に狂骨と呼ばれる死神が長崎屋を呪うとやってきた。まだ本調子でない藤兵衛を心配し、若だんなは狂骨の正体を探っていくと、ある僧が井戸に身を投げて死んだのが原因とつきとめる。

                  自分だけがなぜこんな不幸な目に。という思いが強すぎて、狂骨は不幸の原因に少しでも関わった者たちをたたっていたのです。狂骨も以前は人間。やはり恐ろしいのは人間ですね…。

                  ふろうふし


                  藤兵衛の様子は芳しく無く、若だんなの母親のおたえは心配で数々のお供えをした。それが神々の噂となり大黒様が長崎屋にやってきて、常世の国の少名彦ならば妙薬を知っている、ついでに言伝を頼みたいと、若だんなを常世の国国へ送ってしまう。しかし、ついた先はなぜか神田。小さな一寸法師が侍たちと争っていた。

                  若だんなは「島子」という神が不老不死の薬を持ち逃げした騒動にまきこまれてしまう。

                  相変わらず日本の神仏は畏れ敬い、決して近づいてはならぬものですね。こちらの理は通用しませんから。

                  JUGEMテーマ:ファンタジー



                  『パーマネント神喜劇』万城目 学

                  2018.01.01 Monday

                  0
                    おそらくこの話、クリスチャンやムスリムなど『絶対唯一の神』をもつ人々には理解されないでしょうね。なんといってもこの神様、神なのにものすごく人間くさい。失敗だってする。でも、そんな神様が大好きなんですよね、私たち日本人は。

                    とある小さな神社におわす縁結びの神と、そこの神社に願う人間たち、そして様々なタイプの神が集まる『パーマネント神喜劇』。『鴨川ホルモー』『鹿男あをによし』など、人間と神様の不思議なかかわりを描いてきた万城目さんの神さま小説『パーマネント神喜劇』、今回も面白いです。

                    パーマネント神喜劇
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                    人間くさい神さまたち


                    まずこの表紙のインパクトたるや…。この大阪の街で飲んだくれていそうな太ったおっちゃんが実は縁結びの神。そして裏表紙の七三スーツのサラリーマン風の男性も神さまです。確かに日本には八百万(やおよろず)も神さまいるのだから、中にはこんな神さまもいるかもしれません。

                    神さまたちも、現代人のニーズに合わせるため、いつまでも弥生時代衣装に「みずら髪」ではいられないのでしょう。

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                    おっちゃん神は縁結びの神さまなんだけど、神さまヒエラルキーでいえば下っぱ。そのため、上位神からのノルマ(縁結びの成功率とか)に苦しんだり、別の神社(芸能)でパートタイムをしたり、神様仲間に仕事の愚痴をこぼしたり。神さまなのに人間臭い。

                    けれどそんな人間臭い神さまが、私は大好きです。遠くの大きな存在よりも、近くのおっちゃんの方がお願いごともしやすいですし。


                    神と人の絆


                    最終章『パーマネント神喜劇』では、人と神さま同士との絆が描かれていて、読んでいてちょっと泣けました。おっちゃん…じゃなかった、神さま、かっこいいよ。

                    ある地方に大規模な地震がおきて、その土地の神社も壊滅状態に。小学生の美琴はぺしゃんこになった神社に「地震をなくしてください」とお願いすると、サラリーマン風の不思議な男の人を見かける。実はその神社の主神はあのおっちゃんの神さまで、地震で親睦の中に閉じ込められていた。

                    美琴とサラリーマン風神さまの協力で、なんとかおっちゃん神の救出に成功したものの、上位神からこの地にさらなる災厄がもたらされると聞かされて、ひとり(ひとはしら)、この地を守る決心をします。

                    それは土地の人々が神社と神さまを信じて、拠り所としていたから。自分たちの家よりも神社の復旧を優先させ、「地震をなくして」と願っても、地震をとめられなかった神さまを恨んでなどいない。
                    そこには、ずっと長い時をかけて培ってきた、人と神との絆がありました。

                    神は人間が祀ることで存在し、人間たちが神を忘れてしまうと、その存在が消えてしまう。つまり、神が神たるには、人間の思いが必要なんですね。

                    こんな神さまが近くにいてくれるなら、毎日ちょっとがんばれる気がします。

                    『パーマネント神喜劇』に登場した神さまたちも、ときにはホルモーを観戦したりするのかな。

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                    万城目さんの他の作品「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」の登場人物もでてきます。こういうちいさなコラボがうれしいんですよね。

                    かのこちゃんとマドレーヌ夫人 (角川文庫)
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                    「鴨川ホルモー」→
                    「鹿男あをによし」→
                    「プリンセス・トヨトミ」→
                    「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」→
                    「ザ・万歩計」→
                    「ザ・万遊記」→

                    JUGEMテーマ:最近読んだ本



                    しゃばけシリーズ『おおあたり』 畠中 恵

                    2017.05.12 Friday

                    0
                      しゃばけシリーズももう15作め『おおあたり』若だんなと妖たちが「大当たり」を巡って、物語が展開します。「おおあたり」って、幸運な場合だけじゃなくて、不運の場合もあるのですね。

                      さて、どんな「おおあたり」が若だんなたちに当たるのかといえば…

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                      畠中 恵 新潮社 売り上げランキング: 68,604



                      おおあたり


                      若だんなの幼なじみの栄吉は、餡づくりが苦手な菓子職人。そんな栄吉だか、餡以外の菓子はうまく、新作の辛あられがたいそう評判になるが、それが思わぬ災難を呼ぶことに。

                      辛あられの偽物がでまわり、おまけに栄吉さんの許嫁に横恋慕する人まで現れ…

                      なんだって栄吉さんは、餡づくりが上達しないんでしょうねえ…?一人前になるまで結婚しない、というのは男のけじめであり、プライドですが、待たされる身になると、たまったものではありませんよ(^^;)。


                      長崎屋の怪談


                      悪夢を食べてそのネタを高座にかける貘の場久が、誰かに追われていると告げる。同じく、若だんなの顔見知りの日限の親分が、仲間殺しの嫌疑をかけられてしまう。

                      場久の語った怪談噺さながらに、皆が追われるはめになり、若だんなが推理を働かせて犯人を探します。
                      しかし、妖より幽霊より、本当に怖いのは人間かもしれません。

                      はてはて


                      若だんなと親しい貧乏神の金次は、宴会のお菓子を買いに行った先で男とぶつかり、お菓子を弁償する代わりに富くじを渡される。その富くじはなんと大当たりだったものの、同じ番号の富くじをもつ人間が他にも現れて…。

                      ある意味、お金をコントロールすることのできる貧乏神が、お金のトラブルに巻き込まれるって面白いですね。ちなみに貧乏神はきちんと祀ればたまに福をさずけてくれることもあるのだとか。


                      あいしょう


                      佐助と仁吉が、はじめて若だんなと会ったお話。齢千年にもなる2人ですが、若だんなに使え始めた時は、小さな子供の姿をしています。
                      あるとき、5歳の若だんなが離れから姿を消してしまう。必死に探す仁吉と佐助ですが、やがて外の妖たちが犯罪に関わっていることを突き止めます。どうやら若だんなは他の子の誘拐事件にまきこまれてしまったらしい。

                      何を置いてもぼっちゃん大事の仁吉と佐助はこのころから始まったんですね。

                      しゃばけ漫画 仁吉の巻 (新潮文庫 は 37-48)
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                      暁を覚えず


                      そろそろ、跡取りとしての仕事をしたいと考えていた若だんなだったが、接待のたびに寝込んでしまっていた。こんどこそ、と、意気込む若だんなに、猫又が「1日眠れば翌日元気で過ごせる」という妙薬をもってきて…。
                      翌朝まで眠っているはずが、途中で目覚めてしまった若だんな。

                      その間、父親の藤兵衛は母(妖の血をひいてか、浮世離れ)のおたえが接待先の大親分に気があるのではとやきもきするし、おまけに腹違いの兄、松之介が妻の様子がおかしいと相談に来て…

                      おたえさま、藤兵衛旦那の嫉妬心にまったく気づかず、のんきに「夫婦げんかができる」と喜んだり、妖の血なのか、浮世ばなれしていますね。

                      しゃばけシリーズ感想


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