2019.05.25 Saturday

忘れられた作家の、忘れられない随筆『小さな町にて』野呂邦暢

野呂邦暢という小説家をご存知でしょうか。野呂邦暢は昭和49年に「草のつるぎ」で芥川賞を受賞。「諫早菖蒲日記」など名作を残すも、40代の若さで急逝。今では古本マニアや関係者以外からは忘れられている作家です。

『小さな町にて』は、野呂邦暢の故郷・諫早で過ごした少年時代、浪人と称して読書と映画三昧の京都時代、仕事を転々としていた東京時代を、作家になった現在から振り返るかたちで書かれています。

私は古本屋を舞台にした映画『森崎書店の日々』でその名前を知り、随筆『小さな町にて』を読んでみたのですが、これが本当に素晴らしくて、なんど読み返しても飽きないのです。



知識を貪った時代


『小さな町にて』の文章からは、戦争からの開放感とそれまで抑圧された知識を求める熱量、それがビシビシと伝わってきます。モノはなくとも精神が飛躍する、豊かな時代がそこにはありました。

この本の中で私が1番、感銘をうけたのが野呂邦暢の叔父のエピソードです。電電公社(現在のNTT)に勤めていた叔父は戦争と家庭の事情で進学をあきらめたものの、本とクラッシック音楽を愛したインテリでした。

「ミネルバのフクロウは夕暮れに飛び立つ」という言葉の出展を調べるために事典を読み漁り、図書館に何度も通います。筆者が「なぜそんな(役に立たない)ことをするのか」と問うと叔父は「ただ知りたいからだ」と答えます。

今だったら「OK Google」か「Hey Siri」で1秒もかからないのに、昭和20年代では大変な苦労をしないと答えにたどり着けない。

まるで飢えを満たすように、知識を貪り、自分の物にしたいと切望する熱量が、デジタルに慣れてしまった現代の私からすると、とても衝撃的で感動さえ覚えました。

「ミネルバのフクロウは夕暮れに飛び立つ」をGoogleで検索してみた結果


一瞬でわかってしまうのは、便利だけれど、どこか寂しい。
「ミネルバのフクロウは夕暮れに飛び立つ」をGoogleで検索してみた結果


本と珈琲と、音楽の青春


野呂邦暢の青春時代は、本と珈琲と音楽で占められていました。貧乏で思うように本が買えなくても、古本屋で手頃な本を探しては喫茶店で一日中本を読み、名曲喫茶でクラシック音楽を聞きまくる。ときには友人たちの下宿で文学や芸術について夜通し話し込む。

社会生活にかかわらず、好きなものをひたすらインプットするだけの時間は、なんて贅沢なんだろう。おとなになってからはしみじみと思います。それは、作者も同じだったんじゃないかな。


山王書房店主・関口良雄


『小さな町にて』の中には、作者が出会った個性豊かな人々が描写されています。(名曲喫茶の常連紳士が路上生活者だったり)中でも印象深いのが、東京・大森の古書店・山王書房の店主とのエピソードです。

山王書房の店主関口良雄氏は俳人でもあり、当時の作家たちとも親交が熱く、文章にも秀でた方で、若き日の野呂さんはよく本をまけてもらっていたのだそう。

実は、山王書房店主・関口さんの随筆『昔日の客』にも野呂さんが登場します。作家になり、ふたたび山王書房を訪れた野呂さんでしたが、関口さんは当時のことをあまり覚えていなかったらしい…。

それでも「昔日の客」として再会を喜んだ文章が綴られています。

わたしはこういう、本が「つながる」エピソードが大好きなんです。ひとつの本から別の本へ、読書の世界が広がっていきますから。



JUGEMテーマ:最近読んだ本



JUGEMテーマ:オススメの本



2019.05.06 Monday

『鹿の王』続編『水底の橋』上橋菜穂子

鹿の王』の続編、『水底の橋』を読了。今回の『水底の橋』は、前作『鹿の王』以上に医療と人の命のありかたについて掘り下げられています。

『鹿の王』では、オタワル医術と清心教医術、次期皇帝選びなど、政権争い部分が未解決のままでしたので、続編で読めるのを楽しみにしていました。
『鹿の王』感想→



『水底の橋』あらすじ


帝国・東呼留の領土となった元アカファ王国。古き王国オタワル貴族の血をひく医術師のホッサルと恋人兼助手のミラルは、交流のある清心教医術師・真那から、故郷の安房那領に誘われる。

真那の姪は難しい病を抱えており、清心教医術よりも技術的に優れたオタワル医術で診察を受け、ホッサルとミラル、従者のマコウカンは安房那へと旅立つ。

一方、オタワルの情報機関「奥仕え」たちは、東呼留帝国の次期皇帝選びがオタワル医術の進退を左右するため、安房那へも探査の糸を巡らせてゆく。

安房那への旅でホッサルは、オタワル医術のライバルともいうべき清心教医術の源流を探ることになり、そのため次期東呼留皇帝選出にともなう政権争いに巻き込まれていく。



体を救う医術、心を救う宗教


清心教医術というのはチベット仏教の医術に似ているなあと思いました。チベットの医術も症状によって治療と薬が決まっていて、もう助からないという人には正直に死期を告げて、生きている間に功徳を積むよう諭します。

テンジュの国(2) (KCデラックス 週刊少年マガジン)

中古価格
¥343から
(2018/8/26 23:26時点)




助かる方法があるのなら、最後まであきらめないのがホッサルのオタワル医術で、緩和ケア的な治療と看護で安らかに逝かせるのが清心教医術なんですね。

ホッサルはこれまで技術の向上だけに力を注いで来ましたが、清心教の心を救おうとする治療について一目置くようになったのではないかな。

つらい治療を続けて少しの寿命を得るよりは、安らかに痛みのない余命を生きたいという人もいるはずですから。

医術と宗教というのは、どちらか一方でもだめで、両方がバランスよく並び立てればいいのですが、現実世界でも、この世界でも権力や政治がからむため、なかなかうまくいきませんね。

テンジュの国(1) (KCデラックス 週刊少年マガジン)

中古価格
¥398から
(2018/8/26 23:26時点)




『水底の橋』とは


このタイトル『水底の橋』とは、果たしてどんな意味がこめられているのでしょう。文中、ミラルの父で橋梁工事の職人・ラハルが「水底に沈んでも形を変えず、連綿とつながっている橋」として紹介しています。

それは、宗教と合体し、時代とともに変化するも、その魂は始祖から受け継がれている清心教医術を指しているようですが、私はホッサルとミラルの関係にも当てはまるのではないかな、と思うのです。

身分も立場も違う(おまけに初恋を引きずっている)ホッサルとミラルの不安定な関係、ですが、心の奥底でぎっちりとつながり離れることはないのだと。

まあ、今回思い切りがよかったのはミラルですね。彼女の行動が突破口を開いてくれます。男はいつも、一歩遅れるなあ、どの世界でも。

2019.04.29 Monday

『鹿の王』を再読してわかったこと

上橋菜穂子さんのファンタジー小説『鹿の王』の続編『水底の橋』が出ると聞き、あらためて『鹿の王』を再読してみました。

『鹿の王』のあらすじをざっくり説明すると、大国・東乎瑠との戦に破れ、奴隷に落とされた戦士ヴァンと、古い王国の貴族の血をひく医術師ホッサルが、突然発生した感染症「黒狼病」と、病にまつわる国や部族の陰謀に巻き込まれて、その中で真相を探っていくお話です。

ファンタジーに「医療」という新ジャンルを築き上げた、革新的な物語でもあります。



「鹿の王 生き残った者」
「鹿の王 還って行く者」

医療を描くということ


前にも書きましたが、最近のファンタジーは転生すればなんとかなるし、ゲームのように死んでもリセットできる設定が多いような気がします。でも上橋作品は違います。ポーションなんてないし、人は死んだらそれまでなんです

だからこそ、『鹿の王』のもうひとりの主人公・医術師のホッサルは自らの技術を駆使して人を救おうと奔走しています。たとえ病の原因をつきとめ、特攻薬ができても、人の体の中で何が起こるかは予測がつかないと語っています。

上橋先生はファンタジーで医療を描くに当たり、きちんと医療の監修を行っているので、その言葉はとても深く重く、心に響きます。

『鹿の王』と対照的だなと思ったのが『がん消滅の罠 完全寛解の謎』です。
がんが突然治る(寛解)の謎を追うミステリですが、この寛解トリックはどこか人の体を均一なものとして捉えているような気がしたんです。

理論的には可能でしょうが、果たしてこんなにうまくいくのかな…?と思ったんですよね。物語の中、ホッサルは人「病を支配できる者などいない」と、医療の難しさを語っています。

物語中の病でも、薬が効く人と効かない人がでてくるし、人の体には親から受け継いだものの他にさまざまな要因があるわけだから、そうやすやすと万能薬なんてできるはずがないのです。だからみんなあがいているのでしょう。

がん消滅の罠 完全寛解の謎 (宝島社文庫 「このミス」大賞シリーズ)

中古価格
¥1から
(2019/4/29 23:10時点)





人間に都合のいい神


私達の住む世界でも、テロや暴力の言い訳に宗教をつかう輩がいますが、『鹿の王』でも神の呪いを利用して、敵を襲う者が現れます。

怒りに周りが見えず、目的が達成できれば、ほかの人間を傷つけても構わない。そんな理論を正当化し、自分たちだけが「正義」だと思いこむ集団の行動は、読んでいてゾッとしました。

私が一番モヤモヤしたのところは、ある部族が自分たちより階級が下の人々に対し、蔑みながらも自分たちの「正義(テロ)」を手伝うのが当然だ、と思っているところです。

読んでいる時、私は思わず本を閉じて周りを見回しました。これは、私達の世界でも同じことが起きてるな、と。

自分だけの正義を他人になすりつけて攻撃する。紛争でもネット上でも、人は、自分に都合のいい理屈をみつけるのがうまいですよね。

そんな「正義」に対して、上橋先生はこう書いています。

呪いを受けるべきものがこの世にいるとするなら、神々のご意思を、自分の思いたいように語る輩の方だろう。

架空の話としてではなく、実際に私達の世界でも起きていることとして認識しないといけない。そう思いました。

鹿の王 水底の橋

中古価格
¥1,250から
(2019/4/13 19:55時点)




2019.03.30 Saturday

カフェで、旅の気分を。『ときどき旅に出るカフェ』

近藤史恵さんの旅をテーマにした小説『スーツケースの半分は』を読んでから、ああ旅に出たいなあ、でもそう簡単に海外には行けないなあ…。と思っていたら、この小説に出会いました。

『ときどき旅に出るカフェ』こと、カフェ・ルーズは、店主の円が旅で出会った美味しいものを提供しているカフェ。アラフォー独身の瑛子はある日カフェ・ルーズで円と再会する。

ときどき旅に出るカフェ

中古価格
¥383から
(2019/3/26 22:14時点)




彼女の作る異国の料理とお店の雰囲気に魅せられた瑛子は、足繁く店に通うようになるが、カフェ・ルーズは月の初めに長く店を閉めていて、その間に円は旅にでているという。

苺のスープ、ロシア風チーズケーキ・ツップフクーヘン、セラドゥーラ…耳馴染みのないスイーツや料理。カフェ・ルーズのメニューは、食べると異国を旅する気分が味わえます。それと同時に、カフェに集まる人々の、ちょっとした日常の謎解きがスパイスのように加えられています。

同僚の彼氏の不可解な行動、消えてしまったお土産の月餅、夜中にカフェに来る女の子…、カフェ・ルーズに関わる人々のちょっとした謎を、円は料理の知識旅と経験から解きほぐしてくれるのだけど、実は彼女にもちょっとした秘密があり…

旅に出ると自分たちの常識がまったく通用しないし、料理の味も、環境も違う。円も瑛子も周囲から押し付けられる「常識」と違った道を選ぶことでつらい思いをすることもある。

瑛子さんが「勉強していい成績をとれ(いいところに就職しろ)と言ったその口で、今度は早く結婚をして子供を産め」と言われたの、私も経験があります。親の期待や希望は、時に無理ゲーレベルの無茶ブリをすることがありますから…。

けれど瑛子さんも円さんも、自分で考えて選んだ道なのだから、きっと納得の行く場所にたどり着くのではないでしょうか。


こちらもおすすめ。さまざまな航空会社の機内食をあつめた「みんなの機内食」はエコノミーからファーストクラスまでの機内食がたくさん。やっぱり、インド系の航空会社はやはりカレーが多い…。

みんなの機内食

中古価格
¥150から
(2019/4/2 21:59時点)


2019.03.17 Sunday

旅に出たくなる物語『スーツケースの半分は』近藤 史恵

青いスーツケースを巡る、旅のオムニバス短編集。ぐうぜん手に入れたスーツケースが女性たちの旅に幸運をもたらしていきます。読むと、旅に出たくなる物語です。

物語は一話完結だけれど、バトンを渡すように青いスーツケースが人をつなげていきます。

『スーツケースの半分は』あらすじ


真美は大学時代の友人たちと参加したフリーマーケットで鮮やかなブルーのスーツケースをみつけ、惹かれるように購入するが、旅行を提案しても夫に反対されてしまう。その時、真美に勇気をくれたものはスーツケースの中にあった「あなたの旅に、幸多かれ」という言葉だった。

青いスーツケースに導かれるように、真美、花恵、ゆり香、悠子がそれぞれの旅に出て人生の指針、宝物をみつけることができた。やがてスーツケースは縁のある人達へもどり、最後はスーツケースの持ち主に返って、また旅に出ていき…。



ちょっぴりの虚栄と不安


前半4つは大学時代の友人4人、それぞれの旅が描かれます。4人共仲がいいけれど、お互い少しだけ見栄を張ってしまったり、羨ましがったりしています。

ライターの仕事をしている悠子はパリに取材旅行を羨ましがられるけれど、出版社との縁を保つために本当は採算がとれないのを無理をしているし、パリ在住の栞も、パリに住んでいるとはいえ、恋人の家に転がり込んで、フリーター状態。

うらやましいと思う人が、不安がないわけじゃない。そんなところをよく突いて書かれているのを、うんうんとうなずきながら読みました。

この言葉が、彼女たちの不安をよく表しています。結婚や出産、仕事、そして旅…。人生でつかめるものは限られているから、何を捨てて残すかはとても大変な作業なんです。
「まるで人生は掌(てのひら)みたいだ。なにかをつかみ取るためには手の中のものを捨てなければならない。」


第二話「三泊四日のシンデレラ」では、花恵が香港の高級ホテルに無理をしてでも泊まるのは、O・ヘンリーの「桃源郷の短期滞在客」を思い起こさせます。
女性には、きっと、こうしたナイショの贅沢が大事なんです。今も昔も。

O・ヘンリ短編集 (1) (新潮文庫)

中古価格
¥1から
(2019/3/17 19:37時点)




女の行く旅に、男はいらない


「男の行く極楽に、女はいらない」と言ったのは泉鏡花ですが、現代では「女の行く旅に、男はいらない」のです。

この物語の女性たちは「休暇がとれないから旅行に行けないよ」とか、「旅は自分の言うとおりにすればいい」など、言い訳やマウンティングを取ろうとする男性たちを尻目に、スーツケースを一つ持って軽やかに世界に旅立っていきます。

彼女たちも旅に出るまではいろいろと迷ったり、悩んだり、時に他人を羨んだりする彼女たちですが、いちど決めてしまえば、もう前を向いて進んでいくんですね。旅も、人生も同じこと。彼女たちのこれからの旅に、喜びが溢れていますように。

こんな青いスーツケースで旅ができたらすてきだろうな…

JUGEMテーマ:オススメの本



2019.03.07 Thursday

俺の先生がかわいすぎる件について『泉鏡花先生のこと』小村雪岱

ラノベかBLのようなタイトルをつけましたが、ほんとそれなんです。この文章。
『泉鏡花先生のこと』は、明治の文豪・泉鏡花の思い出を、彼の作品の挿し絵画家であった小村雪岱が書き残したもの。

泉鏡花といえば『夜叉ヶ池』『海神別荘』『天守物語』など、幻想的でロマンチックな作品・戯曲を数多く残した文豪ですが、文中ではそんな鏡花先生の「かわいすぎる」ところがいろいろ描写されています。

・色の白い美青年
・奥様も美人(元・売れっ子芸妓)
・潔癖症だけど信心深いので神社仏閣では伏礼
・生物は絶対食べない、なのに酔っ払ってむしゃむしゃ食べて、後日気持ち悪くなっちゃう
・香を焚き、筆に香を染み込ませて執筆
・うさぎグッズ大好き

泉鏡花先生のこと




文豪、おちゃめで可愛い…(*´ω`*) また、別の文章で読んだのですが、鏡花先生、芸妓であった奥様との結婚を師匠である尾崎紅葉に猛反対され、師匠のことも大好きだったので泣く泣く別れ、師匠の死後結婚したのだとか。(恋愛小説のよう…)

うさぎ大好きなのは、裏干支(自分の干支から6つ先の干支)の物を持つと開運になるという言い伝えからなのですが、そうしたおまじないを信じちゃう鏡花先生、やはり可愛らしい…。

小村雪岱の雅号は泉鏡花がつけたそうで、2人は鏡花が亡くなるまで小説家と挿絵画家として長年よきパートナーであったそうです。

小村雪岱の描く絵は線一本一本が凛としていて、シンプルで奥深く、大好きな画家です。

意匠の天才 小村雪岱 (とんぼの本)

新品価格
¥1,728から
(2019/3/7 20:08時点)




JUGEMテーマ:最近読んだ本

2019.02.03 Sunday

八咫烏シリーズ外伝『ふゆのことら』阿部 智里

八咫烏シリーズ外伝『ふゆのことら』読了。本編『烏は主を選ばない』『空棺の烏』の前日譚。シリーズの中心人物、雪哉と、同郷の先輩である市柳のお話です。

『空棺の烏』では武官の養成学校「勁草院」で雪哉と再会した市柳でしたが、どうやら昔、なにか因縁があったようで…今回、その「因縁」が明かされます。

市柳は雪哉と同じく北領の地方貴族・郷長の息子ですが、若い頃の彼はまさに「厨二病」で、自分で「風巻の虎」とか名乗って羽織に変な刺繍いれちゃうほどのヤンキーっぷりです。

そんな時、北領の武術大会で久しぶりに顔をあわせた雪哉に、「剣術の手ほどきをしてほしい」と言われ、得意気に手合わせをしたのですが…



今回は市柳の厨二っぷりと、雪哉の闇っぷりが発揮された話でした。作者の阿部智里先生が「雪哉だけは呼んでもそっぽを向く」と揶揄するくらいですから、彼はなかなかに難しいですね。


市柳と雪哉は立場こそ似ているけれど、厳しくも愛されて育った市柳と、複雑な家庭環境で常に周囲を気にしながら生きてきた雪哉とは、考え方も覚悟も全く違う。そんな2人の対比が面白かったです。

それにしても市柳ファミリーいいな。強面お父さんから「りゅうくん」とか呼ばれているし、お父さんとお母さんはラブラブだし微笑ましいなあ…。

空棺の烏 八咫烏シリーズ 4 (文春文庫)

中古価格
¥23から
(2019/2/3 02:10時点)




烏は主を選ばない 八咫烏シリーズ 2 (文春文庫)

中古価格
¥1から
(2019/2/3 22:21時点)




八咫烏シリーズ


『烏に単衣は似合わない』
『烏は主を選ばない』
『黄金の烏』
『空棺の烏』
『玉依姫』
『弥栄の烏』
外伝『すみのさくら』
外伝『しのぶひと』
外伝『ふゆきにおもう』
外伝『まつばちりて』
外伝『あきのあやぎぬ』

JUGEMテーマ:電子書籍

2019.01.19 Saturday

『サトコとナダ』から考えるイスラム入門 ムスリムの生活・文化・歴史

イスラム女子と日本女子の友情を描いた『サトコとナダ』が終わってしまい、寂しく思っていたところ、こんな本が出版されました。

『サトコとナダ』から考えるイスラム入門 ムスリムの生活・文化・歴史 (星海社新書)では、イスラム教の歴史、ムスリムとテロ、イスラム教徒とのつきあい方について、漫画「サトコとナダ」を例に解説しています。

『サトコとナダ』から考えるイスラム入門 ムスリムの生活・文化・歴史 (星海社新書)

新品価格
¥1,058から
(2019/1/14 23:46時点)




仏教の宗派と似てる、さまざまなイスラム教徒たち


『サトコとナダ』の作者ユペチカさんによる、国ごとのイスラム教徒の姿が描かれています。これによるとムスリム女性の体を覆うニカブやヒジャブをつけていない人、お祈りはできる範囲で、モスクには行ったことがないなど、イスラム教徒といっても実にさまざま。

同じ宗教なのにこの違い、なにかに似てる…と思ったら、日本の仏教に似てます。仏教も宗派によってお祈りも修行もちがうし、滝行や断食をやる宗派もあれば、そういうこといっさいやらない宗派もありますから。

日本の仏教について楽しく学べる「ぶっカフェ!」は、宗派の違う3人のお坊さん(イケメン)が運営するカフェのお話です。「サトコとナダ」と同じツイ4の連載中。

ぶっカフェ!(1) (星海社COMICS)

中古価格
¥141から
(2019/1/18 23:33時点)




男尊女卑ならぬ女尊男卑?


『サトコとナダ』で、サウジアラビア人のナダからの情報は、日本人のサトコには驚くことばかりでした。なかでも「モスクの礼拝は女性が後ろ」な決まりは男尊女卑なんじゃないのか、ニカブやヒジャブなどの衣装は抑圧の象徴ではないのか、と考えるのですが…?

実はそれ「男は女性が前にいるとそわそわちゃってお祈りに集中できないから」というちょっとほっこりする理由です。髪や体を隠す女性の衣装も灼熱の中東では、理にかなった服装なんだとか。

ムスリム社会では女性は庇護すべき大事な存在である、らしいのです。ただ、世の中、きちんと女性を大事にできる男性ばかりではないですからね…そうした家長制度の場合、女性が声をあげづらかったり、一人で働いて自立するのは(特に中東では)難しそうです。

ただ、地域によっては女性の社会進出も進んでいるらしいので一概に男尊女卑(あるいは女尊男卑)とは言えないらしいのです。

以前はそんなでもなかった…?イスラム教が注目された理由とは


今回驚いたのは、保守…というか厳格なイスラム教の教えに従うサウジアラビアも、50年くらい前までは黒いニカブを着てなかったらしいのです。あと話題のハラル食も以前はそんなに厳密じゃなかったらしい。

移民先での迫害や戦争など、さまざまな困難にあったムスリムたちは、もういちど自分たちの原点であるイスラム教に回帰していったのだとか。しかし行き過ぎた宗教観が、うっぷんを晴らすテロ行動に結びついてしまうこともあり…

『サトコとナダ』でもサウジアラビアのイスラム教徒の風習や習慣について語られます。ちなみにイスラム教徒のナダは「お母さんと同じ格好がしたい」からニカブをつけたかったのですって。

サトコとナダ 全4巻 新品セット (クーポン「BOOKSET」入力で 3%ポイント)

新品価格
¥2,764から
(2019/1/14 23:47時点)




イスラム教とテロ


世界で多発する無差別テロ、特にイスラム教徒によるテロの頻発は世界に「イスラム嫌い」を生んでいきました。しかし、テロの実行犯が必ずしも宗教に熱心だったわけではなく、作者はこう言っています。

テロ実行犯は(過激派など)暴力を正当化してくれる存在がなければ、単なる小悪党にすぎなかったでしょう

と。

よく聞かれる「ジハード」は「聖戦」ではなく、「神への努力」という意味なんですって。「努力」をどうとるか、解釈によってそれを暴力にするか、善行にするかは人それぞれの選択なんです。イスラム教ではなく。

私達は物事を単純化してしまいがちです。だってそのほうがラクだから。「〇〇の考えは間違ってる!」とネットで叩いたり、「テロを起こすからイスラムは危険」みたいな。

しかしどんな社会でも、過激な事件は起こっています。それを一概に宗教のせいにしてしまうのは危険な考えかもしれません。

結局は「人による。」だから聞くことが大事


育った場所や家庭環境によって考え方が違うように、イスラム教徒でもどこまでが禁忌かは、人によって判断がわかれるところです。(お酒を飲む人もいれば、ハラルを気にしない人もいる)

一見、日本と関わりが少ないと思われるムスリムですが、現在日本にもたくさんのイスラム教徒が暮らし、モスクも全国に100以上あるのだとか。そんな「となりのイスラム」たちとどうつきあっていけばいいのか。

そのヒントとして「イスラム」ではなく「個人としての隣人」として接するという風に書かれています。それは、自分と違う生活リズムの人として、できることできないことを確認し、コミュニケーションをとっていくことが大事だと。

「すべてを受け入れなくても、お付き合いはできる」のです。私達だって、友人や知人のすべてを受け入れて付き合っているわけではないのですから。


となりのイスラム 世界の3人に1人がイスラム教徒になる時代

中古価格
¥1から
(2019/1/19 17:22時点)




JUGEMテーマ:オススメの本



2019.01.09 Wednesday

音楽をことばで表す『羊と鋼の森』宮下 奈都

本屋大賞を受賞した『羊と鋼の森』。読んでみた感想はとにかく音の描写が新鮮で美しい。はっとするような、みたことのない世界に連れて行ってくれる、そんな印象の本でした。

音楽を表現する小説はこれまで『さよならドビュッシー』が音楽、メロディの描写が素晴らしいのに対し、『羊と鋼の森』は音そのもの描写が素晴らしい。

音という目に見えないもの、言葉で伝えるのがむずかしいものを、音を森にたとえて音を探す調律師を森の道を探す旅人に例えている。果てしない音の道を、遠くの道標をめざして、ときに迷い込みながらコツコツと、ほんとうにコツコツと進んでいく主人公・外村の成長と彼をとりまく人々の物語。

調律師というなじみのない職業、どちらかといえば地味な裏方と思われがちですが、宮下奈都さんの文章にかかると、彼らが音の探求者であることが伝わってきます。

求める「音」はピアノを弾く人のためか、あるいはピアノを聞く観客のためのものか、あらゆる状況下でベストの音をつくらなければならない。そんなつかみどころのない「音」を求めていく調律師の姿が浮かび上がってきます。

調律師の仕事は(中略)目指すところがあるとしたら、ひとつの場所ではなく、ひとつの状態なのではないか。

羊と鋼の森 (文春文庫)

中古価格
¥126から
(2018/12/29 23:33時点)




『羊と鋼の森』あらすじ


高校2年のとき、学校であったピアノの調律に魅了され、調律の世界に飛び込んだ外村。憧れていた調律師・板鳥さん、気さくな先輩・柳さんたちに教えられながら音を追い求める日々を送る。

そんな中、外村は調律先で出会った双子・和音のピアノに魅了される。明るい双子の妹・由仁の演奏よりも静かで目立たない演奏だったけれど、印象にのこったのは和音の方だった。

調律師として修行を続ける外村だったが、なかなか自分の望む音をつくることができずにいた。それでも悩み、あがきながら果てしない音の森を進んでゆく…。

映画版『羊と鋼の森』主人公外村を山賢人さんが演じています。(アマゾンプライムビデオ版)

羊と鋼の森

新品価格
¥400から
(2019/1/9 23:10時点)




クラシックをモチーフにした小説『さよならドビュッシー』。音楽の描写とミステリが融合した音楽ミステリ。

さよならドビュッシー (宝島社文庫)

中古価格
¥1から
(2019/1/1 21:50時点)




宮下奈都作品感想


「メロディ・フェア」→
「誰かが足りない」→
「太陽のパスタ、豆のスープ」→

2018.12.16 Sunday

イスラム女子と日本女子の友情、最終章『サトコとナダ4』

サウジアラビアのナダと日本のサトコ。アメリカで出会った女の子たちは、国も宗教も育った環境も違うけれどルームシェアを通じて親友になりました。けれどサトコの留学が終わり、2人は別々の道を進むことになり…。


『サトコとナダ』、最終巻です。これまで日本人サトコからみたイスラム教徒の世界は新鮮で驚きに満ちていました。この漫画に出会わなければきっと、今でもイスラム教徒に対して多くの偏見を持っていたでしょう。

相手の宗教や風習に納得できないことがあっても、友達になれる」と、サトコは言いました。世界がサトコとナダのように、理解し合えたらいいな、と感じます。

サトコとナダ 4 (星海社COMICS)

新品価格
¥691から
(2018/12/16 02:33時点)




ナダの婚約


3巻ですったもんだありましたが、ナダとアブダーラさんの婚約が成立。ここで正式に二人は顔を合わせることに。

サウジアラビアでは
1.親が相手を決める
2.婚約(この時点で会えない、写真はOK)
3.男兄弟を介して相手との連絡が可能に
4.シャウファを行う←イマココ!

シャウファ(見る)とは婚約が整った男女が初めて顔を合わせて話すこと。見合い→婚約→結婚ではなく、サウジでは婚約→見合い→結婚なんですね。

シャウファでは友人や家族立ち会いのもと、見合いのように「あとは若いお二人で…」と、ナダとアブダーラさんはここで初めて話をします。医者になる夢のため、アブダーラさんを待たせることになる(だから嫌なら断ってください)と思うナダに、アブダーラさんはそんなナダだから結婚したいと。

アブダーラさん、いい人や…(´;ω;`)。イスラム社会って男尊女卑の印象があったので、アブダーラさんみたいな男性もいるのだなと思うとなんか嬉しいですね。アブダーラさんは姉のアフレイマさんにも頭が上がらないようなので、イスラム社会、必ずしも男性上位というわけではないのかも。

サトコとナダ 3 (星海社COMICS)

新品価格
¥691から
(2018/12/16 18:48時点)




インシャーアッラー、遠く離れても


そしていよいよ、サトコの留学期間が終りを迎えます。グレイスピリオド(留学終わり後、アメリカに数週間滞在が認められる制度)を利用してサトコとナダはふたり旅に出ます。

ナイアガラの滝ではサトコは国境が歩いて渡れることに感動し、ナダは一生分くらいの水量に感動するなど、育った国によって感動ポイントが違うのも興味深いですね。

ナイアガラの滝では2人で国境越え!ナダは親兄弟が一緒でないとできない国境越えを経験!

そしていよいよお別れの時、ナダはサトコに「インシャーアッラー」という言葉を教えます。意味は「もしも神様が望むなら」未来を語る時に使う言葉です。

また絶対会おう、と近い合ったサトコとナダ。遠く離れても心は通い合っていて、数年後2人は再会するのですが…。
未来の2人の近況はぜひ、コミックスで♪

そして、こんな本も。『サトコとナダ』から考えるイスラム入門 ムスリムの生活・文化・歴史ではユペチカさんがイラストを描き下ろしています。こちらも楽しみ。

『サトコとナダ』から考えるイスラム入門 ムスリムの生活・文化・歴史 (星海社新書)

新品価格
¥1,058から
(2018/12/16 18:10時点)




[まとめ買い] サトコとナダ

新品価格
¥1,977から
(2018/12/16 21:53時点)



Calendar

S M T W T F S
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 
<< May 2019 >>

おすすめ記事

検索

Archive

Selected Entry

Comment

  • 音楽をことばで表す『羊と鋼の森』宮下 奈都
    日月
  • 音楽をことばで表す『羊と鋼の森』宮下 奈都
    苗坊
  • ハチミツとクローバー外伝と3月のライオン14巻でハチクロメンバーその後のその後
    日月
  • ハチミツとクローバー外伝と3月のライオン14巻でハチクロメンバーその後のその後
    あひる
  • ビブリア古書堂、その後の物語。『ビブリア古書堂の事件手帖 扉子と不思議な客人たち』三上 延
    日月
  • ビブリア古書堂、その後の物語。『ビブリア古書堂の事件手帖 扉子と不思議な客人たち』三上 延
    latifa
  • 読者という希少種を、作家と出版社が奪いあう…というSFが読みたい
    日月
  • 読者という希少種を、作家と出版社が奪いあう…というSFが読みたい
    あひる
  • ゴッホを支えた日本人『たゆたえども沈まず』原田マハ
    日月
  • ゴッホを支えた日本人『たゆたえども沈まず』原田マハ
    latifa

Link

Profile

Search

Other

Powered

無料ブログ作成サービス JUGEM