2018.10.23 Tuesday

『校閲ガール』宮木 あや子

ずっと読みたかった『校閲ガール』読了。校閲とは書籍や雑誌の記述や考証をチェックして間違いを正すお仕事。そんな校閲のお仕事には、てっきり「本にまつわる謎とき」があるのかと思いきや…。

校閲ガール (角川文庫)

中古価格
¥1から
(2018/10/23 18:16時点)



校閲ガール、河野悦子登場!


河野悦子はファッション大好き女子。おおよそ小説にも活字にも興味がなく、校閲部にいるのも憧れのファッション雑誌「Lassy」の編集部に入れなかったから。

しかし彼女はすぐれた記憶力と直感力で、小説の齟齬を見つけ出し、作家の意図を探り当ててしまう。こう書くと、いかにもミステリ小説風ですが、実は『校閲ガール』は「お仕事小説」あるいは「恋愛小説」に近く、ミステリ要素はおまけと言った感じ。

それにしても、小説内の電車移動の時間までわかるなんて、やっぱり校閲ってすごい仕事だなあ…。

校閲ガール ア・ラ・モード (角川文庫)

中古価格
¥36から
(2018/10/23 19:20時点)




でも、悦子をはじめ登場人物たちが個性的で、オネエっぽい同僚・米岡くんや、作家絡みのトラブルに悦子を巻き込む貝塚とのやりとりが面白くて、だんだんミステリ展開に期待するのどうでもよくなってきましたww

校閲のさまざまな仕事をするうちに、だんだん校閲の楽しさにも目覚めていく悦子。そんな彼女の仕事への成長とか、偶然知り合った覆面作家・是永 是之との恋の行方もきになるところ。

悦子の唯一無二の目標は「ファッション誌への移動」で、校閲の仕事はその手段に過ぎないし、「好きなのは顔」と、堂々と言い放つ。

本好きでファッションに疎い私からすれば、ちょっと気後れしてしまうのですが、自分の好きなものがしっかりとあって、それが揺るがないのは読んでいて気持ちがいいです。
本当は校閲部でもっといろいろ活躍してほしいですが、一方で悦子の目標がかなってほしいなとも思います。

校閲ガール トルネード (角川文庫)

新品価格
¥605から
(2018/10/23 19:22時点)





校閲が活躍する物語


こちらもおすすめ!『重版出来!6』では、忠臣蔵の討ち入りの時の天気までもチェックする校閲さんのプロ知識がすごい。

重版出来! (6) (ビッグコミックス)

中古価格
¥1から
(2018/10/23 18:23時点)





多様な作家・宮木あや子


作者の宮木あや子さんてR-18文学賞の『花宵道中』書かれた方なんですね。ジャンルの違いにびっくり。もっと他の作品も読んでみたくなりました。

花宵道中 (新潮文庫)

中古価格
¥1から
(2018/10/23 18:47時点)


JUGEMテーマ:オススメの本



2018.09.26 Wednesday

ビブリア古書堂、その後の物語。『ビブリア古書堂の事件手帖 扉子と不思議な客人たち』三上 延

『ビブリア古書堂の事件手帖』の続編が出ました!シリーズ完結から、栞子さんと大輔くんのその後の物語が描かれます。なんと、二人の間には小さな娘が!

物語は、栞子さんによく似たこの「扉子」ちゃんに、栞子さんがこれまで起きた本にまつわる話を聞かせるといった手法がとられています。これまでのビブリア古書堂シリーズに登場した人々も出演します。

それにしてもあのふたり、いつの間に結婚、そして娘まで…。

ビブリア古書堂の事件手帖 ~扉子と不思議な客人たち~ (メディアワークス文庫)

中古価格
¥580から
(2018/9/25 00:03時点)




二人の娘・扉子ちゃんは利発で本好き。本にまつわる感の鋭さは栞子さん譲りです。性格は明るくて栞子さんの妹文香ちゃんに似ているけれど、本に関する好奇心は大人顔負けです。
これまでのビブリアシリーズのように、1冊の本にまつわる謎を紹介しているのですが、その間にサイドストーリーとして栞子さんと扉子ちゃんが出張中の大輔くんの本を探すと言ったストーリーが添えられています。

その本がなんだったのか、どうしてそれを、娘に見せたくなかったのか、それが最後にわかる仕組みになっています。私が推理したのは二人の出会いのきっかけになった夏目漱石の「それから」でしたが…。

北原白秋 与田準一編『からたちの花 北原白秋童話集』(新潮文庫)


『ビブリア古書堂の事件手帖〜栞子さんと奇妙な客人たち〜』に登場した坂上昌志としのぶ夫妻。夫の昌志は過去に罪を犯して刑務所に入っていた過去から、親戚と断絶していたが、昌志の兄である父親に頼まれた姪・平尾由紀子が夫妻のもとを尋ねることに。

父から叔父へ渡すように頼まれたのが『からたちの花 北原白秋童話集』だった。犯罪者として親戚から嫌われていた叔父の、優しくも悲しい身内との思い出が解かれていく。
「みんなみんなやさしかった」の歌詞がこの物語の謎がわかると、とても切ない。坂口さん、しのぶさんと結婚して幸せになれてよかった…。

からたちの花―北原白秋童謡集 (新潮文庫)

中古価格
¥480から
(2018/9/26 19:18時点)




ビブリア古書堂の事件手帖 〜栞子さんと奇妙な客人たち〜 (メディアワークス文庫)




『俺と母さんの思い出の本』


栞子の母・智恵子の友人である磯原未喜から、急逝した息子との思い出の本を探してほしいとビブリア古書堂に依頼が着た。手がかりはほとんどなく、息子のマンションで彼の妻から事情を聞くも、具体的な確証は得られない。

ゲームとイラストが好きでクリエイターとなった息子と、資産家で「まっとうな」仕事についてほしいと英才教育を押し付けた母との思い出の本とは一体なんなのか。

今回、ほとんどヒントがなくて、どうやって探し出すんだろう?と思っていたら細部にヒントが隠されていました。いつものことながら栞子さんの洞察力が冴え渡ります。ゲームは不得手とはいえここまで確信にせまれるとは…。

あと、この回に登場する急逝した息子の親友の存在は切ないですね。友人は有名クリエイターになったのに、自分はライトノベル作家として鳴かず飛ばずで、その格差に苦しんだり。持たざる者の苦悩も描かれます。

にしても、クリエイターと年の離れたコスプレイヤーの夫婦って、どこかで聞いたような…

佐々木丸美『雪の断章』


こちらもビブリア古書堂の事件手帖の常連、ホームレスでせどり屋の志田と、あるきっかけで彼と親しくなった女子高生の小菅奈緒の物語。ある日、奈緒は志田の住む河原で一人の少年に出会う。自分と同じように志田と本の話をする「生徒」らしい。

やがて志田が失踪し、心配した奈緒は、その少年・紺野祐汰とともに志田の行方を探していくうちに紺野が秘密を抱えていることに気がついて…。

今回は栞子さんは登場せず、奈緒がひとりで推理します。奈緒は以前、栞子さんの鋭い洞察で自分の恋心まであばかれたことで苦手意識を持っているようで。確かに、栞子さんて自分の興味に関して暴走するところがあるからなあ。
母の智恵子さんほどではないにしろ、ちょっと人の気持ちを忖度しないところがあるから。

まあ、今は大輔くんがついているので大丈夫ですが、今度は娘の扉子ちゃんが暴走しそうで、栞子さんがあたふたしています。

雪の断章 (創元推理文庫)

中古価格
¥1から
(2018/9/26 19:01時点)




内田百聞『王様の背中』


最終巻で栞子、母・智恵子とシェイクスピアの初版本を巡って破れた古書店主・吉原喜市は敗北のショックから倒れ、今は仕事を息子に任せていた。息子の考二は古書の引取に訪問した家で、一足違いでビブリア古書堂が買い取ったと聞かされる。

諦めきれず買い取られた本を見てみようとビブリア古書堂を訪れた考二は、ある理由で本を売った家の息子と勘違いされたことで、本を持ち去ろうと試みるが…。

扉子ちゃん、恐ろしい子…(,,゚Д゚) 純粋無垢であるがゆえに相手を追い込んでゆきます。吉原親子側がどうみたって悪いのですが、本に関して圧倒的な知識と洞察力をもち、時に強引に事を運ぶ篠川家の遺伝子を前にしたら、こんな気持になるのも、わからんでもないんだよなあ…と、凡人の私などは思うのです。


内田百聞先生は鉄道マニアで『阿房列車』などが有名ですが、子供向けの本も書いていたんですね。同じく夏目漱石門下で先輩だった『赤い鳥』の鈴木三重吉さんの影響なんでしょうか…?

王様の背中 (福武文庫)

中古価格
¥600から
(2018/9/26 18:46時点)




後日譚と前日譚


今回はビブリア古書堂の事件手帖、登場人物のその後の物語でした。なんにせよ、栞子さん大輔くんカップルが幸せになってよかった。今回は「後日譚」だそうですが、あとがきを読むと「前日譚」を書く予定もあるそうで。

栞子さんの父方、母方の祖父(両方とも古書店主)の因縁とか、戦前から戦後にかけての古本事情なんかも織り交ぜて書いてほしいなと思います。

ビブリア古書堂の事件手帖 ライトノベル 全7巻 セット

中古価格
¥2,250から
(2018/9/25 00:09時点)




「ビブリア古書堂の事件手帖〜栞子さんと奇妙な客人たち」
「ビブリア古書堂の事件手帖2〜栞子さんと謎めく日常」
「ビブリア古書堂の事件手帖3〜栞子さんと消えない絆」
「ビブリア古書堂の事件手帖4〜栞子さん2つの顔」
「ビブリア古書堂の事件手帖5〜栞子さんと繋がりの時」
「ビブリア古書堂の事件手帖6 栞子さんと巡るさだめ」 
「ビブリア古書堂の事件手帖7〜栞子さんと果てない舞台〜」

JUGEMテーマ:ミステリ

2018.08.12 Sunday

夢を組む人。『活版印刷三日月堂 雲の日記帳』ほしお さなえ

川越を舞台にした活版印刷三日月堂シリーズもいよいよ完結。これまで三日月堂に関わった人々も登場し、主人公の弓子さん本人の物語が組まれていきます。

私は前回の感想で「弓子さんが幸せになりますように」と書いたのですが、今回その答えがでます。それは嬉しいような、もう三日月堂の人々と会えないのが少し切ないような、そんな気持ちです。

活版印刷三日月堂 雲の日記帳 (ポプラ文庫)

新品価格
¥734から
(2018/8/9 22:48時点)




『星をつなぐ線』


本町印刷の長田はプラネタリウム星空館のリニューアルに際し、創業時の星空早見盤を復刻したいと相談される。印刷に詳しい後輩の悠生のとともに三日月堂を訪れる。

その星座早見表は表の原版しか残っていない状態だったが、弓子さんが偶然が昔の星座盤をもっていたため、なんとか復刻にこぎつけることに。

『星をつなぐ線』て、すてきなタイトルです。星座を表した言葉ですが、三日月堂も活版印刷で人と人とをつなげていきますね。そして弓子さんもまた、星が好きだったお父さんとの思い出のプラネタリウムの仕事をすることになりました。星も人も、線がむすばれ、つながっていくのは読んでいるこちらも嬉しくなります。

星座早見盤とは月日のや経度の目盛りにあわせて回転させ、その日、その方角の空に浮かぶ星座をみることができるグッズ。天体観測にも利用されます。

星・月の動きA型

新品価格
¥721から
(2018/8/12 19:33時点)




そして前作でも登場した悠生くんが再登場。長田さんとの会話でどうやら悠生くんは弓子さんのことが好きらしい。うまくいくといいなあ。(●´ω`●) あ、でもデザイナーの金子さんはどうなるの?彼はちがうの?

『街の木の地図』


大学生の豊島つぐみはゼミで「川越の街をテーマにした雑誌」の製作・販売を行うのだが、自己中の男子、草壁くんと、引っ込み思案の女子・安西さんと同じグループになり先行きに不安を感じつつも川越に取材にいくことに。

アルバイト先である星空館の星座早見盤がきっかけで、3人は三日月堂に見学に行き、三日月堂での体験をきっかけに「活版印刷でつくる街の木の地図」をテーマに雑誌をつくることになるのだが…。

一緒に作業をしていくうち、草壁くんも、安西さんにも最初の印象とは違う一面がみえてきて、つぐみたちはなにかひとつ、自分の中に確かなものをみつけたようです。

また、この章では以前『庭のアルバム』で登場した高校生の楓さんも登場します。
彼女もまた進むべき道がわからず、あがいていた頃からだいぶ成長していました。若者たちが成長していく姿は読んでいて楽しいなあ。

([ほ]4-3)活版印刷三日月堂 庭のアルバム (ポプラ文庫)

中古価格
¥280から
(2018/8/12 16:55時点)



そしてここで驚き情報。三日月堂と懇意のデザイナーの金子さんには別に恋人がいるとのこと。お相手も以前登場した(『海からの手紙』)司書の小穂さんなんですって。このふたりのなれそめも、外伝とかで書いてほしい…。

([ほ]4-2)活版印刷三日月堂: 海からの手紙 (ポプラ文庫)

中古価格
¥237から
(2018/8/12 16:58時点)





『雲の日記帳』


大学生たちがお世話になった古本屋『浮雲』の店主・水上さんのお話。彼は古本屋を営みながらひっそりと暮らしていた。彼はかつて将来を嘱望された作家候補だったが、自分の言葉が人を傷つけてしまった経験から筆を折ってしまった。ただ、店の冊子に書いている『雲日記』は評判が高く、三日月堂の弓子さんもスクラップしているほどだった。

あるとき、大学時代の友人・岩倉が訪ねてきたことで、水上の言葉を本にしたいと提案され、水上は自分の過去と向き合うことになる。

壮絶な過去を経験し、静かに人生を終わろうとしていた水上さん。彼もまた、三日月堂と出会ったことで過去を振り返り、自分の人生を見つめ直そうと考えます。水上さんは、亡くなった弓子さんの父親に状況が似ていて、2人が話すことですこし、お互いの悲しみや苦しみが昇華できたのでは、と私は思います。

この水上さんの「雲日記」を書籍化することが物語の最後の流れにつながります。

おまけ:古書店主の文章


古書店主は昔から文章が巧みな人が多く、この「昔日の客」は、かつて東京・大森で古書店『山王書房』を営んでいた関口良雄氏の随筆集。古書にまつわる日常や作家たちとの交流が洒脱な文章が多くの本好きに愛されています。

昔日の客

中古価格
¥1,500から
(2018/8/12 21:14時点)




『三日月堂の夢』


これまでたくさんの人の思いを活字に組んで、手渡してきた三日月堂の弓子さん。そのおかげで多くの人が救われたり、自分の道をみつけることができたのですが、最終話は弓子さん自身の物語です。

『雲の日記帳』で登場した水上さんの文章を活版印刷で本にすることになった。実は水上さんは余命わずか。彼が生きている間に本を作らなければならない。

けれどそのためには今の仕事をこなしつつ、印刷機を動かせる悠生さん、アルバイトの楓さんにも無理をさせることにもなり、弓子さんは三日月堂の今後と、じぶんの人生の岐路に立つことに。

現代の活版印刷は


「活版印刷で本をつくる」作業は現代のDTPとは比べ物にならない大変な作業。文字一つ直すにも活字を入れ替えなければならず、文字がページを挟むとその修正作業は膨大に。

だけど、古いやりかたのまま作業をするのではなく、校正、校閲までをデジタルで行い、文章の最終版を活版印刷で組めば作業時間の短縮につながるとアルバイトの楓さんが提案したことで作業は少しラクなりました。とはいえ、大変な作業にはかわりはないのですが。

古い技術と現代のシステムが合わさって「現代の新しい活版印刷」ができるのってすてきなことですね。古いばかりにしがみつくのではなく、便利なものは使っていく。これこそ温故知新の最たるものだと思うのです。

大人の科学マガジン 小さな活版印刷機 (学研ムック 大人の科学マガジンシリーズ)

中古価格
¥3,200から
(2018/8/12 19:28時点)




そうしてできあがった三日月堂のはじめての本。余命の少ない水上さんは、本のお礼にと店をを若者たちに託し、弓子さんにちょっとした魔法をかけて去っていきました。

すべてが終わった後、弓子さんは悠生くんに思いをつたえようと…。

このあとはぜひ、読んでみてください。こころがほっこりあたたかくなります。

活版印刷三日月堂シリーズ


『活版印刷三日月堂 庭のアルバム』
『活版印刷三日月堂 星たちの栞』
『活版印刷三日月堂 海からの手紙』
『活版印刷三日月堂 星たちの栞』
『活版印刷三日月堂』の舞台を訪ねて

JUGEMテーマ:オススメの本

2018.05.30 Wednesday

戦前の少女雑誌の美しさ『彼方の友へ』伊吹有喜

戦前、中原淳一や少女たちに絶大な人気を誇った雑誌『少女の友』をモチーフとした伊吹有喜さんの『彼方の友へ』

昭和十二年、憧れの雑誌『乙女の友』で働くことになった少女・波津子の成長と、憧れの編集部の人々や当時の雑誌づくりの様子が戦争へと向かう当時の情勢とともに描かれていきます。

彼方の友へ
彼方の友へ
posted with amazlet at 18.05.29
伊吹 有喜 実業之日本社 売り上げランキング: 148,605


『彼方の友へ』あらすじ


卒寿を超え、老人福祉施設で暮らす佐倉ハツ(波津子)。ある日彼女に美しいカードの贈り物が届く。それはかつての少女雑誌『乙女の友』の付録『フローラ・ゲーム』だった。

昭和十二年。行方不明の父に変わり家計を支えるため、波津子は音楽家の女中をしていた。密かな楽しみは印刷所につとめる幼なじみが内緒で持ってきてくれる『乙女の友』だけだった。
ある時遠縁のおじから『乙女の友』編集部での仕事を紹介される。しかし、男子社員を望む有賀主筆からも編集部からも疎まれ、波津子は途方に暮れるが、憧れの挿絵画家・長谷川純純司だけは彼女をかばってくれた。

波津子は編集部で働くため、おさげ髪を切り落とし、自転車を駆り、有賀たちの役に立つため奮闘する。

昭和十五年、雑誌の人気挿絵画家であり、波津子の理解者でもある長谷川純司が「(戦争の)時流にそぐわない」と雑誌を降板することになる。

昭和十八年、戦争が激化するにつれ、仲間や友人、美しい詩や絵が波津子の周りから消えてゆき、さらに憧れの有賀も出征することになり…

『少女の友』


モデルとなった『少女の友』は、吉屋信子、川端康成など、当時一流の作家が寄稿し、少女雑誌の枠を超えた文化レベルの高い雑誌でした。作家の田辺聖子さんも愛読していたそうです。

『少女の友』創刊100周年記念号 明治・大正・昭和ベストセレクション

中古価格
¥751から
(2018/5/30 17:33時点)




シンデレラも楽じゃない


波津子の人生は、貧しい女の子が苦難を乗り越えて幸運を掴む、シンデレラストーリーではあるのですが、実は憧れの人と働ける幸運を手にしてからのほうが大変でした。

女の子だと舐められて原稿を渡してもらえないし、有賀を慕う女流作家からは疎まれるし、学歴がないため恥ずかしい字の間違いしたりと波津子の編集部での仕事は前途多難、悪戦苦闘の連続です。

遊びで書いた物語が採用されて雑誌連載を依頼されてもプレッシャーで原稿を落としたり、周りからは批判されてしまいます。現代とは違い、働くことになれていない昭和初期の女の子ですから、かなりの重圧だったでしょう。

けれども、波津子はがんばります。それは支えてくれた有賀主筆のため。有賀が戦争に行ってからは雑誌の灯火をけさないよう、必死で雑誌を守り続けます。

最後はちょっと報われたかな。それにしても戦争は美しいものを根こそぎに奪い取っていきますね。
戦争によって文化奪われていく恐怖、不安感が読んでいてひしひしと伝わってきます。

美しい昭和の雑誌付録


戦前の『少女の友』付録を復刻した『少女の友』中原淳一 昭和の付録 お宝セットは、『彼方の友へ』に登場する「フローラ・ゲーム」のモデルとなった「フラワーゲーム」のほか、花言葉のしおり付きカード、すごろくなど。

当時の少女たちは、たとえ美しいものが禁止されても、隠したり、疎開させたりして雑誌を守り通していたそうです。

『少女の友』中原淳一 昭和の付録 お宝セット

新品価格
¥15,119から
(2018/5/29 23:06時点)




欲を言うなら、「男装の麗人」はいらなかった


伊吹有喜さんは大好きな作家なのですが、モデルとなる人物が実在する場合、モデルの個性に登場人物が引っ張られているように感じ、そこがちょっと引っかかってました。(『カンパニー』のE○ILEとか、熊○哲也とか)

でも、今回は中原淳一や川端康成という実在の人物をモデルとしていても、違和感なく物語に入ることができました。

あえて言うなら「男装の麗人・翡翠」はいらなかったかも。あの当時男装の麗人といえば女スパイ川島芳子しか思い浮かびませんし、彼女は個性が強すぎるので扱いが難しい。登場も中途半端な気がします。スパイ云々の描写がなくても、「乙女の友」の編集部の物語だけで十分だったのではと思うのですが。

男装の麗人・川島芳子


川島芳子は清朝の王族で日本人の養女となり、清朝復活のため日本のスパイとなった有名な人物。その人生は何度もドラマ、映画、舞台で演じられています。

男装の麗人・川島芳子伝 (文春文庫)

中古価格
¥40から
(2018/5/30 17:02時点)




有賀主筆のその後についても気にかかるところですし、ぜひ別の視点でスパイ仕立ての「彼方の友へ」続編を書いてこのモヤモヤをすっきりさせていただければと思います。

JUGEMテーマ:オススメの本



伊吹有喜作品 感想


『彼方の友へ』
『今はちょっと、ついてないだけ』
『BAR追分』
BAR追分シリーズ2『オムライス日和』
BAR追分シリーズ3『情熱のナポリタン』
『ミッドナイト・バス』
『なでし子物語』
『風待ちのひと』

2018.04.11 Wednesday

八咫烏シリーズ外伝『まつばちりて』阿部智里

人に变化する力をもつ八咫烏の世界を描いた、八咫烏シリーズ外伝『まつばちりて』読了。本編『烏は主を選ばない』の登場人物・松韻の物語です。

※八咫烏シリーズ外伝は、2018年現在、電子書籍のみの販売です。
自分にあった電子書籍えらびのコツ

Amazon Kindle版

八咫烏シリーズ外伝 まつばちりて【文春e-Books】




楽天Kobo版

八咫烏シリーズ外伝 まつばちりて【文春e-Books】【電子書籍】[ 阿部智里 ]

価格:200円
(2018/6/20 21:58時点)
感想(0件)




烏は主を選ばない

『まつばちりて』あらすじ


八咫烏の世界「山内」でも下層の「谷合」、そこの娼家で生まれた「まつ」は女郎になる運命を背負った少女だった。しかし、金烏の正妃・大紫の御前に見出され朝廷で働く「落女」となるよう教育を受ける。「落女」とは女の戸籍を捨て、男の名で務める官吏のことだった。

やがてまつは松韻と名を変え、大紫の御前に使える落女として出仕する。しかし、朝廷には彼女に対抗する蔵人・忍熊がいた。ことあるごとに対立しつつも、お互いの才覚を認め合うふたりだったが、ある時忍熊からの「松韻を還俗させ、わが妻にしたい」と驚くべき申し入れにより、松韻の運命は大きく変わっていくことに…。

声に出さない、大人の恋愛


これまでの外伝は若者たちの片思いや友情、あるいは家族の物語であったのですが、これは大人の濃厚な愛の物語です。

松韻は大紫の御前派、忍熊は敵対する派閥。愛の言葉など交わしたことがない、決して交わらない松韻と忍熊の愛はだからこそ濃密で美しくもあり、そして悲しくもあります。

相手の書く文字の美しさ、力強さに惹かれたり、対立をしつつも一定の安定感を保っている関係は、声に出してしまっては成立しないのかもしれない。松韻が窮地に陥った時、忍熊がとった行動はほかの誰にもわからなかったけれど、松韻にだけは伝わっていた。だからこそ松韻も、その愛に応えたのでしょう。

大人の悲恋は美しく、悲しかったのですが、欲を言えばもっと朝廷でのエピソードや、2人の関係をもっと書いておいてほしかったかな。短編だから仕方がないのだけど、後半ちょっと性急過ぎる気も…。

文字や和歌で心を交わすのは、平安貴族も同じですね。「超訳百人一首 うた恋い。」の清少納言と藤原行成を思い出しました。
超訳百人一首 うた恋い。3

超訳百人一首 うた恋い。3
杉田 圭 KADOKAWA/メディアファクトリー (2012-04-17)売り上げランキング: 74,480


この物語では、女を捨てて男として出仕する「落女」という設定が興味深いです。中国宮廷の宦官と似ているようだけれど、あれは「男の機能」を捨てるだけなので、またちょっと違うかな。
女が男の仕事をする、というのはよしながふみさんの「大奥」シリーズに近いのかもしれません。

大奥 1~最新巻セット(JETS COMICS )
売り上げランキング: 123,438



いよいよ八咫烏シリーズ外伝『烏百花 蛍の章』の発売が決まりました。これまでの短編に加えて書き下ろしも。

烏百花 蛍の章 八咫烏外伝

新品価格
¥1,512から
(2018/5/2 01:00時点)




八咫烏シリーズ


『烏に単衣は似合わない』
『烏は主を選ばない』
『黄金の烏』
『空棺の烏』
『玉依姫』
『弥栄の烏』
外伝『すみのさくら』
外伝『しのぶひと』
外伝『ふゆきにおもう』
外伝『まつばちりて』
外伝『あきのあやぎぬ』

JUGEMテーマ:ファンタジー



2018.02.20 Tuesday

『眠る盃』向田 邦子

相変わらずはまっっている向田邦子。『眠る盃』は向田邦子さんの各種雑誌に寄稿されたエッセイ集なのですが、すごいんですよこれが。

その雑誌が多種多様。名エッセイ『父の詫び状』を発表した『銀座百点』から文春などの文学雑誌から、『anan」、『ジュノン』などの若い女性向けの雑誌、『マダム』から『わたしの赤ちゃん』まで。あらゆるジャンルの傾向にあわせたテーマで書かれているのもすごいけれど、それでいて向田さんらしさが文章からにじみ出ていている。

そういえば今の作家さんて文芸雑誌以外でエッセイを書くのをあまりみたことがないような。(私が知らないだけかな?)こうして出されるさまざまなお題に対して、肩肘張らず、すうっと入り込める文章を書けるなんて、やはりこの人はすごい。

新装版 眠る盃 (講談社文庫)
向田 邦子 講談社 (2016-01-15)売り上げランキング: 218,023


眠る盃


タイトルにもなった名エッセイ。「眠る盃」とは向田邦子さんが滝廉太郎の「荒城の月」の歌詞「めぐる盃 」を「眠る盃」と勘違いをしていたこと、「自分はよく勘違いをして覚えている」と続くのだけど、面白おかしいのかと思いきや、このあとの文章が実に美しいのです。

「眠る盃」から連想された話は、昭和の向田家の酒宴の思い出につながり、春の夜、酔客が帰ったあと眠りこけた父親と世話をする母親、父の膳には酒の残った盃が置かれている。まるで詩のように美しい。
「酒と水とは違う。ゆったりと重くけだるく揺れることを、このとき覚えた」

以来、日本酒を飲むたびこの一文を思い出しています。


ツルチック


アマゾンに旅した際、現地の飲み物で思い出した「ツルチック」なる飲み物。向田さんが幼い頃父親がどこからか手に入れてきたらしい。家族に聞いてもわからず幻の飲み物のようだったが、雑誌に掲載された途端、多くの人から「知っている」との連絡が来た。

「ツルチック」は「ツルチュク」という朝鮮半島でつくられた飲み物らしいということがわかり、関係者が様々な情報や資料が送られてきた。中には詩人の谷川俊太郎氏もいた。

というお話なのだけど、驚くのは向田宅に一般の人からたくさんの電話や手紙が送られてきたこと。当時はまだ、個人情報やストーカー規制などがなかったとは言え、絶え間なく電話がかかってくるのは大変だったでしょうねえ…。


ananに掲載された男性鑑賞法


向田邦子さんが様々なジャンルの男性を紹介する文章。俳優や脚本家など芸能界の人間はもちろんですが、美術商や馴染みの魚屋まで、登場する男性の職業もさまざま。(実は魚屋さんの人生が一番意外で面白かったりする)
今だったら絶対企画通らないだろうな…。

当時のanan読者たちはこんな贅沢な文章が雑誌で読めたのがうらやましい限りです。

悼む人の仲間入り


もう40年近くも前に飛行機事故で亡くなられた向田邦子さん。文庫の解説でも名だたる著名人たちがその早すぎる死を何度となく悼んでいます。おそらくファンの方々も何度となくそう思ってきたことでしょう。
私もまた、その一人に加わりたいと思います。

新装版 父の詫び状 (文春文庫)
向田 邦子
文藝春秋
売り上げランキング: 10,594

2018.02.07 Wednesday

八咫烏シリーズ外伝『ふゆきにおもう』(ネタバレ)

八咫烏シリーズ外伝『ふゆきにおもう』。『烏は主を選ばない』の主人公・雪哉の出生にまつわる物語です。

『烏は主を選ばない』から八咫烏シリーズの重要な役割を担ってきた雪哉。一見、明るく飄々としているけれど、俯瞰的に物事をみる目と、明晰な頭脳を持つ少年で、若君からの信頼も厚い。

そんな彼の能力は、実は2人の母親から受け継いだものでした。

『ふゆきにおもう』あらすじ


北領・垂氷郷の郷長の下の息子2人が行方知れずになった。母親の梓は必死で探すものの見つからない。そんな時・息子雪哉とその母親・冬木の噂を耳にした梓は、北本家の姫・冬木のことを思い出す。

梓は昔、冬木に仕えていた侍女だった。冬木は病弱ゆえ、意地のわるいところがあったが、梓のように気に入ったものや、小さく無垢なものにはやさしかった。そして、俯瞰的に物事を見る目と、明晰な頭脳を持っていた。

ある時2人の前に垂氷郷の嫡男・雪正が現れた。健康的で誠実な雪正に惹かれた冬木をおもい、梓は雪正と冬木の縁談を申し出る。しかし、雪正が思っていたのは梓の方で…

Amazon Kindle版

八咫烏シリーズ外伝 ふゆきにおもう【文春e-Books】




楽天Kobo版

八咫烏シリーズ外伝 ふゆきにおもう【文春e-Books】【電子書籍】[ 阿部智里 ]

価格:200円
(2018/6/23 00:03時点)
感想(0件)




2人の母


『烏は主を選ばない』では、雪哉の母は侍女だった梓と夫雪正へのあてつけとして、無理やりに雪哉を産み落として死んでいった、と語られました。

けれども、そこには冬木の計算があったのです。ただ純粋に自分の子を生みたい、という思いと梓への信頼。自分が死んだあと梓が雪哉を守ってくれるだろうと。だから2人を恨む芝居を打って雪哉を産み落としたのでした。

このふゆきの計算高さと、自分の評価より目的を優先する行動力、それが雪哉に受け継がれたのでしょうね。

『しのぶひと』で結婚相手の条件として「自分に何かあった時頼れる実家があり、夫婦間に恋愛感情を持ち込まないこと」という表現も若宮の影響もありますが、やはり冬木の遺伝なのでは。

そしてもう一人の母、梓からは思いやりと思いやりを受け継いだ気がします。
この母がのおかげで、雪哉は垂氷郷でなんとかやっていけたのだし、『黄金の烏』でも相手への思いやりについて教えられています。(その時は暴走しましたが…)



いよいよ八咫烏シリーズ外伝『烏百花 蛍の章』の発売が決まりました。これまでの短編に加えて書き下ろしも。

烏百花 蛍の章 八咫烏外伝

新品価格
¥1,512から
(2018/5/2 01:00時点)





八咫烏シリーズ


『烏に単衣は似合わない』
『烏は主を選ばない』
『黄金の烏』
『空棺の烏』
『玉依姫』
『弥栄の烏』
外伝『すみのさくら』
外伝『しのぶひと』
外伝『まつばちりて』
外伝『あきのあやぎぬ』

2018.02.03 Saturday

八咫烏シリーズ外伝『すみのさくら』

八咫烏シリーズ外伝。第一巻『烏に単衣は似合わない』の系列物語。南家の姫・浜木綿の子供時代のお話です。

『すみのさくら』あらすじ


浜木綿は南家の姫でありながら、両親が政権争いに敗れて殺されたため山烏として育った過去があり、その際に若宮とも面識があった…というのが『烏に単衣は似合わない』で語られた過去で、では実際にどんな事情があったのか、浜木綿はどんな風に変わっていったのかが描かれます。

南家当主の姫として何不自由なく育てられた浜木綿でしたが、ある日突然その身分を剥奪され、山寺で暮らすことになる。混乱の中、おじの融が両親を殺したとの噂を聞き、ひとり復讐に向かうのだがあえなく失敗。
失意の中すごすうち、ある日上皇につれられ若君が寺にやってきて…

後に浜木綿は自分が生き残ったのは周囲の人達の情があったからこそだと知ります。なるほど確かにこの人の芯の強さは一度地獄をみたからでしょう。

だからこそ、若君も伴侶として選んだんだろうな。

Amazon Kindle版

八咫烏シリーズ外伝 すみのさくら【文春e-Books】




楽天Kobo版

八咫烏シリーズ外伝 すみのさくら【文春e-Books】【電子書籍】[ 阿部智里 ]

価格:200円
(2018/6/25 01:04時点)




いよいよ八咫烏シリーズ外伝『烏百花 蛍の章』の発売が決まりました。これまでの短編に加えて書き下ろしも。

烏百花 蛍の章 八咫烏外伝

新品価格
¥1,512から
(2018/5/2 01:00時点)




八咫烏シリーズ


『烏に単衣は似合わない』
『烏は主を選ばない』
『黄金の烏』
『空棺の烏』
『玉依姫』
『弥栄の烏』
外伝『すみのさくら』
外伝『しのぶひと』
外伝『ふゆきにおもう』
外伝『まつばちりて』
外伝『あきのあやぎぬ』

JUGEMテーマ:電子書籍



2018.01.31 Wednesday

八咫烏シリーズ外伝『しのぶひと』(ネタバレ)

人型をとる八咫烏の世界を描いた阿部智里先生の『八咫烏シリーズ』。2018年現在、第一シリーズが完結。さらに次のシリーズが予定されています。

不思議な八咫烏の世界の描写と、先が読めないミステリ仕立てのファンタジーが魅力の、このシリーズは現在6巻まで刊行されていますが、それとは別に外伝として短編がいくつか出ています。ただし、今現在は電子書籍のみなので、電子書籍を扱うネットショップ等での購入、スマホやPCでの閲覧に限られます。
国内最大級の品揃え【DMM.com 電子書籍】


『しのぶひと』あらすじ


若宮・奈月彦を守るため、地方豪族の次男坊・雪哉は王の護衛「山内衆」の養成学校、勁草院へ入学する。

物語は雪哉が勁草院にいた第4シリーズ『空棺の烏』の頃のお話。
端午の祭祀にみごとな弓射を披露した雪哉。若君の正妃・浜木綿の君に仕える女官・真赭の薄(ますほのすすき)は、そんな雪哉の成長を微笑ましく見つめていた。

しかし、出家している身(実際に尼になるわけではない)とはいえ、かつては若宮のお后候補となるほどの美貌の真赭の薄は、祭祀の際に貴族たちから見初められて縁談が舞い込んできた。彼女の行く末を案じた若宮と浜木綿の君は、ある人物の助言から彼女の縁談の相手に雪哉を指名したのだが…。

Amazon Kindle版

八咫烏シリーズ外伝 しのぶひと【文春e-Books】




楽天Kobo版

八咫烏シリーズ外伝 しのぶひと【文春e-Books】【電子書籍】[ 阿部智里 ]

価格:200円
(2018/7/10 16:40時点)



ここからネタバレ感想


『玉依姫』に至る前のつかの間の平和な日々に、こんなことが起こっていたんですね。実は雪哉と真穂の薄の縁談を助言したのは若君の側近・澄尾でした。
そのことが後に真赭の薄にバレてこっぴどく嫌われるのですが…。澄尾、不器用だなあ…。

このあたりのストーリーが『弥栄の烏』へつながっていくわけですね。

そして澄尾の気持ちを唯一察したのが真赭の薄の弟、明留だったとは。おぼっちゃんと思っていたけれど、なかなかどうして、人の気持ちを察することのできる子なのだな。

結局、この縁談は真赭の薄が嫌がりお流れになりましたが、雪哉の妻に求める条件が「政治的な選択で裏切るかもしれない、夫婦間の恋愛感情は必要ない。」など、まるでどこかの主みたいな言い草なんですね。

まあ、彼なりに相手を思っての言葉ではあるのですが、この主従似たもの同士だわ…。

いよいよ八咫烏シリーズ外伝『烏百花 蛍の章』の発売が決まりました。これまでの短編に加えて書き下ろしも。

烏百花 蛍の章 八咫烏外伝

新品価格
¥1,512から
(2018/5/2 01:00時点)




おまけ


八咫烏シリーズを読むと、阿部智里先生は本当に『十二国記』がほんとに好きなんだろうなあ、と感じます。若君たちが住む中央の山は十二国記の王たちが住む凌雲山に似ているし、今回出てきた端午の祭事で陶器の鹿を撃つ弓射は十二国記『丕緒の鳥』の鳥に見立てた陶製の的を射る儀式・大射を思わせます。

同じモチーフを使っていても、アウトプットでは全く異なる話になるのがが面白いところですね。

丕緒の鳥 十二国記 (新潮文庫)
小野 不由美 新潮社 (2013-06-26)売り上げランキング: 11,862


八咫烏シリーズ


『烏に単衣は似合わない』
『烏は主を選ばない』
『黄金の烏』
『空棺の烏』
『玉依姫』
『弥栄の烏』
外伝『すみのさくら』
外伝『ふゆきにおもう』
外伝『まつばちりて』
外伝『あきのあやぎぬ』





JUGEMテーマ:最近読んだ本

2017.12.14 Thursday

『活版印刷三日月堂 庭のアルバム』ほしおさなえ

思えば近頃、私たちの周りにはデジタルなもので溢れている。フィルムカメラはデジカメに、活版印刷はオフセットからデジタルに。アナログの機器は制限が多く、人はより便利に、きれいにするため技術を発達させてきたけれど、気がついたら私たちの周りからは質感が消えていました。

さわり心地や重さ、匂いなど視覚以外の感覚。それらをもつのが「物体」なのかもしれない。
逆に若い人たちの間では、物体として残せるフィルムカメラや活版印刷が流行っているのだといいます。

『活版印刷三日月堂』は、そんな手に取ることができる「もの」を活字にたくして伝えているのかもしれません。

([ほ]4-3)活版印刷三日月堂 庭のアルバム (ポプラ文庫)

中古価格
¥280から
(2018/8/12 21:06時点)




『チケットと昆布巻き』 大切な場所の話。


観光雑誌「めぐりん」の記者・竹野は、友人の結婚式で再会した同級生たちと自分を比べ、仕事や収入将来について引け目を感じた。そんな時、取材時に紹介された三日月堂を取材することになり、竹野は弓子さんに「どうして活版印刷をはじめたのか」と質問をする。

弓子さんが活版印刷をはじめた理由が語られます。家族が早くに亡くなってしまった弓子さんにとって三日月堂とは、弓子さんが家族とつながっていられる大切な場所だったんですね。
三日月堂はお客さんとのつながりが深いし、三日月堂に集まる人が多くて気がつかなかったけれど、そういえばこの人は天涯孤独だったのだと思い出しました。

この話を読んで、自分の大切な場所について考えてみました。私にとっての三日月堂は、実家の工場です。自営業だったので、家の裏に工場があり、入ると大きな機械の動く音や油の匂いがしていました。もう取り壊してしまったけれど、今でもときおり思い出します。

この章に登場するレトロな雰囲気の市民シアター「シアター川越」は「川越スカラ座」がモデル。実際にイベントで使用したり、映画とのタイアップ企画などにも力をいれています。

散歩の達人 2017年 12 月号 [雑誌]

中古価格
¥324から
(2018/8/12 21:05時点)





『カナコの歌』家族の思い出


「めぐりん」に掲載された三日月堂と弓子さんの記事をみつけた、弓子さんの母・カナコさんの同級生・聡子。カナコさんの生きていた思い出を伝えるため、彼女は三日月堂を訪れます。
闘病のこと、死の恐怖から逃れるように書いていた短歌のこと。

弓子さんはお母さんを早くに亡くしたため、思い出らしい思い出を持たなかったけれど、こうしてお母さんを知る人から伝えられることで、思い出を追加してゆくことができてよかったですね。聡子さんたちにとってもカナコさんのことを思い出せるいいきっかけになったようです。
人は、思い出を作り出すことができるんですね。自分のためにも、誰かのためにも。


『庭のアルバム』道を見つける


母親がもっていたカナコさんの歌カード(弓子さんが印刷した)に興味をもった高校生の楓。学校生活に馴染めない彼女は三日月堂での活版印刷ワークショップをきっかけに、弓子さんからイベント用のカードのデザインを任されることに。

楓がちょっと苦手な父方のおばあちゃんの家の庭で、カード用のスケッチをしていると、苦手だったおばあちゃんの意外な一面を垣間見ることができて…。おばあちゃんと孫の交流、「西の魔女が死んだ」を思い出しました。

学生の時ってなにがきっかけか、自分でもわからない方向に行ってしまうことがありますよね。楓さんも弓子さんと活版印刷に出会うことで自分の進むべき道を見つけられたみたいです。

『川の合流する場所で』新しい流れ


弓子さんが活版印刷のイベント出会った岩手の印刷会社の会長とその親戚の青年・悠生。話を聞くと三日月堂にある大型印刷機械もあるという。弓子さんは機械をみるため岩手へ。それは機械の視察のほかにもうひとつ目的があって…

今回ご縁ができた盛岡の本町印刷。そこでいよいよ大型機械を動かすことができました。そこには青年の祖父である前会長の込めた思いが活字に組まれていて、それをかたちにすることができたことで、悠生にも弓子さんにも新たな流れがきているのかもしれません。

願わくば、人をつなぐ手を持つ優しく孤独な女性に、幸せが訪れますように。


『活版印刷三日月堂』とコラボした作られた『大人の科学マガジン 小さな活版印刷機 (学研ムック 大人の科学マガジンシリーズ)』。

物語に登場した「テキン」での活版印刷が自分でもつくれます。ひらがなとカタカナだけですが、これからの季節、年賀状に活版印刷でひとこと添えるのにもいいですね。

大人の科学マガジン 小さな活版印刷機 (学研ムック 大人の科学マガジンシリーズ)

中古価格
¥3,200から
(2018/8/12 19:28時点)




([ほ]4-2)活版印刷三日月堂: 海からの手紙 (ポプラ文庫)

中古価格
¥237から
(2018/8/12 16:58時点)




([ほ]4-1)活版印刷三日月堂 (ポプラ文庫)

中古価格
¥71から
(2018/8/12 21:04時点)




活版印刷三日月堂シリーズ


『活版印刷三日月堂 雲の日記帳』
『活版印刷三日月堂 庭のアルバム』
『活版印刷三日月堂 星たちの栞』
『活版印刷三日月堂 海からの手紙』
『活版印刷三日月堂 星たちの栞』
『活版印刷三日月堂』の舞台を訪ねて

JUGEMテーマ:最近読んだ本


Calendar

S M T W T F S
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930 
<< November 2018 >>

オススメ

Archive

Selected Entry

Comment

  • 読者という希少種を、作家と出版社が奪いあう…というSFが読みたい
    日月
  • 読者という希少種を、作家と出版社が奪いあう…というSFが読みたい
    あひる
  • ゴッホを支えた日本人『たゆたえども沈まず』原田マハ
    日月
  • ゴッホを支えた日本人『たゆたえども沈まず』原田マハ
    latifa
  • バリューブックスで古本買取。送料無料で簡単。
    日月
  • バリューブックスで古本買取。送料無料で簡単。
    latifa
  • 「無伴奏ソナタ」 オースン・スコット・カード
    kazuou
  • いよいよ完結『ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~』三上 延
    latifa
  • [映画]箱入り息子の恋
    苗坊
  • BAR追分シリーズ『オムライス日和』 伊吹有喜
    日月

Link

Profile

Search

Other

Powered

無料ブログ作成サービス JUGEM