「レヴォリューションNo.0」 金城 一紀

2011.04.09 Saturday

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    「何度でも、ゼロに、戻れ」


    南方、萱野、舜臣、ヒロシ、山下。愛すべきザ・ゾンビーズの仲間たちが帰ってきた!
    レヴォリューションNo.0」はザ・ゾンビーズの初めての冒険譚。伝説の始まりです。

    レヴォリューションNo.0あらすじ


    高校入学当初、南方は自分を取り巻く環境に息苦しさを感じていた。
    かといって、退屈のけちらし方を見つけ出せない。

    そんな時、学校側が行う団体訓練(という名のシゴキ)が行われる。
    イジメのような訓練と暴力が繰り返される合宿に、南方たちは脱走計画を企てる。
    部屋からの脱出に成功し、門扉にむかうメンバーたちだったが、そこには門のドアの他に南京錠が…
    後ろには体罰教師たち。そんな時、仲間たちが「俺たちを超えていけ」と、踏み台になろうとする。

    なんてベタな展開なんだ!と思うのに、この場面、涙腺が破壊されます。胸が熱くなります。

    「史上最悪のヒキをもつ男」山下。いつもトラブルに巻き込まれる、愛すべき男だけれど、前作ではそんなにすきではなかった。(ごめん、山下…)でも泣きじゃくりながら腹をへらした野口に、山下がとっておいたおにぎりを渡すところにグッときた。こういう所がザ・ゾンビーズたちが山下を大好きな理由のひとつなんだろうな。

    アギーも1年の頃からアギーだっだんだな。地獄のシゴキをどうやって切り抜けるのかとおもったら、施設の女医さんを味方につけて、ちゃっかり優雅なモーニングをいただいています。(^^)
    アギーの台詞がまたかっこいいの。
    「俺はお前たちにボーダーの超え方を教わったよ」


    青春を体感できる小説


    ザ・ゾンビーズシリーズが普通の小説と違うのは、読んでいる人間もいつのまにかザ・ゾンビーズの一員になり、冒険をしている感覚に陥ってしまうところです。本を開くといつもそこには舜臣や南方やヒロシがいて、山下は相変わらずドジを踏んでいて…と、そんな様子を見ながらまた冒険に出かけることができる。

    「レヴォリューションNo.0」青春を懐かしむのではなく、青春を体感することができる、そんな物語なんです。

    金城作品はいつも、ラストの言葉がかっこいい。まるで映画のラストシーンのようなんです。
    今回も鳥肌もののラスト。
    興味がある方はぜひ。

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    ザ・ゾンビーズシリーズ


    ここからゾンビーズの冒険がはじまります。
    レヴォリューション No.3→
    舜臣と中年サラリーマンの奇妙な師弟関係。
    フライ,ダディ,フライ→ゾンビーズと一緒に冒険する女の子が主人公の物語。
    SPEED→

    その他の金城作品


    GO→
    対話篇→
    映画篇→
    漫画 映画篇1、2→

    「もぎりよ今夜も有難う」 片桐 はいり

    2011.03.17 Thursday

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      わたしのマトカ」、「グアテマラの弟」など、ぐっとくるエッセイを書かれる片桐はいりさん。
      第三弾「もぎりよ今夜も有難う」は、かつて片桐はいりさんがもぎり嬢をしていた銀座文化劇場(シネスイッチ銀座)の思い出と、各地に残るなつかしい映画館についてのエッセイです。

      映画館の思い出


      映画館の思い出をもつ人は幸せだと思います。現在のシネコンと映画館は映画を上映するという目的は同じでも、決定的に違う。

      おそらく映画だけでなく「映画を観る場所」そのものが思い出に残るのが映画館なのだと思います。わたしの田舎にも小さな映画館があり、ガラス張りの売店に飾られたパンフレットやお菓子、ほこり臭いロビーの椅子、トイレに向かう廊下のほの暗さに怖かったこと、開場前の順番待ちのワクワク感…今でも思い出すことがあります。

      そういった映画館では観た映画まで思い出すことができるのです。はいりさんの語る銀座文化劇場は、そんななつかしい映画館の匂いがします。

      そしてわたしもはいりさんと同じく、場内飲食厳禁のミニシアターに腹を立てたクチです。物を食わんで観る映画館で何を見ろというのか!(# ゚Д゚)

      今のシネコンは飲食自由ですが、クソでかくてまずいファストフードとくそまずい飲料で高い金をとるフードコートは未だに納得できません。

      旅と映画館


      後半は、はいりさんが旅先で出会った映画館について書かれているのですが、シネコン全盛のおり、昭和の映画館というものは絶滅したものと思っていたら、案外まだ残っているらしいのです。役目を終えて撮影場所としてつかわれたり、まだまだ現役で活躍している映画館もあるんですね。

      これはぜひ、訪ねてみなければ。

      かつて、映画はただ見るだけじゃなく、映画を観る行為そのものがイベントでした。
      ワクワクしながら並んだり、おいしいものを持ち込んだり。
      そんな映画の楽しさを久しぶりに思い出しました。

      今度映画を観るときは、シネコンじゃなく、映画館に見に行きたいです。

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      片桐はいりさん名エッセイ
      わたしのマトカ→
      グアテマラの弟→


      映画館のある風景 昭和30年代盛り場風土記・関東篇
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      JUGEMテーマ:映画館で観た映画

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      『獣の奏者 外伝 刹那』 上橋 菜穂子

      2010.09.07 Tuesday

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        獣の奏者 外伝 刹那」は本編で語られなかったエリンとイアルの恋とジェシの出産・子育ての様子、エサル師の若き日の恋物語。「獣の奏者 探求編」「完結編」が始まるまでの年月、エリンとイアルがどのようにして結ばれ、どのように時を過ごしてきたかが伝わってきます。

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        刹那


        エリンとイアルが結ばれるまでのじれったい思いと、結ばれてこどもの産む決意をするふたりの姿が描かれています。特に父親となるイアルは、過酷な運命を背負っているため、子の運命について不安や恐怖にさいなまれます。エリンはそんなイアルの不安を拭おうとするように、自分の身を顧みず行動に移します。さすが女性は強い。

        『刹那』のテーマは「性と生」


        人は「性」をみだらなモノとして隠す傾向にありますが、この営みがなければ次の「生」を生み出すことができないのです。それは人も獣も同じ。エリンのリアルな出産シーンを読んでいると、自然と自分を生み出してくれた親への感謝の気持ちが生まれました。


        秘め事


        エリンの師・エサル師の若き日の恋。エサルは貴族の娘だったため、ある意味エリンよりも制約が多かったのですね。エサルは貴族の妻になることを拒み、独身で研究者として生きていく道を選びます。

        本編ではエリンに隠れがちですが、エサルも若いころから優れた研究者で、研究のためならかなりの無茶をして周りを心配させていました。

        そんなエサル師だからこそ、エリンの行動を見守り、成長を助けることができたのでしょうね。

        若いころのエサル師の話を読んでから、私は彼女のことがとても好きになりました。

        上橋先生はエリンの人生も、エサルの人生も、どちらも同じように中立な視点で描かれています。どちらが上でも下でもない。それが、エサル師の父上の残した、この言葉に集約されている気がします。

        雌雄が交わって身を結び、次代を育む花もあれば、自分が養分をしっかり蓄えて根を伸ばし、その根から芽を伸ばして、また美しい花を咲かせる植物もあるものだ。



        初めての…


        こちらはエリンの子育て・断乳奮闘記。まだ舌がまわらない頃のジェシが、乳離れを拒んで、わあわあ言っている姿が目に浮かぶようです。切ない話のなかの、ほっこりとした日常風景。

        イアルさんはこの世界の男の常として子育てに参加はしてないようですが、それでも家事に手がまわらないエリンをそれとなく気遣う姿が見られます。( ̄▽ ̄)

        それにしても作中でエサル師も言っていましたが、あの小さかったエリンが成長して母親になっているのが、なんとも不思議な気がします。

        獣の奏者 全5冊合本版 (講談社文庫)






        上橋作品感想


        「物語ること、生きること」→
        「精霊の守り人」→
        「闇の守り人」→
        「夢の守り人」→
        「天と地の守り人」→
        精霊の守り人シリーズ外伝「流れ行く者」→
        精霊の守り人シリーズ外伝「炎路の旅人」→
        精霊の守り人レシピ集「バルサの食卓」→
        「獣の奏者 闘蛇編・王獣編」→
        「獣の奏者掘|亀翳圈廣
        「獣の奏者検ヾ扱詈圈廣
        「<守り人>のすべて 守り人シリーズ完全ガイド」→
        守り人レシピ「バルサの食卓」→


        JUGEMテーマ:ファンタジー


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        もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

        2010.09.04 Saturday

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          話題になっている「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」を読みました。難しい内容かと思いきや、話の内容は爽快な青春小説で、文章自体も読みやすい。

          そして、タイトルにストーリーの内容が凝縮されています。
          主人公みなみが、入院した親友・夕紀の変わりに野球部の女子マネージャーをすることになり、「マネージャー」と「マネジメント」の区別もつかないままドラッカーの『マネジメント』に出会い、本に書かれていることを手本に、野球部を改革し、甲子園を目指す物語です。
          夢をかなえるゾウ」の青春版といった感じでしょうか。
          この場合はガネーシャ役がドラッカーのマネジメントに当たるわけですね。

          みなみはまず「野球部という組織の定義づけ」、「野球部にとっての顧客」を見いだすことから始めます。親友・夕紀のヒントから 野球部とは「感動を与える組織」であり、顧客とは「部員も含め、高校野球に携わる人々」ととらえ、マーケティング、人の強みを生かす、イノベーション(新しい価値を打ち立てる)、人事の問題に取り組む等、本を通じて知りえたさまざまな知識を実際の野球部運営に生かしていきます。

          「マネジメント」の中には「組織を通じて社会に貢献する」と書かれていて、それをみなみたちが素直に実践するという箇所が印象的でした。普通の企業でさえ利益優先で「社会の問題についての貢献」なんて二の次になりがちなのに、本当は与えられるだけでよいはずの高校野球の部員達が、少年野球の指導や他の部活動との連携を提案したり、不良たちをマネージャー仲間に引き入れたりと、本気で社会活動について考えているんです。

          また、人を弱みで切り捨てるのではなく、強みを最大限に生かした配置を行う人事も、今の企業のトップたちに見せてやりたいですよ。(´Д`)=3

          物語終盤、『マネジメント』から得た知識と、自らの行動力によって、みなみは組織の改革を成功させ、甲子園出場を目前に控えた決勝戦。ここでは『マネジメント』でさえ予測できなかったさまざまなドラマが生まれることになります。
          この終盤がただの自己啓発に終わらず、小説としてちゃんと着地しているのが、いい意味で予想を裏切られました。

          作者・岩崎夏海はAKBのたち上げにも参加されていた方だそうで、
          いつかAKB主演で映像化されるのもそう遠いことではないかもしれません。→2011年映画化されました。


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          昭和モダンと、切ない謎解き 「小さいおうち」 中島 京子

          2010.08.25 Wednesday

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            小さいおうち」は戦前、女中をしていたタキおばあちゃんが、当時の暮らしを思い出しながら書いたノートをもとに、昭和10年代と現代のタキさんの視点が交互に描かれていきます。また、物語の終盤は一種の謎解きのような雰囲気があり、物語の展開や視点も変わっていき、最後の結末に驚かされます。

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            タキさんは14歳で奉公にあがったお宅で美しい未亡人の時子さんに出会います。やがて再婚した時子奥様、その息子・恭一ぼっちゃんとともに玩具メーカー重役の平井家に入ります。新しく建てられた赤い屋根の家はモダンで明るい雰囲気に満ちいていました。時子奥様の元で働くことはタキさんの喜びであり、誇りでもありました。


            とても魅力的だったのは、昭和初期の東京のモダンな雰囲気や、文化住宅の生活の様子でした。赤い三角屋根、丸窓にはめられたステンドグラス、白い石造りのポーチ。季節の折々につくるタキさんの料理や、奥様や旦那様の外出にお供して食べた洋食や、お使い物の洋菓子など…。当時の東京のモダンな様子が伝わってきます。中国で戦争は続いていたものの、まだそれほど日常に差し迫った事柄ではなく、人々の暮らしぶりものんびりしていたんですね。


            物語は終盤、大きな展開を迎えます。時子奥様は旦那様の会社の若い社員、板倉さんと恋に落ち、戦争の影響は少しずつ少しずつ平井家を侵食していきます。出征する板倉さんを追いかけるため、家を出ようとする奥様に、タキさんは意外な提案をします。そのことがのちのちまでタキさんを苦しめることになるのですが…。


            「女中」の役目と自分の感情の間で揺れるタキさんがとった行動は、死ぬまでずっと彼女に後悔の念を抱かせてしまいます。「女中」という、今では失われてしまった職業を現代の人間にもわかりやすく蘇らせてくれた中島京子さんの表現力がすばらしかったです。「女中」は、単なる家政婦ではなく、家族の一員のような存在で、時には家族を守るために文字通り人生をかけることもあるんですね。現代の家政婦と、江戸時代の奉公の中間くらいの立場かもしれません。

            大正〜昭和初期の文化住宅が展示されている江戸東京たてもの園の洋館には、書斎や台所、寝室のほかにちゃんと女中部屋もあります。小さくて暗い部屋ですが、女中さんにとってはお城だったのでしょうね。
            リアル「小さいおうち」、江戸東京たてもの園の小出邸には、実際に女中部屋があります。→

            物語の終盤に関連する絵本「ちいさいおうち」

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            「小さいおうち」は山田洋次監督により映画化が決定しました。どんな雰囲気の映画になるか今から楽しみです。
            「小さいおうち」映画化について→
            映画「小さいおうち」感想→

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            「エルニーニョ」→
            「女中譚」→
            「冠・婚・葬・祭」→
            「花桃実桃」→
            「FUTON」→
            JUGEMテーマ:小説全般

            ↓ネタバレ的な雑記。謎解きについて。

            「夢の守り人」 上橋 菜穂子

            2010.08.20 Friday

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              夢の守り人」は、守り人シリーズの中でも異色の作品です。シリーズの世界では、この世「サグ」と重なり合って存在する精霊の世界「ナユグ」があるのですが、その他にも泡のように漂いながら、時折りこちらの世界と重なりあう異世界が存在します。
              その<花>と言われる異世界は人の夢を糧として<花>を育み、発芽し、次の<花>に種を残してゆきます。

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              『夢の守り人』あらすじ


              前作「闇の守り人」での事件が終わり、主人公バルサは故郷カンバルから新ヨゴ皇国のタンダのもとへ戻る途中、旅の歌い手・ユグロを助けます。

              一方、タンダは幾日も目覚めない姪のカヤを助けるため、師匠トロガイが禁じた<魂呼ばい>で<花>の中へカヤの魂を探しに行くのですが、逆に<花>を守る<花番>に<花守り>にされてしまいます。

              やがて<花>を巡る因縁に、トロガイとユグノが関係していることがわかるのですが、「精霊の守り人」でバルサたちと深い絆をもつ新ヨゴの皇子・チャグムもまた、<花>の夢にとりこまれてしまいます。


              「夢の守り人」では、バルサとタンダがお互いをどれだけ思いあっているかが語られます。タンダ凶暴な<花守り>になり、バルサたちを襲うことになるのですが、バルサは
              「…冗談じゃない。あいつを殺すくらいなら、あいつに、この首をくれてやるよ」
              と言い放ちます。バルサの思いが吹き出してくるようなセリフでした。。・゚・(*ノД‘*)・゚・。

              精霊の守り人」でタンダに命を救ってもらった狩人・ジンも、そんなバルサの思いと願いを尊重して、タンダと戦う時決して殺さぬよう、帯で剣を縛ります。このシーンはジンの人となりと武人の誇りを表わしていてかっこよかった。

              「夢は身に余る魂をもってしまった人の自由に舞える空であり、逃れられがたい罠かもしれない」
              <花>は人々が「もっと別の人生があったんじゃないか」という、だれしもが人生に対して持つ不安や絶望を利用して魂を呼び寄せます。心地よい夢は現実を忘れさせてくれますが、それに逃げてばかりはいられない。トロガイの語る夢の定義は、こちら側に生きるわたしたちにも当てはまる教訓だと思います。

              『夢の守り人』ではトロガイの過去も語られます。その魂の美しさから<花番>から求婚されていたとは。
              トロガイは上橋菜穂子先生が文化人類学のフィールドワークで出会った女性たちをモデルに書かれたそうです。トロガイはたくましくもやさしい、地に根ざした女性の魂を宿した存在なのですね。


              偕成社版の挿し絵はスタジオジブリの二木真希子さん。
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              上橋作品感想


              「物語ること、生きること」→
              「精霊の守り人」→
              「闇の守り人」→
              「天と地の守り人」→
              精霊の守り人シリーズ外伝「流れ行く者」→
              精霊の守り人シリーズ外伝「炎路の旅人」→
              精霊の守り人レシピ集「バルサの食卓」→
              「獣の奏者 闘蛇編・王獣編」→
              「獣の奏者掘|亀翳圈廣
              「獣の奏者検ヾ扱詈圈廣
              「獣の奏者 外伝 刹那」→
              「<守り人>のすべて 守り人シリーズ完全ガイド」→
              守り人レシピ「バルサの食卓」→
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              「闇の守り人」 上橋 菜穂子

              2010.07.19 Monday

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                何度も読み返せる本は決して多くはありません。まして、読むたびに感動させられる本というのは一握りだと思います。「闇の守り人」はそんな一握りの貴重な物語です。物語に登場する青い宝石・ルイシャのように、「闇の守り人」の物語自体が光をはなち、切なくも美しい世界をつくりだしています。

                前作「精霊の守り人」で、異世界ナユグの精霊の卵を産みつけられてしまった新ヨゴ皇国の第二皇子・チャグムの用心棒だったバルサは、チャグムを守り、ともに暮らすうちに、自分を守り育ててくれた養父・ジグロとその過去をもう一度見つめ直そうと考えます。やがてバルサは25年前にジグロに連れられて通った洞窟を通り、故郷カンバルへと向かいます。洞窟の中で「闇の守り人(ヒョウル)」に出会い、槍を交えるバルサ。それは新たな運命の始まりでした。

                バルサの父はカンバル王の主治医でしたが、王位争いの陰謀に巻き込まれ、親友のジグロに幼いバルサを託します。やがて追ってきた王の追手は、ジグロがかつて槍を交えた友人たちでした。友人たちを倒しながら生き延びねばならなかった深い苦悩を背負ったまま亡くなったジグロのため、彼の生きざまをゆかりの人に伝えようとするバルサの前に、ジグロの弟・ユグロから刺客が送りこまれます。

                カンバルには「ルイシャ送りの儀式」という、精霊の王がカンバルの民に宝石ルイシャを送る秘儀があるのですが、そのためには槍の名手が「闇の守り人」と戦わなければなりません。
                ある理由から「闇の守り人」と戦うことになったバルサ。「闇の守り人」とバルサが槍を交えるたびお互いの感情が交錯し、傷となってバルサの心を突き刺していきます。
                この「槍舞い」のシーンは何度読んでも鳥肌がたって、思わず泣いてしまいます。

                物語りももちろん素晴らしいのですが、バルサの故郷カンバルの描写が印象的でした。標高の高い山国のうすい青空、乾いた風、すり鉢状の地形、芋やヤギの乳をつかった料理…。読んでいる方も厳しくも美しいカンバルという国を旅しているような感覚になります。

                単行本も二木真紀子さんの挿絵つきですてきなのですが、文庫版ではアニメ「精霊の守り人」の監督、神山健治氏が解説をよせています。アニメは原作とは解釈や設定がやや異なりますが、アニメの世界観もすばらしいです。

                闇の守り人 (新潮文庫)
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                精霊の守り人 (新潮文庫)
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                「闇の守り人」にもでてきたロッソ(コロッケ状のたべもの)
                ジョコム(木の実入りの焼き菓子)など、上橋作品のたべものレシピ集。上橋作品は食べものもおいしそうなんです。(^^)

                バルサの食卓 (新潮文庫)
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                上橋作品感想


                「物語ること、生きること」→
                「精霊の守り人」→
                「夢の守り人」→
                「天と地の守り人」→
                精霊の守り人シリーズ外伝「流れ行く者」→
                精霊の守り人シリーズ外伝「炎路の旅人」→
                精霊の守り人レシピ集「バルサの食卓」→
                「獣の奏者 闘蛇編・王獣編」→
                「獣の奏者掘|亀翳圈廣
                「獣の奏者検ヾ扱詈圈廣
                「獣の奏者 外伝 刹那」→
                「<守り人>のすべて 守り人シリーズ完全ガイド」→
                守り人レシピ「バルサの食卓」→
                守り人レシピ「バルサの食卓」→
                JUGEMテーマ:ファンタジー


                レビューポータル「MONO-PORTAL」

                『神去なあなあ日常』 三浦しをん

                2010.06.01 Tuesday

                0
                  三浦しをんの描く山の仕事と山の暮らし。穏やか暮らしなんてとんでもない、楽しく素っ頓狂な林業ライフ『神去なあなあ日常』を読みました。

                  『神去なあなあ日常』あらすじ


                  高校を出たらフリーター希望のイマドキの若者・平野勇気は、親と担任の策略によって携帯も通じないど田舎で、林業に携わることになった。最初は何度か脱走を試みるものの、今まで体験したことのない山でのできごとに驚きながら、徐々に神去村の生活に魅力を感じるようになる。

                  神去村では勇気の指導役で破天荒な天才木こり・ヨキ、奥さんのみきさん、繁ばあちゃん、おやかたさんの精一さんと佑子さん夫婦、三郎じいさん、巌さんなど村の個性的なメンバーに囲まれ、ヨキとみきさんの夫婦喧嘩に巻き込まれたりします。(^^;)

                  そんな中、勇気は佑子さんの妹で小学校の先生をしている直紀さんに恋心をいだくが、直紀さんはずっと精一さんのことが好きだった。何もないような村でも、けっこういろいろなことがあるようで…。

                  神去なあなあ日常
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                  三浦 しをん 徳間書店 売り上げランキング: 2796

                  四季を通じて描かれる山の風景と、村の行事、山仕事



                  「林業」という一般的になじみのない職業を、ここまで詳細に、かつ面白く書けるってすばらしいです。
                  私は田舎育ちなのでよく家族で山に行ってました。雨上がりの雲が渡る様や、木や草の独特のにおいなど、読んでいて小さいころに感じた山の「感触」みたいなものが伝わってきました。確かに、静かなイメージの山ですが、実は動物の声やはずれの音、風の音など、案外に騒々しいんです。

                  神隠しや神去村のお祭りのシーンは、実際にこんなことあるのかな?と思うのですが、それは実際に山へ入って体験したものにしかわからないのでしょうね。




                  三浦しをん作品感想


                  「むかしのはなし」→
                  「舟を編む」→

                  「風が強く吹いている」→

                  「きみはポラリス」→

                  「木暮荘物語」→

                  「星間商事株式会社社史編纂室」→
                  「三四郎はそれから門を出た」→
                  「まほろ駅前番外地」→
                  「まほろ駅前狂騒曲」→
                  「まほろ駅前多田便利軒」→


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                  JUGEMテーマ:本の紹介

                  レビューポータル「MONO-PORTAL」

                  「センネン画報 その2」 今日マチ子

                  2010.05.17 Monday

                  0
                    ああ、今回も。読むたびに切なく、胸の奥がじんとなる。
                    言葉のない世界の風景は、言葉以上に心にせまる。
                    今日マチ子さんの「センネン画報」はブログで描かれているイラストマンガでセリフはありません。

                    高校生のカップルの何気ない日常、そこに潜む切なさ、愛おしさ、心の闇、エロス、死の暗示。

                    白いワンピースでトマトサンドをかじる女の子。
                    こぼれおちるトマトの赤。
                    ふたりで服のまま沈む、プールの青。
                    こわれそうな、涙がでそうな不思議な情景。
                    毎回、ページをめくるたびドキドキします。

                    描き下ろし作品「O原の夢」。こちらは海辺での不思議な出会いの物語。高校生ふたりの情景にどこかあやうげな、はかない雰囲気を感じるのは、この結末があったからなのかもしれません。

                    センネン画報→

                    センネン画報 その2
                    センネン画報 その2
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                    今日マチ子 太田出版


                    センネン画報
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                    今日 マチ子 太田出版

                    『エデン』 近藤 史恵

                    2010.03.28 Sunday

                    0
                      本読み達を魅了した自転車ロードレース小説「サクリファイス」。その待ちに待った続編「エデン」が発売されました。( ̄▽ ̄)
                      相変わらず自転車レースの知識は皆無に近い私ですが、読んでいくうちにどんどんツール・ド・フランスの世界へ引き込まれて行きました。


                      物語は前作の事件から3年後、スペインのチームからフランスのパート・ピカルディに移った白石誓(チカ)はロードレースの最高峰・ツール・ド・フランスへ出場することになったが、その直前、スポンサーの撤退によりチーム存続の危機を知らされる。

                      そんな中、パート・ピカルディではフィンランド人のエース、ミッコよりも、英雄不在のフランスに現れた他チームの若きエース・ニコラに勝たせるためミッコを犠牲にしようとする。ニコラが勝てばツール・ド・フランスの注目が高まり、長じてそれはパート・ピカルディを活かすことへもつながり、選手の契約にも有利に働くというが…


                      今回、チーム間での確執やドーピング薬物問題など、ロードレースの闇部分についても触れられています。


                      そして物語のカギになるのがフランス人の若きエース・ニコラ。
                      明るく、屈託のない性格で、天賦の才能と勝利への自信に満ちたエースです。「サクリファイス」の石尾さんとは対極のような性格で、走ることを本当に楽しんでいるようでした。
                      まるで勝利への重圧も苦悩も彼だけ遠いところにあるような。
                      勝利者に贈られる(他の人間がのどから手が出るほどほしい)ぬいぐるみをあっさりと日本人の女の子にあげちゃうくらいですし。

                      けれど走るためにはどうしても「犠牲」を求められてしまう。それはニコラであっても例外ではなかったのですが…

                      「サクリファイス」ではスピード感・疾走感に酔わされ、「エデン」では戦略に魅了されます。タイムトライアル、山岳、コースやレース展開、天候などさまざまな要因を計算し、瞬時に戦略を建てるには、若さよりも経験値が物を言う世界なのですね。


                      エデン
                      エデン
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                      近藤 史恵 新潮社 売り上げランキング: 2851



                      サクリファイス (新潮文庫)
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                      サクリファイスシリーズ


                      サクリファイス→
                      サヴァイブ→
                      キアズマ→スティグマータ→

                      ●近藤史恵読書リスト
                      ビターな恋愛
                      「スタバトマーテル」→
                      「アンハッピードッグス」→

                      かわいいくて切ないミステリ
                      「ふたつめの月」→
                      「賢者はベンチで思索する」→

                      「あなたに贈るキス」→
                      「天使はモップを持って」→
                      「モップの精は深夜に現れる」→
                      「モップの魔女は魔法を知ってる」→

                      下町のビストロ・パ・マルの三船シェフが解き明かすおいしそうな日常ミステリ
                      「タルト・タタンの夢」→
                      「ヴァン・ショーをあなたに」→

                      梨園の世界を舞台にしたミステリ
                      「ねむりねずみ」→

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