2017.10.15 Sunday

『花の降る午後』 宮本輝

宮本輝の『花の降る午後』読了。久しぶりに宮本輝作品を読んだのですが、やはり宮本輝作品はいい。
物語に出てくる人々がそれぞれ懸命に生き、困難に抗おうとしている姿が時に悲しく、愛おしいです。
ヒューマンドラマであり、恋愛物語でありサスペンスでもある。読み始めると物語にひきこまれていきます。

『花の降る午後』あらすじ


夫を癌でなくした若き未亡人・典子は夫の残した神戸のフランス料理店「アヴィニョン」のオーナーとなる。その後四年必死で働き店も繁盛している。

そんなある日、夫の療養先で購入した絵の作者・高見雅道から「絵を貸してくれ」と連絡が入る。個展を開くという雅道は典子に売った「白い家」を展示したいのだという。
時を同じくして典子の周りでは不穏な出来事が続く。どうやらそれには、店の乗っ取りを画策する動きがあるらしい。

恋と戦い


若き画家との情熱的な恋、店を狙う荒木夫妻の陰謀。店の従業員絡みのトラブルが起こり、家族ぐるみの付き合いのある隣人のリード・ブラウンの家にも危害が及びます。

典子の周りには次々とトラブルが起こるけれど、顔が利く知り合いの華僑や探偵社を利用して情報を得たり、従業員へのトラブルも4年間のオーナー経験からに臨機応変に対応。その合間を縫って、若い画家・雅道との恋に溺れていきます。トラブルと恋、そのスリルを糧にするように、彼女はしたたかに、美しく凛々しくなっていきます。

この恋と乗っ取り計画の行方が気になり、ページを読む手が止まりませんでした。また、物語の中に時折差し込まれる亡き夫の思い出や、従業員たちの人生なども丁寧に描かれていて、人生って大変で面倒だけれど、こうして時々、愛おしいことが起こるから、きっと生きていけるのだろうな。

典子は従業員にも姑にも周囲の人達にもが愛されすぎな気もするけれど、作者はあとがきで「善人は幸せにならなければならない」と書いています。

主人公は作者の愛を受けて、幸せをさがし、読者もいつの間にか彼女とその周りの人々が、幸せであるようにと願うのです。

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宮本 輝
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レビューポータル「MONO-PORTAL」

2016.12.29 Thursday

訳あり物件を紹介する、仕事。東京ロンダリング『失踪.com』

東京ロンダリングの続編『失踪.Com 東京ロンダリング』読了。失踪.comとは、相場不動産とつきあいのある失踪者専門の探偵社の名前です。

事故や事件のあった物件について、客に提示する義務をなくすため、一度そこへ人を住まわせる「ロンダリング」という職業にまつわる短編集です。一話一話は独立していますが、全体を通して大きな流れになっており、相場不動産をめぐる、不穏な動きが見えてきます。

東京ロンダリング 感想→

前回は、ロンダリングを職業とする主人公りさ子が、ロンダリングに関わることで再出発してゆく話でしたが、今回はロンダリングを紹介する相場不動産と、その周囲の人々が物語の中心です。りさ子も少し、でてきます。

物語では、相場不動産が行っているロンダリングが、何者かによって妨害されているようなのですが、そのやり方がなんとも後味が悪いというか。自己啓発に関連した人間が、相場不動産に関わる人達をじわじわと自分たちの思い通りに動かしていく。それは相場不動産の従業員、まあちゃんにも忍び寄ってくる。

果たして、彼らがロンダリングを阻止する目的は何なのか。

失踪.com


今回のテーマはロンダリングよりも「失踪」のような気がします。この話を読むと、世の中にはある日突然、失踪してしまう人々が大勢いるということに驚きました。

自分の生活や家族や友人をある日突然捨ててしまうって、私にはただ怖いとしか思わないのですが、でも、あんがいその時になってしまうと、驚くほど簡単に、捨ててしまえるものかもしれない。

失踪.Com 東京ロンダリング
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東京ロンダリング
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レビューポータル「MONO-PORTAL」

2016.05.09 Monday

薄くてかわいい、文鳥文庫の本。

かわいい本を買いました。文鳥社、という小さなデザイン事務所が出版している「文鳥文庫」です。16ページ以内の短編が、折りたたまれた一枚の紙に印刷されています。文鳥が印刷されたかわいい封筒に入っていて一話150円ほど。8冊セットで1200円。

宮沢賢治や夏目漱石など、文豪たちの名作を中心に、村上春樹など現代作家の作品も。薄くて軽いので、通勤や外出の時ににちょっと読むにも便利です。紙の肌触り、活字のバランス、本のデザインが美しくて、時々取り出して読み返したくなります。

文鳥文庫

文鳥文庫 幸田文 ゆきもち

文鳥文庫

手軽に読めるので、普段読まない作家の小説に挑戦してみるのもいいですね。わたしも今回、幸田文を初めて読みました。これをきっかけに、幸田文の作品を読んでみたくなりました。

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2015.11.09 Monday

「誰かが足りない」 宮下 奈都

宮下さんの「誰かが足りない (双葉文庫)」読了。レストランと食べ物の話かとおもいきや、レストランに予約を入れるまでの、様々な人々のオムニバスになっています。

古くからの老舗で、人気のレストラン・ハライ。予約も困難なこの店に、どんなに人々が、どんな思いで食事にこようとしているのか…。

誰かが足りない (双葉文庫)
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就職活動に破れ、彼女にも去られた青年、認知症のため、愛する夫との思い出を忘れてしまう老婦人、母の死が原因でひきこもり、ビデオカメラを通じてしか人と話せない青年…。

彼らに共通するのは「孤独感」でしょうか。状況はさまざまですが、彼らはみな、人との関わりに対して孤独感と閉塞感を感じているように感じました。たった一人でいても、心配する家族がいたとしても。

けれど、彼らは、その状況からあと一歩、踏み出すきっかけとしてレストラン「ハライ」を訪れるのです。
願わくば、一杯のスープやオムレツが、彼らの晩餐を彩り、明日への一歩を踏み出すことができますように。

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宮下奈都作品感想


太陽のパスタ、豆のスープ→
メロディ・フェア→

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2015.07.02 Thursday

「蛍川・泥の河」 宮本 輝

先日、テレビで宮本輝さんをみかけ、久しぶりに「蛍川・泥の河」を読み返してみました。物語の舞台は両方とも昭和30年代。生と死が、現代よりも濃密に感じられた小説でした。

泥の河 あらすじ


川のほとりにあるうどん屋の息子・信雄は、ある日、川にやって来た舟の息子、喜一と知り合う。喜一は母と姉と、舟で暮らし、各地を放浪していて、喜一の母はどうやら、人に言うのがはばかられる商売をしているらしい…

昭和三十年代は、まだ、荷馬車や舟で暮らす水上生活者が多くいたり、戦争の傷跡がそこかしこに残っていた時代です。主人公は、物語の中でなんども、死を含めた人との別れを経験します。

主人公の父親も戦争帰りで「一生懸命生きて、死ぬときはスカみたいな死に方をするもんや。」と語って聞かせます。生と死が身近で、それでいてとても濃厚に迫ってくる、そんな時代だったのかもしれません。

私が好きなのは、天神祭の場面です。お祭りの喧騒と臭いや、ふたりのワクワクした気持ちが伝わってくるようで。信雄と喜一がお小遣いをもらって、目当てのロケットを買いに行くんですが、喜一のポケットに穴が空いて、小銭を落としてしまうんです。ここがもう、切なくって…。

お祭りって楽しいけれど、どこか寂しくて、そんな寂しさに胸がぎゅっとなるんです。

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蛍川 あらすじ


昭和三十七年、三月。中学生の竜夫は、顔なじみの銀蔵爺から、今年は蛍の大群が発生すると聞き、幼なじみの英子を誘おうと考える。英子とは昔、ホタルの大群がきたら観に行こうと約束をしていた。

しかし、年老いた竜夫の父が倒れ、竜夫と母の生活は困窮することに…。


ここでも、死が濃密に描かれます。年老いた父親の死、友人の死。思春期特有の父親への憎悪も描かれます。この時期の男子は、とかく、父親が疎ましいものです。けれど、父の死後、父にゆかりのある人達と交流することで、彼が想像したこともなかった、若き日の父親像とも対面します。

年老いた父親と思春期の少年の葛藤のような感情は、宮本輝の自伝的要素も入っていて、これらの設定はライフワークである「流転の海」にも受け継がれているのではないでしょうか。

一方で、蛍の大群には、力強い「生」を感じます。おそらく、この蛍を観た後、主人公とヒロインは別れてしまうのでしょう。そんな別れの切なさも、蛍の乱舞が激しいほど、切ないんです。


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レビューポータル「MONO-PORTAL」

2014.05.23 Friday

「ダーティ・ワーク」 絲山 秋子

絲山秋子さんの「ダーティ・ワーク」を読みました。
最初、タイトルをみたときは、ハードボイルドな内容を想像したのですが、読んでみると、まったくちがいました。いくつかの男女の恋愛や、日常が淡々とつづられていきます。

ダーティ・ワーク」は、ローリング・ストーンズのアルバムタイトルと曲名がつけられた、数組の男女の日常の断片が描かれていく短篇集。各章に登場する人物たちは、それぞれ別の登場人物とか関わっている。

登場人物たちが作中でつながって物語は、読んでいてワクワクするのですが、絲山作品はそうじゃない。
「つながり」というより「関わり」かな?うまく表現できないのだけど。明るい「つながり」というより、もっと淡々としつつ、深い「関わり」のような気がします。

人は生きていく上で、かならず誰かと、どこかで関わっている。そんな人々のある日の日常や感情が描がれている。
すごく面白い、と言われたらそうじゃないし、ワクワクする話でもない。
でも、じわじわと惹き込まれる。そんな物語です。

ダーティ・ワーク (集英社文庫) (集英社文庫 い 66-1)
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絲山秋子作品感想
「沖で待つ」

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2014.05.10 Saturday

『お父さんと伊藤さん』 中澤 日菜子

父親と彼氏と私との奇妙な同居生活を描いた『お父さんと伊藤さん (講談社文庫)』を読みました。

『お父さんと伊藤さん』


彩は、34歳でアルバイト生活をしていて、同棲中の彼氏の伊藤さんとは、20年が離れている。世間からみたら負け組なふたりだけれど、本人たちはこの生活を楽しんでいる。けれど、ある日、兄のところで暮らしていた彩の父親が突然やってきて、奇妙な同居生活が始まることになり…。

お父さんと伊藤さん (講談社文庫)
中澤 日菜子 講談社 (2016-08-11)売り上げランキング: 74,441


取扱注意の父親


彩のようなアラサー世代以上の「お父さん」は、なにかと取り扱いが難しい世代です。彩と伊藤さんの生活や仕事についても、お父さんの価値観からすると、彩たちの生活も最初は「普通ではない=よくない」こととして捉えています。

この世代の「お父さん」は、自分の価値観と子ども世代の価値観、世間とのギャップがうまく埋められないし、伝える方法が下手なんでしょうね。

彩のお父さんも、家族に対してだけは甘えから、威張ったり、説教をしたりするのですが、家族のクッション役だったお母さんがなくなると、当然、子どもたちには反発されてしまいます。彩の家に来ても当初は伊藤さんと顔を合わすのが嫌で、部屋に引きこもったり、ぶらりとどこかへでかけたりして彩をやきもきさせます。

やがて彩は、父が兄夫婦と同居できなくなった、「本当の理由」を知ることになるのですが…。

彩の気持ちもわかるし、お父さん側の立場にたってみると、その切ない気持ちもわからないわけではないし。
家族だからこそ、難しいんですよね。特にお父さんという生き物は、自分の気持を正直に伝えるのが下手だからなあ。

それにしても、伊藤さんの正体、一体何者なんだ…。

お父さんと伊藤さん
お父さんと伊藤さん
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中澤 日菜子 講談社 (2014-01-08)売り上げランキング: 119,408


JUGEMテーマ:書評

レビューポータル「MONO-PORTAL」

2013.10.17 Thursday

太宰嫌いが気に入った太宰作品 「グッド・バイ」 太宰治

この間読んだ、伊坂幸太郎さんの「バイ・バイ・ブラックバード」が太宰治の「グッド・バイ」をモチーフにしていると書いてあったので、太宰治の「グッド・バイ」も読んでみました。

グッド・バイ あらすじ


闇市で儲け、10人もの愛人をかかえていた雑誌編集者の田島が、田舎の妻子を呼び寄せるため、女達と別れる決心をする。そこで闇商売でなじみのあったキヌ子という女に、女房のふりをしてもらい、女達と別れることを思いつくが、キヌ子の傍若無人な態度に振り回されてしまう。意を決した田島は、彼女をものにして、言うことを聞かせようとするのだが…。

グッド・バイ (新潮文庫)
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太宰嫌いが気に入った太宰作品


私はもともと、太宰が大っ嫌いでした。女にだらしがないし、なにかっちゃあ自殺したがるし、小説を書かなければほんと「人間失格」なヘタレ野郎だと思ってたので。

太宰の小説も、どうせ陰々滅々としてるんだろうから、読みたくもない、と今まで思っていたのですが、「グッド・バイ」は意外にもテンポが良くて、ユニークであっけらかんとした、面白い小説でした。

とにかくもう、キヌ子のキャラクターがかっこいい。誰もが振り返る美人なのに、怪力で大食漢で口汚い。
耐えかねた田島が酒に乗じて襲おうとすると、いきなりぶん殴って放り出す!(*´∀`)ノ

いや〜、読んでいて痛快でした。戦後まもなくの時代なのに、キヌ子は男性に依存せず、逆に田島を手玉に取るところがよかった。

「グッド・バイ」は未完の小説と聞いていたので、さぞ中途半端で終わっているかとおもいきや、未完とはいえ話がきちんと収まっていて、次の展開が気になる感じで終わっている。むしろこれで完結といわれても納得できる感じの終わり方でした。


文豪作品を映像化したBUNGO-日本文学シネマ-


BUNGO-日本文学シネマ-」は文豪たちの小説をドラマ化したテレビシリーズ。「グッド・バイ」は歌手の山崎まさよしさんと、女優の水川あさみさんが出演。
BUNGO-日本文学シネマ- グッド・バイ [DVD]
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太宰関連
グッド・バイをモチーフにした小説「バイ・バイ・ブラックバード」
太宰作品をモチーフにした、ダメ男たちの舞台「はぐれさらばがじゃあねといった」

JUGEMテーマ:小説全般

2012.12.30 Sunday

北京・上海・台湾、非日常が混ざり合う旅小説 「のろのろ歩け」 中島京子

中島京子さんの「のろのろ歩け」は北京・上海・台湾を舞台に、そこへ旅する女性たちの体験を綴ったロードノベルのような感じです。「感じ」と書いたのは、旅だけじゃなと思ったから。中島京子さんの小説は、日常と、ちょっと不可思議な非日常が織り合わさって、独特の雰囲気を醸し出しているのですが、今回は中国の都市や台湾といった異国が「不可思議」の部分にあたるのでしょう。

実際、中島さんの描かれた中国や台湾は、魅力的でエネルギーにあふれています。北京の高層ビルと庶民的な家が混沌とする道を自転車で走り、上海では1930年台の老上海の面影を街角でみつけ、台湾では何故か懐かしく感じる風景の中、列車で旅するなど、日本では味わえない雰囲気がこれらの都市にあるのでしょう。

北京の春の白い服


1999年、夏美は新しいファッション誌を立ち上げるために、北京を訪れたものの、「北京には春がない」と春服を否定する現地スタッフたちとの交渉は難しく、問題だらけ…。仕事小説なのですが、北京の街の描写がいきいきとしていて読んでいると新しいことが起こりそうな、わくわくした予感が感じられます。


時間の向こうの一週間


少しミステリタッチのお話。夫の赴任に伴い、上海に暮らすことになった亜矢子は、忙しい夫の変わりに、現地スタッフの女性と家探しをすることになる。しかし、現れたのはイーミンと名乗る男性。彼とともに、1930年台の老上海の香りが残る上海の街を探索する。濃密な時間を共有する2人だけれど、イーミンにはある秘密があって…。

亜矢子の現実と夢と空想が交錯しあって、老上海(オールド・上海)の街角に迷い込んだようなお話でした。
この話、「恋する惑星」の撮影監督クリストファー・ドイルが映像を撮ったら、すごくかっこよくてエキゾチックな作品になるだろうな…。そんな想像が膨らむお話でした。


天燈幸福


母親を亡くした美雨は、母の思い出の地・台湾で、母と関わりのあった3人のおじさんを尋ねる旅にでる。美雨はこの3人のおじさんの中に母のかつての恋人がいたのではないかと推測して、訪ねていくのですが、2人のおじさんには否定されてしまいます。

いよいよ3人めとの約束に向かう時、電車の中でおせっかいやきの青年、トニーと出会い、あちこち観光に連れ回されてしまいます。約束の時間に大幅におくれてしまうけれど、美雨はしだいに台湾のゆっくりした時間に馴染んでいきます。ようやく3人めのおじさんに会えると思ったらそこには初老の女性がいて、母との思い出を話してくれます。
おせっかいなほどやさしい台湾の人たち、流暢な日本語を話す老人たち、台湾は、日本人にどこか懐かしく、ノスタルジックを感じさせます。

タイトルの「のろのろ歩け」は中国語で慢慢走(マンマンゾウ)、「のんびり行こう」の意味。ものすごい勢いで街の開発が行われていた北京でも、現地の人たちは変化に対応しつつ、のんびり生きているのかもしれません。

のろのろ歩け
のろのろ歩け
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中島 京子 文藝春秋 売り上げランキング: 196,484


「かたづの!」→
「小さいおうち」→
「エルニーニョ」→
「女中譚」→
「冠・婚・葬・祭」→
「花桃実桃」→
「FUTON」→
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レビューポータル「MONO-PORTAL」

2012.07.25 Wednesday

「アルジャーノンに花束を」 ダニエル・キイス

ダニエル・キイスの名作「アルジャーノンに花束を」を読みました。

32歳になっても幼児の知能しかないチャーリイ・ゴードン。そんな彼にあるとき大学の教授たちが、頭をよくする手術をしてくれるという。
物語はチャーリーが書いた経過報告という形で綴られていきます。手術前の報告書は句読点もなく、ひらがなや誤字だらけの文章でしたが、時間がたつにつれ、どんどんチャーリーの文章がうまくなっていき、最終的には学者レベルまで到達します。けれど、手術によって知能を手に入れたチャーリイを待っていたのは、今まで友人だと思っていた人々が自分を笑っていた事実、頭が良くなればなるほど、チャーリイは孤独に陥っていきます。

物語の後半、チャーリイと同じ手術を受けたネズミのアルジャーノンが不可解な行動を起こすようになり、そしてチャーリイも少しずつ獲得した知能が後退してゆく事実に向き合うことに…。

文庫版の冒頭、ダニエル・キイスはこう書いています。
「この本を読んださまざまな人々が、自分自身にチャーリイ・ゴードンを見出す」
と。
実は私も読みながら、チャーリイと自分に共通する部分を感じました。両親は私を愛してはくれましたが、ほんとうは男の子を望まれていました。周りに合わせることが苦手で、いじめられたこともあります。
そうした状況を打破するには、子供心に勉強をして周りを見返せれば、なめられなくなり、両親も期待をかけてくれるのではないかと。確かに知識はある程度蓄えることができましたが、不安は常につきまといます。

チャーリイは、せっかく獲得した知識が消えて行くのを、ただ観ているしかない。もしそんな状態に自分や家族がおかれたら、どうなってしまうのだろう…と考えずにはいられませんでした。

チャーリイはきっと、頭の良くなった半年くらいの間に、他の人が一生かかってもできない体験をしたことをは確かです。物語の終わり、その後のチャーリイの人生が幸せに満ちたものになるようにと、願っています。


アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫)
ダニエル キイス 早川書房 売り上げランキング: 809


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