『山の郵便配達』彭 見明

2023.07.27 Thursday

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    古き良き美しい風景と欲望の都会。少し前の中国を舞台に、そこに生きる人々の暮らしを描いた短編集『山の郵便配達』。

    日本の小説とは異なる設定や描写がおもしろく、読み始めると面白くて物語の中に入りこんでしまいました。


    山の郵便配達


    映画の方を先に見たので、原作との違いが楽しめてよかったです。映画では息子を語り部にしていましたが、小説では父親視点で物語が綴られていきます。

    山間部を歩いて郵便物を届ける配達夫は、ほとんど家に帰らない生活なので、最初は父と息子の関係はぎこちなくはじまります。父親は配達する際の心構えとノウハウを息子に伝えながら、自らの人生をかえりみます。

    映画と同じく、年老いた父親が川で息子に背負われて思わず涙するシーンは、映画と同じく小説でも涙してしまいました。


    沢国


    湖のほとりで漁業を生業とする家の娘と兄嫁が小さな舟で魚をとる話。物語自体にはさしたる展開はないのですが、娘は少女らしい感傷で、時々腹を立てたり、気まぐれに湖への道順を変えてみたりします。

    兄嫁のような結った髪より、自分の三つ編み気に入っている少女。そんな思春期の短い時間と湖の美しい風景が重なって、少し切ない気持ちになる話でした。

    南を避ける


    老田は成長した次女が南の都会へ行ってしまうのを恐れ、文革時代の仲間たちを訪ねて相談をする。彼らは老田より成功していたが、親身になって相談に乗ってくれた。

    助言のおかげで次女は落ち着き、真面目な彼氏ができたのもつかの間、書き置きを残して都会へ行ってしまう。

    80年代からはじまった中国の改革開放によって都会へ行ってしまう若者たちと、残された年寄りをテーマにした話。都会へ行った若い女性の急激な「変化」は、これまでの中国にはなかった価値観なのでしょうね。

    過ぎし日は語らず


    文化大革命時代、私塾の教師と生徒、その息子との交流の話。当時の田舎ではまだ、公立の学校に通わせる余裕はなかったため、資産家の家を学校として使っていたそうです。

    先生の小さな息子との友情と別れ、先生がくれた不思議な箱、主人公が当時を振り返る形で書かれているため、ノスタルジックで不思議な読了感がありました。

    愛情


    堅物の男性が心臓病の女性と形式的な結婚をする話。彼女は興奮できないため、結婚後も清いままの関係が続きます。しかし、男が事故で怪我をした時、「妻」から意外な提案をされ…。

    果たして彼女は本当に病気だったのか、それとも男性との生活で変化していったのか。真相はわからないものの、都会で刹那的な関係を結ぶ男女が多いからこそ、こうした純愛は尊いのでしょう。

    振り返って見れば


    知人のいないと都会で働く男は、懐かしさから昔の彼女に声をかけてしまう。しかし彼女の姿は変わっていた。派手な服装に宝石。男の上司は彼女を「鶏(娼婦)」だといい、関係を断つように言い渡す。

    彼もまた、彼女を蔑んでいたが、仕事をやめて落ちぶれる男に手をたったひとり差し伸べたのは彼女だった。

    中国はメンツの国ですから、男がいかにおちぶれたとはいえ、蔑むべき職業の女からの施しはプライドに関わることなのでしょう。

    男性の弱さと、女性のしたたかさが対象的に描かれています。


    映画『山の郵便配達』





    乙女の本棚『葉桜と魔笛』太宰治・紗久楽さわ

    2023.05.29 Monday

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      文豪の名作と現代のイラストレーターがコラボした『乙女の本棚シリーズ』、今回は太宰治の『葉桜と魔笛』です。

      姉妹愛と当時の切ない恋愛事情、少し不思議な出来事が葉桜の思い出とともに語られます。紗久楽さわさんの描写が物語の世界をより深く、美しく伝えてくれます。

      『葉桜と魔笛』あらすじ


      ある老婦人が語る葉桜にまつわる思い出。校長である父の赴任先である島根のとある街。老婦人の妹は不治の病で先が長くない。

      ある時、妹のもとに手紙が届く。実は妹には秘密の恋人がいるらしく、これまでにも何通もの手紙が届いていた。けれども妹はその手紙の主には心当たりが無いという…。



      明治の乙女と恋愛事情



      この物語で語られた明治時代は、まだまだ恋愛自体がタブーでした。少女たちは恋も愛も体験せず、顔も知らない相手に嫁ぐのが普通だったのです。

      また、この物語のように若い人でも亡くなる確率が高いため、当時の小説にはよくこうした若い女性(男性)の死がモチーフとして取り上げられています。

      『葉桜と魔笛』のすごいのは、妹の恋や性への憧れと死への葛藤がリアルに描かれているところだと思います。妹の独白が衝撃的でした。
      「死ぬなんて、いやだ。あたしの手が 指先が、髪が可愛そう。」


      彼女はどうせ死ぬなら、男を知っておきたかったと嘆くのです。これほど生々しい少女の叫びを読んだのは初めてでした。

      『葉桜と魔笛』というタイトルも、美しくて意味深です。「葉桜」は老婦人となった姉を表しているのでしょうか。物語に登場する口笛を「魔笛」としたのも、この物語の不思議さを強調していてとても好きです。

      太宰治は、『グッド・バイ』など、どうしようもないダメ人間の話が有名ですが、『女生徒』や『葉桜と魔笛』のように、少女の心情をリアルに描いた名作もあるんですね。

      人間としての太宰治は嫌いですが、作家としての太宰治はやはり嫌いになれないですね。こうした作品を読むと。

      『葉桜と魔笛』をイメージした展示の様子(目黒雅叙園)
      葉桜と魔笛

      JUGEMテーマ:オススメの本



      2022年のマイベスト小説・漫画について

      2022.12.29 Thursday

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        年の瀬になると、本や映画、動画などの年間ランキングが発表されますね。私もそれらにちなんで、2022年に発売された本の中から、気になったものをピックアップしてみました。

        あくまで個人の感想です。だって個人の感想ブログですし。
        本当はたくさん紹介したいけれど、もっとも感銘をうけたという点で選ぶとこの2冊でした。

        小説『スナック墓場』嶋津輝


        嶋津輝(しまずてる)さんの『スナック墓場』は、普通の暮らしの中の、ちょっと普通じゃない人々を描いた短編集です。

        工場のライン作業で働く女性ふたり、商店街を徘徊する男の人、愛想の悪い酒屋の娘とそれにそそられるM気質な男など、「あー、こういう人いるわ」と思いながら、彼らのちょっとだけ変わった日常が、たまらなく愛おしいのです。

        嶋津輝(しまずてる)さんは、モチーフの選び方が絶妙なんです。猫をテーマにした『猫はわかっている』でも、数十年前のビデオテープ全盛期の男女の友情と猫、そこに何故かマルチ商法を交えて、何とも言えない味わいの短編を描いています。(バラバラのモチーフなのに見事にまとまっているのがすごい)

        久しぶりに「惚れた」と思える作家と作品に出会えました。嶋津輝さん、エッセイも最高なんですよ。


        『スナック墓場』感想

        漫画『言葉の獣』鯨庭


        言葉の本当の意味を「獣」として感知できる東雲と、詩が好きで感受性豊かなやっけん。ふたりの少女が言葉の意味と美しさを探すため、「言葉の生息地」である森を旅します。

        人それぞれ、言葉の意味が違う。「がんばれ」は単純な激励の意味だけれど、やっけんは「無責任に助けられない優しさ」として使っています。

        誹謗中傷や寂しさにも形があり、それらはたいてい、醜い姿をしています。

        言葉の意味と奥深さ、そして、恐ろしさについて考えさせられる漫画でした。

        『言葉の獣』感想

        『魔女のパン』と『善女のパン』O・ヘンリ

        2022.08.16 Tuesday

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          O・ヘンリ短編集が好きで、翻訳の違うバージョンを読み比べています。内容は同じでも、文章に訳者の個性や時代背景が反映されていて、そうした違いを読むのも楽しいです。

          その中でも、私が最も印象に残ったのが『魔女のパン』と『善女のパン』です。実はこのタイトル、まったく逆の意味なのに、中身は同じ小説なんですよ。

          最近では『魔女のパン』が主流ですが、新潮文庫版では『善女のパン』と訳されています。


          『魔女のパン』『善女のパン』あらすじ(ややネタバレあり)


          パン屋を営むマーサは独身の中年女性。最近、安いパンばかりを買う男が気になっている。男の服についた色のシミをみて、マーサは彼のことを貧乏絵描きだと思いこんでしまう。

          自分の妄想を立証するため、店に絵を飾って彼に感想を求めると、多少の違和感はあったものの、マーサは彼を画家だと確信してしまう。それから彼女の「善意」が暴走をはじめる…。

          ある時、相変わらず彼が安いパンを買いにくると、すきを突いてパンの中にバターを忍ばせるミス・マーサ。

          ああ、これできっと彼は私に感謝するに違いない、そうなったらきっと彼は私のことを…。しかし、彼から返ってきたのは感謝でも求婚でもなく、怒りに満ちた鉄拳だった。



          「悪気はない」のが一番やっかい


          原題は『Witch's Bread』なので、本来なら『魔女のパン』が正解ですが、物語を読むとなるほど、『善女のパン』にした意味がわかります。

          主人公は独身の中年女性で、店で一番安いパンを買ってゆく男性が気になりはじめます。

          「安いパンばかりを買うのだから、きっと貧乏に違いない」
          「きっと芸術家なんだわ」
          「私が助けてあげなくちゃ」

          彼女はほとんど相手のことを知らないまま、妄想だけを膨らませ、自分の善意を暴走させていきます。

          きっと、自分の善意が彼を助けるだろう。すごく感謝されるだろう、そして、あわよくば結婚できるかもしれない…と。

          悪意のない善意は、ある意味悪意よりやっかいです。だって怒れないから。「せっかく親切にやってあげたのに…」と言われるから。被害を受けたほうが黙るしかない。(男性は思いっきりぶん殴ってましたけど)

          『魔女の宅急便』を例に取ると、老婦人は「いらない」と言われたニシンのパイを、かなり強引にキキに届けさせてますよね。彼女はまさか、孫がパイを嫌いだなんてこれっぽっちも思っていないのです。

          ニシンのパイについて考えたこと

          こうした、悪気のない善意で相手に多大な迷惑をかける女性は、やはり「魔女」よりも「善女」のほうがしっくりくるような気がします。

          O・ヘンリー作品感想


          O・ヘンリー ニューヨーク小説集
          桃源郷の短期滞在客

          『猫狩り族の長』 麻枝准

          2022.03.18 Friday

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            ゲームシナリオライターの麻枝准さんの小説『猫狩り族の長』。猫狩り族って何…?まずはこの独特なタイトルが気になるところです。

            あらすじ


            大学生の時椿(ときつばき)は、祖父の代理で自殺者を発見する監視員をやっていた。その時、崖にあらわれたのは美しい女性。

            時椿は戸惑いつつも自殺を止めようと説得するが、その美女は逆に、彼女の意見をことごとく論破していく。まるで自殺が正当な権利でもあるかのように。

            しかし、あろうことかその美女は時椿が名字を名乗ると笑いだし「名前が気に入ったので5日くらい生きてやる」という。そしてなぜか彼女、十郎丸は、彼女の部屋にころがりこみ、こうして6日間のふたりの奇妙な同居生活が始まった。

            果たして時椿は十郎丸の自殺を止められるのか。



            自殺理論プレゼン


            最初のうちは、説得に対する論破、哲学思想を駆使した十郎丸さんの自殺理論プレゼンや、時椿さんとの会話劇のようなやりとりが興味深かったです。

            物語を通して、ひたすら十郎丸さんの自殺理論プレゼンが続いていきます。「十郎丸さんは、なぜそこまで死にたいのだろうか。」と、思って読んでいくと、十郎丸さんが感じる世界は、とても辛くて、生きづらいものだということがだんだんわかってきます。

            じわじわとこう、理屈じゃなく肌感覚で。

            だからといって、自殺を容認するわけではないのですが。私も対人関係でひどく傷つくことがあるので、十郎丸さんの世界の片隅くらいはわかるような気がします。

            時椿くんも、十郎丸さんの見ている世界のことはわからないけれども、苦しんでいることはわかっていて、なんとかして、その苦しみを死ぬこと意外で見つけ出そうと、いろいろなところへ連れ出します。

            結局の所、理論武装した人にこちらの気持ちを伝えるには、知識でも知恵でもなく、ストレートな思いだったりするんですよね。


            禍福は糾える縄の如し


            最後のオチは言えないのですが、Oヘンリの『警官と賛美歌』のようでした。ささいなことがきっかけで、物事が逆転していく様子が。

            人生は、望むと望まざるに拘わらず、意外な方向に流れていくものなのかもしれません。いろいろと考えさせられる作品でした。

            ちなみに私は、死後に「世界の外側などはない」と思っている派なので、ラストはあまり共感できませんでしたが。ただ、こんな風に世界を見ている人がいるのだということは伝わりました。

            この物語は舞台化したらとても映えそう。どなたかぜひ、舞台化を…。









            猫にまつわる7つの短編『猫はわかっている』

            2022.02.05 Saturday

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              人気作家による猫にまつわる7編の短編集『猫はわかっている』。
              ミステリ、社会問題、ドタバタエッセイ風など、作家ごとに猫との関係性がそれぞれ違って興味深い作品集となっています。
              猫を飼っていない私が読んでも面白いです。

              世界を取り戻す


              仕事に家庭に忙しい女性編集者が、取材先の動物病院で瀕死の猫に出会う物語。彼女はその老猫に、かつての飼い猫を重ねあわせ、看取ることにしたのだった。

              妻と母、仕事人という苦労の多い女の人生、猫はさまざまな変化をもたらして去っていきます。

              50万と7センチ


              作家の実家にくるようになった野良猫。その特徴から、どうやら去勢済の「さくら猫」でメスらしい。家族総出で「ニャア」と呼んでかわいがっていたところ、ある日ニャアが野犬に襲われて大怪我を負ってしまった。
              あわてて動物病院で手術をすることになったものの、ニャアの意外な秘密があきらかになり…。

              はじめて猫を飼うことになった阿部先生ご一家が、愛猫に右往左往しているところが微笑ましかったです。しかし、いかにほぼ事実とは言え、猫のケガの描写(内臓がはみ出ていたり)がエグいのは、八咫烏シリーズを彷彿とさせます。

              また、この小説を書くきっかけはこちらのエッセイでも書かれています。

              エッセイ 作家の羽休み



              女か猫か


              推理作家・有栖川有栖による猫にまつわるミステリ。主人公アリスが思いを寄せる同級生マリアから相談を持ちかけられた。彼女の友人で学生バンドのギタリスト・シーナからの相談で、ある事件をきっかけにバンドメンバーとの仲がギクシャクしてしまったという。

              それは、メンバーの家の離れ起きた「猫」にまつわる密室ミステリだった。離れに止まったバンドの作詞家・三津木の頬に傷をつけたのはメンバーの誰かなのか、それとも猫なのだろうか?

              ロック好きな有栖川有栖さんの音楽描写も興味深かったですし、探偵役の江神先輩の推理も短い文章の中で本格ミステリを楽しませてもらいました。

              双胎の爪


              離婚が決まっている夫婦と、双子の息子・海斗と陸也はあるきっかけから猫を飼うことになった
              しかし、離婚後は息子のどちらかは猫と離れなければならない。結局、なぜか猫に拒まれてしまった海斗が父親と暮らすことになった。

              その矢先に家が火事になり、妻と陸也が巻き込まれ、妻は死亡、陸也も重体を追う。事故の処理のため防犯ビデオを見ていた夫は、妻がある動作をしていることに気がつく。

              個人的にはこの作品が一番ゾッとしました。奥さんの行動が怖かったです。自分の欲望のために猫をあんなふうに扱うなんて…。

              名前がありすぎる


              就活に苦戦する麗亜は、生活のためガールズバーで働くことになり、「ミミ」と名乗ることに。これまでもあちこちで偽名を使っていた麗亜は、そんな状況に昔飼っていた猫を思い出す。
              その猫は他の家でも餌をもらい、それぞれ別の名前で呼ばれていた。

              コロナ禍でも働かないといけない若年層の社会問題を絡ませてあって、ちょっと考えさせられました。


              猫とビデオテープ


              大学時代、同じビデオ店のバイト仲間だった権田が、事故で意識不明だと知った伊部。
              権田とはネコ好きということで意気投合し、卒業後も権田の妻の珠美がマルチ商法にはまったり、権田から猫をもらったり、濃密ではないものの、交流が続いていた。

              やがて、意識が回復した権田は一本のビデオテープを伊部に渡す。

              絲山秋子さんの『沖で待つ』を彷彿とさせる物語でした。恋愛ではない、一定の距離感を保つ男女の関係に少し憧れがあります。青春時代、他愛もない同じ思い出を共有する人がいるっていいですね。

              幸せなシモベ


              千佳は姉の出産に伴い、飼い猫のミャオを預かることになった。気まぐれでマイペース、そしてとても愛くるしい猫と暮らすうちに千佳は猫がたんなるわがままではなく、
              媚びることなく(中略)ただ自分で在る
              のだと感じる。
              猫を通して、自分がコンプレックスが払拭された千佳だったが、別れの時が近づいてきて…。

              こうして読んでみると、猫と人の数だけ、関わり方も愛し方も違うのだなと感じました。そして、一見わがままに見え、人間を振り回している猫ですが、実は人間の方が勝手に恩恵をうけているんですね。

              猫と人との関係は実に不思議で愛おしいです。

              正月に関わりのある本を読む

              2022.01.01 Saturday

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                ブログの内容はこちらに移転しました。

                Amazonにはない大型書店の品揃えをネットで見れる「honto」

                2021.06.23 Wednesday

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                  Amazonて便利ですよね。古今東西、あらゆる本が揃っていて、本以外にも生活雑貨からファッションまで網羅している。電子書籍も豊富だしAmazonの中には古書店が出店しているので古本も手に入る。

                  ただ、ひとつ弱点があるとするなら「ニッチな本の在庫の少なさ」じゃないかと私は思うのです。Amazonではあまり人気のない紙の本や、出版されてから少し年月が経った本は容赦なく在庫が切り捨てられ、電子書籍か中古じゃないと手に入れることはできません。

                  数年前に発売されたニッチなジャンルの、紙の本や漫画を新品で欲しい…。そんな時、やはり頼りになるのは「本屋さん」です。

                  書店の強みは、ニッチなジャンルにも対応してくれる在庫の多さ、「取り置き」という便利な予約システムなどだと思うのです。いただきものの図書カードやクオカードで支払いができるのも魅力ですし。

                  Honto


                  大型書店のストックが利用できる書籍サイト「送料無料の総合書店「honto」」。丸善・ジュンク堂・文教堂といった大型書店と提携しているので品数・在庫が豊富です。



                  Hontoの魅力


                  ・ベストセラー「じゃない」本、ニッチな本の品揃えが豊富
                  ・紙の本だけではなく、電子書籍も取り扱っている
                  ・ポイントが貯まる
                  ・アウトレットで、新品の本が安く買えることがある
                  ・支払いに図書カードNEXT(QR版)が使用可能
                  ・3000円以上で送料無料

                  ネット注文後は提携書店の店舗で引き取りも可能。引き取りにいって新しい本に出会うという楽しみもあります。
                  そのほかにも、hontoではブックキュレーターによる本の紹介など、現実の書店をネット上で楽しめるのがとてもいいですね。

                  欲を言えば、取り置きのできる書店の数をもっと増やしてほしいのですが…。

                  アウトレット本
                  ずっと欲しかった『映画探偵−失われた戦前日本映画を捜して』がhonto.jpで50%オフで購入できました。こういうニッチな本を、古本以外で安く手に入れることができてうれしい。


                  オリオン書房 LIBRO BOOKS


                  東京都西部に展開する大型書店チェーン。立川のオリオン書房ではドラマ「重版出来!」の撮影でも使われました。
                  こちらも「ネットで注文、書店で取り置き」ができるので、通勤通学や用事のついでに本を引き取ることができます。
                  オリオン書房 LIBRO BOOKS

                  オリオン書房の魅力


                  ・取り置き本の店頭支払いの場合、店が扱う様々な決済方法で支払いが可能。個人的にはクオカードや図書カードを使えるのが便利。
                  ・都内なら取り置き対応店舗が多くて便利
                  ・品揃えが豊富
                  ・ブックカフェや面白い企画・イベントが多数

                  取り置きの魅力


                  ネット通販での買い物のデメリットは「自宅に届く時、家族に見つかるとやばい」ではないでしょうか。いやなにも、やばい本を買っているわけではなくても「また買ったの?」といらぬ追求を避けるためにも、取り置きシステムは便利なのです。

                  Amazonなどの通販でもコンビニや宅配ポストに指定すればいいのですが、その場合、かさばる梱包をわざわざ剥がすとい行った手間がかかります。そのまま捨てるわけにも行かず、梱包のまま家に持ち帰ると結局「なにそれ?」と家族からの追求が…。

                  しかし、本屋での取り置きなら袋にいれてくれるだけなので、そのままバッグに入れれば見つからずに家に持ち帰ることができます。

                  Amazonはたしかに便利ではありますが、書店でしかできないサービスもあり、こちらも負けてはいないと思うのです。

                  『キネマの神様』原田マハ

                  2021.06.22 Tuesday

                  0
                    映画を愛する人々に起きた、キネマの神様からの奇跡。

                    『キネマの神様』あらすじ


                    都市開発の会社でシネコンの開発担当者だった円山歩は、社内のトラブルに巻き込まれプロジェクト半ばで退社に追い込まれる。

                    同じ頃、父親ゴウが心臓発作で倒れたため、実家に戻り、父の趣味である映画DVDを見て何気なく感想をしたためる。その文章がきっかけとなり歩は老舗映画雑誌「映友」の編集部へスカウトされるものの、編集部の内情は火の車。起死回生の企画としてホームページでゴウの映画評を掲載すると口コミで人気が広がり、やがて海外の映画評論家の目に止まり…。




                    映画と映画館への愛


                    作中、映画と映画館への深い愛情が感じられる文章がすばらしい。現在、作中に登場する「テアトル銀幕」のような名画座は数えるほどしか遺っていませんが、そこへ行くと、「映画を見る」だけではなく、「映画館で映画を見る」というもう一つの娯楽があるのです。

                    そんな名画座についての文章は、まさにそう!と、何度も頷きながら読みました。
                    とりわけ名画座は昔ながらの「村の鎮守」みたいな場所だ。(中略)短い夏の、胸が苦しくなるような懐かしさ


                    スプリングがきしんだ椅子、古い映画のポスター、売店のガラス張りのソーダやキャラメルが並んでいる。古い名画座はシネコンにはないワクワクした空間があってまさに「村の鎮守」のお祭りのような雰囲気なんです。

                    『キネマの神様』にはそうした名画座と映画に関する描写がすばらしく叙情的で、読むと映画がみたくなります。

                    ダメおやじと映画


                    歩の父親・ゴウはギャンブルと借金まみれのダメおやじなのですが、映画に対する情熱だけは人一倍で、その情熱のおかげで事態が好転していきます。

                    この物語を楽しむには、この「ダメおやじ」を愛し、受け入れて読むことなのでしょうが、私はこういう自己中心な男が大嫌いで、有川浩さんの家族小説の名作『アンマーとぼくら』もいまいち感情移入できなかったくらいですから。

                    なので後半、ゴウじいさんががんばっても、どこか拒否反応をおこしてしまって、原田マハさんの他の小説のようにはうまく入り込むことができませんでした…。

                    主人公の歩にしても、母親にしても、さんざん迷惑をかけられても父親を愛し、見捨てないのはすごいと思うし、ゴウじいさんの映画への知識欲と愛には正直圧倒されるのですが。

                    原田マハさんのアート小説


                    The Moden モダン
                    暗幕のゲルニカ
                    リーチ先生
                    美しき愚かものたちのタブロー
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                    『楽園の烏』ネタバレ妄想

                    2020.12.22 Tuesday

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                      八咫烏シリーズ第二部『楽園の烏』を読んだらさまざまな謎が浮き上がってきたので、感想とは別に推測を書き出してみました。

                      すべて、個人の感想であり妄想です。まったく根拠はありません。自分のブログに自分の妄想を書いているだけです。どうかご容赦いただければ幸いです…。

                      読んでも良い、と思われる方はネタバレを多分に含みますので、必ず『楽園の烏』と八咫烏シリーズ読了後にお読みください。



                      対をなす物語


                      八咫烏シリーズの特徴として物語や人物が対をなしており、それが時にトリックの一端を担うことがあります。
                      ・奈月彦と長束、雪哉と雪馬・雪雉の異母兄弟の対比
                      ・『烏に単は似合わない』と『烏は主を選ばない』の対称
                      ・『玉依姫』と『弥栄の烏』のパラレル
                      ・「澄尾」と「すみ」のひっかけ
                      など。

                      『楽園の烏』では、「どこ」と「誰」が対になっているのか、それがわかれば謎が解けるような気がするのですが…

                      幽霊と第三の門


                      何度か読み返して思ったのですが、そもそも、トビと「幽霊」はどうやって接触したのでしょう?地下街の崩壊後はあれほど厳しく雪斎側に監視されているのに。

                      やはりそこには、第三の門がからんでくるのかもしれません。また、今の地下街では、千早くらいしか監視を出し抜けないと思うので、彼も「幽霊」の作戦に加担しているのでは…?

                      そして、第三の門は本当に「ない」のか。
                      雪斎は探してもなかったと発表していますが、捜索→なし、ではなく、捜索→発見→隠蔽の可能性もあります。

                      仮に第三の門が捜索→発見→隠蔽だった場合、「幽霊」は第三の門を通らずとも、綻びと山内を往復できる能力があり、トビと接触したのでは…?

                      トビと雪斎の最後の対話を読み返すとトビはただ「幽霊だよ」としか言っていません。果たしてトビが接触した幽霊は女性(紫苑の宮?)なのか。

                      そういえばもう一人、生きているか死んでいるかわからない状態の人がいましたね…。

                      『追憶の烏』ネタバレ妄想はこちら

                      朔王とは誰か


                      『黄金の烏』で登場し、『楽園の烏』で異様な存在感を示した朔王。
                      ・彼はただの暗黒街のボスで、現世でも名を馳せたフィクサーというだけなのか
                      ・紫苑の宮を外界に逃したとされる「第三の門」をなぜ知っていたのか
                      ・「王」とは、「ボス」の意味ではなく、「王の一族」ではないのか

                      実は朔王は「王位につけなかった、真の金鳥」なのでは…?「真の金鳥」の誕生に100年のブランクがあることはこれまでなかったそうなので、人知れず生まれた「真の金鳥」がいて、それが朔王だった?

                      しかし、真の金鳥誕生の際に起こる(門の鍵が開く)奇跡はどうなのか。ただもし、朔王が宮中の外で人知れず生まれたとしたら、奇跡が起こっても神官たちも奇跡と認識しないとか…?

                      大紫の御前の策謀の例をとっても、必ずしも正当な王位継承者がやすやすと金鳥になれるわけではない。
                      朔王が奈月彦の前に政変によって追われた、あるいは人知れず生まれた「真の金鳥」だとしたら、外界を自由に行き来でき、邦律彦のように門に結界をはることができれば、いくら雪哉でも見つけることができないでしょうね。

                      真の金鳥が持つという「過去の記憶」を奈月彦が部分的に失っているのも、「誰か」がまだ記憶を持っている考えれば…。真の金鳥の能力と記憶は両方に、性質(八咫烏を傷つけられないなど)は奈月彦に継承されたと考えれば、真の金鳥の能力等については説明がつくと思うのですが…。

                      また、朔王の代わりに王位についたのが奈月彦と長束の祖父だとしたら、自分が金鳥(代)になりかわってしまったと知り、このままでは山内の危機をふせげないと思って長束に「金鳥の意味」を叩き込み、奈月彦を守ったとか。

                      朔王については謎が多いので、いろいろ考えられますね。



                      今の「若き金鳥」は誰か


                      私は南家の撫子の子ではないかと考えています。大紫の御前にとって、最も大事な政治のピースが撫子です。雪哉が博陸侯となるための見返りとして、撫子の産んだ子を王位につける。だとしたら大紫の御前を味方につけられる。
                      しかし、外伝集『烏百花 白百合の章 八咫烏外伝』を読むと、藤浪という可能性もあるかも…?

                      そして現在、大紫の御前が雪哉の味方という推測は『烏は主を選ばない』で最大の反対勢力だった長束が、実は味方だったというロジックがここでも使われているのでは…?

                      『楽園の烏』を読むと、雪哉は大紫の御前がのロジックで策謀を行っています。
                      現状に恵まれないものに慈悲を与えて従順な手先とする一方で、敵を完膚なきまでに潰していくそのやり方は大紫の御前そのものですから。

                      「若き金鳥」父親は長束…?まあ、雪哉なら笑顔でこれくらい言いそうですね。「山内のためです。撫子さんと契ってください。長束さま。」とか。
                      だとすれば、溺愛する姪・紫苑の宮を追い落とした雪哉のやり方を目の当たりにしながらも、長束が山内にとどまる理由も説明がつくかもしれません。

                      追記:これらの妄想は『追憶の烏』で真相が明かされました。詳しくはこちらで。若き金鳥の母親ってなんとあの人なんですよ…。ほんと阿部先生えげつないわ…。



                      奈月彦はどこにいる


                      ・現在の金鳥は「若き」とあるので奈月彦ではない。

                      ・奈月彦は本来の烏神に戻った(あるいは戻ろうとしている)状態なのでは。それなら、紫苑の宮(と思われる人物)の「両親をなきものにした」という描写は「八咫烏(ひと)ではない状態になった」にあてはまらなくもない。

                      ・しかし奈月彦=烏神はまだ不安定なので、期間限定の山神の信仰と両方の策をとっている…?

                      ・あるいは、常に結界を補修する必要があり、奈月彦は山内各地を飛び回らないといけない状態で、政務を誰かに任さないといけないとか?こっちの方が現実的か…

                      まだ続編が出るまでには時間があるので、今のうちにシリーズを読み返してさらなる妄想…じゃなかった、推測をまとめていこうと思います。

                      こちらも『追憶の烏』で明かされます。えげつない展開です。

                      その他の謎


                      ・刑場で毒殺された「馬」。あれはほんとうに谷間の人々なのか?治馬は「罪人」言っていたけれど、合理的な雪哉なら、体力的に優れた谷間の人間を残して使役し、歯向かった貴族連中を谷間の人間としてトビへの見せしめにしたのでは…?馬になっちゃえばよほど目立つ特徴がなければ、遠目からはわかりませんし…。

                      追記:これからの展開によっては真相が明かされる可能性がありますが、少なくとも追憶〜楽園の時点では谷間への介入は「単なる労働力の確保」です。貴族たちの反発がイロイロあったので…。

                      ・なぜ、八咫烏の子どもたちを「人間」として育てるのか。安原はじめのように、ネグレクトを受けたり戸籍の届け出のない人間のこどもを育てたほうが確実なのでは…?と思ったのですが、万が一捜査されれば山内に危険が及びますものね。

                      もうひとつの理由は、茂丸を奪った雪哉の山神への復讐なんじゃないかと思うのです。だまされるなら、その程度の神か。と。

                      あせびについて


                      『烏に単は似合わない』の主人公にして、最も可憐で、最も恐ろしい女性。彼女は第一作以降登場していません。
                      あせびは事件後、半ば幽閉状態のようなのですが、今後登場することはあるのでしょうか…?

                      彼女の頭脳は、人気ラノベ『オーバーロード』ラナー姫のように、一部の事象についてはかなりのジーニアスっぷりを発揮するため、その気になればある程度、人を操ることができるからかなり危険人物です。

                      ただ、その範囲はごく限られたもの、自分の手の届く範囲なので、あせびを登場させたとして、大局を見通す雪哉にかなうのか?ただあせびの局地的な人心掌握、陰謀術はたいしたものなので、スキを突いて急所をついてきたら…。

                      今後の展開はわかりませんが、個人的にはあせびVS雪哉が見てみたいです。

                      追記:こちらも『追憶の烏』でわかります。ああああってなります。

                      八咫烏シリーズ


                      『烏に単衣は似合わない』
                      『烏は主を選ばない』
                      『黄金の烏』
                      『空棺の烏』
                      『玉依姫』
                      『弥栄の烏』
                      第二部『楽園の烏』
                      第二部『追憶の烏』
                      外伝『すみのさくら』
                      外伝『しのぶひと』
                      外伝『ふゆきにおもう』
                      外伝『まつばちりて』
                      外伝『あきのあやぎぬ』
                      外伝『ふゆのことら』
                      外伝『なつのゆうばえ』
                      外伝『はるのとこやみ』
                      外伝『ちはやのだんまり』
                      外伝『おにびさく』
                      外伝集『烏百花 蛍の章 八咫烏外伝』
                      外伝集『烏百花 白百合の章 八咫烏外伝』
                      コミカライズ『烏に単は似合わない』
                      コミカライズ『烏は主を選ばない1』
                      『羽の生えた想像力 阿部智里BOOK(電子書籍)』
                      『八咫烏シリーズファンブック』(電子書籍)