老上海の舞台装置に期待しすぎた。 「月下上海」 山口 恵以子

2014.06.10 Tuesday

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    戦前、魔都と呼ばれた上海の街を舞台にした「月下上海」を読みました。「月下上海」は、悲しい過去を背負って上海へ渡った財閥令嬢の女流画家が、陰謀に巻き込まれながらも、持ち前の才知で時流を生き抜いていく物語です。


    老上海の舞台装置に期待しすぎた


    面白いけれど、期待しすぎた…


    戦前の老上海は、秘密結社や犯罪組織、美しい建物の裏に阿片窟など、清濁入り交じる、恐ろしいけれど魅力的な都市でした。上海そのものが下手なドラマより面白い舞台装置なんです。

    だから、そんな老上海には、自ずとスパイやら国境を超えた悲恋やら地下活動などのサスペンスや悲劇を求めがちなんですが、「月下上海」にはそうした非日常的なドラマティックさはなく、上海を舞台としながらもメインは多江子と周りの男達の愛憎の物語でした。

    老上海という舞台装置で、私が求めている話とは違っていたので、少々がっかりしました。

    老上海の面白さがいまいち伝わらない


    アイリーン・チャンの「色・戒」と、柳広司の「ジョーカー・ゲーム」を読む前だったら、もう少し面白いと思ったかもしれません。

    この2つの小説は、読んで行くと、読み手も実際に戦前の老上海の街角に立っているような感覚を味わえるのですが、「月下上海」の上海描写は、現代から地図と資料で説明されている感じ。
    いまひとつ街への体感が感じられず、物語の世界に入れなかったのが残念でした。


    前半はサスペンス、後半は昼ドラ…


    憲兵の槇に半ば強引に中国人資産家・夏へのスパイ活動を強要される多江子。仕方なく夏の家を訪れていくうちに、夏に特別な感情を抱くようになり…。

    前半では、多江子の過去の悲しい事件が描かれ、スパイ活動など大掛かりなサスペンスへの展開の予感と、これから一体、どんなドラマチックな展開が待っているのかとおもいきや…

    主人公のスパイ活動は映画「ラスト、コーション」や原作「色・戒」を思いおこさせるのですが、所詮は素人スパイですし、たいした効果は得られません。そこからは陰謀やサスペンスは姿を消し、多江子と周りの男たちとの昼ドラ的な愛憎劇が展開されます。

    多江子の周りには、元夫、憲兵、中国人実業家、抗日運動家の学生、父親の部下、幼なじみなど、いく人もの男たちが集まってくるのですが、人数が多いので各人のエピソードが薄くなってしまっていました。もう少し、ページ数があったら、各人の多江子との関わりが掘り下げられたかもしれないのが残念。


    月下上海
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    JUGEMテーマ:書評


    「高原王記」 仁木 英之

    2010.04.24 Saturday

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      僕僕先生」で美少女仙人と唐時代のニート青年との冒険を描いた仁木 英之さんが描く、架空の王国を舞台にしたファンタジー小説「高原王記

      物語は高原の国々(三リン国)を妖魔から守る最高の戦士は「英雄」とよばれ、山の精霊と盟約を結び命尽きるまでともに戦うことを誓う。英雄タンラは厳しい修行の果てに精霊ジュンガと盟約を結ぶが強大な力を持つ光の術師によって心を壊されてしまう。
      高原に危機が迫る時、タンラに思いを寄せている竜人の娘・ファムは大総官王の啓示により大総官王の息子と婚姻し、世界を救うとされる英雄を生むことになる。

      「僕僕先生」のほんわかした雰囲気から一転して、正当派なハイ・ファンタジーです。「僕僕先生」のイメージで読むと混乱します。そんでちょっと異世界の描写が弱い。三リン国の人々や聖者、英雄、彼らと契約を結ぶ精霊についてもイメージ不足というか、世界観がいまいちよくわからない話でした。設定は面白いとは思うけれど、主人公が誰なんだかもわからない。
      唐時代舞台にした「僕僕先生」は時代の制限があっても自由な筆致で面白かったのに、架空の国の「高原王記」ではその自由さが逆に失われてしまっています。正直、「僕僕先生」と同じ作者が書いたとは思えない出来ですねえ。(^^;)


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      「パーク・ライフ」 吉田 修一

      2009.03.15 Sunday

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        自分が公園好きでもあるで、前から気になっていた「パーク・ライフ」。日比谷公園を舞台に、公園にくる人々の出会いと交流の物語。

        ストーリーは、賞をとる小説にありがちの、特に大きな事件が起こるわけではなく、人々の生活が淡々と描かれているパターンのものです。やや退屈感はあるものの、公園にあつまる人々の詳細な描写がかなりリアルに描かれています。
        けれど普通、公園の人々はお互いに興味はあっても、めったなことがないかぎり話をするきっかけなんてないんじゃないかな。
        だからこそ、公園で出会うということが小説という特別な形になるのかもしれないけれど。
        そしてこの本を読んで改めて見てみると、公園ていろんな種類の人がいますよね。日比谷公園に行ってみたくなりました。
        本当に気球をあげているひとはいるのだろうか…

        寄藤 文平さんの表紙イラストがいい。

        パーク・ライフ
        パーク・ライフ

        「新釈 走れメロス」 森見 登美彦

        2007.04.23 Monday

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          本屋大賞2位を取った作家さんの作品なので期待して読んだけれど…
          どうも、私には向いてない。(^^;)

          「走れメロス」「藪の中」「山月記」など名作を用いてまったく違った小説として作り直してしまった作品。

          原作への興味はわいたけれど、読んで感動する類の話ではない。
          それというのも、各物語の主人公を現代の京都の大学生達にすげ替えているのだけれど、この人たちがまあ、ヘタレなんです。はっきり言って!
          未完の小説を延々と書いている男や、恋人と元彼を主人公に恋愛映画を撮る男、学校には行かないし、「詭弁論部」などというおかしな部に所属していたり、人生においてエネルギーの使い方が明らかにずれている人々ばかり。
          ただ、その(ずれた方向への)エネルギーの発散はすさまじく、そこに笑いが生じるのだけれど、どうもこの人たちにに素直に感情移入できなかったのが私の敗因。

          新釈 走れメロス 他四篇 (祥伝社文庫 も 10-1)
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          JUGEMテーマ:読書感想文


          「ゲームの名は誘拐」 東野 圭吾

          2006.12.10 Sunday

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            映画化もされたので面白そうだと思い、読んでみたけれど…

            批評をみると、絶賛している方もたくさんいらっしゃるが、
            どうも私には向かなかった本だった。
            主人公は自己顕示欲の塊で、誘拐される女もわがままだし、
            登場人物がみんな自己中で、誰にも共感できなかった。
            ラストに2つのどんでん返しがあるけれど、正直「え?これだけなの?」という感じだった。
            物語が終わった後、結局主人公がどうなるかもいまいちよくわからなかった。

            ただ、主人公が仕掛ける「誘拐ゲーム」の展開は面白かった。


            これじゃなく、他の小説だったら東野さんを好きになっていたかもしれないのに…
            読まず嫌いにさせた、選択ミスの1冊。orz



            東野 圭吾 / 光文社
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            軽いテンポ
            面白かったから不満も残る
            盛り上がりに欠ける




            ナミヤ雑貨店の奇蹟→
            容疑者Xの献身→
            探偵ガリレオ→
            JUGEMテーマ:ミステリ


            彩雲国物語 「緑風は刃のごとく」 雪乃 紗衣

            2006.10.25 Wednesday

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              今回は秀麗さんのだめっぷりというか、「認識の甘さ」がキーワードのような気がします。

              彼女の「甘さ」といわれる部分は、いろいろな人を救おうとする信念の表れで、それ自体は悪い事ではない。実際、茶州では支えてくれる人もいたため、そのやり方で突き進んできた秀麗。
              ところが魑魅魍魎のごとき謀略家が闊歩する朝廷では、今までのやり方では通用しなくなってきたようで…


              雪乃 紗衣 / 角川書店
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              ↓秀麗に対する毒舌なので、嫌な人は読まないように!

              「クリスマスの4人」 井上 夢人

              2005.12.07 Wednesday

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                表題にクリスマスとあっても、あまりクリスマスらしい雰囲気はでてこない物語。
                1970年のクリスマスの夜、塚本、潤次、百合子、絹江の4人は潤次の誕生祝に集まり、ドライブ中にひき逃げ事故を起こしてしまう。
                証拠隠滅を図り、成功したかに見えた10年後、クリスマスの夜。
                4人は不思議な出来事に遭遇する。自分達がひき逃げをした、当の人物が現れたのだった。。

                この作者が岡嶋二人の名で出している名作、「99%の誘拐」を期待していると、ちょっと困ったことになります(^^;)

                クリスマスの4人 (光文社文庫)
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                ちょっとネタバレ辛口批評

                「五王戦国志1〜8」 井上 祐美子

                2005.11.03 Thursday

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                  中華ファンタジー好きとしては抑えておくべきと思い、読み始めた「五王戦国志」全8巻
                  先日、ようやく読み終わりました。
                  長かったなぁ。。(´Д`)=3

                  ストーリーは春秋戦国の時代背景をベースに、架空の国々(<魁>、<征>、<衛>、<琅>、<奎>)の10年にわたる興亡史。

                  五王戦国志 あらすじ


                  主人公・淑夜は、同族で敬愛していた堂兄・無影が一族を落としいれた後、<衛>王の座を奪ったと聞き、無影を殺そうと単身で行動を起こすが失敗。逃亡中に瀕死の重傷を負った彼を助けたのが、戎族(騎馬民族)で、元<魁>王家の将軍の息子の羅旋だった。

                  様々な国、戦を経て羅旋のいる<琅>に身を寄せた淑夜は、謀士として成長し、無影との最後の対決に挑むー。

                  物語のメインとなるのははやはり「戦」。中原を支配していた<魁>王家の消滅後、覇権を巡り各国が戦をしかけていくのだが、古代中国では戦をするにも日時と場所を伝えてから行うというのには驚いた。
                  当時の主力は馬に引かせる戦車がメインなので、当然戦車が走れる広いスペースが必要になるし、戦も開催シーズンが決まっており、主に農閑期の秋から冬に行われるのが決まりだったそうな。

                  現代人から見たら、なんとものんきな戦に見えるが、平安〜鎌倉時代の武士も「名乗り」を上げてから戦っていたし、現代の戦争が悲惨すぎるということかもしれない。

                  ただ、残念なのはやはり戦を主体とした物語なので、女性陣が少なく、恋物語も最後になんとかつじつまを合わせた感じだったこと。(これは作者自身もあとがきで語ってましたが)
                  淑夜と<琅>の玉公主との仲も、最後の7、8巻でいきなり恋人になってますし(^^;)
                  無影と連姫の悲恋なども、もっと書き込んで欲しかった。
                  長いわりに盛り上がりがすくなく、堅苦しい小説でした。
                  世界観を春秋戦国時代をベースにしているのですが、これなら春秋戦国の歴史小説を読んだほうがいいよ…。

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                  やや辛口批評はこちら
                  ・文章が硬くて読みづらい。これはファンタジーに慣れた私のせいか?でも十二国記はあんなに読みやすく、すてきな物語なのにな。十二国記がすごすぎるので比べること自体が酷かな。
                  中国歴史小説家が、歴史ファンタジーなど書いたりするからこんなんなっちゃうんだよ…

                  ・ラブロマンスがいきなりすぎ。なんでいきなり淑夜と玉公主がくっつくんだ。普通に考えたら羅旋とくっつけらせそうなものだけど。。

                  ・作者の責任ではないが、挿絵イラストが濃くて気持ち悪い。
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