『犬がいた季節』伊吹有喜
2023.01.06 Friday
三重県四日市を舞台に、学校に迷い込んだ犬と、高校生たちの10年にわたる物語『犬がいた季節』。
物語は昭和の終わりから平成の半ばまで、高校で飼われることになった犬・コーシローと、歴代の高校生たちの交流、彼らの恋や友情、将来が描かれます。
昭和63年。捨てられて八稜高校(ハチコウ)に迷い込んだ白い子犬は美術部部員・早瀬光司郎の名をとってコーシローと名付けられる。
引き取り手のなかったコーシローは、そのまま生徒たちが世話をするようになる。「コーシローの会」初代メンバーの塩見優花や早瀬が卒業後もコーシローの世話は後輩たちに受け継がれ、コーシローは彼らの旅立ちを何度も何度も見送っていた。
『犬がいた季節』は、学生たちと犬のコーシローの物語ではありますが、同時に昭和から平成前期の時代の物語でもあります。
当時の事件や出来事を絡めているので、昭和や平成初期を知る。私のような中年には非常に懐かしいです。一方でこの時代を知らない若い世代はどう感じるのでしょうか。新鮮に感じてくれたらうれしいな、と思います。
進路への迷いや家族の問題、恋や友情は時代を経ても変わらないものですから。
優花が家の間を通る早瀬に、紙飛行機でメッセージを飛ばすのですが、ネットがない時代は苦労して連絡をとりあったものです。
平成3年の堀田と相羽の友情も、鈴鹿サーキットに近い土地ならではの物語でした。ふだん交流がない二人がF1を通じて仲良くなっていく、一夏の冒険は読んでいてワクワクしました。こうした冒険は「探偵ナイトスクープ」などでよく投稿されますよね。
今は個人情報の保護がありますから、たとえ同級生とは言え卒業すれば容易に会えない。だからその一瞬が愛おしいんです。
そして、『犬がいた季節』のもう一つの大事なパーツがふるさとの風景だと思うのです。三重県は作者の伊吹有喜さんの故郷でもあるためな、情景の描写が詳細で、今の言葉でいうと「エモい」んです。
コーシローが佇む桜並木、グラウンド裏から見える駅のホーム、コンビナートの夜景、展望台…など、高校生は大人より行動範囲が狭い分、土地の思い出が濃厚に刻まれるのだと思います。
そんな濃厚な思い出を胸に、彼らは土地を去っていくのですね。
三重県は作者の伊吹有喜さんの故郷でもあります。そのせいか、風景けでなく空気感までが感じられる描写でした。
・『彼方の友へ』
・『今はちょっと、ついてないだけ』
・『BAR追分』
・BAR追分シリーズ2『オムライス日和』
・BAR追分シリーズ3『情熱のナポリタン』
・『四十九日のレシピ』
・『ミッドナイト・バス』
・『なでし子物語』
・『風待ちのひと』
物語は昭和の終わりから平成の半ばまで、高校で飼われることになった犬・コーシローと、歴代の高校生たちの交流、彼らの恋や友情、将来が描かれます。
『犬がいた季節』あらすじ
昭和63年。捨てられて八稜高校(ハチコウ)に迷い込んだ白い子犬は美術部部員・早瀬光司郎の名をとってコーシローと名付けられる。
引き取り手のなかったコーシローは、そのまま生徒たちが世話をするようになる。「コーシローの会」初代メンバーの塩見優花や早瀬が卒業後もコーシローの世話は後輩たちに受け継がれ、コーシローは彼らの旅立ちを何度も何度も見送っていた。
平成という時代
『犬がいた季節』は、学生たちと犬のコーシローの物語ではありますが、同時に昭和から平成前期の時代の物語でもあります。
当時の事件や出来事を絡めているので、昭和や平成初期を知る。私のような中年には非常に懐かしいです。一方でこの時代を知らない若い世代はどう感じるのでしょうか。新鮮に感じてくれたらうれしいな、と思います。
進路への迷いや家族の問題、恋や友情は時代を経ても変わらないものですから。
ネットのない時代
優花が家の間を通る早瀬に、紙飛行機でメッセージを飛ばすのですが、ネットがない時代は苦労して連絡をとりあったものです。
平成3年の堀田と相羽の友情も、鈴鹿サーキットに近い土地ならではの物語でした。ふだん交流がない二人がF1を通じて仲良くなっていく、一夏の冒険は読んでいてワクワクしました。こうした冒険は「探偵ナイトスクープ」などでよく投稿されますよね。
今は個人情報の保護がありますから、たとえ同級生とは言え卒業すれば容易に会えない。だからその一瞬が愛おしいんです。
土地の思い出
そして、『犬がいた季節』のもう一つの大事なパーツがふるさとの風景だと思うのです。三重県は作者の伊吹有喜さんの故郷でもあるためな、情景の描写が詳細で、今の言葉でいうと「エモい」んです。
コーシローが佇む桜並木、グラウンド裏から見える駅のホーム、コンビナートの夜景、展望台…など、高校生は大人より行動範囲が狭い分、土地の思い出が濃厚に刻まれるのだと思います。
そんな濃厚な思い出を胸に、彼らは土地を去っていくのですね。
三重県は作者の伊吹有喜さんの故郷でもあります。そのせいか、風景けでなく空気感までが感じられる描写でした。
伊吹有喜作品 感想
・『彼方の友へ』
・『今はちょっと、ついてないだけ』
・『BAR追分』
・BAR追分シリーズ2『オムライス日和』
・BAR追分シリーズ3『情熱のナポリタン』
・『四十九日のレシピ』
・『ミッドナイト・バス』
・『なでし子物語』
・『風待ちのひと』