「続・森崎書店の日々」 八木沢 里志

2015.03.29 Sunday

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    古書の街・神保町を舞台に、恋に傷ついた主人公・貴子が、 古書店店主のサトルおじさんや、神保町の人々との交流により 本の面白さに目覚め、人生を再生していく物語を描いたのが、「森崎書店の日々」です。

    その続編となる「続・森崎書店の日々」は、貴子と森崎書店を取り巻く人々との交流を描いた物語です。

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    古書街の人々


    「森崎書店の日々」では、貴子の再生とサトルおじさんとの絆を中心に描かれていましたが、「続・森崎書店の日々」は、貴子の周りの身近な人々の心情が描かれます。

    ともちゃん


    神保町で本を通じて知り合った友人のともちゃん。バイト先の高村くんが、思いを寄せているものの、相変わらず仲は進展していない。

    実はともちゃんには、恋愛に消極的な理由があって…

    和田さん


    前回、古書を通じて知り合い、恋人となった和田さん。2人の仲も、安定してきたと思いきや、突然和田さんが小説を書きたいと告白されたり、元彼女と街を歩いているところをみかけたりと、なにかと問題が…

    桃子さん


    失踪していたサトルおじさんとの奥さん、桃子さんは、貴子のよき相談相手。少し前にサトルおじさんの元に戻って森崎書店を手伝っている。

    過去に大病をわずらったため、貴子はおじさんの骨休めもかねて、2人に温泉旅行をプレゼントするものの、帰ってきたサトルおじさんと様子がおかしくて…

    貴子は以前、手ひどい失恋に傷つき、人と関わろうとしなかったのに、今回は友人や恋人、おじさんたちの力になろうと奮闘します。物語の中で「あの失恋がなかったら、みんなにであうことはなかった。」と語っていて、ああ、貴子ちゃんは本当に成長したんだなあ、と、なんだか彼女の成長がうれしくなりました。

    自身がつらい思いをしたからこそ、大切な人たちのために動けるのでしょうね。

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    映画「森崎書店の日々」感想」→

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    不器用でやさしい姉弟の話。「小野寺の弟、小野寺の姉」

    2014.12.17 Wednesday

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      片桐はいりさん、向井理さん主演で舞台化・映画化された「小野寺の弟、小野寺の姉」の原作小説を読みました。

      早くに両親を亡くし、ずっと2人で暮らしてきたより子と進の小野寺の姉弟。しっかりものの姉・より子と、人見知りな弟・進。ほっこりと日々を過ごしてきた2人の生活にも変化が。

      姉・より子は想い人浅野からデートに誘われ、弟・進も、郵便の誤配達がきっかけで元カノに雰囲気の似た薫と出会う。果たして、小野寺姉弟に春はくるのか…。

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      映画と基本的な設定は変わらないものの、進くんの恋愛があまり発展しなかったり、言い間違いの平松先生は回想だけだったりと、出来事や登場人物が若干変わっています。

      でもその分、より子さんや進くんの性格や性分であったりとか、小野寺家の日々の様子や周りの人々との日常の描写が多くて、小野寺姉弟の世界がよりよくわかるようになっています。

      そして、姉と弟がどんなに相手を思いやっているかが伝わります。姉も弟も不器用でその思いをうまく伝えることができないのだけど。だから、自分の恋愛も後回しにしてしまう。

      でもきっと、伝わる人には伝わるはず。

      いつかまた、より子さんと進くんに好きな人ができたなら、姉弟の関係をちゃんと理解してくれる人であってほしい、と願わずにはいられません。

      [映画]小野寺の弟、小野寺の姉感想→

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      「なでし子物語」 伊吹 有喜

      2013.05.27 Monday

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        四十九日のレシピ」の伊吹有喜さんが描く昭和の少年少女の淡い思いを描く「なでし子物語

        心に傷をもつふたりの子どもが出会い、成長してゆく物語です。伊吹有喜さんの描くお話はいつも魅力的で、読み進めるとどんどん惹きこまれていきました。物語に力を感じます。

        「なでし子物語」あらすじ


        母親から疎まれ置き去りにされた燿子は、祖父が働く山間の里・峰生のお屋敷「常夏荘」へ引き取られ、お屋敷の主の息子・立海と出会います。

        お坊ちゃんで何ひとつ不自由がないように見える立海も、物心付く前に母親と生き別れになったという悲しい過去をもち、周囲の期待に答えようとするあまり、ストレスで嘔吐を繰り返すという、トラウマを背負っています。

        孤独と絶望を感じていた幼い子どもたちが出会い、心を通わせていく内に燿子も立海も次第に明るく、心も体も強くなっていきます。そんな2人の存在は、周りの大人たちの心も動かしていくのですが…。

        やさしい物語


        読んでいく内に、童話のようだ、と感じました。お屋敷の男の子と女の子が出会い、その出会いが周りの大人達の心を溶かしていく「秘密の花園」のような。作中には「赤毛のアン」のように、燿子が間違って果実酒を飲んでしまうシーンもあるし、感情の表現が不器用なおじいさんと燿子の関係は「アルプスの少女ハイジ」のようでもあるし。


        だけど、現実は童話のようにうまくいきません。立海の父親は、立海が丈夫になってきたと知ると燿子の存在がじゃまになり、強引に立海を東京に引き取ってしまいます。

        このジジイは、「植え替えるには根がはりすぎると遅くなる」と、自分の息子を成果品のように言い放ちます。この人はきっと、愛情とか絆とかを商業的にしか判断できないのでしょうね…。

        だけど、純粋にお互いを思いやる燿子と立海は、強い絆で結ばれているので、峰生のおとぎ話の天女と少年のように、いつかきっと、二人が再会できる日がくること、それまで二人がお互いを思いやっていることを願ってしまいます。

        伊吹さんの作品には、毎回美味しそうな料理がでてきます。今回は峰生の名物・くるみ味噌の五平餅や、猪鍋、燿子と立海が飲むきんかんジュースなど、味も色彩も鮮やかで美味しそうなのですが、でも決して主張しすぎず、物語を引き立ててくれています。


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        「なでし子物語」の続編「地の星」「天の花」。おとなになった立海と燿子のその後の姿が描かれます。

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        伊吹有喜作品 感想


        『彼方の友へ』
        『今はちょっと、ついてないだけ』
        『BAR追分』
        BAR追分シリーズ2『オムライス日和』
        BAR追分シリーズ3『情熱のナポリタン』
        『ミッドナイト・バス』
        『なでし子物語』
        『風待ちのひと』

        JUGEMテーマ:小説/詩

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        『旅猫リポート』 有川 浩

        2013.04.25 Thursday

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          有川浩さんの「旅猫レポート」。これはたぶん、「猫バカ」にしか書けない物語だろうな。そして「猫バカ」の理想の物語ではなかろうか。

          『旅猫リポート』あらすじ


          ノラ猫だったナナ(オス)は、事故にあってサトルに助けられてから、彼の飼い猫、兼相棒として、しあわせな日々のを送っていた。

          けれど、「のっぴきならない事情」で、タケルはナナを手放すことになり、ナナの新しい飼い主探しのため一人と一匹の旅が始まります。

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          猫にまつわる話がいろいろ


          ナナの引き取り先を探すべく、サトルは銀色のワゴンに乗って、幼なじみのコースケ、中学の親友ヨシミネ、高校・大学時代の友人スギ夫妻を訪ねます。結局、彼らの誰もナナを引き取ることはなかったのですが、サトルとナナの訪問によって、彼らは救われる部分があったし、サトルもまた、大好きな人達との再会を果たすことができました。

          色んな所を旅して、最後はおばさんのいる北海道へ。

          有川浩さんも相当な「猫バカ」(最大級の褒め言葉です)のためか、猫にまつわる小さくてやさしエピソードが物語に詰まっています。

          テレビの上で寝る猫のために、薄型テレビを使わないおうちや極寒の北海道で野良猫たちがどうやって冬を過ごすのかなど、本当のネコ好きじゃないと気づかないような猫にまつわる話がいろいろ。

          それが猫飼育経験のない私には読んでいて新鮮だったし、なんか、幸せな気持ちになりました。


          猫の旅、人の旅


          猫という生き物は、自分の縄張り(家の中)がなにより大事なテリトリーであると聞いたことがあります。そんな猫であるナナが、「旅」に出るのは私達が思っているよりもそうとう大変な冒険だろうけれど、それでもナナは、サトルと一緒にいることを選んだんですね。

          この旅の部分は、サトルとナナが本当に楽しそうで。今まで観たこともない風景やみたり、たくさんの動物達にも出会った。けれど、そんな楽しい旅は、とうとう終わりが来てしまいます。

          最後は…。悲しいけれど、不幸じゃないんだろうな。きっと。

          装画は村上勉さん。子供時代、一度は彼の絵の本をよんだことがあるんじゃないか、ってくらい有名な挿絵画家さんです。ノスタルジックな雰囲気が、この本の内容とよくあっています。

          ラジオで児玉清さんの本紹介が流れるなど、ファンにうれしいエピソードがちょこっと入っているにもうれしい。

          2018年には福士蒼汰さん主演で映画化。相棒猫・ナナの登場により映像化されました。ナナが本当に物語の中のナナみたいなんだよな…。

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          「旅猫リポート」は、2013年4月、有川浩先生とキャラメルボックス阿部丈二さんの演劇ユニット・スカイロケットで上演されました。惜しくも見逃してしまったので、ぜひ再演してほしい!

          スカイロケット


          有川作品感想


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          明日の子供たち
          ほっと文庫 「ゆず、香る」

          クジラの彼
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          阪急電車
          海の底
          空の中
          レインツリーの国
          三匹のおっさんふたたび
          三匹のおっさん

          キケン
          ヒア・カムズ・ザ・サン
          シアター!
          シアター2!

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          JUGEMテーマ:小説/詩


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          101歳の詩人、柴田 トヨさんの訃報と「くじけないで」の感想

          2013.01.22 Tuesday

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            くじけないで」で有名な101歳の詩人柴田トヨさんの訃報を聞きました。
            ご冥福をお祈りします。(;ω;` )

            ・悲哀と慈愛
            私がはじめて「くじけないで」を読んで感じたのは、トヨさんの「90歳のリアル」な生活と感情が、そのまま詩に描かれているんだなあということです。どうも私は、ご高齢の方は聖職者のような達観し、何事にも動じない心を持っているのだと誤解しがちです。でもトヨさんは詩や、あとがきの中でも「年をとって体が動かなくて、朝起きるのがつらい」みたいなことを書いています。あと息子が帰るのがさみしいとか(^^)。

            でも、そんな感情を隠すことなく、それを糧にしてやさしく、力強い詩としてうたっています。
            変に飾らず、自分の心にまっすぐに詩を読む。だからこそたくさんの人がトヨさんの歌を愛するのかもしれません。


            ・痛みを知るということ
            それと、驚いたのは小さい頃のイジメ体験のお話。トヨさんは小さい頃、奉公に出された先で、イジメにあっていたのだそうです。当時90を過ぎていたおばあちゃんが、そんな子どもの頃の辛い記憶を忘れられずにいるのか、というのにまず驚きました。人から受けたひどい仕打ちというのは、年月がたち、癒されることはあっても、忘れられるものではないのだと。

            トヨさんはそんな痛みを知っているからこそ、詩にうたわれた他者への眼差しが、とてもやさしいのです。

            震災の時、被災者にあてたトヨさんのメッセージ→
            慈愛とやさしさに満ちたメッセージです。読む度に泣けます(;ω;` )

            くじけないで
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            JUGEMテーマ:気になる書籍


            楽しき(?)団地ライフ。「たのしきわが家」 田辺 聖子

            2012.10.23 Tuesday

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              1970年代、大阪郊外の団地を舞台にした家族のお話「たのしきわが家」今まで読んだ田辺聖子さんの短編は、場所も設定もまったく違うのが多かったけれど、ここでは同じ団地で起こる家族の人間模様が描かれています。

              設定は70年代ではありますが、夫婦におこる人間模様は現代とさして変わりはありません。

              「女と女房」で、夫の浮気に怒る妻が最終的にキレる理由が「愛人宅に新しい家電を買って贈ったこと」ってのが思わず「わかる!」って思いました。

              自分は倹約して家計をやりくりしているのに、新しい家財道具を別女に与えるのって、妻として結構な屈辱なのですが、男はそんなとこ、気がつかないのよね。映画「死の棘」でも愛人に下着を買ってやったことに対して、妻の言及がありましたもん。


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              JUGEMテーマ:恋愛小説


              田辺作品感想


              「朝ごはん、ぬき?」→
              「薔薇の雨」→
              「孤独な夜のココア」→
              「おちくぼ姫」→
              「ほどらいの恋」→
              「芋たこなんきん」→
              「ジョゼと虎と魚たち」→

              レビューポータル「MONO-PORTAL」

              入浴剤つき文庫本。 ほっと文庫 「ゆず、香る」 有川 浩

              2012.02.23 Thursday

              0
                いい企画ですね。「入浴剤つき文庫本 ほっと文庫」。
                各作家が入浴剤のイメージにあわせて書いた小説は、ちょうどお風呂で読める程度の短編になっています。
                読書好きの方にも、お風呂好きの方にもお勧めです。

                有川浩さんの 「ほっと文庫 ゆず、香る」は、ずっと友人同士だった男女の微妙な恋愛感情を、ゆずの産地・高知県馬路村をからませて描いた恋愛小説。さすがは有川さん。入浴剤についての描写も褒めすぎず、商品の特徴をうまく小説の中に盛り込んでました。ゆずの描写もみずみずしく、入浴剤の香りにつつまれながら、物語の中にするっと入っていけました。

                「ほっと文庫 ゆず、香る」パッケージも香りに合わせて可愛らしいデザイン。
                120213_0105~01.jpg

                「ほっと文庫」中身。小説にはカバーなしなので、お風呂で読むときは注意が必要。
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                ほっと文庫 ゆず、香る
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                実際に「お風呂で読む本」というのもありますが、怪談とかミステリーとか、あまりお風呂向きじゃない→

                有川作品感想


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                空の中
                レインツリーの国
                三匹のおっさんふたたび
                三匹のおっさん

                キケン
                ヒア・カムズ・ザ・サン
                シアター!
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                「ありがとう、さようなら」 瀬尾 まいこ

                2011.12.28 Wednesday

                0
                  瀬尾まいこさんのエッセイ「ありがとう、さようなら」は、勤務している中学校での出来事や、日常の様子がおもしろく、そして温かく書かれたエッセイです。瀬尾さんのエッセイを読むと、中学校が本当に楽しい場所に思えてくる。

                  中学校の先生って、私生活でもしっかりしてるかと思いきや、瀬尾さんは家の鍵を無くしたり、あまりしっかりされているとは言えない。(足の壊れた机をだましだまし使ってみたりもしている)

                  また、瀬尾さんの担当する中学生も世間のイメージとは違って、クラス一丸となって行事に全力を尽くしたりする。

                  そんな彼らのパワーを目の当たりにすると、瀬尾さんはどんなにつらくて辞めたいと思っても、また教師を続けられるのだそうです。瀬尾さんのエッセイを読んでいると、中学校が場所に思えてくるから不思議です。

                  私の中学生活は軽いイジメでさんざんな目にあったのだけれど、瀬尾さんが担任で、エッセイに書かれたクラスなら、もう一度中学生をやり直してみたいって思います。

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                  「おしまいのデート」
                  「見えない誰かと」
                  「天国はまだ遠く」
                  「優しい音楽」
                  「強運の持ち主」
                  「図書館の神様」
                  「幸福な食卓」

                  JUGEMテーマ:エッセイ

                  「冠・婚・葬・祭」 中島 京子

                  2011.07.30 Saturday

                  0

                    冠・婚・葬・祭」はこちらに移動しました。

                    大人の夏休み「風待ちのひと」 伊吹 有喜

                    2011.01.24 Monday

                    0
                      「四十九日のレシピ」の伊吹有喜さんのデビュー作「風待ちのひと」読了。読み終わると疲れた心がちょっと癒やされます。

                      「風待ちのひと」あらすじ


                      妻の不倫や母の死で精神的にダメージを受けた須賀は、海沿いの町・美鷲に母親の遺した家の整理をかねて、夏の間だけ滞在することになった。生きる気力を失いかけた須賀の前に現れたのは、トラック運転手たちから「福の神のペコちゃん」と呼ばれる喜美子。

                      須賀は喜美子にの母親の家の整理を手伝うかわりに、クラッシクのコレクションを聞かせて欲しいと頼まれます。初めは喜美子を、ずうずうしいおせっかいなオバチャンだと思っていた須賀でしたが、彼女の献身的な世話で須賀は徐々に生きる力を取り戻していきます。




                      大人になった男女が同級生のように過ごす、ひと夏だけの夏休み


                      手づくりのポテトフライ、ラムネ、イカ焼き、ほろ甘い瓜など、出てくる食べ物も、夏休みを感じさせるおいしそうなものばかりでした。

                      最初は、人生を達観した「福の神のペコちゃん」である喜美子が、須賀を助けていく話なのかと思っていたのですが、話の途中から明るくて働き者の喜美子にも、夫と子どもを早くに亡くした悲しみや、エリートの須賀に対してのコンプレックスなどの弱い部分もみえてきます。

                      そんな弱い部分をもつ須賀と喜美子はいつのまにかお互いを支えあっていくようになっていきます。

                      喜美子が働くバー兼定食屋のマダム、マダムの孫の舜と舞も二人を見守っています。この周りの人々も温かくでやさしかった。

                      反対に須賀の奥さんはダメダメでしたねー(^^;)自分で不倫しといて弱った亭主をほっぽり出して子どもも他人任せのくせに、そういう人ほど自分の飽きた所有物を取られると怒り狂うのよね。

                      ([い]4-2)四十九日のレシピ (ポプラ文庫)

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                      伊吹有喜作品 感想


                      『彼方の友へ』
                      『今はちょっと、ついてないだけ』
                      『BAR追分』
                      BAR追分シリーズ2『オムライス日和』
                      BAR追分シリーズ3『情熱のナポリタン』
                      『ミッドナイト・バス』
                      『なでし子物語』
                      『風待ちのひと』


                      JUGEMテーマ:本の紹介

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