『幻綺行 中村春吉秘境探検記 完全版』横田順彌

2020.08.25 Tuesday

0
    明治後期。多くの日本人が、これまでの鎖国の反動のように、世界へ進出しました。目的は商業、開拓、外交とさまざまでしたが、その中でも特徴的だったが「冒険家」です。

    当時は宇宙や深海に行くのと同じく、海外の、それも未開の土地へ行くことはそれだけで「冒険」だったのです。

    主人公の中村春吉は実在の人物で、「自転車世界無銭旅行」を成し遂げた冒険家です。義にあついバンカラな気質と大胆な行動で、ジャングルや砂漠で起こる不可思議な現象に立ち向かいます。



    『幻綺行』 あらすじ


    中村春吉はシンガポールに向かう途中、スマトラ(現在のインドネシア)で、自殺しようとした娼婦・志保を成り行きで身請けすることになる。しかし身請けの金は友人のもの。

    さしあたって現金が必要となった春吉は、現地の職員・石峰君とともに山田長政の秘宝探しにジャングル探検に向かうことに。

    しかしそこには、遊郭からの刺客と人間を操る食中樹が…。

    スマトラからチベットでの悪徳坊主たちとの対決、アラブの砂漠では砂の魔神と対決し、ロシアではバラバラ殺人に出くわすなど、中村春吉の行くところ、艱難辛苦があちらからやってきます。

    旅の仲間に加わった志保さんと石峰くんが春吉の破天荒な行動を助け、3人で窮地を乗り切っていきます。

    志保さんの身の上ですが、どうやら、騙されて女衒に売られ、スマトラまで流れ着いたようです。明治時代、海外における日本人の移住先駆者は娼婦でした。彼女たちは売られたり騙されたりして、異国で身を売らなければならなかったようです。

    横田順彌さんは『義侠娼婦・風船お玉』でも、アメリカで娼婦になった日本人女性冒険を描いています。

    義侠娼婦 風船お玉

    中古価格
    ¥1,391から
    (2020/8/25 22:07時点)



    日本版インディ・ジョーンズ


    純粋な冒険譚かとおもいきや、春吉たちが遭遇するのは、巨大な食虫植物や、なんとUFOまで!ジャンルを見ると「探検SF」とあるので、国や都市名は実在でも、そこでおこる出来事はフィクションとして書かれています。

    荒唐無稽に思えるものの、快男児中村春吉がいくところ、前人未到の土地では、なにがあっても不思議ではないように思われます。明治時代の探検には、今の宇宙旅行くらいの衝撃があったでしょうから。

    例えるなら日本版インディ・ジョーンズというところでしょうが、中村春吉のほうがもっと豪快でいきあたりばったりで、でもなぜか応援したくなってしまうキャラクターなんです。

    BGMには太田螢一の人外大魔境を


    ところで、『幻綺行 中村春吉秘境探検記』を読みすすめるうちに私の頭の中ではある音楽が流れ始めました。
    それは、太田螢一の「人外大魔境」という1984年に発表されたアルバムです。

    「人外大魔境」は、もともと太田螢一さんが小栗虫太郎の冒険小説「人外魔境」にインスパイアされて作ったそうなので、未開の土地の冒険の雰囲気にぴったり。

    しかし「魔海サルガッソウ」「西安の子供市場」などは、タイトルも曲調もおどろおどろしいので、トラウマになりそうな曲が多いですが…。

    太田螢一の人外大魔境

    中古価格
    ¥14,950から
    (2020/8/25 22:09時点)



    『 世界一やさしい! 微生物図鑑』

    2020.08.22 Saturday

    0
      コロナウイルス蔓延のため、ウィルス・微生物関連の本がよく出版されていますね。
      その中でも、わかりやすそうな『 世界一やさしい! 微生物図鑑』を読んでみました。

      世界一やさしい!微生物図鑑』は、その名の通り、イラストや漫画でウイルスや細菌の特徴をやさしく解説しているので読みやすく、菌やウイルスの基礎知識が身につきます。

      ひとくちに「微生物」といっても、ウイルスや細菌、きのこまで微生物のジャンルに含まれるんですね。きのこってそういえば菌類か…

      また、この本では微生物の擬人化イラストや、危険度や貢献度をグラフ化してあるので、ひと目でその微生物の特徴がわかります。



      微生物とはなんぞや


      そもそも、微生物とは何か。微生物の中には細菌やウイルスも含まれるのですが、それは大きさや特徴で細かく分類されています。
      (大きさは真菌>細菌>ウイルスの順)

      一番小さいのがウイルスで、これらは単体では増殖できないので他の動物の細胞を使って増殖します。エンベロープという外皮(コロナのイボイボ)が細胞に吸着しやすくするのだとか。
      くっついて仲間を増やそうとするのは、オナモミ(ひっつき虫)のようですが、正常な細胞を奪う厄介者です。

      危険な微生物


      昨今の危険な微生物といえば、やはり注目はコロナウイルスですが、その他にも危険な微生物はたくさんあります。

      大腸菌


      「大腸菌」というと、赤痢やO-157といった、下痢や食中毒を引き起こす大腸菌の悪いイメージなのですが、実は悪さをする菌は全体の一部なんだそうです。

      ウェルシュ菌


      食中毒を引き起こすウェルシュ菌。熱に強いので、鍋の料理を再加熱しても死にません。ついつい、料理は冷ましてから冷蔵庫へ。なんてしているとウェルシュ菌が増えてしまうらしい。気をつけないと…

      コロナウイルス


      SARSやMARSもコロナウイルスの一種なんですね。知らなかった…
      インフルエンザウィルスと同じく、変異するタイプなので、たとえワクチンができても効かなくなる可能性も…。

      現時点では、うがい手洗い、換気と、乳酸菌などの善玉菌を増やしていくのが一番の対策なのでしょう。

      『はたらく細菌』
      細胞擬人化まんが『はたらく細胞』のスピンオフ、『はたらく細菌』は腸内環境の善玉菌、悪玉菌の活躍を描いています。たべものや生活習慣で、こんなにも違ってくるのか…と、驚かされます。

      はたらく細菌(1) (なかよしコミックス)

      新品価格
      ¥0から
      (2020/8/22 22:31時点)




      驚きの機能をもつ微生物


      「微生物」は、主に人間や動物の体内で良くも悪くも影響をあたえるもの、というイメージがあるのですが、実は驚くべき働きをする微生物があります。

      金の成分を取り込んで金塊に生成する微生物や、石油の代替燃料をつくる微生物、電気を発生させる微生物など、科学的に利用できる性質を持つ微生物もいるとのこと。

      人類に驚異を与える一方で、発展にも貢献している微生物たち。
      できることなら危険な微生物には出会わず、麹菌のつくってくれた甘酒や塩麹を食べられる日々が続きますように…

      麹と水だけでつくる甘酒の作り方→

      アバンギャルドとロボット時代劇『戦前日本SF映画創世記: ゴジラは何でできているか』

      2019.08.27 Tuesday

      0
        昭和29年『ゴジラ』という前人未到のSF映画が完成するまで、日本映画はどのようにしてSFの表現を模索してきたか。

        日本映画の黎明期の稚拙なトリック映画から、キングコングに影響を受けた和製映画、はたまたアマチュアの自主制作まで、さまざまなフィルム・資料を調査し、日本のSF映画のルーツに迫るドキュメントです。

        マニアックなテーマではありますが、戦前映画、SF映画が好きな人にはたまらない内容です。



        アバンギャルド映画「狂った一頁」


        日本SF映画の黎明期は、SFの物語が一般的ではなく、撮影テクニックにその後のSF映画に通じる系譜をみています。
        最初に挙げられるのは大正時代に作られた「狂った一頁」という実験映画。

        精神病院を舞台にした幻想世界を、最新の撮影技法を使って作られたものですが、これが怖い。直接脅かす感じではないけれど、モノクロ、能面、狂人たちなど、見ているだけでゾッとします。

        興味がある方はYou Tubeにもありますので見てみてください。夜見ると眠れなくなりますが…

        この映画には多重露光やオーバーラップなど、当時革新的な技術が使われています。若き日の円谷英二(当時は英一)も参加していました。


        なんでもありのSF時代劇


        昭和に入るとようやくSFの概念が定着しつつあり、アメリカの「キングコング」が上映されると日本でも「和製キングコング」など亜流の作品が作られますが、着ぐるみをつかったチープな映画が量産されました。

        当時、映画は花形産業だったため多くの映画プロダクションが乱立。中小の映画会社は予算もなく、チープさを逆手に取ってなかなかおもしろい映画を撮っていました。時代劇にロボットを登場させたり、侍と河童を戦わせたりと、チープなのですが、スチール写真を見るとなかなかおもしろく、ちょっと見てみたいと思うのですが、こうした戦前のB級映画は殆どが現存せず残念。

        紛失やパクリは日常茶飯事。戦前の映画事情


        しかし、こうした戦前映画の調査は大変に難しいのだとか。なぜなら『紛失やパクリは日常茶飯事』だったからです。

        同じ著者の『映画探偵: 失われた戦前日本映画を捜して』を読むと、戦前は映画のフィルムを上映側が勝手に編集したり、パクったり、捨てちゃったりが普通に行われていたのだとか。もちろん、戦争による紛失も多いのですが、そうした事情で正確なストーリーもわからないSF映画が多いのは残念です。

        映画探偵: 失われた戦前日本映画を捜して

        中古価格
        ¥1,649から
        (2019/8/27 23:22時点)




        そんな中、お金持ちの趣味で撮影したアマチュア映画の方が商業映画より保存がよく、クオリティが高い映画があるのだそう。


        円谷英二がゴジラを創るまで


        円谷英二の師匠・枝正義郎がつくった幻の映画「大仏徘国」は、大仏が起き上がり街を歩くというただそれだけの映画なのですが、スチール写真はインパクトが強く、見てみたくなります。ただこれもフィルムが残っていません。2018年にリメイクされましたが、映像をみると牛久大仏が歩いたらこんな感じではないかと。

        大きな存在が徘徊する、というのは「ゴジラ」と通じるものがある気がします。



        円谷英二は「ハワイ・マレー沖海戦」という戦争映画であまりに精巧な模型を作ってしまったがために、GHQが本物だと信じ込み公職追放なったり苦労したけれど、ちゃくちゃくと特撮技術を磨き「ゴジラ」を作り出しました。

        こうしてみると、SF映画の黎明期は試行錯誤、遅い歩みではありましたが、その遺伝子は少しずつ蓄えられ、やがて「ゴジラ」でカンブリア紀の生物のごとく大爆発をおこした、そんな風に感じました。

        ゴジラ(昭和29年度作品) <東宝Blu-ray名作セレクション>

        中古価格
        ¥3,826から
        (2019/8/27 23:13時点)


        JUGEMテーマ:最近読んだ本



        『横浜駅SF』柞刈湯葉

        2017.07.11 Tuesday

        0
          横浜駅って、なんかずっと工事してない?』というのが、首都圏住民の共通認識だったりします。実は、駅が作られて以来ずっと、工事を続けているのだとか。

          そんな横浜駅の状況を逆手に取って、自己増殖する駅と、それに抗う人というSFに仕上げた『横浜駅SF』読んだとたん、やられた〜と思いました。身近な事象の意味をずらすことで、まったく異なる世界が作られていくのです。
          それがもう、絶妙で。こんな感覚、椎名誠の「武装島田倉庫」作品以来だわ。

          横浜駅SF (カドカワBOOKS)
          柞刈湯葉 KADOKAWA (2016-12-24)売り上げランキング: 25,234


          『横浜駅SF』あらすじ


          「冬の戦争」終結後、統治システム、統合知性体となった横浜駅は構造遺伝界と呼ばれる自己増殖を繰り返し、ついには横浜駅が本州をほとんど覆いつくした。人々は横浜駅の「エキナカ」に暮らし、横浜駅からはじかれた人間はエキナカを追放され、わずかな土地で細々と暮らしてきた。

          本州以外ではJR北海道とJR九州が、様々な技術を独自に開発し横浜駅に抵抗を続けている。

          そんな駅外のコミュニティ・九十九段下で生まれ育ったヒロトは、追放者から「18きっぷ」を渡され、エキナカへの冒険にでかける。ほんの物見遊山のはずが、駅員につかまり、JR北海道の工作員と出会ったことで、彼と横浜駅の運命は大きく動いていく…。


          横浜駅SFの世界


          雰囲気は『武装島田倉庫』『アド・バード』どの椎名誠SF作品に雰囲気が似ています。椎名作品もそうなのですが、普段見慣れた施設や機械の用途をずらして、まったく違う意味を持たせることで、独特の世界が現れるのです。
          (作者自身も『アド・バード』影響があると、あとがきで語っていました。)

          『横浜駅SF』では、我々が日常目にする駅のSuicaは人間に埋め込まれ、自動改札は不審者を排除する武器を持った自立式AIとして描かれます。

          そして、「駅」はもはや交通機関としての用をなさず、「構造遺伝界」と呼ばれるシステムで自己増殖し、もはや人間がの意図を無視し雑草並みの増殖力で本州を覆いつくし、意味をなさない通路やエスカレーターが日々増殖していくのです。

          反横浜駅勢力の人々が使う通信手段TCP-IPの画面は、昔懐かしいパソコン通信時代のようで、ちょっと懐かしいww

          アド・バード (集英社文庫)
          椎名 誠 集英社 売り上げランキング: 23,318


          武装島田倉庫 (新潮文庫)
          椎名 誠 新潮社 売り上げランキング: 225,298


          こんなこと、現実に起こるはずが…と思いますが、実は、現実でも徐々に増殖していそうな駅があります。上野駅はホームが何層にも重なっている部分があって、見ようによってはSFチックな風景となっています。
          上野駅ホーム


          JUGEMテーマ:オススメの本



          レビューポータル「MONO-PORTAL」

          『雑草は踏まれても諦めない - 逆境を生き抜くための成功戦略』 稲垣 栄洋

          2017.06.03 Saturday

          0
            雑草は踏まれても諦めない - 逆境を生き抜くための成功戦略 (中公新書ラクレ)』読了。読み終わってから道端の雑草を見るのが楽しくなりました。

            稲垣先生の雑草研究は、NHKのSWITCHインタビューで、ハマの番長三浦さんとの対談や、新書紹介番組「久米書店」で紹介され、気になっていたのです。「雑草魂」というと、ど根性など、頭よりも精神の強さがイメージされますが、実は雑草ほど、目的を果たすために手段を選ばない戦略家はいません。

            田んぼの苗そっくりに育ち、頭ひとつ大きくなったところで、田んぼに種をばら蒔くタイヌビエ、生育場所の条件次第で、身体を大きくも、小さくもできるナズナなど、雑草の生き残り戦略は、創意工夫に満ちています。


            雑草は踏まれても諦めない - 逆境を生き抜くための成功戦略 (中公新書ラクレ)

            中古価格
            ¥172から
            (2018/10/26 20:18時点)





            逆境に強いけど、実はあんがい弱虫


            雑草はその旺盛な繁殖力に似合わず、あんがい弱い植物なのだそう。例えば、雑草を駆除せずにおくと、一定期間は繁殖するものの、やがて他の野草にその場所を奪われてしまいます。

            雑草は、弱いがゆえに、他の植物が生育困難なコンクリートの隙間や空き地など、場所を選び、そこで生きるすべだけを特化していったのだとか。

            だから、人間がいなくなると、雑草も滅んでしまうらしいのです。私は、雑草というと、ゴキブリ並みの生命力で繁殖し、人間をを苦しめる存在だと思っていましたが、弱いからこそ、競争相手の少ない道端を選んだのです。

            そんな雑草の弱さを知ると、道端に咲いている草花がとてもいとおしく感じるようになりました。

            雑草のくらし (福音館の科学シリーズ)』は、絵本作家の甲斐信枝さんが空き地に生える雑草の様子を丹念に観察して描かれた絵本。年月が経つにつれ、生える雑草の種類も変化していきます。

            雑草のくらし (福音館の科学シリーズ)

            中古価格
            ¥1,560から
            (2018/10/26 20:19時点)





            雑草のおどろくべき生命戦略


            一口に雑草といっても、種類も生態も多種多様。昭和天皇が「雑草という草はない」とおっしゃった通り、それぞれに個性的で面白いのです。

            ・毒で相手を駆逐、しかし自分の毒でやられたセイタカアワダチソウ
            川原や野原一面に広がってススキなどを駆逐したセイタカアワダチソウですが、最近では自分の毒にやられてしまい、一時期ほどの勢力はなくなったそうです。

            ・踏まれることが喜びのオオバコ
            「ねえ、もっと私を踏んで…」って、新書紹介番組「久米書店」で壇蜜さんに言ってもらってましたっけww、オオバコは、踏まれることで、動物や人間の足に種をつけて遠くに運んでくれるで、踏まれれば踏まれるほど、新しい環境に行くことができる。

            こうしてみると、やはり雑草の過酷な環境を生き抜く生命力と、環境に合わせた巧みな戦略は人間も学ぶべきものがあるのでしょうね。

            逆境ナイン(1) (サンデーGXコミックス)
            小学館 (2012-09-25)売り上げランキング: 46,634


            JUGEMテーマ:オススメの本



            レビューポータル「MONO-PORTAL」

            『「先送り」は生物学的に正しい 究極の生き残る技術』 宮竹 貴久

            2015.06.28 Sunday

            0
              「先送り」は生物学的に正しい 究極の生き残る技術を読みました。BSの新書紹介番組「久米書店」で取り上げられていたのがきっかけ。

              仕事や人間関係に行き詰まったら、生物から生きる知恵を借りてみるのもいいかもしれません。生物の世界は簡単です。「生き延びて子孫を残す」という命題だけをクリアすればいいのですから。でも、それが難しいんですよね…


              生物界のしくみを社会に置き換えてみると…


              この本では、「先送り」は仕事にすぐ手を付けない、「死んだふり」は会議で発言しないなど、会社生活を例にとって生物学を紹介しています。

              「先送り」「死んだふり」「パラサイト」など、人間の常識としては望ましくないと思われることも、「生き残る」ことを再優先に考えれば、こうした方法も自然界ではアリなんですね。

              実は発言しなかったり、後回しにすることで、めんどうな仕事から避けられるというメリットがあるのです。その分、出世から遠ざかるというデメリットもあるのですが…。

              生物界でも「死んだふり」がうまい個体は、動くものを餌と認識する天敵からは、逃げられる確率は高いのだけれど、同時に子孫を残すパートナーと出会う確率が低くなるというデメリットがあるのだそうです。

              「先送り」にもデメリットがあるため、自分が何を大事にしたいのかを生物学的に置き換えて、その場その場を生き延びていくことが大事なのでしょう。生物も時には『逃げるは恥だが役に立つ』のです。


              「先送り」は生物学的に正しい 究極の生き残る技術 (講談社 α新書)

              中古価格
              ¥1から
              (2018/7/7 21:35時点)




              こちらもおすすめ。実は弱い雑草たちの生き残り戦略。

              雑草は踏まれても諦めない - 逆境を生き抜くための成功戦略 (中公新書ラクレ)

              中古価格
              ¥2,380から
              (2018/7/7 21:37時点)



              JUGEMテーマ:オススメの本


              「無伴奏ソナタ」 オースン・スコット・カード

              2014.09.28 Sunday

              0
                2014年秋、演劇集団キャラメルボックスが公演する舞台「無伴奏ソナタ」。その原作の「無伴奏ソナタ」は、SF短編集で、今まで読んだどのSF作家とも違う、ホラーのようであり、哲学や詩のようでもある、独特の世界観を持つ物語でした。

                無伴奏ソナタ〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫 SF カ 1-26)
                オースン・スコット・カード 早川書房 売り上げランキング: 16,036


                印象深かった短編の感想をいくつか書いてみました。

                王の食肉


                原題「Kings meat」を「食肉」と翻訳したことで、テーマがより強調された気がします。
                ある植民惑星では、人間が異星人の王たちの食肉として生かされている。「羊飼い」と呼ばれる狩人は、王と王妃の気分によって、王たちの食材を村人たちの体から切り取っていく。

                …そのショッキングな内容におどろきました。こんなSFもあるのだな、と。

                ラストでの羊飼いの運命は、キリスト教の要素が反映されていて、残酷な使い魔と思われていた羊飼いが、実は罪を背負い、人々の命を守る存在だったという。

                ブルーな遺伝子(ジーンズ)を身につけて


                移民星から地球へ調査船が送り込まれる。地球に残る「アメリカ人」たちは、ロシアとの戦争の影響で細菌やウイルスなど、独自の科学を発達させ、とうとう遺伝子をいじり、まったく別の子孫をつくろうとしていた…。

                読んでいて「彼方より―諸星大二郎自選短編集」や「食事の時間」を思い出しました。微生物をうえつけ、ゴミや排泄物を食事とし、新たな形状の人類がつくりだされるところに恐怖を感じました。


                無伴奏ソナタ


                音楽の天才クリスチャンは、世間との接触を禁じられ、森に住み自然を教師に音楽を作り続けていた。ある時、ある男が彼に音楽を手渡した。バッハという男の音楽を。その日から彼の運命は大きく動いていく…。

                禁を破った彼は音楽活動から追放され、別の仕事につく。けれども、音楽を忘れられないクリスチャンは、禁を破りふたたび音楽を奏でてしまう。

                音楽をつくるたび、過酷で、残酷な罰がクリスチャンを襲います。「王の食肉」でも同じ表現がありましたが、罰を受けるクリスチャンの拷問シーンは血こそでないものの、淡々としていて恐ろしいのです。

                それでも、クリスチャンから音楽を離すことはできませんでした。
                無伴奏ソナタの世界では、人の仕事や生活が政府(おそらくはコンピュータ)により定められています。そのおかげで人々は才能や性質にあわせた一番いい人生が与えられますが、システムのミスがあったり、少しでもルールを破ると、人生がまったく変わってしまうのは怖い世界だと思いました。

                どんなに残酷な運命でも、誰もクリスチャンから音楽を引き離すことができないのです。きっと彼にとっての音楽は彼そのものだと思うのです。

                無伴奏ソナタは演劇集団キャラメルボックスで舞台化されています。役者さんたちの演技はもちろん、オリジナル楽曲やクリスチャンの奏でる楽器のデザインもすばらしいです。

                『無伴奏ソナタ』DVD

                価格:4,500円
                (2018/4/15 22:06時点)



                演劇集団キャラメルボックス公演
                「無伴奏ソナタ」2014
                「無伴奏ソナタ」2018

                JUGEMテーマ:オススメの本

                レビューポータル「MONO-PORTAL」

                「銀河英雄伝説 落日篇」 田中 芳樹

                2013.09.18 Wednesday

                0
                  最初は舞台「銀河英雄伝説 初陣」を観劇するための予習として読み始めたものの、いつの間にかハマってしまった銀河英雄伝説、いよいよ最終巻「銀河英雄伝説 落日篇」まで読み終えました。

                  ラインハルトはかねてから求婚していたヒルダと結婚。結婚式には長くあわずにいた姉アンネローゼも出席し、ローエングラム朝も安定期に入ったかとおもいきや、またしても戦いが起こります。

                  前回ロイエンタールの反乱の際、沈黙を守っていた元自由惑星同盟のイゼルローン艦隊。ヤン・ウェンリー亡き後、その養子であるユリアンは彼の志を引き継ぎ、民主主義の火を絶やさないため、ラインハルトへ最後の戦いに挑みます。

                  戦力だけ考えたら、帝国軍が圧倒的に有利なんですが、戦うことが人生のようなラインハルトは新婚生活もそこそこに戦場へでかけていきます。まったく、心はやんちゃ坊主のままです。そんなラインハルトのことを理解し、許してあげるヒルダが健気です。

                  しかし、ラインハルト不在の時を狙って、またもや地球教が今度はヒルダとアンネローゼのいる屋敷を急襲、結局子どもは無事に生まれたものの、今度はラインハルトの病が重篤化。一方ユリアンたちは最後の力を振り絞ってラインハルトの旗艦ブリュンヒルデに向かい白兵戦をしかけていく…

                  ようやく、本当にようやく決着がついた。そんな気がします。ここまで来るのに多くの犠牲が必要でした。

                  ヒルダの立場が、女の私からみたら切なかったです。女はたぶん、権力よりもささやかな愛情の方がいいと思うのだけれど(両方欲しがる人もいるが)、ラインハルトは結局、アンネローゼやキルヒアイスのような感情を彼女に注げなかったのだよね。

                  時間がなかったせいもあるけれど。それでもヒルダは聡明な女性なので、ラインハルトから受けた信頼のために、ローエングラム朝を支えてゆくのでしょう。せめてもう少し時間があれば愛情が芽生えたかもしれないと思うと、残念でなりません。


                  銀河英雄伝説 〈10〉 落日篇 (創元SF文庫)
                  田中 芳樹 東京創元社 売り上げランキング: 24,937



                  2018年ふたたびアニメ化。豪華声優陣による重厚な人間ドラマと圧巻の戦闘シーンが素晴らしい。

                  銀河英雄伝説 Die Neue These 第1巻(完全数量限定生産) [Blu-ray]

                  新品価格
                  ¥9,543から
                  (2018/5/15 14:11時点)




                  銀河英雄伝説 野望篇
                  銀河英雄伝説 雌伏篇
                  銀河英雄伝説 策謀篇
                  銀河英雄伝説 風雲篇
                  銀河英雄伝説 飛翔篇
                  銀河英雄伝説 怒涛篇
                  銀河英雄伝説 乱離篇
                  銀河英雄伝説 回天篇
                  銀河英雄伝説 落日篇


                  JUGEMテーマ:SF小説

                  「銀河英雄伝説 回天篇」 田中芳樹

                  2013.09.16 Monday

                  0
                    好敵手ヤン・ウェンリーが亡くなった「銀河英雄伝説 乱離篇」に続き、今回の回天編も読むのがつらい物語でした…。宇宙を手にし、皇帝となったラインハルト・フォン・ローエングラムの前に立ちはだかることになったのは、いままでラインハルトを支えてきたロイエンタールでした。

                    複雑な生い立ちのロイエンタールは、ラインハルトに対して忠誠心と敵愾心、両方の心を持ちあわせていて、それが地球教のテロという形で窮地に追い込まれた時、あえて弁明せず、ラインハルトと対決する道を選んでしまいます。

                    …もう、馬鹿なんだからあああ!゜・(*ノД`*)・゜・

                    もっと楽に生きる方法だってあるのに、ロイエンタールはそれを選びたくても選べないんでしょうね。ロイエンタールの追撃を命じられたのはロイエンタールとともに双璧と讃えられた親友のミッターマイヤー。
                    ロイエンタールの大ばかやろう!」ってセリフがミッターさんの心情を表してるよなあ。

                    一方、ラインハルトの私的部分(殆ど無いに等しかったけど)にも事件が。その明晰さと卓越した政治センスで重用されていたヒルダことヒルデガルト・マーリンドルフと一夜を共にすることになり、その責任感からラインハルトはヒルダに求婚します。

                    まだ愛とも呼べない関係性ですが、翌日ミッターマイヤーのプロポーズに習って花束を抱えて求婚しに行くラインハルトが可愛らしい。(*´艸`*) このヒルダは妊娠し、ローエングラム朝の2代目皇帝を出産することになるのですが
                    、やっと落ち着いたと思った宇宙にまたも激震が走ることになります。


                    銀河英雄伝説〈9〉回天篇 (創元SF文庫)
                    田中 芳樹 東京創元社 売り上げランキング: 25,813

                    JUGEMテーマ:SF小説


                    2018年ふたたびアニメ化。豪華声優陣による重厚な人間ドラマと圧巻の戦闘シーンが素晴らしい。

                    銀河英雄伝説 Die Neue These 第1巻(完全数量限定生産) [Blu-ray]

                    新品価格
                    ¥9,543から
                    (2018/5/15 14:11時点)




                    銀河英雄伝説 野望篇
                    銀河英雄伝説 雌伏篇
                    銀河英雄伝説 策謀篇
                    銀河英雄伝説 風雲篇
                    銀河英雄伝説 飛翔篇
                    銀河英雄伝説 怒涛篇
                    銀河英雄伝説 乱離篇
                    銀河英雄伝説 回天篇
                    銀河英雄伝説 落日篇

                    JUGEMテーマ:銀河英雄伝説


                    「銀河英雄伝説 乱離篇」 田中 芳樹

                    2013.08.31 Saturday

                    0
                      ああもう今回の乱離篇は、田中芳樹先生や銀英伝ファンの方には申し訳ないけれど、前半部分は逃げるようにページをめくりました。

                      宇宙を手中に収め、銀河の皇帝となったラインハルトは、元自由惑星同盟のヤンとの勝負にこだわり、大艦隊を率いて最後の戦いに挑みます。本来は補給を断つなどして大軍勢なりの楽な勝ち方はあるのですが、ラインハルトはそれを快しとせず、正々堂々とヤンと戦おうとします。ヤンもまたラインハルトの期待に応えて知略をつくし、少ない戦力でラインハルト側の名将たちを圧倒します。

                      ここはもう、戦争というよりも勝負、決闘のような感じです。

                      しかしほどなくしてラインハルト側からの停戦と会談の要求がなされ、ヤンはイゼルローン要塞を離れることになるのですが、その途中、ヤンは命を落とします。

                      銀河英雄伝説はSF小説ではなく「歴史」なので、1巻にでてきた、どーしょーもない人間に殺されてしまうのは、なんとも切ない展開でした。もし、ヤンのとなりにユリアンかあるいはフレデリカがいたら、また歴史は変わっていたかもしれないのだけれど、キルヒアイスの時と同じように、歴史は時として思いもよらぬ方向から覆されることがあるのです。

                      ヤンの奥さん、フレデリカの言った言葉が、ヤンに対する愛情と、女性の心理を端的に表していました。
                      本当に女は、男の主義や戦いなんて、どうだっていいんですよ。ただ生きてさえいてくれれば。
                      このセリフ、大好きです。
                      「真実をいうとね、私は民主主義なんか滅びたっていいの。あの人が私の隣で、半分眠りながら本を読んでいてくれていいたら…」


                      後半は自由惑星同盟のみんながヤンの死を受け入れて、淡々と業務をこなしていくところが、日常的すぎて逆に悲しかったです。

                      ラインハルトも、最大のライバルであり、自分に並び立つ存在のヤン・ウェンリーのことを評価していましたので、キルヒアイスの時と同様、衝撃を受けます。いつも自分を置いていってしまう、と…。

                      しかし、友を失い、盟友を失っても、ラインハルトは覇道を歩まねばならないんですよねえ。

                      銀河英雄伝説 〈8〉 乱離篇 (創元SF文庫)
                      田中 芳樹 東京創元社 売り上げランキング: 19,455

                      JUGEMテーマ:SF小説