ジェンダーフリーがSFだったころ『ポケットのABC』 眉村 卓
2020.11.12 Thursday
内容はタイムマシンや宇宙人、未来人といったSFらしい設定ものから、日常に起こるちょっと不可思議なできごとなどが描かれています。
ジェンダーフリーがSFだったころ
私が興味深かったのは『テリカさん』という短編なのですが、30数年前の性差別の実態を見せつけられた話でした。
『テリカさん』のあらすじ
主人公の働くFM局にアルバイトのテリカさんという女性が入ってくる。テリカさんはすごく優秀で、周りの男たちなど足元にも及ばない。
実は彼女は未来人で、過去を調べて論文を書くためにきたのだという。テリカさんの住む未来では男女差別はなく能力のみで評価される。
テリカさんは女は女らしく、男の一歩後をついていく時代に不便を感じながら未来に帰っていく…という話なのですが、この話が書かれた30数年前は、まだまだ女性が仕事をするのは大変だったのだなあと感じました。
現代でもまだまだ女性差別はありますが『テリカさん』がいた未来に近づいていっているのはありがたいことです。
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SFは未来を写す
時にSFは未来を写します。ジュール・ヴェルヌの『80日間世界一周』や『月世界旅行』は、実現化しましたし、100年前の日本で行った未来予想はほとんどが実現しています。(新幹線や女性の社会進出など)
SFというのは未来の予想であるとともに、その当時の社会情勢を描き出しているので、「未来」でその作品で読む私達は、逆にとても衝撃をうけるのです。
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なかでも衝撃だったのはアメリカのSF作家フレドリック・ブラウンの『未来世界から来た男』とレイ・ブラッドベリの『火星年代記』の中の短編『空のあなたの道へ』です。1950〜60年代にかかれているので、当時のシビアな社会背景が描かれていて、今では考えられないようなオチとなっています。
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ひと昔前からみたら、今の世の中は大分恵まれています。しかしレイシストな国の代表が増え、世界が分断する問題も残っています。そんな中で現代のSF作家はでどんな未来を書くのでしょうか。