4Kレストア版[映画]花様年華
2022.09.01 Thursday
かつて、シネマート六本木で上映されたウォン・カーウァイ特集では、こんなコピーがつけられました。
時代が、王家衛に恋をしたー
映画館には、当時ウォン・カーウァイに恋した人たちと、今新たに恋をしている人たちが集まっていました。あの時代の空気を感じていた人、また、若い世代があの空気を感じるためにウォン・カーウァイを欲していたのでしょう。
花様年華 あらすじ
60年代香港を舞台にした、切なくてやりきれなくて、でもとても美しい大人の恋物語。
お互いの伴侶が不倫関係にあると知った男女。そんなきっかけから始まり、惹かれあうふたり。いつもお互いを名前で呼び合うこともなかった。恋人同士が当たり前に行うそんな行為ですらふたりにはできなかった。
やがて男はシンガポールへ。女に「切符が手に入ったら、一緒にいかないか」と告げる。しかし女は行かなかった。ある日、男の部屋に口紅のついたタバコが置かれていた、彼女だった。
男は、アンコール・ワットへ向かい、秘められた過去を穴の中へ…。
4Kレストア版感想
今回、4Kレストア版を見て驚いたのは色と音。レストアにはウォン・カーウァイ自身がかかわっていて、細かいサウンドや色調まで調整したのだそう。
もともと色彩の美しい映画でしたが、レストア版はさらに60年代のフィルムのように色が強調されていて、さらに物語の没入感がすごかった。そして「音」がクリアで、虫の音や人の声、BGMに流れる「夢路のテーマ」などが効果的に挿入されていたのが印象的でした。
そして、4Kレストア版ではDVD版からカットされているシーンがいくつかあり、説明が省かれています。でも、それだけで十分なんですよ。
マギー・チャンの表情や、トニー・レオンの仕草がすべてを物語っているのですから。
DVD版感想
男は、秘密を封じ込め、過去をガラス越しに覗きながら生き、女は、秘密を持ちながら現在を生きてゆく。
きっと、人生最後の時に思い出すのはこんなふうに過ぎ去った恋のこと、なのかもしれない。
派手な展開ではなく、ただ淡々と物語が進んでゆくけれど、気が付いたら、60年代の香港に街の中に引き込まれていました。
ふたりの生活空間には赤をベースに鮮やかな色があふれている。だけど、ふたりが人目を忍び歩く街なみや、すれ違う路地裏にはきまって色がない。ごっそりと色がはがれ落ちたような裏道。
こんな色の対比も、ふたりの危うい関係を暗示しているかのよう。くすんだ街並みの中で、マギー・チャンのチャイナドレスだけが、鮮やかな色彩を放っていました。
特典映像にはその後のふたりの様子が描かれています。その後の何度も出会っていたんですね。
でも、お互いを意識したまま別の人生をいきてゆきます。トニー・レオンが演じたチャウのその後の物語が「2046」につながります。
花様年華 BGM
映画挿入歌の「花様的年華」は、その美しい歌声から「金の喉」と呼ばれた戦前の歌手、チョウ・シュアンのもの。ノイズ交じりのラジオから流れてくる切ない歌声を、お互いの部屋で聞いているふたりがとても美しい。
花様年華のサウンドトラックは、ラテン、ジャズ、日本映画の主題歌、上海歌謡など、さまざまなジャンルの音楽が使われています。
ウォン・カーウァイ作品
・マイ・ブルーベリー・ナイツ
・恋する惑星
・グランド・マスター
・愛の神、エロス〜エロスの純愛〜若き仕立屋の恋
・2046
・天使の涙
・楽園の瑕