[映画]ZIPANG ジパング 林海象

2021.08.29 Sunday

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    「私立探偵濱マイク」の林海象監督幻の時代劇映画「ZIPANG」。
    林監督には珍しく時代劇を題材にしてますが、かなりぶっ飛んでる世界観なので時代劇のジャンルには入らないでしょう。DVD以前の作品のためこれまで見ることができませんでしたが、アマゾンプライムビデオで配信されていて久しぶりに鑑賞できました。



    ZIPANG ジパング あらすじ


    主人公・地獄極楽丸は数本の剣を自在に使い分ける豪快でドハデな大泥棒。地獄極楽丸をつけねらう鉄砲お百合は、鉄砲片手に啖呵を切る様が粋な女賞金稼ぎ。自分の首を狙う鉄砲お百合に惚れてしまう地獄極楽丸。

    ある時お宝を探しに洞窟に押し入り、見事黄金の宝剣を手にするが、時の権力者・徳川家康との剣の争奪戦に巻き込まれ、鉄砲お百合が異世界へ連れ去られてしまう。剣に封印されていた古代人・「刺青の男」の話によれば、その剣は幻の黄金の国・ジパングへの鍵だったらしいのだが…

    地獄極楽丸はお百合を取り戻すため、刺青の男はジパング国女王との数千年にわたる愛を貫くために、共にジパングへと向かう。

    古き良きチャンバラ


    前半、地獄極楽丸がいろいろな刀を使い分け、大勢の敵と大立ち回りを繰り広げます。地獄で丸が持つ刀の種類がおもしろくて、小刀の二刀流、槍が仕込んである刀は飛び出し式、柔らかな刀ではフェンシングの外国人とやり合います。

    敵も鞍馬天狗に座頭市、丹下左膳に三銃士?(時代劇なのに外国人!)まで、時代劇のヒーロー(もどき)をバッタバッタと切り倒し、最後はチャンバラの聖地・流れ橋で橋の上でバッサバッサと切り込んでゆくシーンは圧巻。ケレン味たっぷりで、昔のチャンバラ映画への愛を感じます。

    「どいつもこいつも、動くんじゃないよ!」など鉄砲お百合の啖呵も昔の侠客映画の女博徒のようで、それを若き日のかわいらしい安田成美さんが演じているのがとてもキュートです。

    林海象監督は『夢みるように眠りたい』などでも、戦前の役者を起用して古い映画へのリスペクトを感じる作品をつくっていますが、この映画がつくられた30年前は昭和のチャンバラ映画黄金期を支えた「切られ役」の役者さんや撮影スタッフさんたちがまだご存命で参加されているため、より「古き良き映画」の香りがするのでしょう。



    見た後スカッとするストーリー


    全体としてはアクションとラブがうまくかみ合っていて、見た後スカッとするストーリーでした。
    敵方の服部半蔵が、体中に次から次へとありえない秘密兵器を隠し持っているのは、後の「探偵事務所5」の七つ道具に通じるところがあるかも。
    特に半蔵が体の中に刃物付きの骨を潜ませて、それを取り出すシーンはちょっとグロかった。

    しかし、90年代初頭の作品ゆえ、特撮関係がややチープ感が否めないのが残念。ところどころ「B級」な部分もありました。だが今見ると逆にそれがいい。それでもアクションはかっこよく、忍者たちが枯れ葉の中から猛スピードで近づくシーンは圧巻でした。

    今のCG技術で作り直したら、もっと面白くなると思うのでぜひリメイクしてほしい…。

    主題歌はなんとX JAPAN(当時はX)の名バラード『ENDLESS RAIN』

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    ミュージカル風味のエンタメ時代劇[映画]引っ越し大名!

    2019.10.02 Wednesday

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      星野源さん主演の「引っ越し大名!」みてきました。もう単純に面白かった!

      1スジ(脚本)、2ヌケ(技術)、3ドウサ(演技)
      とは、日本映画の父である牧野省三が言った言葉ですが、「引っ越し大名」はそのすべてが揃ってます。

      昔懐かしい時代劇映画の味がするものの、アレンジは現代風でテンポが良くて飽きがこない、面白い映画でした。

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      引っ越し大名!あらすじ


      越前松平家、書庫番の片桐春之介は「かたつむり」とあだ名される引きこもり侍。しかし突然、藩の引っ越し(国替え)の責任者、引っ越し奉行を任じられてしまう。おまけに今度の国替えは距離は増えるし石高は減少。

      先代の引っ越し奉行の娘、於蘭、幼なじみで剣の達人、源右衛門、勘定方の監物などの協力の下、断捨離、スケジュール管理、費用の算出など、書物ヲタクの春之介の知恵で、なんとか引っ越し作業がすすんでいくのだが…


      時代劇とミュージカル


      劇中、なんと歌がでてきます。犬童監督「のぼうの城」で主演をつとめた野村萬斎さんによるコミカルな「引っ越し唄」や藩士の妾が歌う別れ唄など。時代劇に歌?と思われるかもしれませんが、これが案外合うんです。

      昔はこうしたミュージカル調の時代劇がジャンルとしてあって「鴛鴦歌合戦」「狸御殿」などの傑作も作られました。だから一周回って新しくて面白い。主要な登場人物たちは歌えるひとたちですものね。高畑充希さんの伸びやかな歌声は本当に素晴らしかった。

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      欲をいえばミッチー殿にも歌わせて欲しかった。なんたって殿は毎年ワンマンショーで歌って踊ってクルクルターンをなさっているので。

      殿は現世でもキラキラしています…。

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      魅力的な登場人物たち(ここからネタバレ)


      とにかく、登場人物たちがみんな魅力的。引きこもりの書物オタクの春之介、その幼なじみでこちらは戦闘ヲタクの源右衛門、しっかりものだけど、ちょっとマイペースなヒロイン於蘭はその言動で春之介はドギマギさせます。

      高畑充希さんの於蘭、かわいかったです。ちょっとツンデレで、意表を突く間のとり方が魅力的でした。

      そして、殿!なんといっても及川光博さんの殿!実はミッチーさん、なよっとした(男色の)役って案外やってないのでファンとしては逆に新鮮でした。御手杵を振り回す源右衛門に駕籠のなかからキャーキャーいってるところが可愛らしかったww


      全員がそろうまでが引っ越しです


      物語のクライマックス、公儀隠密との大バトル(高橋一生が御手杵をぶん回すシーンは圧巻)を繰り広げて大団円かと思いきや、その後も少し物語は続きます。その後も引っ越しを繰り返す間に春之介は一児の父に。

      あれ?まだ続くの?と思ったら、ほんとうの意味での「引っ越し」は終わってなかったんですね。
      百姓として姫路に残した藩士たちを再び迎えるまでが「引っ越し」だったんです。何度も国替えをして、10数年後、ようやく石高が加増されて彼らを迎えることができることに。

      最後に殿様が百姓として生きてきた山里の汚れた手を握るところは、本当に泣けた。約束を反故にすることもできた。けれども「かたつむり」と言われた男はあきらめず、少しずつ道を進めて目的の場所にたどり着いたのかもしれない。

      もしかしたらこれは、新しい世界の新しい神話なのかもしれない。[映画]天気の子

      2019.08.19 Monday

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        新海誠監督の映画「天気の子」鑑賞。「君の名は。」はラブストーリーでしたが、「天気の子」はラブストーリーだけじゃなくて、世界のあり方について考えさせられる物語でした。

        さて「天気の子」のストーリーですが、クライマックス以外は、ほぼ予告編や紹介映像のとおりです。ただ劇中の「世界の形を決定的に変えてしまったんだ」の本当の意味を知ったときは衝撃でした。

        「若さ」は無謀


        正直、この話は世代によって見どころが違うかもしれません。中年の私が見ると若者たちの無謀さが心配になりました。家出少年の帆高は、「東京に来たらなんとかなる!」と甘い考えですぐ行き詰まってしまったし。

        帆高くんの家出の理由も映画では明確にされていません。小説だとそのあたりのことも書かれているらしいので読んで補完したい。


        困窮する陽菜を助けようと、「晴れ女ビジネス」初めたときも「おいおい、これじゃあいつか、しっぺ返しをくらうぞ」とおばちゃんは心配してしまったのです。

        だって、神との契約には古今東西、「代償」が必要なのだから…

        神なき世界の新しい神話(ここからネタバレ)


        雨乞いや洪水、地鎮など、神との契約の代償として、昔から人は神へ供物を捧げてきました。民俗学や歴史学によると、それらはたいてい「人柱」、人の命です。

        諸星大二郎のマンガ「詔命」は、地震を抑えるため人柱に選ばれてしまった男の話ですし、泉鏡花の「夜叉ヶ池」は、神との契約を守る娘が、村人の間違った生贄信仰によって辱めを受けそうになります。

        天候をコントロールできる陽菜もまた、巫女であり神への生贄となる運命でした。それを帆高は奪い返してしまいます。普通の神話ならば「人柱」を助けたものは「英雄」となるのですが、帆高はクシナダヒメを奪い返し、ヤマタノオロチを退治したスサノオのような神でも、英雄でもない。



        だから、ふたりは世界の形を決定的に変えてしまうのです。その代償として、雨が続いた東京都心は水没してしまう。

        彼らはもう神の助けを得ることはできず、自分たちが変えてしまった世界を受け入れ、新しい世界の、新しい神話をつくっていくのかもしれない。

        沈んでしまった東京と、そこで現実を受け入れて生きる人々は、近年頻発する災害を暗示しているようにもとれました。

        世界が変わってしまったら、自分たちはどう生きるのか。
        そんなメッセージを投げられた気がして、映画を見終わったあとも、世界のあり方を私は今も考えています。


        泉鏡花の「夜叉ヶ池」も、神との契約よりも恋人を選んだ男女が描かれます。封建的な明治時代では契約を破ったことで悲劇的な結末を迎えてしまいます。令和時代の「天気の子」では、神よりも人を選んだ主人公たちがはいき残ります。そこが現代的な夜叉ヶ池みたいだなと思いました。



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        想像力で世界を創る[映画]マイマイ新子と千年の魔法

        2019.07.11 Thursday

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          昔の、田舎の子どもの体験すべてが詰まっている映画です。「この世界の片隅に」の片渕須直監督が手がけた「マイマイ新子と千年の魔法」は、山口県防府市を舞台に主人公の新子が千年前の世界に住む女の子を想像し、世界を作り出していく物語です。

          千年前の平安の世界と、現実の世界が交互に描かれます。新子は千年前の町の知識を知恵者のおじいちゃんから授かり、現実世界では東京から来た喜伊子と仲良くなり、喜伊子からは文化的な刺激をうけていきます。




          想像力で世界を創る


          新子のいた昭和30年代、田舎にはなんにもありません。おもちゃもテレビも映画も本も、今のように種類があるわけではない。だからこそ想像力が試されるのです。空き地は戦場や野球場に、防空壕や穴は秘密基地に。

          新子も自分の宝物を庭に埋めてガラスで覆って、自分だけの宝箱をつくっています。(妹に見つからないためでもある)このセンスがとてもすてきだでした。

          おじいちゃんの言う「千年前の町」も、石碑と田畑の水路がかろうじて面影をとどめているくらいで、遺跡や遺構があるわけじゃない。でもそこから新子は想像の平安の町をつくってしまいます。

          モノがないだけ、いくらでも空想を広げることができたのでしょうね。その想像力が、新子がこれから生きていく力になるんだと思います。

          新子がモデルにした千年前の女の子は、実際に当時赴任していた清原元輔の娘である清少納言。後の才媛も昔はおてんばだったのかもしれません。



          「マイマイ新子」には、昔の田舎の子どもの体験がすべて詰まっている


          私も田舎の子どもでしたから、新子や喜伊子が体験したようなこと、覚えがあります。

          小汚い男の子が貸した色鉛筆を不格好にしちゃったシーンは、「ああ、昔はこういう男の子いたなあ」と思ったり、転校生のお家に行くと、違う文化の雰囲気を感じ取ったり。

          ときおり田舎で起こる事件や、大人のヒソヒソささやく噂話も「そうそう!」と思いました。昔の子供の視点からみると恐ろしくゾワゾワと落ち着かない感じなんですよ。

          一緒に冒険をした友達は、ずっと一緒にいると思っていたけれど、いつの間にか別れが来てしまう。今と違って連絡がなかなかできないので、きっと一生の別れになってしまう。そんな寂しさも昔の子どもの頃だれしもが体験したことじゃないかなと思うのです。

          新子と、すずさん


          「マイマイ新子と千年の魔法」と「この世界の片隅に」この2つの物語はどこか地続きのような着がします。両作品とも、時代が10年ほどしか離れていないし、山口と広島、同じ中国地方が舞台です。主人公はふたりとも空想がすきな女の子です。

          もしかしたら、すずさんの生まれるのがもう少し遅ければ、戦争にあわずに、新子のように空想を巡らせて絵を描いていたのかも。あ、でもそれだと周作さんにはであえないか…
          この世界の片隅に

          それぞれのいじめの形[映画]聲の形

          2018.08.29 Wednesday

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            私は過去いじめられた経験があります。その傷は大人になっても癒えないし、今でも相手を許さない。けれども映画『聲の形』はいじめられた人、いじめた人、それを容認していた人と、それぞれの立場を均等に描くことで「いじめの形」を示してみせています。

            ああ、こんな立場で人は人をいじめていたのだな、と考えさせられました。

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            『聲の形』あらすじ


            あまりにも有名な内容なので割愛。
            ・小学六年生の石田将也は聴覚障害者の少女・硝子をいじめる、
            ・周りもおもしろがりのっかっていく
            ・いじめ発覚
            ・主犯格の将也にすべての責任を押し付け、今度は将也がいじめの標的に
            ・5年後、硝子と将也は再会し、新たに関係を築こうとしていくが…


            「きれいごと」「感動ポルノ」の先にあるもの


            こどもというのは、世界で一番無垢で、そして恐ろしいものかもしれません。中国の呪術で「巫蠱」というのがありますが、舞台になった教室は「巫蠱」に似てますね。狭い空間で精神的に傷つけあって、最後まで生き残った者が呪者(先生や世間)に認められる、みたいな。

            『聲の形』では、こどもたちの心に毒がたまっていく様子が描かれています。いじめる相手にも理由はあるし、完全な悪ではない。(悪だったらどんなに楽か)

            また、いじめられる硝子も最初は「かわいそう」と思うものの「もっとうまく立ち回ればいいのに…」と思う気持ちもありました。

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            物語は成長した将也と硝子が新しい関係を築こうとしますが、周りの当事者たちにさまざまな波紋をよんでふたりは追い詰められていきます。

            あがいてあがいて、絶望して、つながろうとする将也と硝子。かつていじめていた者と、いじめられていた者。かれらが破壊してしまったものを、新たに築こうとする思いはこちらにもしっかりと伝わりました。

            『聲の形』もそうだったし、有川浩さんの『レインツリーの国』でも中途聴覚障害者と接する面倒くささも描いています。それを「感動ポルノ」ですべて片付けようとするのは相手を対等にみていないことになるのでしょう。

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            『聲の形』は「いじめ」について、いろいろと考える作品でした。まあでも、私は許さないけどね。


            これをNHKのEテレで放送するってすごいですね。さすが、「バリバラ」で某チャリティ番組を揶揄するだけあって、結構Eテレはロックなところがあるよなあ。

            「バリバラ」出演者玉木幸則さんの自伝。

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            羽生結弦さんが思った以上に殿だった。[映画]殿、利息でござる!

            2018.07.11 Wednesday

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              これは、江戸時代に本当にあったお話。歴史に埋もれた古文書を歴史学者の磯田道史先生が小説に書き起こし、映画『殿、利息でござる!』として世にでることになりました。

              殿、利息でござる!あらすじ


              仙台藩吉岡宿では藩の荷役業務である「伝馬役」費用の負担が重く、年々宿場の家が夜逃げするありさまだった。

              そんな窮状をみかねた穀田屋十三郎はお上に直訴を願い出ようとするが、菅原屋に止められる。知恵者の菅原屋に「仙台藩に金を貸し、その利息分で伝馬役の負担をまかなう」という奇想天外なアイデアを本気にし、金集め、仲間集めに奔走し始める。やがて十三郎の宿場を思う気持ちに打たれた商家や肝煎(名主)たちを巻き込み、家財売却、質素倹約につとめ、ようやく五千貫を貯めるのだが…


              物語だけをたのしみたいならこちら(ネット配信)

              殿、利息でござる!

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              強者どもと羽生の殿さま


              磯田先生の原作『穀田屋十三郎』ではあまり語られなかった出資者たちの性格や内情が描かれていて、名誉欲の強いものや、金を出し渋るものもいて多種多様で面白い人たちでした。

              原作ではクールな知恵者の菅原家さんが、実はいきあたりばったりでお調子者、若い妻には頭が上がらないというのが魅力的でした。

              また、宿場のためにと奔走する穀田屋十三郎さんも、長男なのに養子に出されたコンプレックスを家族にもっていたり、息子とうまくいってなかったりと問題が山積み。後にそれが誤解とわかり、弟の朝野家甚内や息子とも和解するのですが、穀田屋さん、浅野屋さんたちの家族愛がすばらしかった。

              実は父親は早くから宿場のためにと金を貯め、守銭奴と言われようともそのことを家族以外に明かさなかったのでした。

              そしてそして、伊達重村(殿様)役の羽生結弦さんときたら、顔が小さく、着物を着こなし、所作が美しく、なんだかもう、想像以上に「殿」でした。そりゃみんなひれ伏すわww
              あと、わざとちょっと乱暴に歩いたり、がさっと座って袴が膨らんじゃったり、茶目っ気もあるwwこれが演技初体験とは思えない、堂々とした殿様ぶりでした。

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              磯田先生の著書「日本史の内幕」によると、監督が「個性の強い役者たちを超える存在」を求めた結果、舞台となった宮城出身の羽生結弦選手に白羽の矢があたり、羽生さん自身も「故郷のためなら」とこのオファーを受けられたのだとか。

              「殿、利息でござる!」には原作者磯田先生ご自身も出演。そのあたりの内幕もこの本に書かれています。昔の書類を読む姿がしっくりきすぎてぱっと見わからなかったのだとか。私も最初、わかりませんでした…。

              日本史の内幕 - 戦国女性の素顔から幕末・近代の謎まで (中公新書)
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              善意のリレー、感動のドミノ


              街の窮状を救うため、店を潰す覚悟の十三郎たちに刺激され、貧しい人足たちも動き出します。出資に参加しない商家を説き伏せたり、小銭を集めたりと協力を申し出ます。

              それを大肝煎(名主)千坂仲内が奏上するものの、最初の代官には相手にされず、後に訪れた代官にようやく認められ、そこから出入司(財政担当)の萱場へ。

              一旦は退けられたものの、善意の代官橋本の熱意でついに十三郎たちの案が通ることに。さすがはタテ社会官僚国家日本。上に奏上するのにも人を何人も経なければなりません。

              当時は庶民が上へなにか働きかけるには、何人もの身分のある人を通さなければなりませんでした。十三郎たちの努力もさることながら、肝煎、大肝煎、代官などの実力者たちの協力がなければ成し遂げられることはできなかったでしょう。

              一つのことを命がけでひたすら行う。十三郎たちのその姿こそが上の人(殿様でさえも)を動かしたのでしょうね。

              また、この小説化・映画化にあたっても、様々な人々がこの話に感銘を受けて世にでることになったそうです。穀田屋十三郎さんたちは子々孫々に「決して人に漏らすな」と言い伝えてきましたが、どんなに隠そうとしても、感銘を受けた人々は語り継がずにはいられなかったのでしょう。

              歴史とは時に不思議な力を発揮して、それ必要とする時代に掘り起こされるようにできているのかもしれません。

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              不完全な勧善懲悪[映画]大魔神

              2017.08.09 Wednesday

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                今なお愛される特撮時代劇の金字塔、あらゆる方面に影響を与えた映画「大魔神」鑑賞。特撮と時代劇のみごとな融合、勧善懲悪の中にも、抗えない巨大な力に翻弄される人間ドラマも描かれます。

                あらすじ


                戦国時代、領主の花房家を家臣の左馬之助一派が急襲。下克上の末、領主夫妻は殺され、残された忠文・小笹兄妹は家臣の小源太とそのおばである老巫女に救われ、追手が届かぬ魔神の山に身を潜めた。彼らは忠文の成長を待ち決起を図ることにした。

                2人が潜んだ山には魔神・阿羅羯磨(あらかつま)が祀られ、人々の信仰をあつめていた。10年後、決起を図る忠文と小源太だったが、仲間と連絡を取ろうとしたところ、左馬之助らに捕まってしまう。

                一方で左馬之助は人々の希望を奪うため魔神像を壊そうとする。山に潜んだ小笹もつかまり、魔神像が壊されようとしたその時、大地が震え、神の姿は恐ろしい魔神へと姿を変えるのだった…。


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                今だっだら確実にPG-12作品


                勧善懲悪の時代劇ではあるものの、部分的な描写が結構恐ろしい。
                左馬之助にり殺される巫女の怨念こもった最期、大魔神の怒りにふれ踏みつぶされる人、地震で埋められ、腕だけが出ているシーン。

                そして極めつけは、悪役左馬之助が大魔神によって自分がはりつけにされ、楔で刺されるシーンなど、子供なら確実に夜、トイレに行けなくなる凄惨さです。


                不完全な勧善懲悪と神道


                そして、この大魔神、善の願いに答えて悪を懲らしめるだけの存在ではありません。怒りにまかせて暴走し、左馬之助たちだけではなく、罪のない領民たちまで危害を加えます。

                大魔神というのは「荒魂」「和魂」という神道の考えなのでしょう。「荒魂」は神の荒ぶる部分であり、それを平時は和魂が抑えている。「風の谷のナウシカ」王蟲の「怒りで我を忘れている」状態だから誰の制止も聞かない(この時点で祭祀をつかさどる巫女はなくなっているし。)

                ただ一人、花房の姫・小笹の清い涙だけが荒魂を鎮めることができたのです。これもまた、古来純潔の乙女が力を持つとされ、神に仕えるという昔ながらのルールが適用されています。

                子どもの頃はただただ怖かった「大魔神」ですが、大人になってよく見てみると、日本独自の風習や神事が物語に影響を与えているのですね。



                大魔神に影響を受けたのではないかと思われる、宮部みゆきさんの「荒神」。江戸時代、正体不明の化け物が見境なく人間を襲い

                荒神」でも、神をも恐れぬ悪役は、一介の浪人から殿様に取り立てられて国を操ろうとしているエピソードは「大魔神」と似ています。なすすべのない強大な力に、恐怖にさらされながらも抗う人々と、そんな力を利用しようとする人々の姿が描かれます。

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                JUGEMテーマ:最近みた映画



                [映画]海街Diary

                2017.05.03 Wednesday

                0
                  いい映画を観せていただきました「海街Diary」は、鎌倉で暮らす4人姉妹の物語です。もともと、吉田秋生さんの原作が大好きでしたが、映画は、漫画の世界観そのまんまでした。

                  あらすじ


                  鎌倉で暮らす香田3姉妹(幸、佳乃、千佳は、不倫の末に家を出た父親の葬儀に出席するため山形へ。そこには母親違いの妹、すずがいた。すずをひきとり、4姉妹として暮らすことになった。
                  やがてすずは、地元サッカーチームに入り、鎌倉に馴染んできた頃、祖母の法事に、3姉妹を捨てた母親が現れ…

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                  そりゃ、アカデミー賞総ナメするわけだ。


                  美しい鎌倉の四季と、4姉妹の心の機微が繊細に描かれていて、いやもう、一瞬たりとも目を離せない映画って久しぶり。穏やかな日常の中にも、姉妹ひとりひとりが悩みを抱え、それをなかなか口にだすことができないでいるその感じがね、すごく伝わる。

                  私も三姉妹だったので、しっかりものの長女、破天荒な次女、変わり者の三女っていう姉妹あるあるに、思わず笑ってしまいました。そうそう、姉妹ってこんな感じなんだよね。こんな服の貸し借りで喧嘩したりもしょっちゅうだったし。

                  すずちゃんは4女だけど、ずっと一人っ子だったし、父親の再婚相手の子供面倒見たりしていたので、完全に甘えるわけにはいかなくて、そんなところが愛おしいんだよなあ。

                  広瀬すずちゃんがほんと、いい表情するんだよなあ。彼女が最初に出てきた時、その表情をみただけで泣きそうになりました。ああ、本当にすずちゃんがいるな、と。その存在感は、樹木希林、大竹しのぶという演技のバケモノ(褒め言葉です)2人をむこうに回しても色褪せることはありませんでした。



                  神は細部に宿る


                  「海街Diary」は、細部にまでこだわってつくられてます。衣装ひとつとっても、すずちゃんが花火大会から帰ったあとの襟元のくたり具合とか、千佳ちゃんの個性的な帯とか、姉妹たちの性格を表したデザインになってます。

                  あと、細かいな―、と思ったのは樹木希林さん演じる大船の大叔母さんの喪服の帯がゆがんでるんですね。
                  樹木希林さんご自身は着物愛用者なので、こんなミスはしないだろうし…、と思ったら、年配の方って腕が後ろに回りにくいので、帯が歪んでしまうことがあるんです。もしかしたらわざと?だとしたらこだわりすごいな…

                  すずと風太


                  風太がすごいな、と思ったのは、すずが両親が不倫の末に自分が生まれたことで、姉たちに申し訳ない気持ちと、母を恋しく思うけれど、それを口に出せないこと。そんな複雑な事情を抱えたすずの悩みを「男兄弟で女の子望まれたのに男だったから自分だけ写真少ない」といって返すんですね。

                  複雑な家庭環境って、他人からはなかなか想像つかないし、だからといって「そんなことないよ!」ではすずの心は晴れなかったでしょう。こういう切り返しができるからこそ、この子はみんなに愛されてるんだなって思うんです。


                  原作では、このあとも物語は続いていて、すずの進学や姉たちのその後の恋も描かれていきます。ぜひ、続編つくってほしいな。

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                  レビューポータル「MONO-PORTAL」

                  [映画]箱入り息子の恋

                  2017.04.27 Thursday

                  0
                    切なくて痛くて愛おしい。そんな映画でした。「箱入り息子の恋」は、人気ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の星野源さん主演の映画。35歳独身・実家ぐらしの男性が恋をして、成長していく姿を描いています。

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                    箱入り息子の恋 あらすじ


                    天雫健太郎は市役所勤めで実家暮らし。趣味は貯金とゲーム。昼休みは家に戻り昼ごはん。そんな女っ気のない(それどころか、人と会う気配もない)息子を心配した両親は、親同士のお見合いに参加し、なんとか見合いまでこぎつける。

                    しかし、相手の今井家は資産家で、娘の菜穂子は視覚障害をもっていた。

                    菜穂子の父は健太郎を見下す発言を繰り返し、見合いを一方的に断ろうとする。それに対し健太郎は理路整然と反論してみせた。(あとでキレて部屋で暴れるが。)そんな健太郎の態度に好感を持った菜穂子と母は、父に内緒で健太郎に会いに行く。
                    次第に心を通わせる2人だが、父親の知るところとなり、もみ合っているうちに健太郎は大怪我を負ってしまい…。



                    「箱入り息子の恋」の主人公・天雫健太郎は、「逃げ恥」の主人公・平匡さんと同じく高齢童貞で、女性に対し免疫がありません。しかし、平匡さんと決定的に違うのが、彼の持つ闇の部分。女性だけではなく、他人に対して高い高い壁を築き、その箱の中でひっそり暮らしている感じ。

                    それは、彼の容姿に対するコンプレックスが原因であるらしい。(奈緒子の父親の見下すような発言に、そうした受け答えをしている。)しかし、奈緒子は盲目の女性。だから彼女は、目先の情報に惑わされずに健太郎の本質にたどり着くことができたのだと思う。高い壁の向こうにいる彼の心を開けることができたのだと思う。


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                    お嬢様育ちの奈緒子は、健太郎と初めて入る牛丼屋に戸惑いながらもワクワクし、初めてのデート、初めてのキス。この、恐ろしくぎこちないキスシーンは、今まで見たキスシーンの中でも最高レベル。

                    こんなに自然に、女性経験なし男の不器用なキスシーンを演じられる星野源さんの演技力すごい。(ご本人は女の子大好き、エロ大好きなのに)

                    盲目の女性を演じた夏帆さんの演技力もすごかった。たしかに目が見えない人って、あんな動作なんだよなあ。

                    小説版『箱入り息子の恋 』では、健太郎が女性に対するトラウマの原因についても描かれています。こういう、繊細な人は、相手のたった一言で傷ついちゃうんだよね。私も健太郎タイプなのでよくわかります。

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                    感想(5件)




                    レビューポータル「MONO-PORTAL」

                    [映画]深夜食堂

                    2016.11.12 Saturday

                    0
                      ああ、いいなあ、しみじみとした映画でした。「深夜食堂」。漫画の原作は読んでいたけれど、映像は映画がはじめて。新宿の深夜食堂と呼ばれている「めしや」を舞台に、様々な客と、マスターとの交流が描かれる3つのオムニバス。

                      客たちが個性豊かで面白い。偶然、居合わせた客同士がくっついたり、離れたり。物語は、めしやに客が骨壷を忘れていったところから始まります。骨壷は3つの物語に絡んできます。

                      ・パトロンが死んで意気消沈していた常連のたまこは、めしやで年下の男と恋仲になるが…

                      ・食い逃げをしたのが縁で、めしやで働くことになったみちる。なんだか訳ありのよう。みちるは徐々に店や常連たちにも馴染んでいくが、ある事情を抱えていて…マスターは踏み込まずに見守っていて、その距離感がなんともいい。マスターとみちるの日常風景もいいなあ。

                      ・謙三は、ボランティアで知り合った常連のあけみに惚れ込んで福島から追いかけてきたものの、あけみからは距離をおかれてめしやで悶着を起こす。

                      この話は切なかった。謙三は震災で奥さんを亡くしていて、なにかすがるものが欲しくて、あけみに入れあげているのだけど、あけみの方にもボランティアにすがっていたところがあって、この気持がなんとも切ない。
                      ここで、前の骨壷が絡んでくるのだけど、見つからない奥さんの骨壷を埋めるために、砂を入れ、その重みで納得するしかなかった、って話は、ああ、苦しいな。でもそうだよなあと。

                      骨壷の重みは、亡くなった人の思い出の重さなのかもしれない。そんな風に、思いました。