2005.11.02 Wednesday

「誰か Somebody」 宮部 みゆき

宮部みゆきさんの最新推理小説。
私は、宮部さんの時代小説の方のファンで、今までミステリーはまだ読んでいなかったのだけれど、これは、面白かった。

主人公は、普通のサラリーマン編集者でグループの社内報を手がけており、妻と一人娘を愛している。ただ、普通のヒトとちょっと異なる点は、妻の父親が今多コンツェルンという大企業の会長であるということだけだ。

義父のお抱え運転手であった梶田という人物が自転車でひき逃げをされ、殺される。
梶田の2人の娘のうち、妹の梨子は、父を轢いた犯人に遺族の気持ちを伝えるため、父の人生を本にしようと計画する。
そして義父を通じて編集者である主人公に本の制作を依頼する。
本の制作を通して主人公が梶田氏の過去を調べていくうちに、様々な出来事に遭遇する。。

作者の宮部みゆきさんは「幸福な生活をおくる探偵を主人公にしたので、追いかける事件もささやかなものになった」と、語っている。
確かにこの小説の登場人物たちは、私達と変わらない、日々の暮らしを生きている人々なのだ。
だからこそ、普段、犯罪というものと無縁の人々が「非日常」の事件に遭遇したときの驚き、悲しみ、やりきれなさといった感情が読者の心にもゆっくりと、そしてじわじわと伝わってくる。

「ぼんくら」や「日暮し」などの時代小説でもそうだが、宮部さんが市井の人々を描く目線はとてもやさしい。

大量殺人も派手なトリックもない、だけどすごくココロに残る新しタイプのミステリなのかもしれない。


誰か―Somebody (文春文庫)
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続編「名もなき毒」感想→

名もなき毒 (文春文庫)
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【追記】
この本の中でも被害者を死に追いやった自転車事故。
今日のニュースで特集をやっていました。
携帯の普及に伴い、事故数は年々増えているそうです。
自動車にくらべて罪が軽く、保険も自賠責保障なるものが必要なため、被害者は極端に不利になる場合が多いそうです。
改めて、宮部先生の社会問題に対する視点のするどさに驚嘆するとともにこの作品を通じて、自転車での事故について知るきっかけになりました。

JUGEMテーマ:ミステリ


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