今読んでも面白い「99%の誘拐」 岡嶋二人

2005.11.21 Monday

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    2005年版この文庫がすごいの第一位に選ばれただけの価値がある。とにかく面白い。
    旅行に持っていったけれど、宿泊先で夜更かしをして一気に読み終わってしまった。(おかげで翌日飛行機に酔った。。)

    時代背景は、コンピュータ、半導体の黎明期から、汎用機からようやくパソコンが普及し始めた昭和43年から昭和63年。物語のもうひとつの主役はコンピュータ。2つの事件のうち、メインの誘拐事件の犯人は、パソコンを駆使して前代未聞の誘拐犯罪を計画する−。

    そうはいっても、ストーリー展開が魅力的なので、別にパソコンの知識がそれほどなくても楽しめます。

    「99%の誘拐」あらすじ


    【第1章】


    まず1つめの誘拐は昭和43年。半導体工場、『イコマ電子工業』を営む生駒洋一郎の息子、慎吾が何者かに誘拐される。犯人は身代金として5千万円を要求するが、その金額は経営危機に陥った会社を立て直すべく、洋一郎がかき集めた資金と同じ額だった。

    犯人から金塊をフェリーから落とすよう指示され、真夜中の海に金塊を落とす洋一郎と社員の間宮、鷲尾。この事件で会社再建の希望は潰えることとなったが、息子・慎吾を無事に取り戻す事ができた。

    その後、『イコマ電子工業』は以前から合併を申し出ていたカメラメーカー『リカード』に吸収され、洋一郎もそこで半導体の開発事業部長の地位を与えられるが、昭和58年、末期ガンでこの世を去る。また、慎吾の誘拐事件の犯人も結局わからないまま、時効を迎える。

    【第2章】


    1つめの誘拐事件から19年後。慎吾の身代金として犯人に渡ったはずの金塊がある人物の事故死によって発見される。その人物は、『リカード』を定年退職した総務課長だった。19年前の誘拐事件に『リカード』が関与しているのではないかと噂が流れはじめる。

    【第3章】


    1つめの誘拐事件から20年後。2つめの誘拐事件が起こる。
    今度は『リカード』の社長の孫・兼介が何者かに誘拐され、身代金10億円が要求される。犯人はそれをダイヤの原石で要求し、その運び手として、20年前に誘拐され、現在は『リカード』の研究員となった生駒洋一郎の息子、慎吾を指名したのだった。

    【第4章】


    事件後、かつて父の部下で、『リカード』重役となった間宮と慎吾はかつて慎吾の誘拐時に身代金の金塊を沈めた同じ航路のフェリーに乗っていた。2人の会話の内容は……。



    罪の意識のない被害者



    「ー兼介をこんな目にあわせたことだけは許せない。兼介には何の責任もないことじゃないか。」
    「……」
    慎吾にだって責任はなかったのだと言おうとして、間宮はその口を閉ざした。


    文中には、慎吾の誘拐に『リカード』が直接手を下したとの記述はない。
    しかし、孫を溺愛し、成績を公然と社員に自慢したり、自分の過去の行状を反省もせず、孫が誘拐されるとなりふりかまわないような社長のいる『リカード』は、許せない。

    この社長は、自分が悪いことをしている意識がまるでない。自分の利益のためならなんだって正当化している。そうした罪の意識のない人は犯罪を犯罪だと思わないのだろう。社長も孫も、時間が経てば恐怖も苦しみも忘れてしまうだろう。

    きっと、誘拐犯の方がずっと罪の意識のをもち、これから苦しんでいくのだろう。それを覆うと切ない復讐劇でした。

    そして2つの事件の後、慎吾はどう生きていくのでしょうか。
    私の希望としては、『リカード』を辞めて会社を立ち上げるか、その後台頭するIT関連企業に引き抜かれて技術者として最前線で働いていって欲しいと思う。

    あるいは海外企業に行き業績不振の『リカード』を買収するかもしれない。
    おそらく、こうしたワンマン経営の家電会社は、現代の日本では生き残れないだろうから…。