「獣の奏者 闘蛇編・王獣編」 上橋菜穂子

2007.08.19 Sunday

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    獣の奏者」は、決して人に慣れることのない猛獣と少女の物語。

    まず、圧倒されるのがこの物語の核となる架空の獣、「闘蛇」と「王獣」の生態描写。
    まるで、この生き物が世界のどこかに存在するのではないかと思うくらい、リアルに読み手に伝わってくる。
    「闘蛇」は名の通り、主に水中に住み、蛇状の体に、鋭い爪と角を持つ。頑丈なうろこは弓矢も弾く。
    それに対し、「王獣」は、銀白の羽を持ち、狼のような顔、鋭い爪を持ち、「闘蛇」の天敵として「闘蛇」を喰らう。

    この物語の舞台、リョザ神王国では「王獣」は真王(ヨジェ)の王位の象徴として保護され、「闘蛇」はを戦いの武器として大公(アルハン)に利用される。

    「闘蛇」の世話をする闘蛇衆で獣の医師を母に持つ主人公エリン。
    物語の冒頭、彼女の母は「闘蛇」が死んだ責任を問われ、生きたまま野生の闘蛇に食い殺される死罪となり、いきなりつらい運命に翻弄させてしまう。それは彼女の母が放浪の民(アーリョ)であることも関係しているらしい。

    天涯孤独となったエリンは、蜂飼いのジョウンに助けられ育てられる。そこでエリンは野生の王獣に出会い、生き物のあり方に疑問を持つようになる。

    やがてエリンは獣の医者になるため、ジョウンの紹介でガザルム王獣保護区で勉強をはじめるが、王獣と心を通わせるすべを身につけてしまったため、真王(ヨジェ)と大公(アルハン)の政権争いにまきこまれてゆく。

    人がただ人であり、獣がただ獣として存在したいだけなのに、
    人はその役割や立場で獣や人を動かそうとする。

    作者・上橋菜穂子先生は、
    「いちばん怖いのは(人のためにならない)人の善意」だとおっしゃっていた。

    確かに、争いをする真王(ヨジェ)側も大公(アルハン)側にも、
    放浪の民(アーリョ)にも、それぞれ立場や守るべきものがある。そのために意見を押し付け合い、争いがおこってしまう。
    (いちばんの黒幕は、自分の権威を伸ばすためだけに人を利用しているが(^^;))

    自分の立場や周りでしか物事を推し量ることのできない人たちのために、他の(下々の人々)を巻き込んでしまうのは、悲しい事だ。
    そんなことがなければ、エリンの母も死なずにすんだかもしれない。

    権力への憤りを感じながらも、エリンはまっすぐに、
    時には傷つきながらも人と獣のあり方について
    自分の信念を貫き通す。
    物語が終わってしまってからも、
    その後のエリンが王獣と幸せに過ごしてほしいと
    願わずにはいられない。

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    先日「アルプスの少女ハイジ」の再放送を見ていて思ったのですがジョウンとエリンが山で暮らす場面はハイジの山の暮らしがにイメージが近いような気がします。食べているのも種類は違うけれどパンですし(^^;)
    読んでいるときも自然とエリンが王獣に出会う場面をアルムの山の崖に変換してイメージしていました。
    上橋先生もハイジを見た世代の方だと思うので、もしかしたら「ハイジ」のイメージもあったのでしょうか?
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