「新編懐古的洋食事情2」 市川 ジュン

2008.11.10 Monday

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    新編懐古的洋食事情 (2)」の舞台は大正から昭和初期。
    洋食が徐々に庶民の間へ浸透してきた時代のお話です。
    陽の末裔」の登場人物や関連人物を主人公にしているのですが、1話ごとに独立しているので「陽の末裔」を知らなくても楽しめます。

    ●コッヒー・ハウス・ヒル
    横浜にある半世紀続いたコッヒー(コーヒー)ハウス。
    この店の娘・らん子は、父親から自分は店の跡取りのための養子であり、男と間違われて貰われたのだと聞かされていささかグレてしまっていた。
    ある日、父親の本当の息子がドイツからやってきた。彼は父の恋人であったコッヒー・ハウスの創業者の娘の子で、第一次世界大戦が終わったので父親を捜しに日本に来たという。
    店を継ぐ気はなかったらん子だが、ライバルの登場に俄然やる気をみせ、コッヒーの入れ方を勉強しだす…

    ●公爵さまのオムライス
    伊布院公爵家には若く魅力的な当主・王顕(きみあき)と、彼の乳兄弟で明るく魅力的なメイドの華がいた。華は思いを寄せる王顕のためにときおりにオムライスをつくったり、屋敷を明るく保つために心をくだいている。
    あるとき宮家の姫と王顕との間に縁談がもちあがり、華は奥様を迎える準備をはじめるが心中おだかやではなく…


    ●東京ハヤシライス異聞
    女流歌人のるい子さんと国文学者の新平さんは、当時珍しい恋愛結婚。幸せな結婚生活とおもいきや、るい子さんはまったく料理をしたことがないのだった。義弟の総二くんはそんなるい子さんの料理に毎日ケチをつけているが、るい子さんは気にする風でもなく毎日新しい料理にチャレンジしていく。
    そんな中、余った材料で野菜炒めを作り始めたが、いろいろな材料を投入していくうちに今までにない料理に仕上がって…

    ●大正洋食倶楽部
    中丸子爵家に嫁いだ深草子爵の末の妹・静子は「ごはんも炊いたことがない」深窓の令嬢。関東大震災を経験し、有事の際にも家を守れるよう、料理くらいつくってみたいのだが、沢山の使用人がいる家ではそれも難しい。ある日義母である子爵夫人に連れられて行ったサロンはなんと料理教室!そこは上流階級の夫人たちが「料理をつくるための倶楽部」だった。
    その後めきめきと料理の腕をあげた静子は、倶楽部の活動を通して震災にあった人々へのチャリティー活動を計画する…

    静子さんは別のお話「ビーフステーキ・ア・ラ・モード」にも登場するのですが、その時はまったく料理ができず、末弟の明之くんにまかせきりでしたが…

    ●台所の伯爵夫人
    上宮伯爵・洋人が結婚相手に選んだ女性は、両家の令嬢ではなく「お気に入りの洋食店」の看板娘・「たけを」だった。議員でもある洋人は変化する時代にあわせた新しい伯爵家をつくるため、「たけを」に伯爵家の台所からの変革を託す。料理人でもある「たけを」は、昔堅気の使用人や女中頭を相手に次々と新しい料理と改革を断行するが…

    ●すっぷ かつれつ あいすくりん
    最先端ファッションに身をつつんだモガ(モダンガール)百合子さんの見合い相手・直(すなお)は、ハンサムな青年。見合い相手は気にいったものの、相手の家は旧家で古い考えの方々ばかり。そんな中、なぜか直さんの母上に気に入られた百合子さん。実は旧式な家の変化を望んでいたのは直さんの母上のほうだった…

    ●昭和元年のライスカレー
    こちらもモガの女性のお話。流行最先端とはいえ、当時は女性の断髪や就職は世間で見下された感じがあったのです。
    愛子さんは銀座ではちょっとした顔のモガ(モダンガール)。モガの過去を隠して見合い相手の竜平と結婚した。当時は相手の顔もほとんどわからない状態での結婚はめずらしくなく、愛子さんもそのクチだった。しかし、人並みに結婚はしてみたものの、花嫁修業など全くしてこなかった愛子さんは、急きょ母親に料理を習いに行くのだが…

    ●ライスカレーの永遠
    銀座にある自由軒は女性三代が切り盛りする洋食屋。特にライスカレーが絶品と評判のお店。厨房は祖母と母、そして看板娘の「るな」。場所柄ブルジョワから職業婦人、芸術家など客層は多彩。そんな客のひとり、岩室財閥のあととり息子・真人と恋愛関係にある「るな」は、真人からプロポーズを受けるが、それは親子三代できづいてきた自由軒を継げなくなるということだった。
    仕事と結婚、人生の岐路に立たされた「るな」が選んだのは…

    ●ハムの誘惑 ワインの貞操
    鎌倉ハムの伝統を受け継ぐ若宮商会の長女・ちよには秘めた思いがあった。10年前、桜町伯爵家の別荘で出会った一人の人を思い続けていたが、伯爵夫人の事故死により、別荘は閉ざされたままだった。
    10年ぶりに明かりがともった屋敷を訪れてみると、そこには桜町家の成長した息子・洸が滞在していた…
    緑の下でワインとハムの食事。お互いの思い出を語り合う2人。
    美しく切なく、おそろしい思いが交錯する。

    ●明治初頭から大正時代前半まで、まだ珍しい西洋料理に奮闘する「新編懐古的洋食事情1」の感想はこちら→

    ●昭和初期から戦後まで、洋食が庶民に浸透した
    「新編懐古的洋食事情3」の感想はこちら→

    幕末の洋食事始め「慶応三年のフルコース」→

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