「新編懐古的洋食事情3」 市川 ジュン

2008.11.11 Tuesday

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    新編懐古的洋食事情 3」の舞台は昭和初期から戦後。
    戦争の足音もやや遠い昭和初期はモダンな文化が花開いた時代です。洋食もコロッケやライスカレー、シチューなどが庶民の食卓にならび、ブルジョワたちは豪奢なブッフェ(ビュッフェ)パーティを開かれていました。

    ●ビスケット浪漫す
    幼なじみの「もえ」が東京の奉公先から近くの鎌倉山で働くことになり、様子を見に行く竜介。もえが働く館のあるじはどんな女性よりもきれいな画家・九門京也だった。食の細い京也のために手作りのビスケットをつくるもえ。そんな姿に竜介はやききするのだが…

    ●文化的ホールクコットレットの乱
    二葉はカツレツが得意なモダンな奥様。夫の冷たい態度が気になるものの、つとめて普段通りふるまっていた。しかし、夫の愛人・小はんが「子どもができた」と乗り込んできた!
    そんなとき二葉さんがとった意外な行動とは…

    当時は夫の浮気は法的にも責められることはなかったんですが、このころようやく見直しがされ始めました。

    ●ビーフステーキ ア・ラ・モード
    深草子爵邸の末弟・明之くんと兄弟たちは、嵐の別荘でお腹を空かせていた。使用人も材料もない事態に明之くんは隣の別荘に滞在する円城薫子さんに助けを求めに行き、食材と簡単な料理法(ステーキ)をもらう。その後、薫子さんとは会うことがなく、成長した彼はすっかり秘密の趣味・料理にはまっていた。ある日家人が留守で料理をしていた明之くんの元へ兄深草子爵とその恋人が家に帰ってきた。兄の恋人はなんと初恋の人薫子さんで…

    当時は男性が厨房に入ること自体がまれなことですから、いいところのお坊ちゃんが料理をするなんてとんでもないことだから「秘密」なんですね。

    ●ヨコハマ・ベイカリー・ブルース
    昭和2年、横浜。老舗のパン屋、ミナト・ベイカリーの娘、マリ子は道で行き倒れた青年・六郎を拾う。ミナト・ベイカリーのパンに魅せられた六郎はそのままミナト・ベイカリーに雇われることになった。あるとき配達先の船で新しい音楽・ジャズに出会った六郎はたちまちジャズに魅了される。六郎の心が離れていきそうで不安になるマリ子だったが…

    ●キャベツ巻き次第
    社交界の花形であった長与侯爵家の娘・実子(みのりこ)さんの結婚相手は、庶民派の詩人・長谷川淳氏。
    華族のお嬢様がいきなり庶民のくらしになれるはずもなく、最初はできないことの連続。けれど、詩作に没頭する潤のため、料理をつくろうと買い物に出かけ、近所の人々にロールキャベツの作り方を教えてもらうのだが…
    持ち前の明るさと社交性で、社交界だけでなく、下町の人々ともすぐ親しくなる実子さんの話を聞き、夫は「君はここでも花形になるんだね」とやさしく笑う。

    ●シチュー・ラプソデー
    銀ブラ(文字通り、銀座をブラブラ散歩すること)していた家事手伝いの蕗子は、偶然岡倉財閥の跡取り、喜一にランデブー(デート)に誘われる。たくさんの女性を相手にする喜一だが、おっとりとした蕗子にはどうもペースが乱れがち。
    蕗子は蕗子で、喜一の特別な思い人・咲久子にライバル心を燃やし、喜一に手作りのシチューを作ることで対抗しようとするが…

    ●ソーダ水がお好きでしょう
    銀座にある服飾店に勤める夏乃は洋裁の仕事誇りをもっているが、周囲からは結婚をせかされ、とうとう見合いをすることになる。仕事か、結婚かで悩む夏乃。
    見合いの日、夏乃の服飾店洋服を作りにきた紳士は、実は見合い相手・田所だった。仕事を続けるため見合いを断ろうとする夏乃に、田所は「共働き」の提案を持ちかける…
    タイトルのソーダ水は当時資生堂パーラーで人気のメニュー。

    ●牧場の朝 海の夜
    湘南の牧場の娘・幸は、牛乳の販売先を探して単身・サナトリウムへ営業に向う。料理長に断られていたところを助けてくれたのは、療養に来ていた美貌の画家・九門京也だった。
    すべてを断ち切り、心を閉ざした京也には、心身ともに健康な幸と牧場の家族との交流は楽しいものだったのだが…

    ●ハンバーグ・アプレゲール
    昭和26年。これだけ戦後のお話です。
    デパートの宣伝課に勤める南部唯子は、元子爵家の令嬢だが現在は
    お肉を節約するためにハンバーグを拵えるほどの庶民ぶり。
    唯子は女子だけの不当な大量解雇に反対し会社側へ撤廃を要求する。そんなおり、デパートの能天気な跡ととり息子七星専務と知り撤廃のため、ストライキを決行してしまう…

    ずっと書きたかった「懐古的洋食事情」の感想がやっとかけました。十数年前に買った漫画ですが、いまでも大好きで読み返しています。
    長文おつきあいいただき、ありがとうございました。( ̄▽ ̄)

    ●明治初頭から大正時代前半まで、まだ珍しい西洋料理に奮闘する「新編懐古的洋食事情1」の感想はこちら→

    ●大正時代後半から昭和初期まで、ライスカレーやオムライスが一般的になりつつある「新編懐古的洋食事情2」の感想はこちら→

    幕末の洋食事始め「慶応三年のフルコース」→

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