「SPEED」 金城 一紀

2009.02.26 Thursday

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    平凡な女子高生・岡本佳奈子が、慕っていた家庭教師が自殺したことをきっかけに、落ちこぼれ高校生ザ・ゾンビーズと知り合い、今まで知らなかった別の世界を体験することになる「SPEED (The zombies series)」。
    レヴォリューションNo.3」に登場したゾンビーズたちがまたまた大暴れします。

    やがて彩子さんの自殺と学園祭の実験を影で操る中川との決戦の日。家を出た佳奈子は中川の部下に拉致されてしまう。
    はたしてゾンビーズは間に合うのか?そして彼らの計画は成功するのか?

    ゾンビーズたちの最初の活躍はこちら→

    もう全編、ワクワクしながら読んでいました。
    佳奈子ちゃんがとてもかっこいいんです。慕っていた彩子さんの死をきっかけに、大学の学園祭に絡む陰謀にゾンビーズとともに立ち向かうんですが、かなり危険な目にあいながらも、彼女は一歩も引かず真っ向から向かっていきます。それは読んでいる側からするとかなりあぶなっかしいのですが、だからこそゾンビーズの面々を彼女を仲間として受け入れたのでしょうね。

    すべての女性をレディーのように扱う男・アギーが佳奈子には
    「おまえはもうおれたちの仲間だろ。自分のことは自分でやれよ。」
    といって自分でドアをあけさせるんだけど、女にやさしいアギーが「甘えんな」っていうのはすごい信頼のあかしなのだと思う。このシーンがとても好きです。

    佳奈子が出会ったころのゾンビーズの面々は親友・ヒロシを亡くした喪失感と死の恐怖がぬぐえなかったため、佳奈子の事件に協力することで世界を作りなおそうとしていました。

    ゾンビーズをもう一度、舞い上がらせる風になりたいと願う佳奈子。
    ―わたしがみんなの風になれたらいいのに

    普通の小説だったら、ここでゾンビーズの一人と佳奈子が恋におちそうなんですが、そんなことはなく、佳奈子は最後まで「仲間」のスタンスのままです。アギーや舜臣なんかはずいぶん気に入っていたけれども、恋にはならない。
    恋とは違う、でも大切な存在というのが大好きです。

    SPEED (The zombies series)
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    ●ザ・ゾンビーズシリーズ
    ザ・ゾンビーズ最初の冒険譚
    レヴォリューション No.0→
    ここからゾンビーズの冒険がはじまります。
    レヴォリューション No.3→
    舜臣と中年サラリーマンの奇妙な師弟関係。
    フライ,ダディ,フライ→
    ●その他の金城作品
    GO→
    対話篇→
    映画篇→
    金城作品の魅力についてはこちら↓
    金城作品の魅力のひとつは登場人物や世界が少しずつリンクしていることで、それを探すのがまた楽しみだったりします。
    今回は自殺した大学生・彩子さんは「対話篇」の「永遠の円環」に出てきた人だと思います。
    他にも佳奈子が舜臣にボクシングを習うシーンで思い出していたのは「フライ、ダディ、フライ (The zombies series (SECOND))」の鈴木さんなんでしょうね。
    また「SPEED」でも映画が物語に少し絡んできました。
    舜臣がやった顔を前へ向けたままの独特のお辞儀は「燃えよドラゴン」、佳奈子が躍ったバレエに、アギーがバレエは権力という重力からの跳躍だと話してくれた「リトル・ダンサー」、ゾンビーズのトラブルメイカー、山下が植木に頭から突っ込んだ時に見せた「スケキヨ」こと「犬神家の一族」。これらの映画も機会があったらぜひ見てみたい。
    コメント
    日月さん、こんばんは。
    「ゾンビーズ」シリーズ、私も楽しみました!

    登場するいろいろな映画、観てみたくなりますよね。
    「リトル・ダンサー」は、ボクシングを習いに行くはずなのに、バレエに魅せられてバレエを習い始めた少年が主人公。男がバレエなんて、と父親になかなか理解してもらえないのでした。いい映画ですよ。ぜひご覧になってください。
    「燃えよドラゴン」は私も観たことがありません。これは観ておくべきかな???
    牛くんの母さん
    「燃えよドラゴン」はぜひ見てみてください。ブルース・リーがあのお辞儀をしていますよ。( ̄▽ ̄)
    「考えるな、感じるんだ(Don't think,Feel)」というセリフが大好きです。

    「リトル・ダンサー」も楽しみです。
    見てみますね。
    • by 日月
    • 2009/02/28 1:22 AM
    日月さん、こんにちは!
    金城さんの本って私も面白くて勢いがあって好きです☆

    SPEEDも対話編も以前読んだのに、間を開けて読んでしまったので、
    >今回は自殺した大学生・彩子さんは「対話篇」の「永遠の円環」に出てきた人だと思います。
    他にも佳奈子が舜臣にボクシングを習うシーンで思い出していたのは「フライ、ダディ、フライ (The zombies series (SECOND))」の鈴木さん
     
    悲しいことに、これらに全く気がつかず(記憶に残ってないので、リンクさせられなかった〜〜〜ヘ(´o`)ヘ))残念です!

    スケキヨと犬神家の一族の逆さ人間のCMは、今も忘れることが出来ません^^
    • by latifa
    • 2009/02/28 4:03 PM
    こんにちは。TBさせていただきました。
    ゾンビーズシリーズは本当に大好きです。是非ともまた復活してほしいなぁと思ってます。
    今回はアギーが大活躍でしたよね。
    私も同じくアギーが佳奈子に対する態度が変化した所、好きです。
    本当に仲間として認めたんだなぁと嬉しくなりました^^
    アギーのお母さんも素敵ですし。
    高3になったゾンビーズと言う事で、ヒロシのことや、鈴木のおっさんの事が微妙に出てきたのが切なかったりうれしかったり。
    繋がりがあるのは読んでいて興奮します。
    この作品を読んで「燃えよドラゴン」をすっごく見たくなりました(まだ見ていませんが^^;)
    • by 苗坊
    • 2009/03/01 11:52 AM
    latifaさん
    最近、金城作品にはまってます。
    探せばもっといろいろなリンクが見つかりそうなのですが、それはまた読み直して探してみます。

    今度はSPの脚本集も読みたいし、
    関連映画もみたい。
    金城作品でどんどん世界がひろがっていきます( ̄▽ ̄)
    • by 日月
    • 2009/03/02 12:14 AM
    苗坊さん
    アギーが本音を出す女性ってママと佳奈子ちゃんくらいなんじゃないでしょうか。それは「恋」になってしまうと手に入らないものだと思うのです。

    >繋がりがあるのは読んでいて興奮します。

    私もです!つながりを見つけるとうれしくなっちゃうんですよね( ̄▽ ̄)
    • by 日月
    • 2009/03/02 12:17 AM
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    装丁は岩瀬聡。 「GO」「対話篇」「レヴォリューションN0.3」「フライ,ダディ,フライ」など 現代の若者の生き方をストレートな言...
    • 粋な提案
    • 2009/03/07 3:28 AM
    SPEED (The zombies series)金城 一紀角川書店このアイテムの詳細を見る 今回は、金城一紀『SPEED』を紹介します。金城一紀著の作品を読むのは初めてです。著者は何年か前の土曜11時枠のドラマ「SP」の脚本を書いた人ですよね。それぐらいの知識しかなく、たまたま図書
    • itchy1976の日記
    • 2009/11/01 7:17 AM
    金城一紀著 「SPEED」を読む。 このフレーズにシビれた。  わけの分からない力に対抗するためには、そうするしかないんだよ、きっと。そのためなら、ひどい目に遭ったってかまわないよ。壊れた世界の中でなんにもしないでぼんやりしてるぐらいならね。 [巷の評判] ミ
    • ご本といえばblog
    • 2010/10/09 7:44 AM
    金城一紀著 「レヴォリューションNo.3」を読む。 このフレーズにシビれた。  もしも、神様が本当にいるなら、こいつを助けてやってくれ。それが無理ならせめてこの雨を止ませてくれ。俺の体はちっぽけで、こいつの体が濡れないように守ることができないんだ……。 [巷
    • ご本といえばblog
    • 2010/10/24 3:26 PM
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