「ほどらいの恋―お聖さんの短篇」 田辺 聖子

2009.06.21 Sunday

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    NHKドラマ「芋たこなんきん」を見てから気になっていた田辺聖子さん。

    あのほんわかとした雰囲気の方が、いったいどんな恋愛物語を描くのだろうと思っていたら、読んでいっぺんで、やられてしまった。

    かわいくて、やさしくて、ほっこりする。すてきな大人の恋物語を描くんだろう。と。


    ほどらいの恋―お聖さんの短篇 (角川文庫)
    田辺 聖子
    角川書店
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    大阪弁のかわいげ


    田辺さんの文章にはふんだんに大坂弁が使われているのですが、これが実にやわらかくて、どこか艶っぽい。今までかしましいイメージしかなかった大阪弁が、まったく違った言葉に聞こえてきます。

    タイトルにある「ほどらい」とは、大阪弁「ちょうどいい」という意味。形にはまららない、ちょうどよい男女の恋愛は、読んでいてほっこした気持になります。

    私が好きな話は「ほどらいの恋」と「鬼が餅つく」。「ほどらいの恋」は精神的にも経済的にも自立した大人の恋愛を描いていて、その「ほどらい」距離感が読んでいて心地いい。

    「鬼が餅つく」は壮年の男女の友情とも愛情ともつかない間柄。
    彼女と、とりとめもなく、はかないよしなしごとを語り合いたいのである。


    人生の機微をわかった年代だからこそ、「はかないよしなしごと」のおしゃべりは恋愛よりも貴重でかけがえのないものなのかもしれません。


    「薔薇の雨」→

    「孤独な夜のココア」→

    「おちくぼ姫」→

    「芋たこなんきん」→

    ジョゼと虎と魚たち→


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