「セリヌンティウスの舟」 石持 浅海

2009.07.01 Wednesday

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    大時化の海で遭難した六人は、信頼で結ばれた、かけがえのない仲間になった――。そんな僕らを突然襲った、米村美月の自殺。その死の意味をもう一度見つめ直すために、再び集まった五人の仲間は、一枚の写真に不審を覚える。青酸カリの入っていた褐色の小瓶のキャップは、なぜ閉められていたのか?


    「セリヌンティウス」とは「走れメロス」の登場人物で、メロスを信じメロスの代わりに人質になった人物。
    美月以外の5人は彼女の死を見つめ直していくうちに、彼女が飲んだ青酸カリのビンに不信を抱きます。
    ビンが転がっていたことで部屋にいた仲間にも青酸カリ中毒になる可能性がでてきた。美月は皆を巻き込む可能性を考えなかったのだろうか…

    「自殺が実は他殺だった」「実は仲間の中に犯人がこんなトリックを使って」というどんでん返しはまったくありません。
    なにせ美月の自殺は決定づけられた事項なのですから。

    扉は閉ざされたまま」や今回の「セリヌンティウスの舟」など石持浅海さんの小説で重要視されるのは犯人やトリックといった派手なモノではなく、「他人から見たら取るに足らないけれども、彼らにとって重要なモノ」で、それを見つけるために5人は推理の迷路に足を踏み入れて行きます。

    他人から見たら取るに足らないけれども、彼らにとって重要なモノ」を追うための推理戦は確かに面白いです。でも「一体感」によって結ばれた特別な関係の5人の推理は、彼らの絆が深い分、読んでいる人間はその空間に入れない疎外感があるような気がしました。美月の自殺の原因も私には共感できなかったし、結局この6人以外の人間はこの物語に完全に入ることはできないのかもしれません。


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    「セリヌンティウスの舟」はこっちの「走れメロス」よりもずっと物語の本質を踏襲している気がします。
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    それとラストでの「協力者」の死はびっくりはしたけれど
    これも共感はできなかったなあ。やっぱりあの海に魅入られたものにしか分からないんでしょうね。
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