『賢者はベンチで思索する』 近藤 史恵

2009.08.27 Thursday

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    近藤史恵さんによる日本版『隅の老人』。『賢者はベンチで思索する』は、主人公の少女が出会った不思議な老人が日常に起こる謎を推理していく物語です。

    『賢者はベンチで思索する』


    久里子のバイト先のファミレスには、週に3回ほどやってきては、いつもきまった隅の席に座る老人がいた。国枝というその老人は、いつもコーヒーをたのみ、古い日付の新聞を読んだり、窓から外を眺めたりして長い時間を過ごしてゆく。

    ある日、公園で国枝老人に会った久里子は、その印象の違いに驚いてしまう。「軽度の痴呆」があるはずの国枝さんは、口調も理路整然としていてとてもボケているようには見えない。

    飼い犬が毒団子を食べてしまったとき、偶然居合わせて助けてくれた国枝老人は、明晰な頭脳で犬殺しの犯人を見つけ出してくれた。その後も久里子は国枝老人の家でお茶をごちそうになったり、周りで起こる事件や問題にアドバイスをもらったりと、不思議な交流が続いてゆく。しかし、久里子と親しくしていることをファミレスでは内緒にしてほしいという。

    仙人のような、賢者のような国枝老人はいったい何者なのだろう。

    そんなとき、ファミレスの近所のこどもが誘拐され、国枝老人が容疑者に。信じられない久里子だが、実際に国枝老人は行方不明になっており、目撃証言も出た。ほんとうに、あの人は悪い人なのだろうか…

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    日本版『隅の老人』


    賢者はベンチで思索する」を読んで頭に浮かんだのはパロネス・オルツィの「隅の老人」でした。「隅の老人」は謎の老人が解決困難な事件の推理をカフェの隅の席で若い女性記者に聞かせるという、安楽椅子探偵の元祖ともいうべき作品です。

    「隅の老人」ラストは、老人自らが犯罪者であることを示唆しつつ、多くの謎を残しながら読者の前から姿を消してします。


    国枝老人も姿を消してしまうのですが、「隅の老人」と違うのは、国枝さんと久里子の間には信頼や友情のようにちゃんとした絆が存在していたこと。だから久里子は国枝さんを信じることができたし、真相を知ることができたんじゃないだろうか。


    やはり近藤史恵さんの本ははずれがない。久里子の煮え切らない生活や、片思い、家族の関係など20代の女の子のリアルな日常と、ほんの少しの非日常がうまく重なり合った面白い日常ミステリでした。

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    「隅の老人」→

    ●近藤史恵作品感想

    自転車ロードレースを舞台にした名作

    「サクリファイス」→
    「エデン」→
    「スタバトマーテル」→
    「アンハッピードッグス」→
    「ふたつめの月」→
    「あなたに贈るキス」→
    「天使はモップを持って」→
    「モップの魔女は魔法を知ってる」→
    「タルト・タタンの夢」→

    「ヴァン・ショーをあなたに」→
    「ねむりねずみ」→


    JUGEMテーマ:ミステリ
    コメント
    こんばんわ。
    久里子の思考や行動が親しみ易くて共感しちゃいました。
    悪意を感じるのにホッとする結末も良いですよね。

    「天使はモップを持って」などのモップシリーズも面白いですよ。
    • by ia.
    • 2009/08/31 1:26 AM
    ia.さん、コメントありがとうございます。続編も出ているようなので読んでみようと思います。「天使はモップを持って」も面白そうですね。近藤さんの本はどれもはずれなし!なので、これからも読んでいきたい作家さんです。( ̄▽ ̄)
    • by 日月
    • 2009/09/01 10:36 PM
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    著者:近藤 史恵 出版社:文春文庫 感想: 図書館本もひと段落ついたので、今日は積読本の中から。 近藤さんの連作ミステリ。 「賢者はベンチで思索する」は、将来のことに悩む主人公・久里子の周りで起きる小さな事件を扱った日常系ミステリ。その事件解決のた
    • どくしょ。るーむ。
    • 2009/08/31 1:12 AM
    日常の謎だけれど、真実には悪意が秘められている。 ほのぼのだけでは終わらない、苦
    • KOROPPYの本棚
    • 2011/03/12 8:16 AM
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