「蝶々喃々(ちょうちょうなんなん)」 小川 糸

2009.09.03 Thursday

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    蝶々喃々とは「男女がうちとけて小声で楽しそうに語りあうさま」という意味だそうです。「食堂かたつむり」を読んだとき、主人公や設定に共感できる部分が少なかったけれど、このまま読まなくなるのも「惜しい」と思い、2作目も読んでみました。

    東京下町の風情を残す谷中でアンティーク着物店を営む栞(しおり)の恋物語と下町の粋な人々との交流が四季を通じて描かれています。谷中は根津や千駄木とともに「谷根千」と呼ばれ、下町情緒が味わえる身近な観光スポットです。京都や鎌倉ほど敷居が高くなく、身近だけれど非日常的な谷中は物語の舞台としてはすごくいい。

    お茶を習うために着物を買いにきた春一郎という男性と恋に落ちる栞さん。お蕎麦や鳥鍋。下町情緒あふれる空間でおいしいご飯を好きな人と一緒に味わう。季節のお祭り、お月見にお茶会。
    いとしい人と一緒にいる時間はことのほか贅沢に感じられます。

    ただ、春一郎さんに妻子がいるっていうのが、もひとつこの物語にのめり込めなかった要因かもしれません。相手に妻子がいる設定だからこそ成り立つ物語なのかもしれませんし、そこが作者のこだわりなのかもしれないのですが。
    奥さん側からしたら栞さんのような女性はものすごくずるい存在に映るんじゃないかな。だって、着物を着ていて、料理が上手で、谷中や湯島で風流なデート。ずるいですよ。
    実際に生活していたら、こんな風流には生きられないよ。

    それと栞さんの心情がよくわからなかった。死んでしまった元恋人の墓前に春一郎さんを連れて行って「好きな人ができました」と報告するのなら、なぜそのあと不倫関係に悩むのだろう。私は栞さんはずっと、春一郎さんに妻子がいてもそれを超越した関係を望み、続けるのかと思っていた。
    だったら最初からそんな関係にならなければいいのになあ。

    だから栞さんの生活自体はうらやましいとは思うけれど、今回も共感はできなかった。下町の風景や、主人公を支える下町育ちの老人たちや家族の描写は前回より格段によかったのだけど。

    喋々喃々
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    食堂かたつむり
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    コメント
    こんにちは。同じ本の感想記事を
    トラックバックさせていただきました。
    • by 及川
    • 2010/04/22 2:06 PM
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    最近、気になっていた作家さんです。小川糸さん。 おいしそうな食べ物が、いっぱい登場します。。 食いしん坊には垂涎★ 妻子ある男性との恋のお話なのですが、 私は、恋愛ものというよりは、 細やかに描かれた栞という女性の日常、生き方を ただ静かに、好ましく
    • 妄想天国!!〜腐った果実〜
    • 2010/04/22 2:04 PM
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