謎の老人、ふたたび。「ふたつめの月」 近藤 史恵

2009.09.17 Thursday

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    久里子はバイト先のファミレスにくる不思議な老人、国枝と公園で言葉を交わすようになり、悩みごとや身の回りで起こった事件を相談するようになっていった。

    しかし、国枝老人はある日子供を誘拐した罪で警察に追われることに。警察から国枝老人は実は赤坂という名で、詐欺師としてマークされていると聞かされる。事件後、忽然と姿を消した赤坂。彼はいったい何者だったのだろうか…

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    たったひとつの後悔


    事件のあと、久里子は念願の雑貨会社に就職し、友達以上恋人未満の弓田くんともいい感じになっていたのですが、弓田くんは料理の勉強のためにイタリアへ行ってしまうし、好きだった会社もリストラされてしまう。落ち込んでいる久里子の前に、偶然、歩道橋にたたずむ赤坂老人の姿が。

    実は久里ちゃんの退職は、慕っていた会社の先輩が自分の失敗を見られたくなくて久里ちゃんの退社を仕組んだのです。これ読んだとき、人間て、ほんと怖えなと思いました。

    先輩も罪悪感は一応持っているのですが、それでも、自分のミスをぬぐうために人の人生を変えてしまうって発想が怖い。私だったら自分が辞めるけれど。


    パレードがやってくる


    久しぶりに帰ってきた弓田くんの家に遊びに行く久里ちゃんですが、そこには弓田くんの幼なじみ、明日香がいた。
    弓田君から「明日香の相談にのってやってくれ」と頼まれてしまうのですが、この明日香って子が超生意気でいろいろと久里ちゃんを振りまわします。

    「絶対分からない方法で人を殺す」と打ち明けられ、必死で止めようとする久里ちゃん。ベタな少女マンガのパターンですが、それでも久里ちゃんは弓田くんから頼まれたからと明日香の事件を赤坂老人に相談し、親身になって世話をします。

    久里ちゃんはほんと、いいこだなあ。


    ふたつめの月


    就職は決まったものの、好きだったアパレル系への未練が残っていて「このままでいいのか」と悩む久里ちゃん。赤坂老人へ相談をしにまた歩道橋へ。赤坂老人はいつもこの歩道橋で見かけるから。

    赤坂老人は下の車を眺めたり、公園から月が見づらいといって街頭を外してしまったりと、一見奇妙な行動をしているが、彼の行動にはいつも「理由」があった。

    赤坂老人と別れたあと、白いバンが老人をひき逃げする場面を目撃してしまう。実は、実はあの歩道橋の上から窃盗団の車を撮影していたらしい。赤坂の見舞にいくと「歩道橋の街頭を壊してくれ」と意外な頼みごとをされる…

    主人公の久里ちゃんがほんとにいいこで、思わず「久里ちゃん」と呼びかけてしまいそうな女の子なんです。本人はそんなにやさしくないと文中で語ってますが、今どきの女の子っぽさも持ち合わせつつ、困った身近な人間のために働くけなげさもある。

    赤坂老人との交流を通じて、久里ちゃん自身も成長してゆくのを、読んでいるこちらも応援したくなりました。


    前作『賢者はベンチで思索する』
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    近藤史恵作品感想


    自転車ロードレースを舞台にした名作
    サクリファイス→
    エデン→

    ビターな恋愛

    「スタバトマーテル」→
    「アンハッピードッグス」→

    かわいいくて切ないミステリ
    「賢者はベンチで思索する」→
    「あなたに贈るキス」→
    「天使はモップを持って」→
    「モップの魔女は魔法を知ってる」→

    下町のシェフが解き明かすおいしそうな日常ミステリ。
    「タルト・タタンの夢」→
    「ヴァン・ショーをあなたに」→

    梨園の世界を舞台にしたミステリ
    「ねむりねずみ」→
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