「序の舞」 宮尾 登美子

2009.10.27 Tuesday

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    女流画家の壮絶な人生を描いた宮尾 登美子さんの「序の舞」、ようやく読み終わりました。

    明治時代は文明開化といわれていますが、女性には暗黒の時代でした。そんな中、男中心の絵画の世界へ飛び込んだ主人公・津也は少女の頃から人並みはずれて精進を重ね、徐々に才能を現してきたものの、男社会で歯をくいしばっているうちに生活の寄る辺として、また早くに亡くなった父親の面影を求め、妻子ある師匠の松渓と情を交わしてしまいます。

    その後、師の子を身ごもってしまいますが、師匠からは掌を返され(まったく男ってやつは…( -д-)ノ)自分一人でそだてる決心をし、絵の道でも女の人生でも過酷な道を歩んでいきます。
    そんな津也を支えてくれたのは、女手一つで葉茶屋を営みながら育ててくれた母・勢以の存在。普通の人生から外れて「嗤われる」ことを何より恐れる京都とという町で、父なし子を育てる決心をした津也をあたたかい言葉で支えてくれます。
    情熱的な津也の生きざまとは別に、勢以と津也の逆境に立ち向かう母子の深い愛情がすてきでした。

    「序の舞」のモデルは美人画の巨匠・上村松園画伯ですが、「序の舞」の主人公と松園画伯をイコールと考えるのは私は抵抗があります。
    昔読んだ雑誌で松園画伯のご子息、松篁画伯が「母親をモデルにした作品のため取材に協力したけれど、実際の母親像とかけ離れており、寂しい思いをした。」というようなインタビュー記事を読んだことがあり、確かに映画の「序の舞」はスキャンダルとエ○部分が誇張されていて、見ていてあまり気持ちのいいものではありませんでした。

    この小説「序の舞」も女流画家の愛と情念についての描写はすばらしいと思うんですが、画家としての松園画伯の姿が希薄で、ただの流されやすい女性としての印象が強いのがなんとも残念です。

    私も最初は「序の舞」の映画を見て興味本位で松園画伯の絵を見てみたのですが、絵の持つ美しさや迫力に、興味本位の印象は見事に吹っ飛びました。本当のところ、画家がどんな人生を送ったかは、その作品がすべてを語ってくれるのではないかと思うのです。

    そして、松園画伯の作品は己の色恋だけでは表現し切れない、もっと高尚なものだと思うのです。

    序の舞 (中公文庫)
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    上村松園画集
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    その後、上村松園画伯のエッセイ「青眉抄」を読みましたが、画業のことや母との思い出、日本女性の美について書かれた文は美しく、そこには情念よりも静かで、もっと厳しい画家としての思いが綴られています。

    奈良ホテルには松園画伯の絵が飾られています→
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    コメント
    こんばんは〜。
    トラックバックありがとうございました。

    男社会の中で、ひとり生き抜いた津也と、それを支えた母の思い、胸を打ちます。

    映画のほうは見たことがなくて、レンタルを探したのですが、古いせいかお店にありませんでした。
    牛くんの母さんへ
    まったく男どもが解消なしばっかりで…!津也さんも流されてしまうところがあり、かなりやきもきしたのですが、今とは自由の幅が違う明治時代では
    女性が社会に出るのってものすごく大変なことなんですよね。DVDはネットレンタルなどだと取り扱っているところがありますよ。ちょっと原作と違うようですが…
    • by 日月
    • 2009/10/31 12:39 AM
    こんばんは。初めてこの小説の読後の感想が合う方がいらっしゃいました!!
    「画家がどんな人生を送ったかは、その作品がすべてを語ってくれるのではないか」
    その通り!!と感動しました(*^^*)
    私は松園さんの絵画作品を先に観て、感動し、その小説があるというので興味を持ち読んだら、内容があまりにもかけ離れているように感じ、ひどく気分が悪くなってしまったのです。
    その後、松園さんの『序の舞』作品を前にして「これ、宮尾登美子の小説の・・・うんぬんかんぬん・・・」なんて言いながら変な笑みで観ているおば様方に遭遇した時は、本当にがっかりしました。絵を観ていない、と。
    が、皆さんそう思っている訳ではないのですね!
    本当に嬉しいです(*^^*)
    • by 一保堂
    • 2009/11/29 8:01 PM
    一保堂さん
    コメントありがとうございます。私は最初、ドラマで松園画伯のことを知ったのですが、初めて松園画伯の絵見たとき、映像や小説の印象とは違い、静かで品格があって美しかったのを覚えています。
    たとえ激動の人生だったとしても、それは残してくれた絵で判断すればいいのだと思います。スキャンダラスな映像や小説の印象で絵を語られるのはちょっと心外ですよね。

    ところで一保堂というのは京都のお茶屋さんのお名前でしょうか?私もあそこのお茶が好きで京都旅行の時に立ち寄った覚えがあります。(^^)
    • by 日月
    • 2009/11/29 10:49 PM
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