「闇の守り人」 上橋 菜穂子

2010.07.19 Monday

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    何度も読み返せる本は決して多くはありません。まして、読むたびに感動させられる本というのは一握りだと思います。「闇の守り人」はそんな一握りの貴重な物語です。物語に登場する青い宝石・ルイシャのように、「闇の守り人」の物語自体が光をはなち、切なくも美しい世界をつくりだしています。

    前作「精霊の守り人」で、異世界ナユグの精霊の卵を産みつけられてしまった新ヨゴ皇国の第二皇子・チャグムの用心棒だったバルサは、チャグムを守り、ともに暮らすうちに、自分を守り育ててくれた養父・ジグロとその過去をもう一度見つめ直そうと考えます。やがてバルサは25年前にジグロに連れられて通った洞窟を通り、故郷カンバルへと向かいます。洞窟の中で「闇の守り人(ヒョウル)」に出会い、槍を交えるバルサ。それは新たな運命の始まりでした。

    バルサの父はカンバル王の主治医でしたが、王位争いの陰謀に巻き込まれ、親友のジグロに幼いバルサを託します。やがて追ってきた王の追手は、ジグロがかつて槍を交えた友人たちでした。友人たちを倒しながら生き延びねばならなかった深い苦悩を背負ったまま亡くなったジグロのため、彼の生きざまをゆかりの人に伝えようとするバルサの前に、ジグロの弟・ユグロから刺客が送りこまれます。

    カンバルには「ルイシャ送りの儀式」という、精霊の王がカンバルの民に宝石ルイシャを送る秘儀があるのですが、そのためには槍の名手が「闇の守り人」と戦わなければなりません。
    ある理由から「闇の守り人」と戦うことになったバルサ。「闇の守り人」とバルサが槍を交えるたびお互いの感情が交錯し、傷となってバルサの心を突き刺していきます。
    この「槍舞い」のシーンは何度読んでも鳥肌がたって、思わず泣いてしまいます。

    物語りももちろん素晴らしいのですが、バルサの故郷カンバルの描写が印象的でした。標高の高い山国のうすい青空、乾いた風、すり鉢状の地形、芋やヤギの乳をつかった料理…。読んでいる方も厳しくも美しいカンバルという国を旅しているような感覚になります。

    単行本も二木真紀子さんの挿絵つきですてきなのですが、文庫版ではアニメ「精霊の守り人」の監督、神山健治氏が解説をよせています。アニメは原作とは解釈や設定がやや異なりますが、アニメの世界観もすばらしいです。

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    「闇の守り人」にもでてきたロッソ(コロッケ状のたべもの)
    ジョコム(木の実入りの焼き菓子)など、上橋作品のたべものレシピ集。上橋作品は食べものもおいしそうなんです。(^^)

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    コメント
    精霊の守り人、アニメで一度見ました。いい話だった…。夏休みの間に読んでみようかな…。話は変わりますけど、踊る大捜査線3見て来ました!!すごい小ネタ多かったですね。一通りシリーズは見ましたがわからないのが多い…。まさにファンの為の作品でしたね!小ネタどれ位わかりました?
    • by 百鬼
    • 2010/07/20 10:50 PM
    百鬼さん
    「精霊の守り人」は原作もアニメも面白いです。世界観が緻密でそこらのファンタジーなんて比べ物になりません。

    踊るはマニアではないので、あまり小ネタはわかりませんでした。すいません。
    • by 日月
    • 2010/07/21 10:39 PM
    こんばんは。
    今更ながらこのシリーズを読み始めました。
    「精霊の守り人」も面白かったですが、こちらもまた違った面白さがありました。
    前作で強かったバルサがなぜ強くならなければならなかったのか。その過去と向き合う内容だったのがたまらなかったです。
    ジグロの事もそうですがバルサも大変な日々を過ごしてきたんだろうと思いました。「槍舞い」のシーンは本当に何度読んでも胸が熱くなります。
    • by 苗坊
    • 2016/08/18 1:18 AM
    苗坊さん、こんばんわ(*´∀`*)
    「闇の守り人」は私も大好きな一冊です。少しだけネタバレになりますが、このあと、また、バルサはカンバルに戻ってきます。

    その時は、「追われるもの」ではなく、ちゃんと故郷に肉親や友人たちがいて、過酷な状況ではありますが、再会のシーンには胸が熱くなりました。
    • by 日月
    • 2016/08/18 10:31 PM
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    • 苗坊の徒然日記
    • 2016/08/18 1:16 AM
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