2010.09.05 Sunday

「COCOON」もうひとつの感想 サンとマユについて。

悲惨な戦争の現実と、少女の空想が交錯する世界を描いた今日マチ子さんの「COCOON」。
読んだ当初は、悲惨でグロテスクな戦場と、そこに少女たちが関わることへの悲劇に目を奪われていたのですが、ちょっと落ち着いてくると、この物語にはいろいろな意味が隠れているのではないかと思うようになりました。

「COCOON」感想→

COCOON
COCOON
posted with amazlet at 10.09.02
今日マチ子 秋田書店


ここでは主人公サンとその親友マユについて思ったことを書こうと思います。サンの名前の意味はおそらく「蚕=サン」マユは「繭」の意味なのでしょう。

うじむしと死体まみれの野戦病院。サンは空想という武器で現実からの逃避を図ります。死体や血や兵士を避けるため「おまじない」でそれらを見ないことにきめ、重症患者を殺すために配られたミルクの甘い香りに、みんなとのお茶会を必死で空想する。

そんなサンと彼女を守るのが「親友」のマユ。
マユはサンを悲惨な世界から守るため、彼女の空想の繭糸を何度も何度も補強してやり、彼女を汚し、傷つけようとする者には非常手段もいとわない。
けれど、やがて繭は壊され、蚕は外の世界へ出てゆくことになります。
今日マチ子先生はあとがきで「サンは少女らしい無自覚な自己中心さ発揮して」と書かれていましたが、読んだ当初は生き残ったサンに対してよかれと思うことはあっても「自己中心さ」を感じることはありませんでした。けれど読み返してみると、マユが死んだあとのサンの新しい世界への順応の早さには少し怖いものを感じました。

繭は蚕を守るためだけに存在し、
繭の思いは決して蚕には伝わらない。

マユの側からみると、羽化した蚕=サンは繭を振り返らないで生きてゆく。これもまた少女のもつ「無自覚な自己中心さ」の現れなのかもしれません。

今日マチ子さんが描くもうひとつの戦争物語。少女たちがお菓子や果物を武器に変えて戦う少女たちの絵は美しくて痛くて切ない。

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