『獣の奏者 外伝 刹那』 上橋 菜穂子

2010.09.07 Tuesday

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    獣の奏者 外伝 刹那」は本編で語られなかったエリンとイアルの恋とジェシの出産・子育ての様子、エサル師の若き日の恋物語。「獣の奏者 探求編」「完結編」が始まるまでの年月、エリンとイアルがどのようにして結ばれ、どのように時を過ごしてきたかが伝わってきます。

    獣の奏者 外伝 刹那 (講談社文庫)

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    刹那


    エリンとイアルが結ばれるまでのじれったい思いと、結ばれてこどもの産む決意をするふたりの姿が描かれています。特に父親となるイアルは、過酷な運命を背負っているため、子の運命について不安や恐怖にさいなまれます。エリンはそんなイアルの不安を拭おうとするように、自分の身を顧みず行動に移します。さすが女性は強い。

    『刹那』のテーマは「性と生」


    人は「性」をみだらなモノとして隠す傾向にありますが、この営みがなければ次の「生」を生み出すことができないのです。それは人も獣も同じ。エリンのリアルな出産シーンを読んでいると、自然と自分を生み出してくれた親への感謝の気持ちが生まれました。


    秘め事


    エリンの師・エサル師の若き日の恋。エサルは貴族の娘だったため、ある意味エリンよりも制約が多かったのですね。エサルは貴族の妻になることを拒み、独身で研究者として生きていく道を選びます。

    本編ではエリンに隠れがちですが、エサルも若いころから優れた研究者で、研究のためならかなりの無茶をして周りを心配させていました。

    そんなエサル師だからこそ、エリンの行動を見守り、成長を助けることができたのでしょうね。

    若いころのエサル師の話を読んでから、私は彼女のことがとても好きになりました。

    上橋先生はエリンの人生も、エサルの人生も、どちらも同じように中立な視点で描かれています。どちらが上でも下でもない。それが、エサル師の父上の残した、この言葉に集約されている気がします。

    雌雄が交わって身を結び、次代を育む花もあれば、自分が養分をしっかり蓄えて根を伸ばし、その根から芽を伸ばして、また美しい花を咲かせる植物もあるものだ。



    初めての…


    こちらはエリンの子育て・断乳奮闘記。まだ舌がまわらない頃のジェシが、乳離れを拒んで、わあわあ言っている姿が目に浮かぶようです。切ない話のなかの、ほっこりとした日常風景。

    イアルさんはこの世界の男の常として子育てに参加はしてないようですが、それでも家事に手がまわらないエリンをそれとなく気遣う姿が見られます。( ̄▽ ̄)

    それにしても作中でエサル師も言っていましたが、あの小さかったエリンが成長して母親になっているのが、なんとも不思議な気がします。

    獣の奏者 全5冊合本版 (講談社文庫)






    上橋作品感想


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    コメント
    TBありがとうございます。

    完結編を読み終えてから、この外伝の刹那が出ると聞いて、とても待ち遠しかった一冊でした。

    図書館で借りたので、文庫本が出たら、また読みなおそうと思っています〜
    freedombearさん
    こちらこそコメントありがとうございます。私も外伝が出ると聞いて嬉しくて嬉しくて…
    なんども読み直したくなりますね。(^^)
    • by 日月
    • 2010/11/04 11:36 PM
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    シリーズ初の外伝。 たとえ書きたいエピソードがあったとしても、よけいな一滴を加えれば、物語の形はあっけなく崩れ去ってしまう という筆者の言葉には、強く共感しました。 そのエピソードが読めたことは嬉しいんだけど、物語全体としては蛇足では、という経験は、実
    • KOROPPYの本棚
    • 2011/02/12 8:15 PM
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