『ウは宇宙船のウ』 萩尾 望都

2010.09.21 Tuesday

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    レイ・ブラッドベリの名作SF「ウは宇宙船のウ」を萩尾望都が繊細なタッチでマンガ化した「ウは宇宙船のウ」。

    原題は「R is for Rocket」。これを「ウは宇宙船のウ」と最初に訳した方、天才だと思います。

    マンガ版が発表されてから30年以上たつのだけど、面白さはまったく色あせません。
    以下の短編のほか、SFだけでなくホラーやファンタジー作品など幅広いジャンルの作品があります。

    「ウは宇宙船のウ」


    ロケットや宇宙にあこがれる少年たち。彼らは毎年、宇宙局からパイロット候補生として彼らの家に迎えのヘリがやってくるのを待っている。友達とのフットボールや遊び、家族や友達が大好きな少年・クリスは純粋に宇宙船への憧れをいだいていた。そんな彼が突然、パイロット候補生に選ばれることになり…

    それは、パイロットになるということだけではなく、クリスの少年時代との決別を表しているのです。



    「びっくり箱」


    私の一番好きな作品です。SFというよりはファンタジックなホラー。大きなお屋敷に住むドーナは屋敷の中が世界のすべてだと母親から教えられて育てられた女の子。その世界には1階には食堂や居間、最上階は学校があり、そのほか鍵のかかった禁断の部屋部屋がある。誕生日になると、音楽室や娯楽室など楽しい部屋をあけてもらえ、二十歳になるとそれがすべて自分のものになるという。

    ある日、ドーナは学校へ向かう途中、失くしたとおもっていたびっくり箱を拾ったのがきっかけで「外の世界」への扉を開けてしまいます。

    世界が家の中だけ、外は死の世界という非日常感が好きです。しかし。2020年コロナウイルスによってはからずもSF世界が身近になってしまいましたが…。

    おうち時間に読みたい、閉鎖空間系小説・まんが

    「集会」


    万聖節(ハローウィーン)の夜、一族が集まる宴が始まる。家族が準備に追われている中、一族のできそこないのティモシーは肩身が狭い思いをしている。
    やがて、夜になると皆が集まり饗宴が始まった。ティモシーはみんなを驚かせたいと、寝たきりの妹、シシィのちからを借りるのだが…。

    ある一族の一晩の宴の様子が描かれます。ブラッドベリらしい不思議でファンタジックな物語の中に切なさがある作品。

    「宇宙船乗組員」


    宇宙船乗組員のダグの父は年に数回しか家に帰らない。
    母親は危険な宇宙船乗組員を辞めて地球にとどまって欲しいと考えているが、宇宙に魅せられている父親は、なかなか地球にもどることができない。けれど、次の航海が終わったら家にいると決意するが、父親の乗った宇宙船は太陽の中へ落ちてしまった。

    それ以来、ダグと母親は太陽を見ない。
    彼らが長い間外へ散歩にでかけるのは
    ただ雨降りの太陽のでていない日だけだった…。

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