2010.11.18 Thursday

『武士の家計簿―「加賀藩御算用者」の幕末維新」』 磯田 道史

堺雅人さん主演の映画「武士の家計簿」、その原作となった「武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)」は、幕末から明治にかけてある加賀藩士の家計簿を通じ、今まであまり知られていなかった武士の会計管理の実態を明らかにした研究本です。

しかし、こういった堅苦しい研究本なのに、ものすごくドラマティックで、小説のように面白い。幕末から明治にかけての激動の時代、猪山家の人々が何を考え、どんな行動をとったのかが「武士の家計簿」の数字の隙間からみえてくるようです。

まさか、新潮新書でこんなにワクワクさせられるとは思わなかった。
下手な小説よりよっぽど面白いです。

家計簿の主人公は加賀藩、今の石川県の御算用者(会計管理者)として代々出仕し、その卓逸した会計能力で出世を果たした猪山家。出世してさぞかし左うちわかと思えば、猪山家の支出は出費がかさんで破産寸前にまで追い詰められます。それは何故か?
そこには江戸時代の武家社会の「儀礼」と「身分」、「家制度」がからんできます。どんなに出費を控えても親戚や上司への挨拶、こどもの行事などにはお金を惜しんでしまうと、武家社会では生きて行けないシステムになっているのです。

金は無い、しかし交際費は削れない。娘の祝いの席で当主・直之がとった行動は「お祝いの料理に絵に描いた鯛を飾る」というものでした。その他、直之は机から先祖伝来の道具、果ては妻の花嫁衣裳まで売り払うという強硬手段に打って出ます。直之の大胆な財政改革により破産をまぬがれましたが、幕末、明治と激動の時代は武士の生活や常識がまったく通用しない世の中になっていきます。

直之の息子・成之は、父親譲りの算術の才能と勤勉さで頭角を表し、旧幕側の加賀藩にありながら明治海軍にスカウトされ士官がかないます。これは士族身分が廃止されて多くの武士が生活に困窮した中でも、まれに見る出世だそうで。また成之さんは、大村益次郎の元でも働いていたり、その息子は「坂の上の雲」の秋山真之さんと海軍の同期生だったり、幕末の歴史の一幕ににも関わっていました。

江戸時代、算術などの事務を扱う武士は重宝されながらも身分的には低く、武士にあるまじき職業とされましたが、実力主義の明治の世では、名実ともにその才能が認められることになったのです。

・[映画]武士の家計簿→
磯田道史先生著作
「歴史の愉しみ方 - 忍者・合戦・幕末史に学ぶ (中公新書)」→
「江戸の備忘録」→
「殿様の通信簿」→
「日本人の叡智」→
「無私の日本人」→

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Comment
 こんにちは。しばらく前に、コメントを頂きまして有り難うございました。レスポンスが遅くなってしまってごめんなさい。
 
 私は友人から熱烈に勧められて読んだのですが、ホントに、ドラマ以上にドラマチックですよね。

 その後、たまたま試写会で映画「武士の家計簿」を見る機会がありましたが、お江戸ホームドラマ風にホワッと温かな感じに仕上がっていました。でも、私は、歴史を読み解いていく興奮が伝わってくる磯田先生の原作の方が圧倒的に面白かったです。

 それでは、また。
 
おりおん。さんへ
こちらこそ、ご訪問ありがとうございます。( ̄▽ ̄)
おりおんさんの記事を読んで、磯田先生の他の著作も読んでみたくなりました。今まで歴史にうもれていた一藩士の家庭の様子が、数字を通じて伝わってきます。また、磯田先生の文章がうまく、歴史小説を読んだような読了感でした。
  • 日月
  • 2010/12/06 18:23
日月さん、こんにちは!
やっと読むことが出来ました。
とーーーっても面白かったです。
日月さんは、磯田先生の本、沢山読まれているんですね。私も他も読んでみたくなりました。
  • latifa
  • 2011/06/10 08:28
latifaさんへ
「武士の家計簿」は、小説以上にドラマチックで、幕末の一武家の生活が家計簿から手に取るようにわかります。堺雅人さん主演で映画化されましたが、ネットの感想では原作のほうが評価が高いようです。
磯田先生の著書は、古文書を読みといて、現代人の感覚にあった文章で表現してくれることで親しみやすくなっています。
他の著書は「武士の家計簿」ほどドラマチックではありませんが、独特の語り口で歴史が身近に感じられます。ぜひ他の著書も読んでみて下さい(^^)
  • 日月
  • 2011/06/11 01:24
日月さん☆おはようございます
後世の人間にとって、これだけ克明な記録ってのはホントに貴重です。
測量や会計など、数字を大事にしていたからこそ加賀藩は繁栄していたともいえるのでしょうね。
  • Roko
  • 2011/07/23 07:47
Rokoさんへ
とくに加賀藩は大藩だったのですぐれた事務方が必要だったようです。

作者の磯田先生は「江戸時代の教育の遺産で現代はかろうじて保っている」とおっしゃってました。
たしかに、高い教育レベルがあったからこそ、我々の生活があるのかもしれません。
  • 日月
  • 2011/07/24 11:00





   
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「武士の家計簿」 磯田道史著 新潮新書 2010/10/28読了  私にとっての読書は、束の間の非日常体験であり、現実逃避。というわけで、ノンフィクションはほとんど読みません。でも、この本は、友人が「途中でやめられな...
  • おりおん日記
  • 2010/12/06 2:04 PM
「武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新」磯田道史 新潮新書今年の正月映画になるというので、読んでみたのだが、大変面白かった。もう6年も前の新書だけれども、ベストセ...
  • 再出発日記
  • 2010/12/06 11:24 PM
「武士の家計簿 」★★★☆ 堺雅人、仲間由紀恵、松坂慶子、西村雅彦、草笛光子、中村雅俊 出演 森田芳光 監督、129分、2010年12月4日公開、 2010,日本,アスミックエース、松竹 (原作:原題:武士の家計簿) ←                     →  ★
  • soramove
  • 2010/12/16 9:38 PM
「武士の家計簿 ―  「加賀藩御算用者」の幕末維新」 磯田 道史 (著) 新潮新書/2003.4.10/680円 「金沢藩士猪山家文書」という武家文書に、 精巧な「家計簿」が例を見ない完全な姿で遺されていた。 国史研究史上、初めての発見と言ってよい。
  • 月灯りの舞
  • 2011/01/03 11:24 AM
堺雅人さん主演の映画を見てすぐ、図書館にリクエストしたものの大人気で、半年待って、やっと回って来て読めました。映画とリンクする部分もありましたが、映画と切り離しても、素晴らしく興味深い事が色々解る本でした。5つ★ まずは、江戸時代後半の武士が(この
  • ポコアポコヤ
  • 2011/06/10 8:27 AM
武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)posted with
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