[映画] 武士の家計簿

2010.12.08 Wednesday

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    映画「武士の家計簿」は、幕末から明治にかけての激動の時代を生きた加賀藩御算用者、今でいう経理係をつとめた猪山家の三代にわたる物語。時代劇につきものの、いわゆるチャンバラのない、例えるなら「武士のホームドラマ」といった感じです。派手な展開はないものの、飽きることなくじわじわと心にしみる映画でした。
    そして堺雅人さんのすてきなことといったら…!(//▽//)

    堺雅人さん演じる主人公直之さんと父親の信之さんが務める御算用場は、そろばんがパソコンに変わったくらいで今のオフィスと変わらぬ風景が繰り広げられて いました。直之さんは「そろばん馬鹿」とあだ名されるくらいの生真面目さで帳簿の不備があると調べ上げなければ気が済まない。そんな折、家の借金が膨大に なり、直之さんは家族のために武士の対面を捨てて家財道具を売り払うという行動に出ます。
    奥様・お駒さんの「貧乏だと思えば暗くなりますが、工夫だと思えば。」というセリフがすきです。
    母方が加賀友禅の商人だったため、彼女のやりくり力も猪山家の財政再建に一役かっていたようで、お駒さんと直之さんはお互いを支え合って苦しい時代を乗り越えてゆきます。

    また「武士の家計簿」はホームドラマらしく家族で食卓をかこむシーンが多く、私はここが好きでした。
    日常の食事や結婚式のハレの日食事。借金を背負い、節約生活の中での質素な食事。(弁当箱も売っぱらってしまったので竹の皮でおにぎりを包んでいます。)長男の袴儀の儀式では、絵にかいた鯛で膳を囲みます。新しい家族を迎え家族の変遷とともに食卓も変化します。

    後半は成之さんと直之さん親子の確執が描かれます。息子の成之さんはそろばんの才能はあるものの、父親のスパルタ教育や「そろばん侍」としての生き方に疑問を持ち、そろばんひとすじの直之さんとたびたび衝突します。幕末はだれもが英雄に憧れ、また英雄になれるチャンスがあった時代。成之さんもそんな時世に活躍したいと願い、藩の命令で戦いの渦中へ向かいますが、彼を救い、出世の道を開いたのは、父親から厳しく教え込まれたそろばんの技でした。

    後半はもうちょっと幕末の成之さんの活躍を描いて、幕末の事件とからめてもいいのでは…とも思いましたが、ホームドラマなのでその辺には触れず、帰りをまつ家族の様子が描かれています。

    映画向けに原作の内容を変えてはありますが、直之さんが出産するお駒さんに高価な砂糖をかってあげたり、その砂糖袋(丈夫だったらしい)に家計簿を入れておいたり、維新後の落ちぶれた武士が河原でとうもろこしを売っている様子など、原作の描写がところどころにちりばめられていたので、原作を知っているとより楽しめました。

    下手な小説よりも面白い原作 「武士の家計簿」→
    直之さんも務めた金沢城、旅行でみてきました→


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    コメント
    日月さん☆こんばんは
    どんな数字の違いも気になってしょうがない直之さんが、勝手に調査しすぎて左遷されそうになったところではハラハラしちゃいました(・・;)
    数字を武器として生きた彼の、一途な気持ちが清々しくて、こういう人が現代にもいて欲しいものです。
    • by Roko
    • 2010/12/16 7:28 PM
    「〜バカ」ってつくのって、本当はある種賞賛意味も含んでいるんだと思います。そろばん侍は武士の間では蔑まれ気味の感があったのですが、そのお家芸と実直さが新しい世で生き残る糧になったのでしょうね。

    この原作がまた面白くて。役作りに様々な資料をあつめる堺雅人さんが「この一冊で十分」といっただけあって、武士の家計簿の詳細が記されています。よかったら読んでみてください( ̄▽ ̄)
    • by 日月
    • 2010/12/17 1:52 AM
    日月さん、こんばんは。
    この作品、原作を読んでから観た方が楽しめたかもしれませんね。それこそ、成之のエピソードなども知っておいたほうが、彼に感情移入できたかもしれません。
    作品前半のほのぼのムードを最後まで保ってほしかったなあ・・・と思ってしまいます。
    • by mayumi
    • 2010/12/17 11:14 PM
    mayumiさんありがとうございます。やはり前半の盛り上がりから、後半ちょっと失速するという意見が多いですね。
    映画のままだと息子の成之さんがただのワガママ息子のようですが、父親以上のソロバン能力持ち主でだいぶ活躍したようです。
    • by 日月
    • 2010/12/20 9:33 PM
    あれー@@
    消えちゃったかしら・・・。
    今、投稿したのですが・・
    • by latifa
    • 2011/01/05 12:01 PM
    あれあれ@@!!
    新年早々、何度もすいません。
    さきほど、ちょっと長めのコメントを投稿したのですが、消えてしまったようです・・・(T_T)

    再度トライします。
    これ、日月さんが原作と映画と感想をアップされているのを、密かにチェックしていました♪(読まないで我慢していました)
    う〜ん、やっぱり原作を読んだ後、映画を見た方がより一層楽しめたかな?
    私は映画を先に見ちゃったんです。
    原作は、映画を見た後、図書館にリクエスト入れて、順番待ち中です。

    PS ハンドメイドの可愛いコサージュをつけた帽子、キュートですね♪
    日月さん、今年もよろしくお願いします(^○^)
    • by latifa
    • 2011/01/05 12:05 PM
    latifaさん、コメント投稿でトラブルがあったとのことで、申し訳ありません。
    せっかく長文を書いてくださったのに…。・゚・(*ノД`*)・゚・。
    特に変わった設定はしていないはずなのですが…
    いつでもかまいませんので、よかったらまたお願いします(´▽`)

    武士の家計簿は原作も、それを書いた原作者も個性的で面白いです。
    • by 日月
    • 2011/01/07 3:43 PM
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    「数字が合わぬのが、我慢なりません」を「映画がヌルくなっていくのが、我慢なりません」に変えて森田芳光監督に叩き付けたくなる映画でした。 前半のゆったりとした家族愛のあ ...
    • こねたみっくす
    • 2010/12/13 5:39 PM
     マスメディアが黙殺する問題、それを取り上げたのが『東のエデン』の画期的な点の一つだろう。  その問題――世代間格差の問題をマスメディアが取り上げることは滅多にないが、『東のエデン』はそれを堂々と...
    • 映画のブログ
    • 2010/12/14 12:44 AM
      □作品オフィシャルサイト 「武士の家計簿」 □監督 森田芳光□脚本 柏田道夫□原作 磯田道史□キャスト 堺雅人、仲間由紀恵、松坂慶子、中村雅俊、草笛光子、西村雅彦、       伊藤祐輝、嶋田久作、宮川一朗太、小木茂光、茂山千五郎■鑑賞日 
    • 京の昼寝〜♪
    • 2010/12/15 8:53 PM
     堺雅人主演ということで気になっていたこの作品、期待していたよりずっと面白い作品
    • Roko's Favorite Things
    • 2010/12/16 7:22 PM
    「武士の家計簿 」★★★☆ 堺雅人、仲間由紀恵、松坂慶子、西村雅彦、草笛光子、中村雅俊 出演 森田芳光 監督、129分、2010年12月4日公開、 2010,日本,アスミックエース、松竹 (原作:原題:武士の家計簿) ←                     →  ★
    • soramove
    • 2010/12/16 9:43 PM
     2010年/日本  監督/森田 芳光  出演/堺 雅人     仲間 由紀恵  実在した加賀藩の武士、猪山直之を堺雅人が演じた作品。  御算用場のそろばん侍、猪山直之は米の横流しを発見したことから藩主付きとなるが、猪山家の家計が火の車と知り、倹約に
    • It's a wonderful cinema
    • 2010/12/17 10:58 PM
     『わたし出すわ』の森田芳光監督の作品であり、また原作本を出版直後に読んだことがあり、その内容はす...
    • 映画的・絵画的・音楽的
    • 2010/12/24 8:41 PM
    なかなか面白い映画でしたが、なんだろうな〜長期間の3世代に渡ってのお話だったのもあってなのかな・・?いま一つ焦点がぼやけてしまっていたというか・・・。良い映画なんだけど、凄い感動があるというわけではない映画でした。とはいえ、全体的に好印象な感じで4つ
    • ポコアポコヤ 映画倉庫
    • 2011/01/05 12:08 PM
    ストーリー:会計処理の専門家、御算用者として代々加賀藩の 財政に携わってきた猪山家八代目の直之(堺雅人)。 江戸時代後期、加賀百万石とうたわれた藩も財政状況は厳しく、 加えて武家社会には身分が高...
    • 単館系
    • 2011/02/10 11:02 PM
    武士の家計簿 ★★★★★(★満点!) 幕末から明治――。 これは、実在する家計簿から生まれた、 ある家族の物語。 刀ではなく、そろばんで、家族を守った侍がいた 。 貧しいときも、豊かな愛を注ぎつづけた妻がいた。 よかったです。 映画館に見に行こうかと思っ
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    • 2011/07/07 2:21 PM
     会計処理の専門家、御算用者として代々加賀藩の財政に携わってきた猪山家八代目の直之。江戸時代後期、加賀百万石とうたわれた藩も財政状況は厳しく、加えて武家社会には身分が高くなるにつれ出費も増えるという構造的な問題があった。直之は、家財道具を処分
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    「願いましてーは!」 なんか懐かしい。 母親が珠算教室をやっていたもので、本作の
    • はらやんの映画徒然草
    • 2012/03/17 10:43 PM
    原作は、2003年(平成15年)に新潮新書で発刊された歴史学者磯田道史の著書、だったのですね。 猪山雅人を演じた、堺雅人の存在感と、彼が父親となり、子供を指導するエピソードが印象に残りました。大島ミチル担当の音楽も、なかなかにイイ味…。 そのおかげで、
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    6月17日 武士の家計簿(感想227作目) アメブロが5月15日よりTB廃止する事が発表されましたので 5月15日以降に更新した記事では当ブログでTBを受付ます 当ブログに ...
    • スポーツ瓦版
    • 2012/06/17 2:40 PM
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