2011.01.27 Thursday

「おいしい中国―「酸甜苦辣」の大陸」 楊逸

直木賞作家・楊逸さんの食にまつわる思い出エッセイ、「おいしい中国―「酸甜苦辣」の大陸
知っているようで全く知らない、中国の食事情。

中国の食にまつわるエッセイ集


「中華料理」といわれる豪華な料理を、中国の方達が日々食べているわけはないだろう、とは思っていたのですが、楊逸さんが育った40数年前の中国はまだまだ貧しく、買い物には「糧表」と言われる配給用紙が必要だったそうです。戦前の日本のようだったのですね。

露天で売っているサンザシの実に飴をコーティングしたお菓子は「さらば、わが愛 覇王別]」でもでてきましたが、中国ではポピュラーなお菓子なのですね。しかし現在は露天はすたれ、サンザシの実はスーパーでしか手に入らなそうです。

ハルビンで生まれた楊逸さんですが、その後文革の嵐に巻き込まれ、田舎の農村に下放されてしまいます。「下放」とは、ざっくりいうと文革当時に都会の知識人が農村から学ぶため、無理やり引越しをさせられることだそうです。

下放以前は貧しいながらもお正月に餃子をつくったりアイスキャンデーを買ったりもできたけれど、農村ではそんなものはまったく手に入らず、油も足りないので燃料用の油で調理をしたりと、壮絶な食生活だったのだとか。

けれど、いろいろ厳しい時代であったのに楊逸さんの文章にかかるとヒマワリの種やラードで作ったパイ状のお菓子、ロシア人がつくるパン、白菜の漬物、どれもおいしそうで、そして日本人の私でも何故かしら懐かしい気分になります。

中国が今、これほど発展したのは、昔ひもじさを感じたことがあるからかもしれないな、と感じました。日本の高度経済成長期もひもじさを知っている世代が活躍した時期でしたし。

日中関係が微妙な時期ではありますが、そんな時だからこそ中国の人々を食文化から知るのもいいかもしれません。なんてったって食事はどんな国でも重要な関心ごとなのですから。

「金魚生活」→

おいしい中国―「酸甜苦辣」の大陸
楊 逸
文藝春秋
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