「孤独な夜のココア」 田辺 聖子

2011.03.21 Monday

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    田辺聖子さんの恋愛短編「孤独な夜のココア」を読みました。
    やさしくて甘く、ほろ苦いココアのような恋愛集。
    女の機微が繊細にやわらかく描かれていて、約30年の作品なのに内容がちっとも古く感じない。

    綿矢りささんも解説で触れられていますが、「孤独な夜のココア」の女性たちは、男性たちを包み込むやさしさをもっています。

    いつも小さなことでも怒っていた女性が、夫の不倫を聞かされたとき、怒るることができなかった。いつも怒りを収めてくれる夫がいたから、安心して怒っていられたと気づく。(「怒りんぼ」)

    また、主人公達は20代後半の女性が多く、恋や仕事、これからの生き方について工夫をし始めることについても書かれています。なかでも「年齢化粧」という言葉が印象的でした。
    こういう女になろう、と自分で少しずつ設計して、それに近づくように「化粧」をしてゆく。
    もう二十歳の頃のように、あるがままの自分では通用しなくなるから。(「ちさという女」)

    確かに、年齢を重ねると自分自信を化粧してゆくのも必要になってきますもの。

    田辺さんの作品は女性の人生を描くだけではなくて、なんというか、時に女性が生きていくのに役立つような、哲学というか、理念というか、そんな精神的な処方箋のような機能もあるんじゃないかとおもいます。


    解説を直木賞作家・綿矢りささんが書いています。綿矢さんは聖子さんとは60歳近くの歳の差があるのですが、実にわかりやすく的確に作品の解説をしてくれています。
    いくら年を経ようとも、女の本質は変わらないのかもしれません。


    孤独な夜のココア (新潮文庫)
    田辺 聖子
    新潮社
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