「小暮写真館」 宮部 みゆき

2011.05.14 Saturday

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    小暮写真館」は、もと写真館だった家を買った家族が遭遇する、ちょっと不思議な物語。
    約700ページの分厚さにも関わらず、1日半で一気に読んでしまいました。

    小暮写真館


    もと写真館の古い家を居抜きで購入した花菱家。花菱家の長男・英一は小暮写真館のあととりと勘違いされ、女子高生から不思議な写真を押し付けられる。そこには家族のスナップの中に泣いている女性の顔が写っていた。

    怖いという感情というより、「なぜ映っているのか」という原因について気になった英一は、写真の謎を解明しようとする。やがてその写真の女性の正体がわかるのですが…

    世界の縁側


    前回の心霊写真事件の解決が一部で噂になり、英一は一年上の女子から強引に写真の謎の解決を依頼される。
    親友テンコの部活仲間・コゲパン(女子)も加わり、調査を始める。依頼されたのは婚約者が写したというOGの女性の家族写真。笑顔の写真の奥、家の縁側では家族全員が泣いている。

    その後女性の家では婚約破棄や会社の倒産といった悲しい出来事が起こった。はたしてこの写真はなにかの予兆なのか…

    カモメの名前


    写真の解明でお世話になっている不動産屋の社長からまたも謎の写真が舞い込んでくる。フリースクールに通う生徒たちの写真に、不恰好なカモメのぬいぐるみが写りこんでいる奇妙な写真。それには家庭内の不和に悩む小学生が父母にあてたメッセージをだった…

    鉄路の春


    英一は不思議写真の謎解明で知り合いになった、不動産屋の事務員、垣本順子のことが気になり始める。垣本さんは不遜な態度でいつも不機嫌だけど、なにか暗いものを背負っているらしく、時々自殺未遂を企てる。

    そんな垣本を放っておけない英一やテンコとの交流で少しずつ変わっていくが、逃げていた彼女の母親が現れたことで、また彼女の様子がおかしくなってしまい…

    ストーリーだけざっくり書きだすと、高校生のゴーストハント話にみえますが、幽霊や心霊写真はきっかけにすぎず、その裏にある人間の悲しみや、どうにもならないことへの憤り、そんな切なる感情が写真によってつまびらかにされていきます。

    花菱家にも、4歳の娘風子を病気でなくすという悲しい過去があります。そしてそのことを家族全員が自分に責任があると感じています。小さな弟・ピカは花菱家の元家主・小暮老人の幽霊がでるときき、なんとか接触をこころみようとするのですが、それは好奇心からではなく「風ちゃんにあやまりたいから小暮さんに頼む」という理由からでした。

    生きている者には、時々死者が必要になるんだ。」という不動産会社の社長の言葉が深いです。

    宮部みゆきさんの時代物、「ぼんくら」や「日暮らし」など江戸の庶民のくらしと不思議な事件を描いた作品と、現代の作品とでは設定も時代も違うのに、同じ糸でつながっているような感じがします
    きっとどちらも「不思議なこと」のなかにある人間の悲しみや絆を描いているからなのかもしれません。

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     小暮写真館  宮部みゆき氏の描き下ろし小説です  当主の小暮さんが亡くなったあと、写真館を買い取ったサラリーマンの花菱家  パパさんが、「このまま住む」と言ったので、 ...
    • ベテランママは、本大好き。あらすじあり、のおすすめ本
    • 2013/02/21 9:02 AM
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