「薔薇の雨」 田辺 聖子

2011.06.09 Thursday

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    田辺聖子さんの短編を読むと、清涼な飲み物を飲んだ時のような爽やかさが残ります。
    薔薇の雨」は、女ざかりを過ぎようとしている女性たちの愛と葛藤の物語。
    結構ドロドロとした内容なのに、全然そんな風に感じない。

    男の可愛げ、女の可愛げ


    男の人の「可愛げ」を感じられる女性たちだからかもしれません。
    家の面倒なことを押し付けたり、浮気を繰り返すどうしょうもない男もでてくるのですが、彼女たちは男たちの「可愛げ」というか、魅力みたいなものを見つけるのがうまいんです。それが、他の人にはわからない自分だけの発見であったりすると、なんだか秘密めいてワクワクする。

    そんなささやかな秘密をもつ彼女たちにもまた「可愛げ」があるのです。

    また、中には浮気性の夫と気難しい姑に「まあ、ええか」と感情を押さえて仕えてきて、ある日突然、「うわー!」と叫び出して吹っ切れてしまった中年女性の物語「良妻の害について」も痛快でした。ずっと本音を押さえてきたからその反動がすごい。

    今まで言わなかった本音をバンバン言い、夫の浮気相手の手切れ金を値切りあうシーンなんかは、こっちも読んでいてすーっとしました。(^^)好き勝手してきた旦那サンも、タジタジでした。まあ、ある日突然離婚を切り出されるよりはいいと思わなきゃね。

    食事とおしゃべり


    田辺作品の短編にはよく男女が食事をしながらおしゃべりをするシーンがでてくるのですが、ちょっと気の利いたお店で交わされる会話と食事は、いわゆる男女間の営みよりも秘密めいてエロティックなのだけれど、どこか涼やかな感じもします。

    女が本当に人生で欲しいものは、おいしい食べ物と、可愛げのある男との粋な会話なんじゃないかな。なかなか女と本気で「会話」ができる男性って貴重ですもの。

    薔薇の雨 (新潮文庫)
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