2011.06.29 Wednesday

日常と非日常が入り交じる、南国への逃避行『エルニーニョ』 中島 京子

直木賞を受賞した中島京子さんの「小さいおうち」後、初の書き下ろし小説「エルニーニョ

「エルニーニョ」あらすじ


恋人ニシムラのDVに悩まされていた小森瑛は、とうとうニシムラの金を盗みだして逃亡する。誰ひとり知り合いのいない南へ逃れた瑛は、そこで褐色の肌をしたちょっと不思議な少年ニノと出会う。

ニノが居候していた古い商店街の石松砂糖販売でしばらくやっかいになっていた瑛とニノだったが、砂糖販売店が評判になったことでニノを追っている「灰色」(ニノを外国へ連れて行くらしい)が追ってきてしまい、ふたりはまた、あてのない旅に出ることに。

旅先で様々な人々との出会いがあり、楽しいこともあったけれど、やがて「灰色」だけでなくニシムラまでも瑛とニノを追ってきてしまい…


旅という非日常、伝承という非日常


南国の明るいひざしの中、先行きの不安や、追っ手に怯えながらも旅をする場面がすごく印象的で、瑛やニノが不安を抱えながら旅をしていく感じがすごく伝わって、ああ、逃亡するってこんな感じなのだな、と思いました。

また、瑛とニノの逃亡劇の合間に、その土地の伝承や言い伝えのお話が印象的に配置されています。瑛のように小さな男の子をつれて写真に写ったからゆきさん、日本に残る息子のために高級砂糖を残したオランダ商人、石松砂糖販売の地元に伝わる小守地蔵の話…。

どれも印象的で不思議な話で、それらは少しずつ現代の瑛とニノにも関係するようになっています。この不思議な話たちとのリンクが好きでした。

読みおわった後、じわじわと染みこんでいくような、印象的なお話でした。


だた、苦手だったところも。、私は女性が暴力や暴行を受けるシーンが苦手なので、ニシムラが瑛に暴力をふるうシーンを読むのは正直つらかったからです。

「エルニーニョ」に登場する男達は、DV男ニシムラを筆頭に、浮気をしても母に謝罪しない瑛の父、ニノを無理やり連れ戻そうとする「灰色」、ニシムラの上っ面にまんまと騙されてしまう鯨谷くんも、みんな、しょうもない。

瑛とニノの気持ちを無視して事を運ぼうとするけれど、唯一、まだ少年のニノだけがかっこいい「男」でした。
小さな体で瑛をニシムラから守ろうとするのです。きっとこの子は将来、いい男になるでしょうね。(^^)

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中島京子作品


「のろのろ歩け」→
「小さいおうち」→
「女中譚」→
「冠・婚・葬・祭」→
「花桃実桃」→
「FUTON」→

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Comment
こんばんは^^
私も中島さんの作品だと想って楽しみにしていたのですが、ちょっと違いました。
私もDVのシーンは読んでいていやでした。
そして、そんなニシムラと大して会って間もないのにみんな瑛よりもニシムラの言葉を信じるのも何だか悲しかったです。
確かにニノだけが唯一かっこいい「男」だったと思います。
将来いい男になりますね^^
  • 苗坊
  • 2011/07/05 22:38
どんな話でもやっぱり女性が殴られたりするシーンはつらいです。
ニノ、いい男でしたね。ゾンビーズのアギーをちょっと思い出しました。いい男に成長しそうです。あんな風にモテすぎてもこまりますが…。
  • 日月
  • 2011/07/06 20:56





   
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