2011.10.28 Friday

「円朝の女」 松井 今朝子

幕末から明治に活躍した落語家・三遊亭円朝と彼にまつわる女たちを描いた「円朝の女
物語は、元弟子でその後五厘(寄席と芸人の交渉をする者)となり、長らく円朝のそばにいた男の口から、円朝が情を通じた女たちを語る形式で綴られていきます。

その語り口調が、やたら真実味をおびた感じで、まるで実際に円朝とその女たちのの色恋を伝え聞いているような心持ちになります。

円朝の女
円朝の女
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三遊亭円朝という人は落語家の中でも筆頭と言われる人で、彼の手による創作落語は、歌舞伎の演目にも取り入れられています。有名な所では「牡丹灯籠」や「人情噺文七元結」(これは近年勘三郎が上演)、「芝浜の財布」も円朝作だという説も。

円朝は当時の芸人には珍しく、品性に優れ、自分を律することの出来る人でしたが、やはり男と女の色恋の道は別らしく、数々の女性と浮名を流します。しかし、時に色恋の道は円朝の人生に時に影を落とすことにもなり…。

・幕末、贔屓の武家の娘との許されない純愛(「惜身の女」)
・お職の花魁や芸者衆との恋のさや当て(「玄人の女」)
・円朝と子までなした仲にも関わらず、その性格ゆえ遠ざけられ、落ちてゆく武家の娘(「すれちがう女」)
・円朝を支え、活躍の場を与えた元名妓の妻(「時をつくる女」)
・円朝の晩年を支えた「孝行娘」(「円朝の娘」)

一番好きなのは「玄人の女」です。円朝と女たちの恋の鞘当てが艶っぽくて粋な感じ。
しかし、読み進めていくうちにどんどん円朝の存在が薄くなっていく。最後の「円朝の娘」にいたっては円朝はほとんど出てこない。それは、彼の淋しい晩年のを暗示するかのようでした。

でも、最後に円朝の姿が薄くなるのはいいのだけれど、いままで色恋の艶や悲哀が描かれていたのに、いきなり戦争の悲惨さを話に練り込むのはどうなんだろうな〜。円朝が様々な女性と関わって、最後にどう亡くなったか、そのあたりをもっと描写してほしかった。

円朝の妻・お幸さんは、元は悲劇の名優・三代目沢村田之助の妻だったそう。どうやら彼女には「あげまん」の才があったようです。それにしても2度までも名人と呼ばれる人の女房になるのはすごい。




松井今朝子作品感想
「吉原十二月」→
「星と輝き花と咲き」→
「吉原手引草」→
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Comment
日月さん、こんばんは。
そうなんですよね、なんとなく、何がテーマなのかボンヤリしているというか…。私の中では、松井今朝子作品としてはイマイチでした。

「吉原十二月」はオススメです。「物語の面白さってこういうことだよね」と実感します!
  • おりおん。
  • 2011/11/06 20:31
おりおんさん
ようやく「吉原十二月」読み始めてます。
さすがにこちらは面白いです。
「円朝の女」も、設定は面白かったのですが…。
  • 日月
  • 2011/11/06 21:44





   
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「円朝の女」 松井今朝子著 文藝春秋社 (10/04/30読了) 松井今朝子作品としては、イマイチでした。落語の三遊派宗家と言われる、歴史に残る落語の大名人・三遊亭円朝を描いた作品。円朝の付き人・円八が、妻、愛人、娘など円朝をめぐる女性について語ることで、円
  • おりおん日記
  • 2011/11/06 8:32 PM
今の時代「昔はよかったなぁ」としみじみ思いする年代はいくつぐらいの人たちなのだろうか。私なんぞはそれだけの年季には至っていないのだが………。このお話の人たちはみなそれぞれがそんな思いで今を生きている年季の入った人ばかりなんだ。
  • 日記風雑読書きなぐり
  • 2012/06/03 8:48 AM

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