残酷な話だけど魅力的なんだよなあ「番犬は庭を守る」 岩井 俊二

2012.06.27 Wednesday

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    数々の印象的な映像世界をつくりあげる岩井俊二監督。映画脚本の他に小説やエッセイなども手がけています。
    岩井監督の小説「番犬は庭を守る」は椎名誠のSFや映画「スワロウテイル」のような、世紀末的な世界の架空の国が舞台。架空の国とはいえ、今の日本の最悪の未来を暗示しているようですが…。

    その国では、メルトダウンを起こした原発が打ち捨てられ、土地も人間も汚染され、生殖能力も著しく低下していいます。その中で生殖能力を持つ人間は「種馬」と呼ばれ、その精子は高値で取引され富を得ることができる。さらに金持ちはブタに自分の内蔵DNAを育てさせ、ファッション感覚で内蔵移植を行うという、生命力による格差社会が生じています。

    主人公のウマソーは、生殖器が発達しない「小便小僧」。警備会社に職を得たウマソーは、市長の家に配属される。そこで市長の娘と出会い、奔放な市長の娘に流されるように関係を持つが、自分が「小便小僧」であることを告白できないでいる…。

    このあたりから、ウマソーがどんどん落ちていきます。市長の娘との関係がバレて放射能汚染が進む施設に配属になり、侵入する少年たちを威嚇したら逆にリンチを受け、憤りを発散するために通り魔として種馬たちを襲う。

    描写もグロく、汚い場面もあるし、ある意味救いようのない話なのだけど、なんでか、ぐいぐい惹きつけられる。そんな話でした。

    女の私には今ひとつ理解できないですが、男にとっての生殖器官は、ただ、行為にのみ使用するものではなく、彼らにとって「それ」は、プライドのや存在を強調するものではないかと。だから、この世界では、生殖能力が富と権力に直結しているため、ウマソーのような人間は、プライドすら持てず、ひたすら虐げられるしかない。

    運命と状況に抗いながらも落ちていくウマソー。でも最後は少し救われたのかな。

    「ウマソー」という名は、「未来少年コナン」でジムシーが飼っていたブタの名前を思い出させます。そこから名前をつけたんだろうか、だとしたら皮肉というか…。
    ブタに自分のDNAを育てさせるというのは、攻殻機動隊S.A.C.シリーズでも出てきたテーマですが、現代でもハツカネズミに人間のDNAを移植させる実験は成功しているらしいので、未来には実現しそうな出来事です。
    ただ、こんな未来はいやだけれど。

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    岩井俊二監督の映画エッセイ…と思いきや話は意外な方向に…
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