「一瞬の風になれ 第三部 -ドン-」 佐藤 多佳子

2012.08.20 Monday

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    高校陸上競技部を舞台にした「一瞬の風になれ」もいよいよ最終巻。
    3年になった新二と連は今までの練習の成果がではじめ、徐々に目標に近づいていきます。
    連の「全部、ちゃんと走りたい」っていう言葉がいいな。
    トップを狙える100mだけじゃなくて、200mも、リレーも、ちゃんと走る。ちゃんと走って新二と「かけっこ」をする。マイペースな連ですが、そのモチベーションは、新二や仲間たちと走ることにあるんですね(^O^)

    4×100mリレー(4継)では、桃内、根岸、連、新二のコンビネーションは良くなってきたものの、新入生・鍵山が波乱を起こすことに。中学陸上で名が知られた鍵山は連を慕って春高陸部に入部したものの、気持ちにムラがあり、先輩への礼儀も言われなければわからない、扱いづらい存在。しかし、タイムは3年の根岸よりも上。
    確かに、鍵山が入ればもっと上を狙える、けれど、コンビネーションを重視するリレーでは、バトンパスのたくみな根岸の方が走りやすい。鍵山の怪我をきっかけに、メンバーは根岸に4継を走らせようと考えるけれど、根岸の答えは「俺は走らない」だった。

    もう、ネギ(根岸)ってばかっこいい。(ノ´∀`*) ネギは自分のことより、チームのことをまず考えてるんだよね。お前らだったら総体優勝も夢じゃない、って逆にハッパをかけるんだけど、これってなかなかできることじゃないと思う。彼らが陸上で得るものは、タイムや記録だけじゃなく、メンタルな成長なんだな。

    リレーは技術もそうですが、状況を把握し、不測の事態に対応できる能力が求められます。
    お互いを信頼し合い、ひとりひとりの力を更に高めることができる競技。
    日本の選手はそこが上手く、だからこそ、オリンピックでも世界を相手に戦えるのだと思います。
    だから面白いんですよね。

    やがて迎えたインターハイ南関東予選。100m、200m、4×100mリレー(4継)に残った春高スプリンターたち。
    一走一走、自分の走りを楽しみながら走っていきます。さらなる高みを目指して。
    新二が走るときに感じているすごくリアルで、自分も走っているような気分になります。たった10秒程度のことなのに、いろいろなことを観て、考えている。走る時は一瞬でも、その瞬間は永遠のように長い。

    物語のラスト、最初に読んだ時は「ええ(゚д゚)!ここで終わっちゃうの?」と驚いたのですが、読み返してみると、この方がいいかなと、思いました。最後まで書かないほうが、連や新二がいつまでも走っているような気がするので…。

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    おまけ感想
    ・ひょうひょうとしながらも選手からの信頼の厚いコーチ「みっちゃん」。彼の外見のモデルは絶対大泉洋だと思う。その他、1年の合宿に出てきた先生は森崎リーダーっぽいし、肉屋の河野さんは音尾くんのイメージなんだよな。
    いつか、ドラマではウッチャンがみっちゃん役だったけれど、いつか大泉洋のみっちゃんも観てみたい。

    佐藤多佳子作品感想
    「第二音楽室」→
    「しゃべれどもしゃべれども」→
    「一瞬の風になれ 第一部 -イチニツイテ-」→
    「一瞬の風になれ 第二部 -ヨウイ-」→

    レビューポータル「MONO-PORTAL」
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