夢と魔法の王国の裏側「ミッキーマウスの憂鬱」

2012.08.22 Wednesday

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    夢と魔法の王国・ディズニーランドの裏側を描いた、おそらく初めての小説「ミッキーマウスの憂鬱 (新潮文庫)
    よくこれをオリエンタルランドが許したものだと思います。もし、この話に少しでも真実がまざっているなら、夢と魔法の王国の裏側は、けっこう恐ろしいところですね…。

    ご存知の方も多いと思いますが、ディズニーランドではスタッフのことを「キャスト」と呼び、それぞれがみな夢と魔法の王国を支える役を担っているのです。

    『ミッキーマウスの憂鬱』あらすじ


    主人公の後藤は、キャストにあこがれ準社員となるものの、お調子者で脳天気な若者です。「何かやりがいのある仕事がしたい。」というくせに、実地試験ではディズニーランドの禁句(ゲストの前で着ぐるみ発言)を平気で口にするし、自分を過大評価して、周りに首を突っ込みたがる。

    後藤の出社2日目、ミッキーマウスの着ぐるみが一組紛失する事件が起こる。
    美装部で働く準社員、藤木恵利が疑われ、調査部の社員たちは恵利を犯人扱いし、責任をなすりつけようとする。
    強引な取り調べに憤慨した後藤は、美装部や運営部のスタッフたちと協力してミッキーの居場所をつきとめるものの、豪雨のため、見つけた倉庫には浸水が!ミッキーの着ぐるみは絶体絶命の危機に。

    夢と魔法の王国、その裏側


    なんでこんな後藤みたいなヤツ採用したんだ…( ´Д`)=3と、思いながらも読み進めていくと、ディズニーランドの裏側が見えてきました。社員の激しい採用倍率を勝ち上がった正社員はエリートで、バイト上がりの準社員は下働きでいつも人材不足、という大きな格差が存在します。

    準社員キャストの作業はキツくて地味な仕事ばかり。特に後藤の配属された「美装部」は、ショーやパレード着ぐるみ(それもマイナーな)の着替えを行うという地味な作業。

    準社員と正社員の格差は、「踊る大捜査線」の本店と所轄の関係のようです。(後半の展開も似てる。)調査部と法務部は保身に走り、事実をねじ曲げようとします。

    そんな中、ミッキーアクター(いわゆる「中の人」)の久川さんはそんな社員たちを侮蔑し、後藤たちに手を差し伸べます。

    久川さん、かっこいいです。プロフェッショナルってこういう人のことをいうのね。まあ、もしも「ミッキーの中に人が入っている」と仮定してですが。

    夢と魔法の王国の裏側でキャストたちに起こる事件と、それを団結して解決していく物語は、読んでいて痛快だし、感動しました。

    ちょっと残念な点は、後藤が入社してたった3日間の出来事なのに、入ったばっかりの(それも空気読めない)人間がそこまで活躍できるのかな〜、と。もうちょっと時間をかけて、後藤の成長とか、社員と準社員の関係修復とかを描いてほしかった。


    作中、ミッキー紛失に関してアメリカディズニーが法務的に介入しようとしますが、元祖ディズニー社は所有権に関してはえげつないほど厳しいのです。厳しすぎて子どもが壁に描いた絵さえ消させましたから…
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