引きこもり探偵と友人の絆 「青空の卵」 坂木 司

2012.08.30 Thursday

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    BSでドラマ化された坂木司さんの「青空の卵 (創元推理文庫)」を読みました。
    過去のトラウマから心を閉ざし、引きこもり生活を続けるプログラマー鳥井と、彼を支える友人・坂木。人を信じられない鳥井は、坂木のみを信じ、彼の開いてくれる窓からしか世界をみれない。平凡な坂木は非凡な鳥井に憧れ、彼が自分以外の人間と交流を持てるように心をくだく。

    あるとき、買い出しに行ったスーパーで出会った女性・巣田香織との出会いによって、2人は近所で起こる男性へのストーカー被害事件に関わることに。その後も人のいい坂木が助けた人物から事件が展開し、人のことをほうっておけない坂木が困った人に手を差し伸べ、その人物たちが抱える事件を鳥井が聡明な頭脳で解決していきます。

    青空の卵 (創元推理文庫)」は日常に起こる事件を描いた日常ミステリです。坂木が鳥井がその冷静な判断力で事件を解決し、派手な事件ではない分、関わった人たちの痛みや悲しみ切なさが伝わります。そして彼らとの関わりによって鳥井も少しずつ成長していく。そんな鳥井を坂木はうれしい反面、寂しさを隠せない。事件の展開のほかに、鳥井と坂木、2人の成長と関係の変化がこの物語の魅力ですね。

    純粋で傷つきやすい子どもの心と、大人の理知的な部分を併せ持つ鳥井。人に対してはぶっきらぼうな口を叩くくせに、坂木が悲しむと、鳥井はこちらがびっくりするほどうろたえてしまう。
    坂木は自分は非凡な人間で、鳥井がいるからまっすぐでいられるというけれど、鳥井があれだけ信頼し、依存できるのは坂木が持っているものもまた、非凡ではないと思うのです。

    2人の関係は友情と呼ぶには深すぎるし、恋情と呼ぶには純粋すぎる、一番近いのは「野生動物と飼育員」もしくは「赤ちゃんと僕」かな(^^)

    作中、みんなで食卓を囲む、何気ないシーンがすきです。鳥井のつくる料理や名産お菓子がおいしそうで。(^^)
    特に高校時代の友人滝本とその後輩の小宮が「雑煮つくってくれ!」と押しかけてきたところがお気に入りです。事件を通じて知り合った栄三郎老も加わって、賑やかにお正月をすごす。家族の団欒をしらない鳥井にとってなによりの「ごちそう」なんだろうな。本人は認めないだろうけど。


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