「ジョーカー・ゲーム」 柳 広司

2012.08.29 Wednesday

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    旧日本軍のスパイ学校・D機関を舞台にしたスパイミステリ小説「ジョーカー・ゲーム」読了。

    いやー、面白かった!痛快なミステリ仕立てのこのスパイ小説は、ドキドキハラハラしながらページをめくる手が止まりません。私の大嫌いな戦前の軍国主義的空気はほとんどなく、逆に固定概念にとらわれないことが信条のD機関は頭脳ゲームを駆使して二重三重に張り巡らされたスパイゲームを解いていきます。

    「ジョーカー・ゲーム」に収録された短編は、D機関のスパイが潜入し情報を得るものや、当初、D機関と関わりをもたない人物からの視点で語られる話など、バリエーションに富んでいて飽きさせません。

    「ジョーカー・ゲーム」


    D機関設立直後の話。陸軍から出向の佐久間の視点で語られる。親日家ゴードンを宅をスパイ容疑で家宅捜索することになった佐久間とD機関メンバー。それは彼らを陥れるための陸軍大佐・武藤の仕掛けた罠だった。証拠をつかまなければ窮地に陥るD機関のとった行動は…。

    「なにものにもとらわれない」を信条にするD機関は、憲兵隊の「盲点」をついた捜査はさすが。

    「幽霊(ゴースト)」


    用心テロ暗殺計画が発覚し、英国総領事グラハムに疑いがかかる。D機関はテイラーの職員・蒲生次郎になりすまし、グラハムの身辺を調査するが、決定的な証拠が見つからない。そこで蒲生は書斎に潜入し、証拠を探るのだが…。

    D機関メンバー側からの視点。協力者をつくるため、相手の弱点をつかみ、相手に応じて協力の内容を変化させてゆく、たくみな心理戦がすごい!

    「ロビンソン」


    英国での調査中、英国情報部に拘束されるD機関メンバーの「伊沢」。自白剤を打たれ、極秘事項である暗号文通信でニセの情報を送らされる。隙をみて逃走を試みるが、敵側のフェイクに絶体絶命の危機に。

    その時、上司の結城中佐から渡された「ロビンソン・クルーソー」の話からヒントをつかみ、再び脱出を試みる…。

    D機関では敵国諜報部員に拘束された時の対処法も伝授されており、そこには敵に明かして良い秘密と、そうでない極秘事項は脳へのインプット方法も計画的に行われる。


    「魔都」


    上海憲兵隊に配属となった本間は、上司の及川大尉から内部通告者の調査を依頼される。その時、及川大尉の自宅が爆弾テロの標的となり、調査をすすめるうちに本間は陸軍のスパイ組織・D機関が事件に関わっているのではないかと聞かされる。

    D機関のメンバーを追ううちに本間は魔都・上海の姿とそこに魅入られた人々の陰謀に巻き込まれることに…。

    「XX(ダブルエックス)」


    ドイツ人記者のダブルスパイ容疑を調査中、対象者が殺害されるという事件が起こる。担当者飛岬はスパイに「あってはならない」出来事を結城少佐へ報告と指示を仰ぐ。殺人事件の捜査という形式をとりつつも、D機関のメンバー・飛崎の過去と事件との意外な関連性を表した話。

    特に「魔都」がお気に入りです。当時の上海は「魔都」と呼ばれ、退廃的な空気に満ちた都市でした。アヘン、賭博、秘密結社、美しく怪しげな女性や少年たち…。そんな魔都の描写と、魔都に魅入られ、落ちてゆく人々の様子が描かれていて、当時の都市の雰囲気が伝わってくる。上海はD機関メンバーに似合う街です。

    魔都・上海についてはこちら
    「上海モダンの伝説」
    「上海セピアモダン」

    D機関は有名な陸軍中野学校がモデル。ちなみに小野田少尉は中野学校の分校出身。「死をもって名誉となす」よりも「生きて任務をまっとうせよ」との教育を受けていたため、生き残っても戦っていたらしい。

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    『ジョーカー・ゲーム』は2016年アニメ化、NHKのベストアニメ100で12位に選出された、原作を生かしてクオリティの高いアニメとなっています。

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    D機関シリーズ


    「ダブル・ジョーカー」→
    「パラダイス・ロスト」→
    「ラスト・ワルツ」→

    JUGEMテーマ:ミステリ


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    コメント
    日月さん☆こんばんは
    中野学校で教えていたことを他でも指導してくれていれば、むざむざ死なずに済んだ方がどれほどいらした事か!

    小野田少尉が上官から命令解除をされるまで、この場を去れないと言っていた意味が、あの当時は分かりませんでした。
    それほどまでに徹底した教育を受けていたのでしょうね。
    • by Roko
    • 2012/09/18 8:19 PM
    Rokoさんへ

    それだけ、中野学校が特殊だったってことですね。結城中佐のような方がたくさんいたら、犠牲はもっと少なかったはずですよね。

    • by 日月
    • 2012/09/19 11:20 PM
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    柳広司 『ジョーカー・ゲーム』(角川文庫)、読了。 これは、さすがヒットしているだけあって、面白かったです。 第二次世界大戦中に陸軍内に極秘に設立されたスパイ養成機関。 そこの訓練生や卒業生...
    • 観・読・聴・験 備忘録
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    著者:柳広司 ジョーカー・ゲーム(2008/08/29)柳 広司商品詳細を見る 昭和12年秋、諜報員として海外で活動していた結城中将の発案により、「D機関」と呼ばれるスパイ養成機関が設立される。官僚制の...
    • 新・たこの感想文
    • 2012/08/30 9:20 AM
    ジョーカー・ゲームposted with amazlet at 10.04.27
    • Roko's Favorite Things
    • 2012/09/18 8:10 AM
    ジョーカー・ゲーム  大好きな推理小説  柳広司  初めて読んだ作家さんです  このシリーズは、2009年の本屋大賞で3位をとってまして  名前だけは知ってたんですが   ...
    • ベテランママは小説、エッセイ、ビジネス本大好き。あらすじ、ネタバレ注意
    • 2015/02/04 11:30 PM
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