2012.11.13 Tuesday

色褪せない名作SF「心中天浦島」 栗本 薫

10代の頃読んだ栗本薫のSF短篇集「心中天浦島 (ハヤカワ文庫JA)」。新装版がでていたので、本当に何十年ぶりかに読んでみました。

当時好きだったのは、「心中天浦島」と「優しい接触」の2作で、ラストが衝撃的だったため、今でも鮮明に覚えています。大人になって初めて読み返してみたのですが、やっぱりすごい。

優しい接触


長い間争いを続ける異星人同士。主人公ハルは母船を攻撃され近くの惑星に不時着するものの、同じく遭難した敵と出会ってしまう。脱出するまでの間、ハルはユーリと名乗るその敵としかたなく協定を結び、行動を共にするようになり…。

凶悪だと信じていた敵のユーリは、小さくきゃしゃで、2人で過ごすうちにハルはユーリに不思議な感情を抱くようになります。そんな中、星の遺跡に2人によく似た種族が寄り添うように眠る棺をみつけ、衝撃を受けます。ハルとユーリの祖先の時代は、もしかしたら争いがなく、慈しみ合っていたかもしれない…。物語が進むに連れ、衝撃の真実が明らかになっていきます。しかもラストが切なくて…。このあとハルはどうなっていくのかが気がかりです。


心中天浦島


宇宙を航海するスペースマンはウラシマ効果(高速で動く物体は、寿命が長くなる=時間の進み方が遅くなる)により、年のとり方が遅くなり、地上の変化に対応できず、生活圏が徐々に分離されつつある未来。

スペースマン候補生のテオは、マーズシティでアリスという5歳の少女と出会います。他の人間にないものを感じたテオはアリスに求婚し、やがてスペースマンとして数年の任務を終えた22歳のテオと、18歳になったアリスは結婚しますが、時の流れの違うスペースマンとの暮らしに耐え切れず、アリスはテオのもとを去ってしまいます。
それから地上では100年の時が過ぎ、変貌したシティを訪れたテオの前に、アリスとそっくりなクラリスという少女が現れ…。

「ウラシマ効果」という言葉を、初めて覚えたのが栗本薫のSFでした。
地上の人間より年のとり方が遅くなるスペースマン。その苦悩や地上の人間との諍いなど、社会的問題や複雑な人間関係などをSF世界で描いているのが印象的でした。SFで描かれる未来は理想社会だと思っていた10代の娘の頭に新しい世界をみせてくれたのが栗本作品だったのです。


そして、栗本薫といえば「あとがき」。新装版「心中天浦島」では発売当時のあとがきが掲載されています。くだけた口調で、作者のリアルな思いを書き込んでくれるため、毎回読むのが楽しみでした。こんなにあとがきを読むのが楽しい作家って後にも先にも、栗本薫さんだけだと思います。

本当に早く急逝が悔やまれます。栗本作品、これからも読み返していこう。

心中天浦島 (ハヤカワ文庫JA)
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