北京・上海・台湾、非日常が混ざり合う旅小説 「のろのろ歩け」 中島京子

2012.12.30 Sunday

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    中島京子さんの「のろのろ歩け」は北京・上海・台湾を舞台に、そこへ旅する女性たちの体験を綴ったロードノベルのような感じです。「感じ」と書いたのは、旅だけじゃなと思ったから。中島京子さんの小説は、日常と、ちょっと不可思議な非日常が織り合わさって、独特の雰囲気を醸し出しているのですが、今回は中国の都市や台湾といった異国が「不可思議」の部分にあたるのでしょう。

    実際、中島さんの描かれた中国や台湾は、魅力的でエネルギーにあふれています。北京の高層ビルと庶民的な家が混沌とする道を自転車で走り、上海では1930年台の老上海の面影を街角でみつけ、台湾では何故か懐かしく感じる風景の中、列車で旅するなど、日本では味わえない雰囲気がこれらの都市にあるのでしょう。

    北京の春の白い服


    1999年、夏美は新しいファッション誌を立ち上げるために、北京を訪れたものの、「北京には春がない」と春服を否定する現地スタッフたちとの交渉は難しく、問題だらけ…。仕事小説なのですが、北京の街の描写がいきいきとしていて読んでいると新しいことが起こりそうな、わくわくした予感が感じられます。


    時間の向こうの一週間


    少しミステリタッチのお話。夫の赴任に伴い、上海に暮らすことになった亜矢子は、忙しい夫の変わりに、現地スタッフの女性と家探しをすることになる。しかし、現れたのはイーミンと名乗る男性。彼とともに、1930年台の老上海の香りが残る上海の街を探索する。濃密な時間を共有する2人だけれど、イーミンにはある秘密があって…。

    亜矢子の現実と夢と空想が交錯しあって、老上海(オールド・上海)の街角に迷い込んだようなお話でした。
    この話、「恋する惑星」の撮影監督クリストファー・ドイルが映像を撮ったら、すごくかっこよくてエキゾチックな作品になるだろうな…。そんな想像が膨らむお話でした。


    天燈幸福


    母親を亡くした美雨は、母の思い出の地・台湾で、母と関わりのあった3人のおじさんを尋ねる旅にでる。美雨はこの3人のおじさんの中に母のかつての恋人がいたのではないかと推測して、訪ねていくのですが、2人のおじさんには否定されてしまいます。

    いよいよ3人めとの約束に向かう時、電車の中でおせっかいやきの青年、トニーと出会い、あちこち観光に連れ回されてしまいます。約束の時間に大幅におくれてしまうけれど、美雨はしだいに台湾のゆっくりした時間に馴染んでいきます。ようやく3人めのおじさんに会えると思ったらそこには初老の女性がいて、母との思い出を話してくれます。
    おせっかいなほどやさしい台湾の人たち、流暢な日本語を話す老人たち、台湾は、日本人にどこか懐かしく、ノスタルジックを感じさせます。

    タイトルの「のろのろ歩け」は中国語で慢慢走(マンマンゾウ)、「のんびり行こう」の意味。ものすごい勢いで街の開発が行われていた北京でも、現地の人たちは変化に対応しつつ、のんびり生きているのかもしれません。

    のろのろ歩け
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    23日〜25日。 中島京子さんの北京・上海・台湾を舞台にした中篇集。 それぞれの場所を訪れた女性たちが主人公。 「北京の春の白い服」 中国でファッション誌創刊のために中国人スタッフと 奮闘する夏美。 春の服を春に着るという習慣のない中国の人を説得するの
    • くりきんとんのこれ読んだ
    • 2013/01/01 8:02 AM
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