『ビブリア古書堂の事件手帖4 〜栞子さんと二つの顔〜』 三上 延

2013.02.25 Monday

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    古書にまつわる謎解きミステリ、ビブリア古書堂第4弾「ビブリア古書堂の事件手帖4 栞子さんと二つの顔」読了。
    今回は乱歩作品のコレクションにまつわる長編で、いよいよ謎に満ちた栞子さんの母親が登場。金庫に収められた乱歩ゆかりの品をめぐって、栞子さんと母親が対決します。

    これまでの「ビブリア古書堂シリーズ」では、失踪した栞子さんの母親・智恵子さんは、古書の知識と洞察力は栞子さん以上、けれど本のためなら犯罪まがいのことまでやってのける、油断のならない人物として描かれています。

    実際に登場した智恵子さんも印象通りの人物で、この人の出現によって、栞子さんと大輔の関係にも影響がでてきそうです。




    孤島の鬼


    江戸川乱歩コレクションを持つ来城慶子という女性から、恋人だった鹿山明という男性が遺した乱歩にまつわる高価な「何か」を探して欲しいと依頼が入る。その品は金庫に入っているが、鍵とパスワードが紛失している。金庫を開ける報酬として、高価な乱歩コレクションの売却を条件に依頼を引き受けることに…。


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    少年探偵団


    金庫の鍵を探すため、鹿山邸を訪れ、家族に話を聞く栞子さんと大輔。厳格な教育者、いたずら好きの人物という、鹿山明の「二つの顔」に翻弄されつつも、栞子さんの推理によってなんとか鍵を見つけ出し、依頼者の元へ。しかし、そこには失踪していたはずの母親・篠川智恵子が…。

    ここでも、乱歩作品をモチーフにしたトリックが張り巡らされ、それが徐々に明らかになる様子は読んでいてワクワクします。

    怪人二十面相 (少年探偵)
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    押絵と旅する男


    栞子さんの前に現れた母親・篠川智恵子は、金庫の中の「物」についての推理を話します。それは、乱歩自らが廃棄したことになっている「押絵と旅する男」の幻の第一稿ではないかと。

    もしそれが世にでれば、どれほど価値がつくかわからない。それにそんな幻の作品は、「本の虫」である篠川母子にとっても魅力的なものなはずです。どちらが早く真相にたどり着くか。暗号の解読をめぐって母親と娘の推理合戦がはじまります。

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    暗号解読や、人物の入れ替わり、二転三転する真相、江戸川乱歩の作品の特徴を活かした展開は、今までで一番謎解きの要素が多かったような気がします。
    江戸川乱歩の古書と、乱歩に関する資料から、「幻の作品」を創りだしているのですが、それが実際にこの世にあるのではないかと思わずにはいられない。三上延さんは、リアルの中に虚構を落としこむのがうまい作家さんですね。

    乱歩の初期作品「二銭銅貨」をモチーフにした暗号解読は、ページ内に暗号表が表記されていて、より楽しめました。やはりミステリはこうした記号や暗号があると盛り上がりますね。(*´∀`*)

    さて、栞子さんと大輔ですが、今回なんと発展が!Σ(´゚д゚`) 今まで恋愛事情に全く疎かった栞子さんとの仲が一歩前進します。まあ、イマドキの小学生以下の恋愛だけどね。

    けれど、篠川智恵子という母親の存在が2人の今後に影を落としそうな予感で、物語は締めくくられます。
    意外な人物が智恵子と関わっていたり、知恵子の出現の目的の一つが、栞子さんであったり、今後も波乱の展開が予想されます。どうなるんだろう…。

    智恵子の探している古書についても気になります。台湾にも行っているところみると、もしかしたら戦前に発行された稀少本ではないかと推理しています。

    戦時中、芥川賞を受賞した満州在住の作家の本は美品で百万以上するそうですから。おそらくその辺りの歴史の欠落している部分をビブリアらしい古書ミステリでみせてくれるのではないかと、期待しています。

    ビブリア古書堂の事件手帖シリーズ


    『ビブリア古書堂の事件手帖〜栞子さんと奇妙な客人たち〜』
    『ビブリア古書堂の事件手帖2〜栞子さんと謎めく日常〜』
    『ビブリア古書堂の事件手帖3〜栞子さんと消えない絆〜』
    『ビブリア古書堂の事件手帖4〜栞子さん2つの顔』
    『ビブリア古書堂の事件手帖5〜栞子さんと繋がりの時〜』
    『ビブリア古書堂の事件手帖6〜栞子さんと巡るさだめ〜』 
    『ビブリア古書堂の事件手帖7〜栞子さんと果てない舞台〜』
    『ビブリア古書堂の事件手帖〜扉子と不思議な客人たち〜』
    『ビブリア古書堂の事件手帖II〜扉子と空白の時〜』

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    コメント
    こんばんは。
    トラックバックありがとうございました。
    ほんと、篠川智恵子が出てきたことで栞子と大輔の今後にも影を落としそうな気がしますね。
    去り際の差すような視線も怖いなあと思います。
    ただついにこの二人の関係も動き出しましたし、篠川智恵子も出てきたしで、いよいよ物語が山場になってきましたね^^
    次の巻もかなり楽しみです♪
    はまかぜさん
    コメントありがとうございます〜(*´∀`*)

    私は、篠川智恵子が探している古書がすごく気になります。三上延さんは、書の知識と歴史の中に、ありえそうな幻の本を存在させるのがうまいので、どんな本なのか、その正体が明らかになるのか、すごく楽しみです。

    栞子と大輔の今後も気になりますが、栞子さんをその気にさせるのは大変そう…。でも頑張って欲しいですね(*´∀`*)
    • by 日月
    • 2013/03/23 9:43 PM
    こんにちは(^^)
    これまでの古書と違って乱歩作品はいくつか知っているだけに、謎解きのトリックに関係したところとかは私もワクワクしちゃいました。
    これでもかって2重3重の仕掛けはよく頑張ったって思いましたし。

    「幻の作品」の存在はちょっと信じたくなっちゃいましたね。
    母親が探している本に何の意味があるのか、どんな裏話が隠されているのかも気になります。
    ただ、個人的にどうも栞子が苦手なので馴染めないところもありますが、いろいろな古書の話は興味深くて面白いですし、今後の展開は楽しみです。

    たいむさんへ

    三上さんは歴史に隠れた、幻の本の設定がうまいですよね。ビブリアを読んでいると本当にそんな本がありそうな気がしてきます。

    栞子さんの母親が探している本の設定が今から楽しみなんです。あとは大輔が栞子さんを本の世界から少し現実世界に引き戻せればいいのですが…。
    • by 日月
    • 2013/04/25 10:21 PM
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