宮本亜門が描く、新しい古典の世界 [舞台] 耳なし芳一

2013.04.19 Friday

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    神奈川芸術劇場で宮本亜門さん演出の舞台「耳なし芳一」を観て来ました。とにかくもう、なにもかもがすばらしかったです。小泉八雲の原作をベースにしながらも、その上に深く、深く、切なくて美しい独自の世界を積み重ねて、まったく新しい古典の世界をみせてもらいました。

    まず、最初から驚かされたのは、その舞台装置。四角く切り取られたような小さな空間に、小泉八雲が机に向かって「耳なし芳一」の原稿を書いている。彼が執筆の合間に吸う、タバコの煙、「耳なし芳一」の英文原稿…舞台前に設置されたスクリーンに映し出される映像は幻想的で、観客はそのまま、その不思議な世界に惹きこまれていきます。

    やがて物語は芳一の世界へ。赤間の寺で琵琶を弾く盲目の法師・芳一。芳一の奏でる平家物語は素晴らしく、人々の感動を誘うけれど、昼夜を問わず一心に琵琶を奏でる芳一に、住職も、小僧の佐吉も心配し、困惑していた。

    実は芳一の琵琶は、過去の因縁から母親の声が耳から離れず、それをかき消すために奏でられていた。ある時、高貴なお方の屋敷に連れて来られ、貴人の前で壇ノ浦の戦いのくだりを奏でると、今まで過去を消すための琵琶が、初めて「己のための琵琶」となった。

    その日から夜ごと貴人の屋敷へ琵琶を演奏しにいく芳一を不審に思った佐吉があとをつけると、安徳天皇の墓の前で鬼火を相手に琵琶を奏でる芳一の姿があった。物語が佳境に進むうち、書き手の八雲にも芳一の世界が交錯し、重なっていく。やがて安徳天皇から、八雲自身も闇の世界へ誘いを受けるようになり…。

    役者さんたちの演技はもちろん、映像、音響、照明、パペットで表現される耳なし芳一の世界は、まるで絵巻物の世界が現実に飛びたして、命を与えられたような、今までみたことのなかった世界でした。確かに、こんな世界をみせられたら、芳一でなくても帰りたくなくなるでしょうね。

    「耳なし芳一」役者さんへの感想→

    最初気がつかなかったのですが、主役ふたりの写真に重なるように八雲役の益岡さんの顔が!Σ(´゚д゚`)ちょっとぞっとする感じのポスターになってます。

    耳なし芳一ポスター

    耳無芳一の話
    耳無芳一の話
    posted with amazlet at 13.04.17
    (2012-09-13)

    JUGEMテーマ:舞台鑑賞



    上演中ですのでネタバレは隠しておきます。ここからは原作と異なるストーリーとなります。
    ラストの耳切のシーンは、原作とは違った展開をみせます。芳一の体に経文を書いた佐吉は、ちゃんと耳まで書いているんです。芳一はこちらの世界で生きていく決心をしたことで、安徳天皇を裏切ることになり、その代償として、自ら耳の経文を消し去ってしまうんです。

    変わりに、安徳天皇が連れて行ったのは小泉八雲自身。八雲もまた、芳一と同じく母を忘れられず、愛する家族がいながらも闇の世界に魅了されていたから。ラストのシーンは悲しく切ないようでいて、少し明るさも感じられる。そんな終わり方でした。


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