日本人が、知っておくべき日本人 「無私の日本人」 磯田道史

2013.05.29 Wednesday

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    「事実は小説よりも奇なり」ということわざがありますが、「無私の日本人」はそのことわざ通り、小説を超えた歴史に埋もれた人々の偉業を伝えてくれます。

    「無私」とは自分をの欲や利害にとらわれないことをいい、この本に描かれたのはまさに、自分の欲を捨て出世を望まず、人のために尽くした3人の物語です。

    これはすべての日本人に読んでほしい。(特に政治家の人たちに)

    「無私の日本人」は、映画にもなった「武士の家計簿」の原作者で歴史学者の磯田道史先生が読み解いた古文書をもとに書かれた歴史小説です。

    「小説」と書きましたが、「無私の日本人」は古文書からの「歴史の事実」という骨組みに、磯田先生が文章を肉付けしていった物語だと私は思います。だから物語の根幹であり主軸は、歴史に埋もれた人々が古文書に遺した「思い」だと感じるのです。

    穀田屋十三郎


    貧困にあえぐ伊達藩・吉岡宿を救うため、「藩に金を貸しつけて利子を民に分配する」という前代未聞の計画を遂行する十三郎ら9人の有志たち。財産の殆どを資金として放出し、やっと元金をつくったとおもいきや、せっかくの懇願を奉行所や勘定方は保留にしたり、さらなる資金を要求したりと、困難が襲います。

    「前例がない」といって提案を突き返すお役所仕事は、もう江戸時代から始まっているんですね…。

    江戸時代の庄屋という民間政統治システムや、「身分相応」といった、家の大きさによって相応の責任を求められるなど、江戸時代の庶民の社会のしくみについても解説されていて興味深い内容でした。

    殿、利息でござる
    「穀田屋十三郎」は、後に「殿、利息でござる!」として映画化。伊達藩の殿様役にはなんとフィギュアスケートの羽生選手が。

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    中根東里


    中国語を学び、詩人としても才能を発揮した中根東里は、荻生徂徠や室鳩巣に学ぶものの、出世をよろこばず、街中で草履をうりながら自らの真理を市井の人々に語る人生を送る。
    その眼差しは常に世の中の弱き者にそそがれていました。


    太田垣蓮月


    藤堂家の庶子として産まれ美貌で知られる女性でしたが、不幸な結婚生活を体験したのちに出家。隠遁生活にはいっても、美貌によってくる男たちを撃退するため、自ら歯を抜いてみせるといった苛烈な一面を持つ女性。幕末の志士とも親交が深く、西郷隆盛の江戸攻めを諌める句を詠んだことで知られます。

    蓮月尼は、「蓮月焼」という陶器を作って生計を立てていたのですが、偽者があらわれても、それでその人が食べていけるのならと、自作の和歌まで贋作につけてやっていたそうです。

    それは蓮月尼が修行した境地「自他平等」に即した行いで、自分と他者との垣根を取り払うことこそが平穏への近道なのかもしれません。確かに後半生の蓮月尼は何事にもとらわれず、幸せそうでした。


    無私の日本人
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    磯田道史先生著作
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    「江戸の備忘録」→
    「殿様の通信簿」→
    「武士の家計簿」―「加賀藩御算用者」の幕末維新』→
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