「なでし子物語」 伊吹 有喜

2013.05.27 Monday

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    四十九日のレシピ」の伊吹有喜さんが描く昭和の少年少女の淡い思いを描く「なでし子物語

    心に傷をもつふたりの子どもが出会い、成長してゆく物語です。伊吹有喜さんの描くお話はいつも魅力的で、読み進めるとどんどん惹きこまれていきました。物語に力を感じます。

    「なでし子物語」あらすじ


    母親から疎まれ置き去りにされた燿子は、祖父が働く山間の里・峰生のお屋敷「常夏荘」へ引き取られ、お屋敷の主の息子・立海と出会います。

    お坊ちゃんで何ひとつ不自由がないように見える立海も、物心付く前に母親と生き別れになったという悲しい過去をもち、周囲の期待に答えようとするあまり、ストレスで嘔吐を繰り返すという、トラウマを背負っています。

    孤独と絶望を感じていた幼い子どもたちが出会い、心を通わせていく内に燿子も立海も次第に明るく、心も体も強くなっていきます。そんな2人の存在は、周りの大人たちの心も動かしていくのですが…。

    やさしい物語


    読んでいく内に、童話のようだ、と感じました。お屋敷の男の子と女の子が出会い、その出会いが周りの大人達の心を溶かしていく「秘密の花園」のような。作中には「赤毛のアン」のように、燿子が間違って果実酒を飲んでしまうシーンもあるし、感情の表現が不器用なおじいさんと燿子の関係は「アルプスの少女ハイジ」のようでもあるし。


    だけど、現実は童話のようにうまくいきません。立海の父親は、立海が丈夫になってきたと知ると燿子の存在がじゃまになり、強引に立海を東京に引き取ってしまいます。

    このジジイは、「植え替えるには根がはりすぎると遅くなる」と、自分の息子を成果品のように言い放ちます。この人はきっと、愛情とか絆とかを商業的にしか判断できないのでしょうね…。

    だけど、純粋にお互いを思いやる燿子と立海は、強い絆で結ばれているので、峰生のおとぎ話の天女と少年のように、いつかきっと、二人が再会できる日がくること、それまで二人がお互いを思いやっていることを願ってしまいます。

    伊吹さんの作品には、毎回美味しそうな料理がでてきます。今回は峰生の名物・くるみ味噌の五平餅や、猪鍋、燿子と立海が飲むきんかんジュースなど、味も色彩も鮮やかで美味しそうなのですが、でも決して主張しすぎず、物語を引き立ててくれています。


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    伊吹有喜作品 感想


    『彼方の友へ』
    『今はちょっと、ついてないだけ』
    『BAR追分』
    BAR追分シリーズ2『オムライス日和』
    BAR追分シリーズ3『情熱のナポリタン』
    『ミッドナイト・バス』
    『なでし子物語』
    『風待ちのひと』

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