相棒の脚本家が描く、切ないミステリ 『幻夏』 太田愛

2014.04.02 Wednesday

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    人気ドラマ「相棒」の脚本家・太田愛さんの本格クライムミステリ『幻夏』を読みました。

    読み終わって、なんとも言えない気持ちになりました。ある家族を襲った冤罪事件、それに連鎖するようにどんどんと悪い方向へ転げ落ちていく。そして、その家族を不幸へ陥れたのは、本来、市民を守るべき警察や法曹界の人間たちだったのです…。





    『幻夏』あらすじ


    23年前の夏休み。刑事の相馬は小学6年の時、近くに引っ越してきた尚と拓という兄弟と友だちになった。3人でいろいろな冒険をした素晴らしい夏休みだった。しかし、二学期の始業式の日、尚は忽然と姿を消してしまった…。

    それから23年後。相馬の友人、私立探偵の鑓水のもとに、23年前に失踪した息子・尚を探して欲しいという風変わりな依頼が尚の母親から舞い込む。

    時を同じくして、警察関係者の孫娘の誘拐事件が発生。その現場には「//=|」というなぞの記号が残されていた。その記号は、23年前、尚が失踪した河原の石に刻まれたのと同じものだった。

    時間も状況も異なる3つの事件は、やがて意外な方向から結びつき始め、鑓水たちは、そのはじまりが尚の父親の冤罪事件だったことを突き止めるのだが…

    なんとも魅力的で、悲しいストーリー


    すべてを奪われた人間の、悲しく切ない復讐劇


    大きな力によって、肉親を奪われた犯人が、明晰な頭脳で事件関係者の孫(小生意気なガキ)を誘拐し、身代金を要求する、といった痛快なストーリーは、岡嶋二人の名作ミステリ「99%の誘拐」を彷彿とさせます。

    こちらもおすすめ、誘拐ミステリ
    『99%の誘拐』。30年以上前パソコン黎明期に起きた誘拐事件をベースに、過去の事件との関連が描かれていきます。



    しかし、読み進めていくと痛快どころか、どうにもならない過酷な状況に陥った人々の悲哀をこれでもか、と見せつけられます。正義は勝たず、警察は沈黙し、力のないものは抗うことができない。


    冤罪の恐怖


    自白を強要されても、立件してしまえば殆どの場合罪が覆されない現実、犯人を落とすためには証拠を握りつぶし、家族までも追い込む警察、激務に追われ、充分な調査を行わない検察や裁判官…。

    恐ろしかったのは、彼らはたとえ冤罪であろうとも、組織を守るためには多少の犠牲はつきものと感じ、自分の仕事でたくさんの人を犠牲にしていることに、あまりにも頓着していないことでした。
    本来市民を守るべき警察、法曹界に一度「犯人」と認識されてしまったら…
    そんな恐怖を感じずにはいられませんでした。

    こうした警察、法曹界の人間たちに「相棒」の右京さんだったらきっとこう言うでしょうね。「恥を知りなさい!」と…


    おまけ:鑓水のキャスティング


    本を読む時はよく、登場人物を頭の中でキャスティングするのですが、探偵・鑓水の「派手な柄シャツが似合う」って描写に、もう、この人以外のキャスティングが思いつきませんでした…

    「幻夏」映像化の際はぜひ、及川光博さんにお願いしたいものです。

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    鑓水と相馬、修司が活躍するシリーズ第一弾『犯罪者 クリミナル』
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