「蛍川・泥の河」 宮本 輝

2015.07.02 Thursday

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    先日、テレビで宮本輝さんをみかけ、久しぶりに「蛍川・泥の河」を読み返してみました。物語の舞台は両方とも昭和30年代。生と死が、現代よりも濃密に感じられた小説でした。

    泥の河 あらすじ


    川のほとりにあるうどん屋の息子・信雄は、ある日、川にやって来た舟の息子、喜一と知り合う。喜一は母と姉と、舟で暮らし各地を放浪していて、喜一の母はどうやら、人に言うのがはばかられる商売をしているらしい…

    昭和三十年代はまだ、荷馬車や舟で暮らす水上生活者が多くいたり、戦争の傷跡がそこかしこに残っていた時代です。主人公は物語の中でなんども、死を含めた人との別れを経験します。

    主人公の父親も戦争帰りで「一生懸命生きて、死ぬときはスカみたいな死に方をするもんや。」と語って聞かせます。生と死が身近で、それでいてとても濃厚に迫ってくる、そんな時代だったのかもしれません。

    私が好きなのは、天神祭の場面です。お祭りの喧騒と臭いや、ふたりのワクワクした気持ちが伝わってくるようで。信雄と喜一がお小遣いをもらって、目当てのロケットを買いに行くんですが、喜一のポケットに穴が空いて、小銭を落としてしまうんです。ここがもう、切なくって…。

    お祭りって楽しいけれど、どこか寂しくて、そんな寂しさに胸がぎゅっとなるんです。


    蛍川 あらすじ


    昭和三十七年、三月。中学生の竜夫は、知り合いの銀蔵爺から、今年は蛍の大群が発生すると聞き、幼なじみの英子を誘おうと考える。英子とは昔、ホタルの大群がきたら観に行こうと約束をしていた。

    しかし、年老いた竜夫の父が倒れ、竜夫と母の生活は困窮することに…。

    ここでも、死が濃密に描かれます。年老いた父親の死、友人の死。思春期特有の父親への憎悪も描かれます。この時期の男子はとかく父親が疎ましいものです。けれど父の死後、父にゆかりのある人達と交流することで、彼が想像したこともなかった、若き日の父親像とも対面します。

    年老いた父親と思春期の少年の葛藤のような感情は、宮本輝の自伝的要素も入っていて、これらの設定はライフワークである「流転の海」にも受け継がれているのではないでしょうか。

    一方で、蛍の大群には、力強い「生」を感じます。おそらく、この蛍を観た後、主人公とヒロインは別れてしまうのでしょう。そんな別れの切なさも、蛍の乱舞が激しいほど、切ないです。

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