異聞・ゴッホ伝 「さよならソルシエ」 穂積

2014.06.04 Wednesday

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    「このマンガがすごい!」の2014年オンナ編で1位をとった「さよならソルシエ」を読みました。
    同じく、「このマンガがすごい!」に選出された「式の前日 」の、ほのぼのした話とは全く逆の、芸術の神に魅入られた兄弟の愛憎が描かれていきます。

    「さよならソルシエ」物語


    パリの有名画廊の支店長であるテオは、ソルシエ(魔法使い)と呼ばれる、飛び抜けた才能と商才をもつ青年。アカデミーの旧式な価値観とは一線を画する芸術を見極めるセンスを持つテオは、ムーラン・ルージュに集う若き芸術家を集め、パリ画壇に戦いを挑んでいく。そんなとき、パリに現れた無邪気な青年ヴィンセント。彼の描く絵は従来の常識を超えた圧倒的な力を秘めていた…。

    異聞・ゴッホ伝


    読み進めていくうち、テオとヴィンセントの正体が画家ゴッホとその弟であると明かされます。狂気の画家ヴィンセント・ヴァン・ゴッホと、彼を生涯支え続けた弟テオドロス。けれど、ヴィンセントは狂気をはらむどころか、自分の芸術に価値を求めず、ただ無邪気に書きたい絵を描いていく。

    そんなヴィンセントに対して憤りを覚えつつも「兄さんは天才なんだ」と、彼の絵をプロデュースしようとするテオ。物語の前半は才能に無頓着な兄と、兄の才能に嫉妬しながら、兄の才能を愛さずにはいられない弟の葛藤が描かれていきます。

    才能のある人間ほど、それに無頓着で、もたざるものを刺激してしまうんですよね…モーツアルトのライバル「アマデウス」などもそうでした。

    やがて迎える悲劇的な結末に、テオがとった驚くべき行動。これには驚かされました。穂積さんはこの作品で、もうひとつのゴッホとテオの物語、異聞を描いてみせました。物語があまりにすばらしいので、常識がひっくり返されてどちらが本当のゴッホ像だかわからなくなるくらい。





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